『硬貨』
まだまだ未熟なので、ご指導ご鞭撻の程よろしくお願いします。
※この作品は、少し残虐なシーンが含まれます。また少し刺激の強いシーンが含まれます。以上のことが苦手な方はご観覧をお控えください。
この作品は、私の溜め込んできた物語をひたすらに詰め込んでいます。
それでも楽しんで頂ければ幸いです。
思わぬタイミングでのニケの登場に、その場の一同が驚愕し――戦慄した。
戦いで疲弊した体には、彼の低い声がやけに重く響く。
何故、彼がここにいるのか――正直、そんなことはどうでも良かった。
元々魔国の何かしらの証拠を見つける為にコイロにやってきたのだから、むしろ目的が叶ったとさえ言える。
しかし、今の状況において、全快したエクヴォリに加え、ニケの相手をするなど、成し遂げようのない無理難題である。
はっきり言って、絶望的だった。
「……お前は誰だ?」
しかし、ニケの突然の登場に驚いていたのは、エクヴォリも同じだった。
てっきりエクヴォリの後援としてやってきたのかと思っていたのだが、それどころかエクヴォリはニケの存在を知らないだと?
魔王からの接触は全て文のみだとエクヴォリからも聞いたから、ニケを知らないのも納得できなくはない。
しかし、それだと新しい疑問が浮かぶ。
ニケは何しに来たんだ?
いや、思い当たる節はあるし、それが当たっているなら、今私達がピンチなことには変わりない。
「よお、アイオーニオン。相変わらずボロボロだな」
エクヴォリの問いは完全に無視し、私にへらへら話しかけてくる。
そして、ナキを一瞥だけし、また私の方へ向き直る。
「なんか睨んでるけどよ、今回はお前らには用はねえぞ。ねえこともねえが、少なくともお前らに危害を加える気はない」
そう言ってひらひらと掌を見せつけた。
危害を加える気はない?
最初はてっきり、エクヴォリと共謀して私達を始末するつもりなんだと思っていたが、エクヴォリの反応を見るにそれは違うようだった。
そうでないとすれば、私を始末しに来たのか――ナキを連れ去りに来たのか――もしくは、そのどちらもだと思っていた。
しかし、それらも違う?
だとすれば、本当に何をしに来たんだ?
「おい、俺の問いに答えろ! お前は誰だ!」
喚き散らすエクヴォリに苛ついた表情を浮かべ、ニケは溜息を吐く。
「うるせえなあ。今こっちで話してんだろうが」
「お前が突然現れたんだろ! さっさと何者なのか言え!」
「はあ……仕方ねえな。俺は大魔王国国王イストリア・ヴィヴリオの側近――ニケだ」
「……魔国の者が今更何をしに来た?」
エクヴォリは警戒を続けたまま、ニケの顔色を窺う。
やはり彼らはお互いに味方同士でもなさそうだ。
しかし、魔国は私達の動向をエクヴォリにリークしていた事実がある。
あれがエクヴォリの悪事に加担し、私達を追い詰めたことは確かである。
エクヴォリにそのつもりがなくても、ニケはエクヴォリに協力をする気なのかもしれない。
「なんてことはないさ。エクヴォリ、お前を殺しに来たぜ」
そう放たれた彼の一言で、私の予想はすぐに覆る。
彼は最初に答えた通り、私達に危害を加える気はないらしい。
それどころか、真っ向からエクヴォリを失墜させようとしていた。
「必死に証拠書類の場所、変えたらしいけどな、聖王の部屋なんかに置くなよ」
そう言いながら、彼は懐から乱雑に紙束を取り出し、エクヴォリに見せつける。
ニケが取り出した紙束は、私達の当初の目的であり、手に入れることを諦めた――エクヴォリの悪事の証拠書類であった。
「――! どうしてそれを……!」
エクヴォリの顔色は、青ざめるどころか浅黒くなっている。
「まあ、聖王は自分の部屋なんか調べようとしないだろうし、聖王を崇拝し切る連中も調べようとしないだろうから、隠れ蓑としては最適だろうがな」
「……じゃあ、何でお前は見つけられたんだ!」
「場所を予測したのは俺じゃねえけどよ、とにかく最適過ぎるんだよ。あの方には丸見えだぜ」
あの方――というのは、イストリア・カサルティリオのことで間違いないだろう。
「しかし、聖王はどうした。今頃は眠っている時間帯だが」
「ああ、殺したよ」
飄々と――普通のことみたいに、彼は言う。
けれど、それに嘆く者はもう居ない。
「あれはただの偶像なんだろう? じゃあ、問題ねえよな」
「…………」
「しかし、よくもこんなにやったもんだな」
ニケは一枚一枚書類を捲り、その中に書かれている内容を読み上げる。
「一千万の収賄に、人身売買の出品亜人リスト、礫石の発注書……これは今出回ってる聖石とやらに使ってる奴か。あれ安っぽいのに、信者全員持ってるもんなあ」
一つ一つ悪事が暴かれていく度に、エクヴォリの表情はみるみる歪んでいく。
「こんな明細わざわざ残さねえで、すぐに燃やしちまえば良かったのに。金好きは帳簿もついつい付けちまうのかねえ」
頭を抱えて呻き声を漏らすエクヴォリだが、これだけの証拠が出揃っていても、まだ諦めていなかった。
「……まだだ。ニケ、お前もティレシアスも全員まとめて殺し、書類も燃やしてしまえば俺は再起できる。まだ終わらないぞ!」
エクヴォリの妄執は覇気として私達を圧倒するが、ニケは痛くも痒くもないらしく、彼の執念を軽く打ち砕く事実を伝える。
「ああ、言い忘れてたが、この書類は既に複写して、俺の部下共が国中のポストというポストに投函している。お前がアイオーニオン達に悪戦苦闘している内にな。だから、別に瞎の女はもうどうでも良いぜ?」
それを聞いたエクヴォリは湧き上がる憤りもすぐに沈み込み、遂に膝から崩れ落ちる。
「……何でだ。何でこんなことを……」
力なく声を零すエクヴォリの眼は、どこを見ているのか分かり兼ねるくらい虚ろに揺らいでいる。
「あの報せを送ってきたのは、つまり俺に協力しようとしているわけじゃなかったのか? 何で今になって、こんな俺を貶めるようなことをするんだ?」
「『今になって』じゃない。あの方は始めからこうするつもりだった」
始めから――エクヴォリに文を送った時から、最後はこうなることを予測していた――ということか。
「あの方には全部始めから分かっていたよ。アイオーニオン達がコイロに向かうことも。お前にアイオーニオン達の正体を教えたら金儲けに利用しようとすることも。そうなったとしても、アイオーニオン達は自力でお前を退けられることも。その間に、聖王のベッド下に隠された書類を手に入れられることも――あの方には全部お見通しだったよ」
それを聞いて、正直信じられるわけないと思った。
確率で言えばミクロほどの小さな未来を、どうして簡単に当てられるのだろうか。
けれど、信じられてしまう私もいる。
根拠もないし、どうしてなのかも分からない。
けれど、カサルティリオならばやって退けてしまうと、どうしてか思えてしまうのだ。
「……何でだ。どうしてこんなことを……お前ら魔国が俺を失脚させて、一体何の得がある!?」
「馬鹿か? 亜人嫌いを掲げる国なんて俺達にとっちゃ無い方が良いに決まってんだろ。だからこそ、こうしてアイオーニオン達を送り込んだんだろうが」
別に送り込まれた気はないが。
その言葉にエクヴォリも変に反応して「お前らやっぱり仲間だったのか!」と、勝手に激怒してしまう。
「仲間じゃねえよ、こんなカス猿共」
言い過ぎだろ。
しかし、彼の言葉からすれば、例の飛行船からコイロ硬貨が見つかったのも、私達をここに誘導する為のトラップだったのか。
あそこからここまで全部カサルティリオの掌というわけだ。
胸糞悪くて仕方がない。
「じゃあ、最初からお前ら魔国は俺を陥れる為にあの文を送ってきたのか?」
「そうだっつってんだろ」
「……! 騙しやがって!」
そう叫んだエクヴォリに、ニケは一層冷えた口振りで答える。
「騙し裏切り――お前が散々やってきたことだろ? 一回くらいで喚くんじゃねえよ」
エクヴォリはその言葉にただ魂が抜けたように項垂れる。
ニケは彼から視線を外し、私の方へ向く。
「お前も俺に聞きたいことがあるだろうが、後にしてくれよ」
「……ああ」
ここで下手に敵対するのも無駄なので、とりあえず今は大人しく応じる。
「……今までの苦労が……」
生気を失い、エクヴォリは不気味に呟いている。
しかし、その場の誰もがきっと同じ思いだっただろう。
そして、それを声にしたのはやはりニケだった。
「お前が今まで何してきたって言うんだ?」
ニケはぐったりと項垂れるエクヴォリに一歩ずつ歩み寄る。
「国を使って民から金を巻き上げるシステムを作っただけだろ。それをやるのに苦労したからって、誰が許してくれるんだ?」
「……うるさい、黙れ、黙れ!」
遠吠えを上げるエクヴォリは憤怒に駆られてニケに殴りかかる。
しかし、ニケは彼より何倍も素早い動きで黒剣を抜き、エクヴォリが握り締めた拳を鎧ごと斬り裂く。
「――!」
驚きはすぐに苦悶へと変わり、悲鳴の入り混じった苦痛の叫び声が上がる。
それをニケは鬱陶しそうに見下ろしている。
「ああああ……! う、うああ、ああ……」
「うるせえよ。手が無くなったくらいじゃアイオーニオンは喚かなかったぜ。……ん? いや、そうでもなかったな」
私を引き合いに出すな。
しかし、彼がどれだけ床を転がり悶えていても、もちろん誰一人として助けようとはしないし、きっと同情もしちゃいない。
「魔法でも使えりゃ痛みくらいは和らげられるんだろうが、それができねえから魔法紙を持ってたんだろうよな。瞎の女に予知魔法をかけたのもあの方だし、思えばそん時から踊らされたたわけだ」
「え――」
瞎の女――はティレシアスのことだろうけれど、彼女に予知魔法をかけた者が、カサルティリオ?
色々と疑問点が浮かぶが、そもそも何故彼がそんなことをするんだ?
そんな一見人助けみたいなことを――いや、別に魔王も場合によっては人助けもするか。
ティレシアスも何か知りたい様子だったが、ニケはそのことにはそれ以上触れない。
「そんなわけだからエクヴォリ、お前は終わりだ――俺の手でな」
立てた親指を自分に向けて、黒剣の峰で自身の肩を軽く叩く。
「アイオーニオンがさっさとお前を殺してくれれば、俺がここに来ないで良かったんだがな」
エクヴォリは手を失くした腕の傷口を押さえ、歯軋りを立てる。
その様子もお構いなしに、ニケは黒剣の切先を床に叩きつけ、火花を立たせる。
火花同士が蒼く光り、刀身の周りに稲妻が小さく走った。
それを見たエクヴォリは遂に立ち上がり、再びニケへと飛びかかる。
先程よりも躍起な様子と覚束ない足取りで――利き手を失った慣れない左手で殴りかかった。
「つまんね」
そう呟くと、迫りくるエクヴォリの拳を軽く避ける。
そのまま彼の横を抜き去ると同時に脚を斬り断つ。
振り返りながら銃を手にし、倒れ込んで無くなった脚に嘆くエクヴォリに照準を合わせる。
生き残っているもう片脚に、銃弾を素早く撃ち込む。
計七回――銃が上げる声に呼応するようにエクヴォリも遅れて悲壮に泣き散らす。
動くこともできず、痛さを我慢することもせずに悶えるエクヴォリを、私達はただ見ているだけだった。
ニケは味方などではないが、今の彼の行いは形は違えど私達がするはずだった行動だ。
けれど、ニケが引き金を引いている姿に対し、どこをどう見ても悪滅であると納得するには、やはり気持ちの良い光景ではなかった。
「コイロの英雄だとかって聞いてたからよお、期待したんだぜ? あの方がアイオーニオンに一度負けると言っていたから、俺の相手にはならねえと思っていたが、中身まで――というか、中身の方が弱かったな」
「……くそお、どうしてだ……魔王は俺がこうなることも分かっているのか? 予知ができんのか? 俺の――」
さらにもう一発、エクヴォリの腹に鉛弾が飛び込む。
「うるせえ、どうせ死ぬんだから訊いたって無駄だよ。散々人を信じてこなかったのに、どうしてあの文を鵜呑みにできるんだ? 事実があの方の言った通りになって、思わず信用しちまったか?」
「俺の金は……俺の金……」
この期に及んで尚、自分の金に手を伸ばそうとする。
彼をここまで突き動かしたのが金だけだとはとても思えないくらい、生き汚く這いずっている。
「安心しろ。この国の奴らにちゃんと使ってやるからよ。お前がしたみたいに、今度はちゃんと人間も亜人も大好きの国にしてやるよ」
「止めろ、あいつらなんかに落とし込むな。俺の金だ。俺が使うべきなんだ……」
ニケから逃げるように這いずり、見上げた視線の先にいたティレシアスと目が合う。
その時ばかりは、本当に二人の目が合った気がした。
「……ティレシアス……助け――」
その時、最後の銃声が鳴り響く。
その引き金を引いたのは、ニケではなくティレシアスだった。
エクヴォリが助けを求める声を聞き届ける前に、銃を取り出し、銃口を彼へ向け、引き金を引いた。
エクヴォリの額が撃ち抜かれて銃声が鳴り終わる頃、入れ替わるようにティレシアスの嗚咽が響き渡る。
「……ティレシアス」
唇を噛み締め過ぎて、血が垂れている。
その何倍もの量の涙が目から流れ続けている。
誰も信じずにここまで来た男が、最後の最後で助けを求めた――ティレシアスを頼った。
彼女を犬として命令したのか。
それとも、恥を抱えて懇願したのか。
それを知る術はない。
答える口はもうない。
ほんの少し先の未来が見えたティレシアスなら、或いは知っているのだろうか。
「助けろ」と、言ったのかもしれない。
「助けて」と、言ったのかもしれない。
その答えが、彼女に銃を手に取らせ、引き金を引かせた理由なのだろう。
それ以上は、誰も何も言わなかった。
手に持つ銃を捨て、代わりに顔を覆い隠すティレシアスを、ナキが優しく抱き締める。
あのままニケにゆっくりと痛々しく命を削られていくしかなかったとすれば、ある意味でティレシアスは彼を助けたのだろう。
もしかしたら、ただ聞いていられなかっただけなのかもしれない。
彼の悲鳴も――死ぬしかない足掻きも。
時間も掛からなかったはずなのに、疲労は果てしなく背中に乗っかってくる。
死んだのは、聖王とエクヴォリの二人。
止めを刺したのは、私達ではない二人。
どうしてだろう。
最後の一撃の感触を味わずに済んだのに、心の中に残るこの歯切れの悪さは。
〇
ティレシアスめ。
よくも俺に銃口を向けてくれたな。
撃たれる理由は山程思い当たるが、だとしても恩だってあるはずだろう。
……ん、おや?
何だ、この時間は?
撃たれて死んだと思ったのに、こんなに考え事をする暇がある。
もしかして、俺は死んでいないのか?
それとも、天国って奴は本当にあったのか?
にしては、体の感覚がない。
――ああ、これが走馬灯か。
だからか――今まで重ねた生き恥がこんなに溢れ出してくるのは。
俺の家族は、金があれば死ななかった。
何十年も前のこと。
生まれ育った家庭は、特別貧乏でもなく、特別裕福でもなかった。
働いていれば生活に困ることはないし、働かなければ生きていけないくらいの生活である。
父と母と兄と姉と妹と弟――俺を含めた七人家族である。
他の家庭に比べたら、少し賑やかかもしれない。
別にこれで幸せなんだと思っていた。
特に何事もなくこの幸せが続くと信じていた。
ある日――何でもない夕方に、強盗団が押し入ってきた。
奴らは人間の五人組で、武器も持っていた。
父は奴らに立ち向かい、手足を斬られて苦しそうに泣き声を堪えていた姿をよく覚えている。
奴らは狭くもなく広くもない家の中をめちゃくちゃに漁り出した。
けれど、俺の家に貯蓄はなかった。
だから、代わりに俺の家族が金にされた。
暴れる家族を押さえつけて、四肢を切り落とす。
噴き出す血を水瓶に溜め、分解された家族を袋に詰め入れた。
奴らはそれを闇市で売り捌くと言う。
俺だけが助かったのは、宗教上の理由らしい。
真ん中に生まれた子は即ち中心であり、奴らの心酔する宗教では神聖な存在であるらしい。
よく分からない。
金も宗教も嫌いだった。
金のせいで家族を奪われ、宗教のせいで置き去りにされた。
実際、俺の家に金があったとしても、皆は口封じに殺されてしまっていたかもしれない。
人を殺して売る人間さえ崇拝する神とは、どれだけ有り難い存在なのだろうか。
その時、気付いてしまった。
この世界で幸せになるには、金を支配しなければならない――宗教を利用しなければならない。
それ以外を信用してはならない。
拠り所もなく放浪する俺は飢餓に苦しんだ挙げ句、伝染病に罹り――遂には行き倒れた。
そんな俺を介抱し、糧を与えたのは、熱心なパラミ教信者だった。
救われた理由はただ一つ――俺が人間だからだ。
それから俺はパラミ教に入信し、巡礼を何年か続ける。
そこでは見たことも会ったこともない神に金を注ぎ込む人々がいることを知った。
そして、パラミ教総本山のコイロへ定住し、聖騎士団に入団する。
それからは金を守る為の力をひたすらに積み重ねる日々だった。
戦場で俺の名が轟き始め、金に恵まれた生活が手に入った頃、団の国外演習の際、ティレシアスと出会った。
俺が訓練をサボり、近くの村の酒場で飲んでいた時、ある魔人の男が少女を抱えて話しかけてきた。
あいつが後の魔王だったとは、ニケに言われるまで分からなかった。
ティレシアスは出会った時には既に盲目で、最初は面倒だと思った。
しかし、予知魔法が使えると言われ、育てたら護衛くらいにはなるかもしれないと思い、渋々引き取ることにした。
ところが、あいつはみるみる成長し、その才覚を遺憾なく開花させ、現役時代の俺にも負けないほどの実力者となった。
そして、全てが順調に進んでいた今日までの全部をぶち壊したのは、一枚の『硬貨』だった。
例の飛行船からコイロ硬貨が発見されたことで、他国からの調査団に連日自国を嗅ぎ回られ、魔国の厄介事に巻き込まれたと苛立っていた。
その上、コイロを巻き込んだ張本人である魔王から直接文が届き、どういうつもりだと不穏感半分――怒りを抑え切れずにいた。
しかし、文に書かれていた――食糧庫から少しずつ兵糧が数年前から盗まれている――という内容を実際に調べてみると、年数すら正確に当たっており、事実であることが発覚した。
その時には、魔国への怒りもどこかへ消え去っていた。
さらに、国宝である『トポス・ティアラ』が盗まれるという情報もあり、それを見過ごせば莫大な損失となり、さらには国民や信者からの信仰も失ってしまう。
あの夜、試しに謁見の間を見張っていると、本当に鳥人の女がやってきた。
その時には、魔王の言葉を完全に信用し切っていた。
魔王がさらなる儲け話を提案した時は、もう疑うことを考えられなかった。
そして、最後の最後で利用され、嵌められ、殺された。
死ぬのは死ぬほど悔しいが、納得している自分もいる。
案外まだ真面だったのかもしれない。
金に家族を奪われ、金の為だけに生き、結局金に目が眩んで死んだ。
これも金運が無かったということなのだろうか。
全てあの一枚のコインから始まった。
あのコインも俺が不正に国民から巻き上げた金が、回り回って俺の脳天撃ち抜くところにまで行き着いたんだろう。
まさか自国のコイン一枚にさえ裏切られるとは。
あーあ、結局は家族揃って金に奪われる命か。
こんなことなら、使い果たしておくんだったなあ。
次回にご期待ください。
本作品は、不定期更新となります。次の物語をお待ちください。




