第5話 最後までそれかよ!!
ようやくプロローグが終わりました。
これに懲りず今後とも宜しくお願いします。
「なんとなくつけた?チートだけど、ヒントはないって言ったけどさぁ、少しぐらい教えてくれよ。」
「いや、ランダムで、つけたものだから我々も良く知らないのだよ。」
「……なんで、ランダムで選んだんだ?」
「その方が……」
「面白い!……、か?」
「分かってきたじゃないか。」
渉は、ただため息をつくだけだった。
「ただ、まあ、それとは別に身体能力補正はかけさせてもらうよ。流石にすぐに死んでしまうとつまらないからね。」
「……身体能力補正って…。どのくらいのものなんだ?」
「そうだね……、最強の力が出せるようにするよ、あくまで君と同い年の人間が出せる限界までだけどね。だから、他種族には劣るかもね。まあ、それでも、オリンピック級の速さで走れたりとかプロの空手家の様な強い拳を出せるよ。つまり、岩を拳で砕くとかモンスターを殴って破裂させる様なことは出来ないということだよ。ちなみに剣術とかの技術を得られるかは君の元々の才能次第だ。でも、まあ十分ではないかね?」
「確かに十分だな。でも、小説みたいな、怪力になれないのは少し残念だけどな。言語能力や読字能力や筆記能力はどうなんだ?」
「それをつけないほど、我々も鬼畜ではないよ。あらゆる種族の言語を喋ることが出来、あらゆる文字を読めて、あらゆる文字を書けるようにしよう。」
「あらゆる種族って……。そこまでしなくても良かったんだが……。」
「ん……?いらないのかい?じゃあ……。」
「いや、いる!」
渉は、もらえるのなら遠慮なくもらうことにした。
というか、断ると、何かが起こりそうで怖かったのだ。
「つっ、次の質問だけど、魔力チートはあるのか?」
「無いね。そこは君の潜在能力次第だね。魔力の大きさはもちろん、色々ある属性の中で、どんな属性の魔法を使えるとかも君の才能次第ということだね。もしかしたら、全属性を扱える大魔法使いの卵かもしれないし、ただの凡夫かもしれないし、無能なオチコボレになるかもしれないということだよ。」
「俺は魔法の無い世界で生きてきたから、向こうの世界では魔力0だったりしないのか?」
「いや、使えなかっただけで、どの世界の人間も魔力は秘めているんだよ。大なり小なりね。」
「そうなのか……。ちなみにどんな属性があるのかとかは……?」
「教えるわけ無いだろう……?」
ジョンはいい笑顔でいい切った。
「だよなぁ……。じゃあ、チートは魔力を消費して使うのか?」
「いや、魔力は一切使わないで、いわゆる精神力の様なものを使うのだよ。でも、そこまで負担はかからないよ、チートだからずるくなくてはイケない!」
「いや、別に決まっていないような気がするが……。あー、じゃあ向こうの世界のどこに俺を送るんだ?」
「ひ み つ ♪」
渉はイラっとしたが耐えた。
「他に聞きたいことはあるかい?」
「あー、特にないと思う。」
「そうかい、じゃあ”問い”に移らせてもらうよ。」
「ああ、いいぜ。」
渉は思わず身構えて答える。
「いいかい?、今から聞くことに正直に心に浮かぶままに答えてほしい。その間我々は決して心は読まないと誓おう。」
「?なんで心を読むのをやめるんだ?」
ジョンは神妙に頷き、
「君の答えを聞く前にネタバレはつまらないだろう?」
「そういうことかよ……。」
渉は拍子抜けした。
「では、問い1、”ハーレムについて君はどう思う?”」
「…………もしかして、こういうのが続いていくのか?」
「ああ、その通りだ。」
「……問いに問いで返して悪いけどさ、これは俺がハーレムを作る側ということに対してか?それとも俺以外の誰かがハーレムを作ると言うことに対してか?」
「両方答えてくれるかい?」
「分かった。まず俺はハーレムを作ることに特に忌避感はないな。俺もその子たち全員納得しているならそれでいいと思う。向こうの世界でハーレムがどんな目で見られるか分からないけど、嫌悪の目で見られるならその子たちに嫌な気持ちをなるべく感じさせない様に努力するだけだ。」
「「ほお。」」
「「へえ。」」
神たちは男女ともに、感心したように呟いていた。
「俺以外が、ハーレムを作っていたら、単純にむかつくし、リア充爆発しろ!ってかんじなんだけどさ。」
神たちは皆苦笑に変わった。
「そうか、では、問い2、君は向こうの世界で生きていくうえ、人を殺す機会があるかもしれない。それでなんだが、”君は人を殺せるかい?”」
ジョンは笑みを消して真剣な表樹で問いかけた。
「そこは実際に体験してみないことには断言出来ないんだけどさ。多分大丈夫な気がする。なんとなくだけどさ。」
「……そうかい。問い3、”君は英雄や勇者になりたいかい?”」
「いや、どっちかといったらなりたくない部類だ。」
「問い4、”それは何故だい?”」
「俺さ、もう御伽噺に夢見る年じゃないんだよ。勇者や英雄になると現実的にどういうことなるか、流石に予想ぐらいできるよ。腕に自信があるものは勝負を挑んで来る。そして、常に、相応しい態度でいられることを求められる。その上で国に繋ぎ止めるためにその国の姫と政略結婚をすることになる。断れば逆賊として捕らえられ他の国にも行けなくなる。御伽噺の中のラブロマンスなんてある訳ない。」
「…………そうだね。」
「……、問い5、”魔王になりたいかい?また、その答えの理由を述べてくれ。”」
「なりたくない。理由はいつか滅ぼされる存在にわざわざなるメリットが無い気がするから。」
「問い6、これが最後だ。”君の運命を決めるか考えている我々に言いたいこと運命の希望などあるかね?”」
渉は自分の中にある言葉をゆっくり紡いでいく。
「あー、異世界に勝手に送られることに最初は怒りを覚えたけど、ジョンさんもマリーさんも他の神たちもそこまで悪く見えないから、今はもう怒りは収まってるんだよ。でも、やっぱり俺の運命を勝手に決めたりする、弄ったりするなら今度は怒りどころか、もしかして憎んでしまうかもしれない……。俺はあんた達を憎みたくない。俺は自由に生きたいし、幸せにもなりたい。えーあーつまりー何が言いたいかというとー…………」
……人生……幸せ……異世界……自由……。
渉は必死に考えをまとめて一言に詰めた。
「俺の人生だし、異世界だし、幸せになりたいし、好きにやらせていただきます!!」
「………………………………………。」
……まとめ過ぎて言いたいことがめちゃくちゃになった……
渉は赤面して蹲ってしまった。
「……えっと、意味は分からないけど、伝えたいことは分かったわ。」
マリーが渉に声をかけた。
……やめてくれえ!優しく声をかけないでくれえ!!俺のライフは0よおお!!
渉は顔を上げられない。
「まあ、これで君の運命が決まったわ。」
そうだったと、渉は起き上がる。
なぜかジョンやマリー、他の神たちの大半が満足気な顔をし、一部の神が膝をついて、うな垂れてる。
「どうだいマリー、僕が言った通りだったろう?」
「そうねジョン。でも、予想通りだったわ。」
「えっと、何の話?」
「ああ、すまないね。我々はちょっとした予想を挙げあってたんだ。」
「予想?」
ああ、とジョンは返事をしつつゆっくり人指し指を立て、
「君が安易に勇者になりたいと言ったり、英雄に幻想を抱いてたり、魔王になりたがったら、そういう使命を果たす運命にしようとする一方……。」
今度はマリーがゆっくり人指し指を立て、
「貴方がしっかりと現実を見て、あくまで自由を望むなら、何も背負わせず自由にするということにして貴方が2つのどちらを選ぶか予想をしていたのよ。」
「ただ…………、面白いことに君が英雄譚に憧れて、使命を背負うことになる方に、ほとんど誰も予想しなかったんだ。」
「そっちになると予想したのは、わざわざ、大穴を狙いに行く馬鹿だけよ。そういう馬鹿以外は皆、あなたは自由に生きていくと予想したわ。」
マリーは、膝をついてる神の数人を一瞥し、すぐに興味を失った様に目を渉の方に移した。
「そう、そしてそれは正しかったということだね。おめでとう!君は自由の身だ!」
渉はホッとするとともに一種の確信に近い疑問を1つ抱いた。
「……まさか、予想というのは賭けのことか?」
「まっさか~、そんな訳ないじゃない。」
マリーが上擦った声で否定した。
「……じゃあ、なぜ予想を外したぐらいであんな絶望したような顔をしてるんだ?」
「彼らは君を見誤ったことを心の底から悔いてるのだよ。」
膝をついていた神が立ち上がり無効だ、認めないと騒ぎだした。
「……なんか言ってるけど……。」
「彼は悔やみすぎてあんなおかしな言動をする様になってしまったんだ。本当に痛ましいことだ。……少し静かにしてもらおう。」
ジョンが指をパチンと鳴らしたら、騒いでいた神の口が何かに縫われた様に開かなくなった。
渉は黙ってそれをただ眺め口を開いた。
「まあ、どうでもいいか、で?いよいよ異世界か?」
「その通り!君の新しい人生が今始まるのだよ。」
ジョンが指を鳴らせば、白い2mぐらいの扉が出現した。
そしてその扉は、ゆっくり渉の方に近づいてきた。
「おお!?」
渉はそのことに驚いた。
そして我に帰った渉に、神たちがそれぞれ一言声をかける。
「まあ、適当に頑張れ。」「観察してるから。」「目指せ!異世界でリア充!」「ハーレムは男の夢だ。」「がんばれ!!」「強く…生きろよ。」
マリーは心配そうな顔で、
「気をつけてね。ちゃんと、見守ってるからね。がんばって!」
ジョンは演説でもするように、両腕を広げ、
「さぁ、行ってきたまえ!君はこの先死ぬまで本当に自由にいきるといい!幸せになるといい!」
「…………ああ!!行ってくる!、そして、幸せになってみせるよ!!」
渉の行こうとする背中にジョンが声をかける。
「……渉…いや、ワタル……。」
「なんだよ?」
「どうか……どうか……。」
「………………。」
ワタルはジョンが自分に何か励ましの言葉を送ってくれるものだ、と思い言葉を待つ。
そしてジョンは最後の言葉を言い切った。
満面の笑みで。
「……どうか……………我々を楽しませてくれ!!!!」
「……最後までそれかよ!!!」
この言葉を最後にワタルは異世界に送られた。
長文を挑戦しようとする日々です。
次回、くそチート2つと謎チートが明らかに……
入れられるか分かりませんが、何か変わったモンスターとの出会いもあるかも……。