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I Cry

目が覚めると、見知らぬ天井。

……いや、一度だけ見たことがあるか。

そして、覗き込む顔も……

「……ぁ、気が付きましたか?」

これも又、一緒だった。何処か、安堵したような表情を浮かべている。

曖昧な合図値を打ちつつ、一旦、頭の中で、何をして、何が起こり現状に至ったかを整理する。

……ふむ、ここは取りあえず……

「……先ほどは、すみません。」

体を起こそうと顔をゆがめつつ、謝罪を口にする。

……流石に、やり過ぎた。……自分が元々糞野郎だったにせよ、あれはやり過ぎだ。

「……あの時は少し、気が動転してて……」

「いえいえ!!大丈夫ですよ!!」

滅相もないといった表情で、起こそうとするのを支えてくれている。ありがたい。

上半身を完全に起こすまでの間、彼女の顔を観察しつつ、今更になって顔右半分が包帯か何かで覆われているのに気が付いた。

おそらく、記憶の最後にあった、『アレ』だろう。

背中を深く、壁にもたれかけながら、疑問を口にする。

「……すみません、此処って、一体どこですか?」

もっとも基本的な事だ。……最初は何が何だかわからなくて、聞く事さえ忘れてしまっていた。

「……やっぱり、ドクの言っていた事は本当なんですね……」

すると、目をそらすように彼女は、うつむき気味になり、顔に影を落とした。

顔が髪の毛で隠れていることも相まって、少し、怖い。……それより、

「……ドク?」

おそらく医者か、何かだろうか。

「……はい、ドクっていうのは、貴方の治療を担当した医師です。……そのままですね……。ぇえと、それで……その、やっぱり記憶は……」

やっぱりそうか。……それと……

ソレを言う彼女は、若干気を使っているのか。遠慮がちな上目遣いにこちらを見てくる。

「……はい。全部、吹っ飛んでますよ」

もっとも、限りなくうろ覚えになっているだけだが。

それを聞くと、彼女はショックを受けたように再び目を伏せ、

「……ご愁傷様です……」

と言った。……何故か、俺が悪いことをしたような気に……いや、したか。

「ぃえいえ、大丈夫ですよ。……それより、此処がどこだか……」

「あ!!ハイ、えっとですね、此処は赤の国です!!」

転じて、彼女は顔を上げて、声を上げた。表情は幾分かマシになっている。

よく聞くと、彼女の声は本来、中々活発な物であるだろうと、感じさせるものだった。

……まぁ、今はそれは置いておいて……

「……その、赤の国っていうのが……」

何なのか。それが、解らない。……どこかの国の通称か?

必死に、ぼやけた脳内を検索していると、彼女は少し気を使うように、

「赤の国っていうのは……今、国家として存在している七つの国のうちの一つです」

「……もう少し、詳しく・」

……これは、おそらく常識なのだろう。

……やっぱり、俺の記憶……というか、俺の知識と現実の差が……

「赤の国っていうのは、女尊男卑が基本となった、ほぼ完全な女社会を持つ国です。ちなみに、国土は七国中最大です」

ありすぎる。それは、絶望的なほどに。

男尊女卑社会は聞くが……女尊男卑……アマゾネス?……違うか。

「……その、日本っていうのは……」

彼女の言った言葉を戯言とは思いつつ、一応頭の中にとどめ、質問をする。

すると、彼女は申し訳なさそうに、

「……すみません、眠ってらした間に埋蔵図書館(レザボア・ライブラリ)で調べさせていただきましたが……その、日本という土地?でしょうか。……それらしき名前は何処にも……もしかしたら、不可侵図書(アンタッチャブル)にあるかも……」

うつむきつつ、言った。

「いえいえ、大丈夫ですよ、ありがとうございます……」

おそらく、レザボア・ライブラリってやつは、ライブラリ……つまり、図書館だろう。

……少なくとも、英語と日本語で話が通じてるから、別に訳の解らない場所にいるというわけじゃなさそうだ。……十分に訳が分からない気がするけど。

……というか、

「……自分、どれくらい眠ってました?」

窓の外を見つつ、聞く。日は、もう地平線の向こうに射し入り始めていた。

「ぇえと、大体……五時間……くらいですね。はい」

「……五時間か……」

つまり、頭の治療を含めて6時間程度経っているのか?……それとも、ソレを含めて5時間か。

窓の外の風景を見つつ、思う。

最初窓の外を見たときは、光の射す方向ばかり気にしていたけど……

「……ところでここ、広大な農地か何かですか……?」

振り返り、言う。

周囲の建物が、一切と言っていいほどないのだ。あったとしても、人の住んでいる気配のない掘立小屋。ちなみに、非常に高い位置から見ている気がした。……おそらく、この部屋は地上20数階なのだろう。

……農地と言ってみたものの、整頓された印象は受けない、背の高い雑草が生え広がっている程度の物だった。

そして、異常なことに周囲360度、人っ子一人いなかった。

「いえ、此処は、男性の集団居住地区。涜神城塞です」

「とく……しん?」

聞きなれない言葉に……というか、慣れないとかそういうのは正確には解らないのだが……まぁ、反復するように言った。

「ぇえ、涜神です。神を穢す……といった意味ですね。まぁ、穢すのは神ではなく、女性ですが」

……どうやらここは、相当な男女格差があるようだ……

なるほど、と、相槌を打ちつつ、手を顎にやる。少し、ひげが伸びていた。

「……えぇと……それで、自分はこれからどうすれば……」

伸びた髭の感覚を楽しみつつ、質問する。

「ぁ、えっと、やっぱり、親父(ビッグダディ)からの直接詰問を受けてもらいます」

……やっぱりか。

「ぇっと、その親父(ビッグダディ)っていうのは……その……」

自らの頭を指さしつつ、遠慮がちに言うと、

「はい、そうです……」

遠慮がちに言われてしまった。……やっぱりか。

「……えっと、大丈夫ですか?」

「大丈夫ですよ。多分、はい。」

曖昧にそう返答し、ベッドを軋ませながら降りる。

途中、手を貸そうかと言われたが、遠慮しておいた。

ちなみに、新しいスリッパが置かれており、ありがたいと思いつつ、ソレを履いた。

……そういえば、身に着けていたものはどこに行ったのだろうか。

そんな、今更な事を考えつつ、こちらです、という声に誘われるまま、彼女の後をついていった。

――所持品の喪失よりも、これから起こるであろうお説教と、詰問の方が、自分的には由々しき問題だと気づいたのは、

お仕置き部屋(出張ver)と書かれた札の掛けられた、何処かファンシーな。それでいて、圧倒的な威圧感を放つ、ドアの前にたどり着いた時だった。


矢張り、途中、一切誰とも合わないまま、真っ白い廊下を歩いてきた。窓から見える風景は、すぐそこに迫る、鼠色の、コンクリートの壁だけだった。


「気を付けて、くださいね?……僕たちは、殺すために生かしておいたわけじゃないですから。」


部屋に入る前の、彼女のその一言が、重く、深く。

俺の胃袋に突き刺さってきた。

どうも、遠坂です。

展開が当初予定していたものと少し変わっていたので、

若干無理やりに舵を切りました。

……そのせいで投稿が若干遅れたのですが。

……毎日投稿を目指そう……。

ちなみに、バトルはもうちょっと、後になると思います。

P.S

題名、前回のをI Cry にしておいた方が、よかった気がする……

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