新たな妖精
クラリスの来客から数日、リリィの日記に新たな項目ができた。
それは妖精の種についての成長記録で…
リリィはその種をお気に入りのピンクの植木鉢で育てていた。
「おはよう種さん。」
「種さん。ほら、いいお天気だよ!」
「種さんはどんな妖精さん?」
リリィはまたまだ芽の出ない種にむかって毎日楽しそうに話しかけていた。
妖精の種の成長に大切なのは水、酸素、太陽、栄養、そして一番は愛情だった。
「はやくでてきて遊ぼうぜ!」
「まったく君は…彼にも彼の速さというものが…」
「あら、彼女かもしれないわよ?」
リリィも妖精たちも種の成長を見守っていた。
そんな日々が続いた
…ある日の朝。
「リ、リリィ!!」
「ん…?みんなどうし…!?」
妖精たちに呼ばれたリリィは驚いた。
「あ…お、お、おは、おはよう!」
ピンクの植木鉢の真ん中にぽっかり空いた穴。
そして土の上にちょこんと座った小さな妖精はぱぁっと恥ずかしそうに微笑んだ。
「お、おはよう!!…は、はじめましてっ!」
「は、はじめ?…まして!」
まだまだ赤ちゃんの妖精。
待ち望んでいたその姿にみんな笑顔になる。
くるんとはねたふわふわの綿菓子のような髪の赤ちゃん妖精。
「君は…なんの妖精なのかなあ…?」
作っておいた服をリリィが着せようとしたとき、
「は…はっ…クチュンっ!」
小さなくしゃみとともにビリリっと小さな稲妻が起こった。
「いまのって…雷!?」
「んー…?」
本人はわかっていないようで。
「ふふっ…大丈夫だよ。んー…じゃあ…
雷はサンダーだったっけ?…でも女の子だから…サン。とかどう?」
「サ…ン…?」
「そう!」
「サン!」
「ふふっ…気に入ってくれたみたい。よろしくね、サン。」
こうして新たな妖精が仲間になった。
だが… リリィ達はまだわかっていなかった。
サン、この小さな妖精の力を。