『終幕』
この作品が初投稿なので、拙い文章ばかりだと思います。それでも、最高の物語を目指しています。
まだまだ未熟なので、ご指導ご鞭撻の程よろしくお願いします。
※この作品は、少し残虐なシーンが含まれます。また、少し刺激の強いシーンが含まれます。以上のことが苦手な方はご観覧をお控えください。
この作品は、私の溜め込んできた物語をひたすらに詰め込んでいます。
それでも楽しんで頂ければ幸いです。
世界の苦しみが全て雨粒となって降り注ぐのなら、私達はもう何億年も晴れ空を知らない。
世界に希望の光が差せば、或いは虹も見られただろうか。
虹を見るには雨が要るように、希望に気づくには辛苦が必要だった。
できる限り土砂降りの――凄惨な雨が。
それでも雨余の先に虹が架かるとも限らない――そもそも雨が上がるとも限らない。
それらと同じくらい、肌を叩く雨雲に晴れ間が差さないとも限らない。
どちらでも良かったんだ。
薄明に連れて行かれたあの人は、虹が架かれば何でも良かった。
雨余だろうと――雨中だろうと――架かる虹は美しい。
〇
「こんにちは。お元気ですか?」
私が生きる世界と君達の生きる世界は全く別の世界である。
いわゆる――異世界。
君達の世界に何があるかは存じないが、私の居る世界には戦争がある。魔法がある。亜人が居れば、竜が空を駆け、魔王が星の裏で暗躍する。
何でもあって、何にも手に入らない。
お金があっても届きはせず、時間があっても見つかりはしない。
蛍の光のように目の前を舞い、花のようにすぐに枯れ、鬼のように去っていく。
魔法と科学が交錯し、木が火を咲かせ、ぼやける光を手にできるこの世界で――あり得ないことばかりが起きるこの世界で、私が手に入れたたった一つのものとは、果たして――
〇
私はとある王国の隅にある街で暮らす、ごく普通の――否。少し変わった少年である。
王に仕える兵士になる為、兵士の育成学校に通いながら寮で生活している。
六畳一間の私の部屋には何も無い。
机と椅子と薄い布団を被った寝台だけで、私を表すものは何も無い。
戦いの訓練を毎日繰り返すばかりで、退屈で頭がおかしくなったのはとうの昔。
実力も大して無ければ、友人だって多くいる訳でもない。
唯一友人と言えるのは、あの才人にして変人にして超人の彼ら三人だけだ。
あの三人と出会ったのは偶然だった。
私が一緒に居ることすら憚られる。
それくらい彼らは私と異なる人間だった。
三人の内の一人――キラ・ソニック・バレットウェポンは人間の域を超えた人間である。
単純な膂力だけで言えば人類トップかもしれない。
一蹴りすれば人の体に風穴が開き、大木に雷が落ちたかのように圧し折れる。
その気になれば星をも滅ぼすほどである。
頭脳明晰で、知識で競えば右に出る者はいない。
ただ、コミュニケーション能力は乏しく、どうして私が彼と仲良くなれたのか分からない。
さらには、のめり込むような勉強のし過ぎで非常に目が悪い。目つきは元から悪い。
母親譲りの癖毛を揺らしながら、いつだか彼は私にこんなことを言った。
「『特別』って言葉は嫌いなんだ。そう称されるのはもっと嫌い。俺がやれることなんて、大抵の人間ができることなんだ。とにかく鍛えてとにかく勉強して、そうすりゃ当たり前に俺が出来上がる。何人もな」
普段は口数の少ない彼がそんな風に思いを話すのは珍しく思えた。
けれど、話している内容はおいそれと頷けるものではない。
「『とにかく鍛えてとにかく勉強して』ができないから、誰も君みたいにはなれてないんだよ」
「君はやっぱり『特別』なんだよ」羨むように言う私に、さらに彼は応える。
「じゃあ、お前も『特別』になっちまうな」
「……僕は僕にしかできないことがない」
「俺はお前みたいに泣いたりできないよ」
それは『特別』なんかじゃない。
泣き虫なんてこの世にごまんといる。
「でも、この学校に居続けて尚、事あるごとに泣いて喚ける心があるのは、羨ましいことだよ」
鋭く尖った目がその時ばかりは優しく緩む。
そんなことが『特別』だなんて、まるで有り難くない。
「有り難くなくて良いんだよ。『自分だけ』ってのは大抵鬱陶しいもんさ」
三人の内の一人――コクヤ・サード・アロウズは究極の努力家である。
体格は華奢で、声も中性的、色白で艶やか白髪をしている。
その為、少女と間違われることもしばしばだが、本人はそれをかなり気にしているらしい。
とは言え、彼もまた才人の一人。
弓の名手であるコクヤは千年に一度の逸材と言われている。普段は兎のようなつぶらな瞳も、弓を持って獲物を狙えば正しく虎視眈々――と言うより虎をも萎縮させるだろう。
そんな彼は食べることが大好きで、かなりの大喰らいでも有名だ。
いくら食べても太らない体質だと言い、世の女性はあやかりたいことこの上ないだろう。
こんな私にも気味悪く思わずに接してくれる。
彼との食事で色んなことを話したが、その中の一つを今も忘れない。
「僕はね、本当は兵士になんかなりたくなかったんだ」
「……へえ」
初めて見た彼の沈んだ笑顔から呟かれた言葉に、私は少しだけ惚けてしまった。
妙に色気があって――儚くて。
「本当はね、料理人か画家になりたかったんだ。どっちも好きなことだし」
「じゃあ、どうして兵士に?」
「……才能があっちゃったから、なんつって」
冗談めかして言うが、彼には実際溢れんばかりの才能がある。
才能が霞むくらいの努力をできる人だからたまに忘れそうになるが。
「好きなことが才能になるまで待ってもらえる時代じゃないから」
私は彼に何も言えなかった。
彼の身の上は知らないし、その中に隠された苦しみも知らない。
「それに、怖かったんだ――カルマやキラに置いて行かれるのが。彼らが世界を救うその時に、僕だかが居ないのは寂しいよ」
「不純で臆病な理由だけれど」諧謔的な笑みを浮かべるコクヤだったが、きっと本心に違いない。
だからこそ、私の本音も零れてしまった。
「……だったら、僕はもっと不純で臆病だよ」
私は彼のように戦う理由さえ無い。
逃げ出して辿り着いた場所で息をしているだけの私が一体何と戦えるのだろう。
追いやられたわけでもない――導かれたわけでもない。
差し伸べてくれた手も引き止めてくれた手も振り払って、私の手には何も残っていない。
止まらず吐露した情けない思いを、コクヤは笑ったりなどしなかった。
代わりに、僕の皿に半切りのミニトマトをくれる。
「今は僕らが居るでしょ」
黙って頷いた私を見て彼はいつもの朗らかな笑顔を見せた。
「ごめんね。僕が変な話するから、君まで暗くしちゃった」
そこからは別の話題で盛り上がり、楽しい食事の雰囲気が段々と蘇る。
彼がくれた一言に私がどれだけ救われたか、今更話してもきっと彼は照れるだけだろう。
三人の内の最後の一人――カルマ・オズ・エレフセリアは何でもできる人間である。
キラが人間の域を超えた人間であるのなら、カルマは人間の枠から外れた人間であると言えよう。
コクヤが千年に一度の逸材と言われているのならば、カルマは二度と現れない天才と言われている。
彼は育成学校で最優秀の成績を修め、卒業後は国の最重要組織に配属されると言われている。
兵士になれば世界が敵に回ろうとそれら全てを蹂躙できてしまうだろう。
学者になれば世界が終わりを迎えても見つけられない発見をその生涯の半分の時間もかからずに探し出せるだろう。
それ故に、彼は人々からこう呼ばれる。
――『頂点』。
そんな高みに居ても尚、彼は私と一緒に居てくれる。
三人の中でも、カルマとは一番話をしただろう。
数え切れないほど交わした言葉の中で、彼は私にこんなことを言ってくれた。
「『僕を殺して』って頼んだらさ、君は殺してくれる?」
直前にどんな会話をしていたか覚えていないが、とにかく突然だったと思う。
「……何、急に?」
「答えてみてよ」
難しい問いだった。
答えは決まっているようで、深く考えれば考えるほど迷ってしまいそうな。
カルマはたまにこういうことを言う。
揶揄っているのか、試してみるのか、分からないようなことを問い質してくる。
「どうするの?」
「…………友達だったら、どうするのかな」
頼みを聞き入れるのが友情か――裏切ってでも命を守るのが友愛か。
「カルマならどうする?」
「殺さないでしょ、そりゃ」
答えあったんだ。
またいつもみたいに「知らない」とかって戯けるのかと思った。
「だからって君も殺さない選択を選ぶ必要はないんだぜ。その時に僕を恨んでたら殺したって良いよ」
いつもの飄々とした話し方で、変わらず残酷なことを言う。
他愛もないのに遠い話の気がしなくて、私はとても怖かった。
あの凛とした横顔を――赤く染まった傷跡を――私はずっと忘れはしない。
〇
私という人間にあまり良い思い出はない。
生まれてからというもの私は不運に見舞われてきた。
もしかしたら生まれる前からかもしれない。
前世は疫病神に取り憑かれていた――というか疫病神だったのかも。
母のお腹にいれば何度も死にかけた。
父と遊んでいれば必ず膝を擦りむいた。
弟と喧嘩をすれば兄という立場で母から叱られ、妹とは未だに顔を合わせたこともない。
道を歩けば糞を踏み、池で遊べば足を攣り、屋根に登れば瓦が崩れる。
私の行く道はもはや渡っていけるものなどではなかった。
そんな私でさえ川の如く時は流れ、気が付けばもう十七になろうとしている。
私が事あるごとに不運を呼び寄せるので、その害は親にまで及び始めていた。
これ以上の迷惑を掛けたくないと、九つの時に親元を離れて兵士の育成学校に入学する。
しかし、学校に入ってからも私の不運さは遺憾なく発揮されてしまう。
支給された木刀は私のだけ腐っていたし、夕飯の肉は生焼けだし、靴紐は度々千切れた。
入学して間もなく、不運集積所として確立した私の周りからは人がみるみる遠のいていった。
ずっと一緒に居てくれたのは、あの三人と今は亡きあの子だけ。
私が何かをしたわけではない。
周りが何かをし始めたわけでもない。
それでも、不運は影のように私の傍らに居続けた。
それに抗うように八年間。
故郷にいた頃は遊び相手がいなかった為、運動は至極苦手であった。
訓練に耐え続け、三人の力も借りながら、まあまあな成績での卒業を私は控えていた。
配属先もこれから決まる頃、これからもっと苦難があるだろうがそれらも前向きに捉えようとしていた。
そして今、不運とも言えぬ最後の不幸が、私の全身を焼き焦がす。
〇
この世界はかなり不平等である。
金と血が物を言い、神とイケメンが優遇される。
恐ろしい。
金の無い者は盗みを働き、食を得る。職を得ずに、働くのは仕事ではない。ややこしい。
個人の権利の保持を提案せずにはいられない。
何故、生まれだけで他人に価値を判断されなければならないのか。
何故、我々庶民に成り上がる機会を与えてくれないのか。
そんなことを考え続け遂におかしくなった私は、どうにかして世界を変えたかった。
街のバイトをしまくり、稼いだお金で孤児やホームレスに食事を提供するという行為を個人で勝手に行った。
結果は散々――周りからは白い目で見られ、孤児やホームレスからも気味悪がられ、しまいには学校から懲罰を受けた。
英雄は称えてくれる人がいて始めて英雄となる。
あれからいくつもの夜が過ぎ、早いもので十七になろうとしている。
その日は久し振りの休暇で、三人と街をぶらぶらしていた。
特に何をするでもなく、窓越しに見える商品を何も無い自分の部屋に想像で置いてみたりした。
「あのぬいぐるみ良いなあ」
コクヤがショーウィンドウに飾られた犬のぬいぐるみを見て指差す。
「ああいう可愛いのが好きなんだな」
「女だから」
ふとした私の一言に意地悪を添えたカルマに、コクヤは酷く腹を立てる。
「おい! 女じゃねえ! 舐めんな!」
キラは眠そうに大きな欠伸を掻いて、ゆっくりとした足取りで私達の一歩前を歩く。
「毎日牛乳飲んでんだ! 背が高くなったら見返してやるからな」
「貧乳も治ると良いな」
「だから女じゃねえ!」
「牛乳で背が高くなるの迷信らしいよ」
「えっ、嘘!?」
「ふああぁあぁ……」
「きゃあああぁっ!」
その時、後ろから叫び声が聞こえた。
どうやら、八百屋で窃盗が起こったようだ。
店からは煙が上がっているのを見ると、火炎魔法が使われたらしい。
煙の中から出てきたのは、食料が入っているであろう大きな袋を背負って走る大柄な男である。
不精髭を剃る余裕もないらしく、ボサボサの髪を適当に流しただけの大男。
きっと貧しい生活に耐え兼ねてしまい、盗みを働いてしまったのだろう。
瞬間――いの一番にコクヤが窃盗犯に向かって駆け出す。
食べ物を愛する彼である――余程許せなかったのだろう。
しかし、単純な走力だけで言えばキラが一番である。
「考え無しに走り出すな」
すぐにコクヤを追い抜いた彼は、窃盗犯を取り押さえにかかる。
――その時、キラが倒れた。
「――えっ」
突然足取りが覚束なくなったキラは、膝を突いて苦しい表情を浮かべた。
全身が痙攣を起こしており、発作のように呼吸も荒い。
「どうした、キラ!」
コクヤの声にも応答できず、キラは依然として立ち上がれない。
次の瞬間、コクヤも地面に倒れ伏す。
ゆらりと地面に伏した彼も苦しそうにもがいている。
しかし、キラとは違って頭ではなく首を押さえて、口からは泡を吹いている。
今にも気絶してしまいそうな血走った目で、まるで呼吸ができずにいるようだった。
さすがに異変を感じ、私とカルマは周りを警戒する。
「一体どうなって――」
馳せる足を止めて戸惑いの声を漏らしたカルマだったが、言葉も言い終えることなく沈んでいった。
突然地面に倒れ伏したカルマだったが、二人とは異なってあまりにも不自然な倒れ方である。
まるで何者かに強く押さえつけられたかのように、力を振り絞るも起き上がれずにいた。
私が知る天才三人がどうしてか動きが封じ込まれている中で、私ただ一人だけが動くことを許されている。
どういうことだ。
何が起きているんだ。
「みんな、どうしたんだ!」
キラが動けなくなってから数秒――その数秒の間、窃盗犯が立ち塞がる私達に向かって攻撃を仕掛けないはずがない。
もっとも立っているのは私だけだが。
窃盗犯は逃げる足を止めることなく、走りながら火炎魔法を放った。
迫りくる巨大な火炎を前に、三人はまだ尚起き上がれない。
あの天才達が為す術もなく、こんなあっさりと焼かれようとしているなんて。
私だってまだ追いつけていないのに。
嘘だ。
本当にこんな風に死んでしまうのか?
だって、私の友達はすごいんだぞ。
私が何より知っているだろう。
こんなわけも分からないまま、誰に何されたのかも知らないまま、殺されるのか?
だったら――何で私だけ動けるんだ?
彼らが逃げられずに倒れ伏して、私だけ背中を向けて立ち去れるなんて、どういう采配だ?
キラもコクヤもカルマも――こんな風に終わる奴じゃないだろう。
そうして倒れるカルマに目を遣ると、見たことない必死の形相で声を絞り出していた。
「……に、げ……ろっ……!」
ああ――カルマがいつだか問うてくれたこと。
君を殺すとかなんだとか。
あの答えは結局出ていないままだけれど、少なくとも今は状況が違うもんな。
ただ単純に、君達を殺させないよ。
迫る火炎に我が身を投げ打ち、散る火の粉の一つとて後ろの彼らを焼かさぬように、私は全身で受け止めた。
魔法で防ぐ余裕もなく、体術で懲らしめる暇もなく――卒業を控えた休日に、これほど無意味を叩きつけられたこともない。
こうして、私は日に照らされる吸血鬼の如く、業火に焼かれ灰になりながら生涯を終えた。
何かが私に囁いているような気がした。
神の導きか――はたまた悪魔の誘いか。
だとすれば残念。
遅過ぎる上に、燃える鼓膜にはもう何も届きはしないのだから。
〇
三人を庇った結果、火炎の中でただただ悶えていた。
泣き叫ぼうにも喉は焼かれ声が出ず、誰かに訴えかけようにも目が燃えどこにも行けず、火を払おうにもその腕は既に焦げて崩れてしまった。
痛い。辛い。怖い。
何故、私がこんなに苦しんで死ななければならないのか。
だが、きっとこれで良かったのだろう。
天才の彼らを――友達の彼らを――こんなところで死なせずに済むのだから。
本望だ。
有意義だ。
一片の悔いも無い。
案外これくらいで丁度良かったかもしれないな。
十七年の人生。
数えてみれば短いけれど、生きてみればなかなか長い。
両親も立派だと褒めてくれるかな。
ろくに恩返しできずに終わるけれど、最後に人を助けられたよ。
弟も少しは誇ってくれるかな。
いつも情けない姿ばかり見せてごめんな。
妹は――何も思わないか。
会ったこともないんだし。
ああ、終わりか。
ちょっと、やっぱり。
嫌だなあ。
最後くらい、泣きたくなかったなあ。
〇
「どうすれば良いの?」
コクヤはそう言った。
どうやら三人とも体の異常は収まったらしい。
その頃には、火の中の私は跡形もなく丸焦げになっていて、顔の形もまるで分からない。
火の中でもがいていた私も動かなくなり、あとは火を焚くだけの薪に変わりなくなってしまった。
「水魔法だと蒸気の熱が発生して周辺が危険だ。氷魔法で消火するぞ」
キラは落ち着いて現状を把握して的確に指示を出す。
その落ち着きがコクヤに障った。
「それで救えるの? 今更火を消したって意味ないだろ!」
キラの胸ぐらに掴みかかるコクヤに、キラも彼の胸ぐらを掴み返す。
「だったら、どうするんだ? このまま灰になるまで眺めるのか?」
「本当に救えないのかよっ!」
「救えねえよ! もう死んでるんだよ!」
そう。
もう死んでいた。
刺すような熱の痛みに悶え、息のできない火の中で、とっくに死んでいた。
「何で、何でだよお……」
コクヤの手に胸ぐらを掴む力は無くなり、ただキラの胸に項垂れる。
キラも既にコクヤの胸ぐらから手を放している。
カルマは黙って氷魔法を発動させ、私の遺体ごと氷の中に包み込む。
「何で動けなかったんだろうな。何で、君だけ動けたんだろうな」
私を包む氷を撫でながら、カルマは返事を求めるように話しかけた。
「僕達を救う為に――なんかじゃないよな? だって、君が主人公なんだぜ?」
街の人々は起きた騒動を眺めるばかり。
窃盗犯はどういうわけかその場で腰を抜かして動けずにいる。
やがて警備隊がやって来て、窃盗犯を捕らえて連れて行った。
警備隊の兵士や学校の教官が三人の元へ近寄り、その場で事情聴取を始める。
痛々しい私の遺体を見てすぐに目を逸らし、なるべく視界に入れないように振る舞う兵士に、カルマは少し眉を顰める。
「じゃあ、三人とも何らかの力で動けずにいて、彼だけが動けたと」
事情聴取の問答の中で、キラは押し黙り、コクヤは泣き続け、カルマは滔々と応対していた。
「はい、魔法ではないようでした。もっと大きな……抗えない力というか」
「そうか。あの窃盗犯の仕業とも考え難いな。遺体に何か証拠が残っているかもしれない。監察で調べて――」
と、兵士が話の流れで私に目を遣ると、口を開けたまま言葉を失う。
それを不思議に思ったカルマが続いて私の方を見て、やはり目を見開いて声を漏らした。
「……何で」
氷の中に閉じ込められていた私の体は焼け痕一つ付いていない。
しかし、元通りの体とはとても言えない状態である。
口は鬼。
右目は竜。
左目は狼。
右耳は熊。
左耳は魚の尾。
肌は赤い竜の鱗。
右腕は猪。
左腕は黒い翼。
右脚は人間。
左脚は魚の鰭。
胸には蠅の頭。
頭には山羊の角。
腹には真っ黒な穴。
頬には不可思議な模様。
原型などまるで留めていない私の姿は、もはや私とは言えないのかもしれない。
「おい……遺体の傷を復元して……こんな姿に変えちまったのか?」
戸惑う兵士は怯えた笑みでカルマに訊ねる。
「いえ、していません……何で」
その場の誰もが息を飲んだ。
凄惨な焼死体に過ぎなかった私は、どのみち悍ましい姿に成り果てて氷の中に閉ざされていた。
「……ちょっと待て」
キラも信じられない光景に戸惑いながら、それでも信じがたい事実を伝える。
「氷の中で……動いてないか?」
その言葉に皆が私へ振り返ると、それに呼応するように私の動きが明らかになる。
私を包む氷が小さく揺れ始め、やがて氷に罅が走った。
罅は徐々に大きく広がり、割れ軋む音を街に響かせ――勢いよく砕け散る。
中から出た私はそのまま重力に従い倒れ伏す。
地面に落ちていく私をカルマが受け止めた。
彼の腕の中で徐々に人間の姿へと変わる私は、そのまま眠りに落ちていく。
「……あ……ああ……生きてる」
カルマが零した言葉に、コクヤはさらに泣き喚き、キラはくたびれたようにその場で座り込んだ。
死んだはずの私はいつの間にか蘇っていた。
カルマの魔法のお陰ではない。
それよりも超常の力によって、私は命を取り戻した。
恩恵を授かって。
或いは――呪いをかけられて。
〇
私は夢を見た。正確に言えば、昔の思い出である。
それは私の歳が三つの時のものである。
私はその日、故郷の街で買い物をしていた。
実際に買い物をするのは私ではなく、母の手に連れられて商店街にやって来ただけだが。
八百屋、魚屋、精肉店、干物屋、食事処、駄菓子屋、甘味処、呉服屋、輸入雑貨店。
多様な店が目まぐるしく立ち並ぶその通りを、私は今も強く覚えている。
通りを抜けた先には噴水広場がある。
そこのベンチに母と並んで座り、家から持ってきたお茶と駄菓子屋で買ってもらったアイスクリームを二人で食すのが、毎度買い物の締めくくりだ。
しかし、その日の母は私が差し出したアイスクリームを食べなかった。
「ありがとう。でも、お母さんは大丈夫。全部食べて良いよ」
いつもと同じ笑顔でいつもと違うことを言う母を、私は不思議に思った。
その頃、母のお腹は大きく膨らんでいた。
子ども故によく分からなかった私はダイエット中でアイスクリーム一口さえも我慢しているのかと思っていた。
何のことはない――母は妊娠していたのだ。
これから弟ができることを私はまだ知らない。
妊娠中にアイスクリームを食べてはいけないなんて聞いたことはない。
恐らく単純に食欲が無かったのだろう。
けれど、こんなにも美味しいものを一人で味わうのは寂しかった。
どうしても母に食べてもらいたくて、引っ込めようのない手でアイスクリームを差し出し続ける。
困り果てた母は仕方なくアイスクリームを小さく舐め「ありがとう。美味しい」と、微笑みながら私の頭を撫でた。
そうして満足した私は再びアイスクリームを食べる。
しかし、食べようと舌を出した時、アイスクリームに小さな小蝿が止まっていた。二匹も。
大切なアイスクリームの上に厚かましく居座る蝿二匹が前足を素早く擦っている様を目の当たりにし、思わずアイスクリームごと放り投げてしまう。
宙を舞うアイスクリームがそのまま地面に落ちてくれたのなら良かったのだが、私に限ってそれで済むことはない。
もはや手榴弾と化したアイスクリームは噴水の側にいた女の子のぬいぐるみに直撃した。
大切なぬいぐるみがベトベトにされた女の子はたちまち泣き出し、その子の母親がすぐに駆け寄る。
突然の出来事に私の母も戸惑いながらも、私の手を引いて女の子の元へ向かう。
何よりも先に頭を下げ、ハンカチを取り出してぬいぐるみを拭こうとする。
しかし、女の子の母親は母の手ごとハンカチを払い除け、母に甲高く非難し始める。
聞けば彼女らは街の高地に住む金持ちらしく、たまたま平地へ降りて子どもを遊ばせていたらこの仕打ちだった為、相当ヒステリックに捲し立ててきた。
私はせめてもの言い訳でアイスクリームに蝿が止まっていて驚いたことを話したが、蝿の存在が彼女の怒りに拍車をかける。
後半は怒号というより鳥の喚きみたいな声を上げているだけだった。
母が必死に謝り続けてくれたお陰で何とか罵倒以外の仕打ちは受けずに済んだ。
立ち去っていく金持ち二人を見送り終え、すっかり疲弊した母は私に目線を合わせるように腰を下ろす。
怒られると身を竦めた私だったが、どうしてか――母親はいつもの笑顔で私の頭を撫でた。
「怒られちゃったね。次から気を付けようね」
そんな優しさが私には腑に落ちなくて、堪らずに泣き始める。
「ごめんなさい……」
謝りながら泣き続ける私に困った笑みを浮かべ、母は私を抱き寄せた。
「良いのよ。虫に驚いちゃったんだもの。お母さんだってきっとびっくりするわ」
母に手を引かれながら帰路を辿る最中も涙は一向に止まらない。
母はそんな私を何故だか嬉しそうに見ていた。
それから、私はアイスクリームを食べなくなった。
買ってあげると母が言っても頑なに拒み続けた。
私がアイスクリームを食べなかろうと、何の解決にもならないことは分かっている。
しかし、そうでもしないと納得できなかったのだ。
理由に見当がついているから母も深く心配はしないけれど、私が要らないと断る度に寂しそうに笑っていた。
私の人生において幸運だったのは、関わってきた内の僅か数人だけだろう。
その中に母が居てくれたことが、私は何より嬉しい。
〇
目を覚ますと見慣れた天井が目の前に現れ、安堵を覚える。
寝たまま首だけを動かして傍らを見ると、コクヤが椅子に腰掛けて私を凝視していた。
すぐに私に抱き着き、大量の涙を流す。
起き上がる力もまだ入らないが、それでもなんとか腕を動かしてコクヤの頭を撫でる。
「……心配かけたんだなあ」
他人事のように出てきた言葉に、自分でも驚いた。
死んだ痛みはまだ離れていないのに、同時に夢を見ていたような気分でもある。
コクヤの泣いている間に教官がやって来た為、一連の話を教えてもらった。
どうやら私が寝ている間に事態は大分と大事になっているらしい。
聞くところによると、私がここに運ばれてからコクヤはずっと私の横で看護してくれていたらしい。
その証拠に、お見舞いのフルーツが全て食べられている。
まあ、別に良いけどさ。
「でも、そっちの籠のは食べてないよ! ご両親からだから」
その言葉を聞いて窓側を見ると、まだ手のつけられていないフルーツが置いてあった。
「……そっか。来てたんだ」
「うん、一昨日かな」
「……何か言ってた?」
「『お大事に』って」
そうか。
遠かっただろうな。
少ししんみりしてしまった。
話の続きをしようか。
肝心の私のことについてだが、やはり私は一度死んだようだった。
しかし、それに関しては特別驚かない。
死んだ感覚もあったし。
それよりも、私が驚いたのは『神の恩恵』についてである。
何故か私は死んだことで命が蘇り、同時に『神の恩恵』という能力を授かったらしい。
それが死んで蘇ったから能力を授かったのか――能力を授かったことで蘇ったのかは定かではない。
もっと言えば、焼かれて死んだのは関係あるのか―遺体を凍らされたことは関係あるのかなど、疑問は尽きない。
とにかくただの人間が『神の恩恵』を授かることなど前例が無い為、今回の現象について情報はほとんどないに等しい。
ただ、私が死に――『神の恩恵』を授かって蘇ったことだけは確かだ。
私は結局生きている。
次に話すべきは『神の恩恵』そのものについてであろう。
本来、『神の恩恵』はある四つの者にのみ与えられる、文字通り神からの賜り物である。
その四つの存在こそが、私が生まれたこの『王国』を守りし四方位の守護者達である。
約二万年前――世界の『王国』の名を縦にするこの国は、建国と同時に神から四体の守護者を賜った。
選ばれた守護者達は『王国』を守る為、生まれ持った姿を自在に変える能力を手に入れたのだ。
それこそが『神の恩恵』である。
私が『王国』での生まれということと関係があるのだろうか。
しかし、それなら王家の人間に与えられていた方がまだ納得がいく。
なんだってこんな私に……案外抽選で当たっただけなのかな。
それも運が絡んでいるようで笑えない。
不運な私が当選したなら、一概に有難いものだと喜べないな。
そして、その能力とは、生まれ持った姿を自在に変える――つまり、全ての生き物になれる能力ということである。
自分が思うだけで、獣にでも、魚にでも、虫にでも、竜にでも、何にでもなれるということだ。
その上、この能力は体の一部に適応させることができる為、腕は虎、頭は雀、背中からは蜘蛛の足を生やしたりなんてこともできるという。
教官から話を聞きながら、試しに腕から羽毛を生やしてみる。
すると、見る間に腕が鶏の白い羽毛に包まれた。
「すごい。もう使いこなしているんだね」
コクヤはそう言って感心するが、今私は鷹の翼を想像していた。
多少なりとも練習は必要そうだな。
補足を入れると、全ての生き物とはあくまでも分類の話である。
例えば私がカルマになろうとしても決してなれない。
神がくれた力にもできないことがあるらしい。
そして、さっきから何度も言っている『神』という存在についてだ。
この世には『神』という存在が居る――らしい――どうやら。
最後に人前に姿を現したのが『王国』建国時の二万年前らしく、そこからは伝承でのみ言い伝えられている。
その為、今となっては眉唾な存在として扱われ、世界でも別の『神』を崇める宗教がたくさん存在している。
そのことを本物の『神』はどう思っているのだろうか。
もし居るのなら怒っていてもおかしくなさそうだが。
大体『神』が居るなら、どこに住んでいるのだろう。
この星ではないとすると別の星なのかな。
よく聞くのは月とか太陽だけれど。
まあ、考えたって仕方ないか。
数百年前に『神狩り』なんて呼ばれた男がいたらしいが、それも本当かどうか怪しいし。
と、話をし終えた教官はそそくさと部屋を去っていく。
やはり得体の知れない私からはさっさと離れたいのだろう。
扉が閉まるのを見送り、コクヤは私に訊ねる。
「その頬の模様も『神の恩恵』を授かったから、なのかな」
彼の言葉の意味を最初分かり兼ねた。
何せまだ鏡で自分の顔を見ていない。
「頬の模様?」
「あっ、そっか。ほら」
コクヤはポケットから小さな手鏡を取り出し、鏡面を私に向けて翳す。
手鏡持ち歩いてるんだな。
「…………何だこれ」
鏡を覗くと、確かに左の頬にはっきりとした模様があった。
どんな模様なのかははっきりと言い難い。
目のすぐ下に点が二つあり、二つの点から頬を伝うようにそれぞれ筋が引いている。
なんというか……涙か?
もちろん私は刺青なんか入れた覚えはないし、入れるつもりもない。
擦っても少しも取れる気配はない為、誰かの悪戯書きという万一の可能性もない。
明らかに『神の恩恵』に関わるものには違いないだろうが、どういう意味だ?
こんな模様はどんな文献でも見たことがないけれど。
今は考えても仕方がないか。
私はずっと気になっていたことをコクヤに訊ねる。
「そういえば三人はあの時、どうして動けなくなってしまったんだ?」
単純な好奇心から出た言葉だったが、コクヤの瞳が深く沈む。
それを見て私は慌てて「ああ、いや、責めるつもりは全く無くて!」と、付け加える。
「ううん、良いんだ。僕らのせいで君を辛い目に遭わせてしまったんだから」
しかし、あの時ははっきり言って異常だった。
三人の不備などではない――もっと得体の知れない力が彼らに襲いかかっていたような。
「うん……僕ら一人一人が違う現象に襲われたみたいで」
そのことについては私も見ていて気が付いた。
全員動きは封じられているものの、全く違う攻撃を受けているようだった。
「僕は突然呼吸ができなくなったんだ。息を吸おうとしているのに、なんというか……空気が無くなってしまったようで。キラも呼吸が苦しかったみたいだけど、僕とは違って、視界が霞んで強い痺れや頭痛にも襲われたんだって。カルマは僕らと少し違くて、体が重くなったって言っていた。途轍もない力で押さえつけられたみたい。実際肋が数本折れていたんだって」
「…………」
まさか三人が気付かない内に完封されるなんて、今でも信じられない。
強力な魔法か何かなのか?
「いや、魔法じゃなかったよ。僕ら三人ともあの時キャンセル魔法を使ったんだけど、誰のも効果が無かったんだ。魔力の痕跡もどこにも無かったし」
魔法でもないとなると、さらに不気味だな。
そもそも目的が分からない。
将来有望な三人が『王国』の兵士として戦場投入される前に暗殺を試みたってことなのかな。
上手く行きかけたところを私に邪魔された、とか。
しかし、その予想にコクヤは首を横に振る。
「いや、本当の狙いは君だったんじゃないかな」
――私?
どうしてわざわざ私の命なんかを。
「命じゃなくて、その『神の恩恵』が狙いだったとか。だとしたら、相手は君が『神の恩恵』を授かることを知っていたわけだけど」
ふむ、なるほど。
しかし、そうだとしても、わざわざあんなくどい方法があったのか?
三人を巻き込まなくても、私一人くらいいつでも殺せそうだ。
三人に気付かれずに呼吸をできなくさせられるんなら、最初から私を狙えば良かったのに。
「だから、真犯人はまだ見つかっていないんだ。僕らをなんらかの力で襲ったのはあの窃盗犯ではないことは分かり切っているし」
段々と頭がこんがらがってきた。
話していただけなのに疲れてしまったな。
ベッドに仰向けで倒れ込み、天井を眺める。
仰いだ手を見て、これはもう人間の手ではないのだと改めて考えた。
「……見た目には分からないのにね」
コクヤは怖がらずにいてくれているけれど、普通の人はそうじゃない。
あれだけ生徒にいびり散らしていた教官でさえ、あんな風に顔色を変えて私を怯えるようになってしまった。
私はこの力を正しく抑えられるのだろうか。
そうでなくとも、こんな人間でもなくなった男を誰が接してくれるだろうか。
そんな思考をグルグルと巡らせ続け、やがて一つの結論に辿り着く。
漠然としていて、何の解決にもならない答えだが。
――もうここには居られない。
〇
数日後、旅支度や学校に退学届の提出と諸々の挨拶をし終え、遂に旅立ちの時が訪れる。
昇ってきた曙光に照らされて目が少し眩んだ。
晴れ渡った空に小さな雲がぽつんと一人流れていく。
私と共に旅立つ雲なのだと、寂しさが少し紛れた。
「本当に行ってしまうの」コクヤが涙目で訊ねる。
「ああ。どうせなら一緒に卒業までしたかったけれど」
「僕らは君を怖がったりしないよ。君を怖がる人からだって守ってあげるよ」
「ありがとう。けれど、君達が守るべき人は僕じゃないよ」
そう言うとたちまちコクヤはふええんと声を上げて泣き出す。
まるで本当の少女のようだ。
「良いのか、本当に」キラは眉を顰めて問う。
「まあ、理想じゃないけれど」
「だったら……居れば良いだろ。こんな問題くらいお前なら何とかできるだろう」
「買い被り過ぎだよ。僕は君達ほど聡明じゃないし、賢明でもない――ただ懸命に生きて、ここまで来ただけだ。何にでもなれても、何でもはできないから」
それきりキラは黙ってしまった。
彼なりに私のことを心配してくれたのだろう。
それが分かるから、こんなにも心が痛むのだ。
「故郷には寄らなくて良いのか」
「今更行ける立場でもないさ」
「そうも思わないけれど。まあ、個人の問題か」
カルマはそう言って、笑わなかった。
「……寂しくなるな」
「嬉しいことを言うなよ。名残惜しいだろ」
今度こそいつもの笑顔で「あっそ」と言う。
「また会えるよな」
「また会えるよ」
彼は「そ」と頷き、目を閉じた。
みんな、私を友達と思ってくれている。
それだけのことがただただ嬉しくて、ひたすらに泣きそうだった。
堪えたのは自分でも良くやったと思う。
私はもう一度三人の顔を見た。
涙と鼻水に塗れたコクヤ。
不貞腐れたようなキラ。
笑っているカルマ。
もうしばらくは見れない顔。
もう二度と見れないかもしれない顔。
私は彼らをしっかりと目に焼きつけた。
「それじゃそろそろ行くよ」
私は大きく息を吸い、言う。
「三人には多大なる恩と愛おしい日々を沢山貰えて、それだけで僕の人生は報われていたんだ。本当に、ありがとう」
「元気でね」
「早く行って帰ってこい」
「いつになっても、会えるから」
「二度目の人生も報われるように、私――フィン・アーク・アイオーニオンは、一回りも二回りも大きくなって会いに行きます。だから、どうかそちらも――ご武運を」
友と別れ、前を向き、道を歩み、少し泣く。
この旅の先で、私を待つものとは、果たして――
現時点ではよく分からない物語も、これからさらに成長を遂げていけると思いますので、どうか気長に楽しんで頂けたら幸いです。
次回にご期待下さい。
本作品は、不定期更新となります。次の物語をお待ち下さい。