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楽園の扉への扉と解する者  作者: アウトキャスト
序章
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呼び出しの理由


「で、ヤニ臭い息吐いてさ、ダラダラ喋るのよ、話の流れなんかもうグダグダ。言いたいことまとまってないんなら、無駄に息吐くなってのに……困ったもんよね」

「呼吸するくらいは許していいんじゃないかなぁ……」

「役職があるだけで、実際は教育指導に全くなってない。これなら、まだ氷室ひむろに目をつけられている方がマシよ」

「うーん、年功序列って大事なのかちょっと疑問だよ」


 ……僕が思考している間に、美香と綾瀬が討論に似た雑談をしていた。


「人望なくても通勤してればいいのよねー ま、何にもできないから、目に見えるところだけはがんばるんでしょうけど」

「みんな同じこと思っていそうなんだけど、何でなんだろうね」


 美香も綾瀬の不満を解消してあげたいのか愚痴に同調しており、話を元に戻そうとする素振りがない。


「……えっとさ、結局のところは?」


 女子特有の容赦ない陰口に僕は口を挟むことを躊躇するが、声だけはかけてみようと、綾瀬の厄介事についてから完全に逸れてしまっていることに触れ、話を修正して欲しい意思を見せる。


「ん……?」

「……あれ?」


 悩んだ末の僕の切り出しに、二人は自分達がしている話題に気づき一瞬思考が止まる。


「……陽向聞いてなかったの?」


 が、綾瀬の硬直は一瞬で解け、すぐに言葉を返す。

 うーん、綾瀬っていつもの事ながら切り返しが凄く早い。


「呼び出しされたところまでしか」


 けど、綾瀬は切り返しが早いのだけど、ツメが甘いというか穴が多い。

 僕の記憶が確かならば、呼び出しくらって説教されたところで止まっているはず。


「うん、そこで止まってるよね」


 さっきまで白熱していた美香が僕を味方するように言葉を発する。

 僕としては話が進んで嬉しいけれど……いつこの変わり身の速さが僕に危険を及ぼすようになるかわからない。


「……そうだったかしら? とにかく、放課後意味もなく校舎に残るなってところよ」


 美香が敵に回った途端、綾瀬はアッサリと話を進め、一瞬で切り上げた。

 けど、それはあれだけ寄り道にしたわりにはあまりにも端折りすぎた説明だ。


「勿体つけた割に、それっていつもの事なんじゃないのかな?」


 放課後は意味もなく校舎に残らずに速やかに帰宅しましょう。 そんなの常々言われていることだ。

 ふと思った予感にしては、随分と軽い出来事のように思える。


「そんなことないの。氷室に個人的に言われるのはともかく、今日は学校側として言われたんだから」

「え……?」

「なるほど、そういう事か」


 約一年半の探索において、多々問題とも思えることはやらかして来たけれど、こんなことは初めてだ。

 個人的に「立ち入るな」なんて事を言う教師はいたけれど、他の教師は見て見ぬ振りをしてくれた。

 それに僕と美香は普段の学校生活において、模範生徒のように過ごしていることもあり……探索という裏の活動をしていても簡単に目を瞑って貰えている。

 が、綾瀬に関しては学校および教師にも不信感を抱いているため、学校側としては良い心証がない。


 その心証は悪さはこんな時に現れる。本来なら僕と美香も同じ処置を受けるはずなのに……

 一番努力している綾瀬にだけこういった扱いをするのは許せない。

 それが頭ごなしの注意や指摘ならばなおさらだ。

 半端な行為は火に油を注ぐだけであり、余計に僕達を燃え上がらせるだけである。


「「別にそんなの無視しても……」」


 自然と綾瀬にかけた言葉は、美香と完全にハモってしまい、言い終える前に二人で顔を見合わせてしまう。


「……見事って感じだけど、続きがあるの」


 綾瀬は呆れつつ、でも口元に笑みを浮かべながら説明を続ける。


「あはは」


 ちょっと気恥ずかしいのか美香は僕を見るけれど、僕の方が恥ずかしいのでなんとなく目を逸らしてしまった。


「信憑性はわからないとして、出たらしいの」


 乱れた場を元に戻すように綾瀬はハッキリとした口調で喋りだす。

 しかし、出た? 漠然としすぎてなんだか見当もつかない。


「……新台?」


 さきほどの動揺があるのか、美香がすっ呆けた言葉を発する。


「まさかと思うけど、失踪者が……?」


 が、綾瀬はそーいう冗談を切り捨てるタイプなので僕がなかったこととして、とりあえずフォローする。


「流石というか……半分当たり」


 その僕の意思を汲み取った綾瀬は満足気に頷く。まぁ……普通に望んでた言葉が返ってきたからだろうけどさ。

 一方は無視された美香はブツブツと「新台はいつもハイエナされるんだよー」とか言ってるけど無視しよう。


「って……当たり!?」


 けど、美香にツッコミを入れてるような場合じゃない言葉が綾瀬から話される。

 これは勘でもなんでもなく、適当に出た言葉なのにまさかもまさかだ。


「半分なのは……出所がまた噂だから?」


 驚きを隠せない僕が次の言葉を言う前に、美香が一足先に綾瀬に問いかける。

 いや、本当に美香は侮れないっていうか……表裏が激しいよ。


「それは言うまでもないけど、半分なのは別の事」


 綾瀬は特に美香の変わり身に思う事はないようで、議長のように話をドンドン進めていく。


「ん、その様子だと失踪者が出たことが半分ってことかな……?」


 今の情報だけで推測できるとしたらこれくらい。 そんなことが起こったのなら学校側としても、僕達の探索を止めるのも頷ける。


「それだと外れ」


 だが、綾瀬はフフンと鼻で笑うように、僕の疑問に答える。

 自分が有利になると綾瀬ってこうなんだよなぁ……

 とりあえず、こんな余裕が戻ってきたみたいだから、良しとしよう。


「うーん……」


 一方、美香が珍しく唸りながら考え込んでいる。悩んでる美香もかわいい、なんて思ったらいけないんだろうなぁ……


「もう一度言うと……失踪者が、出たのよ」

「どう変わったのが全くわからない」


 綾瀬は美香ですらわからないのを見て、更なるヒントを与えてくれるが……ヒントにはなってない。

 これじゃ、ナゾナゾみたいな……?


「あ、失踪者が出たんだ」


 綾瀬の言葉から数秒後、美香が理解できた声を発する。

 けど、僕には……よくわからないというか……何が違うんだろう?


「そう失踪者が出たの」


 いやだから、連呼されても僕には違いがわからないんだって。


「陽向君、失踪者が出たんだよ」

「ごめん……説明してほしい」


 この一人わからない寂しさは例えようもない。女二人男一人なのも災いしてるんだろうけど……帰ろうとすら思う。


「だから、出たのよ」

「出たんだよ」


 この二人から説明しようとする気配が感じられない。

 どうせ……僕はそんな役回りだから仕方がないんだけどさ。


「かわいそうな陽向にしょうがなく説明するけど」

「……いつもと立場が逆だなぁ」


 いつも説明する側なのに綾瀬に何か教わるのは癪だなぁ……美香の説明ならすんなりと聞けるのに。


「説明しなくていいの?」


 が、僕の態度が気に食わないようで、綾瀬は随分と偉そうに僕の言葉を待つ。


「してくれないと話が進まないんじゃないかな」

「陽向が珍しく負け惜しみしてる」

「あはは、かわいいよー陽向君」


 ……何故だろう。あんまりな扱いなんだけど、美香に言われれば別にいい気がしてきた。

 うーん……僕ってそんなにダメなヤツだったっけ……?


「出たってのは、まさかと思うんだけど、いなくなった人が現れたってこと?」


 まぁ……流石に限界と感じたので、話を元に戻すことにする。


「あれれ、やっぱりわかってたんだ」

「……ふん、やるじゃない」


 僕の切り返しに二人とも意外そうな表情をする。けど、それは二人のやり取りから察しただけだし……

 そんな事態は不自然であると僕の理性が反対していただけさ。


「でも、それって重大なことじゃないか」

 僕のからかいのネタになってしまったが……それは僕達にとって吉報とも言える。


「……そうかしらね」


 だが、綾瀬はひどくつまらなそうに呟く。その様子を見る限りだと……


「その出たのは……お兄さんってわけじゃないの?」


 僕が綾瀬に言葉をかける前に美香が尋ねていた。いつものことながら、美香より僕はワンテンポ遅れる。


「ううん、和兄ぃらしいけどね」


 くるくると指先で髪の毛に触れながら綾瀬はどうでもよさそうに、とても重要な返事をした。


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