『ありがとう』を突き詰める
初めまして。白雨と申します。
ある日突然、「身近にある言葉ってあたりまえのように使っているけれど、結局意味は理解できても、その言葉が出来た経緯や大元はわかってないよな」と思い、作品を書かせていただきました。
前提といたしまして、私は国語教師でも言語学者でもないため、まったくの素人知識と調べものによって得た知識で作品を書かせていただくことをご了承ください。
『ありがとう』とは、「感謝」という意味がぱっと思いつく言葉だと思います。私たちは何かをしてもらったときに、必ず「御礼」として『ありがとう』を日頃口にしていることでしょう。
しかしある日突然頭の中に、ぽつん。と、疑念がよじよじ登ってきたのです。
「どうして、『ありがとう』が”感謝”を意味するのだろう」と。
そこで日本語が浅い若者は考えました。「ならば徹底的に調べて書いてみようじゃあないですか。」
というわけで、全くの素人が調査をしまくったことをつらつらと書いていこうと思います。
「ありがとう」という言葉は、元々「有り難し(ありがたし)」という古語に由来します。
「ありがとう」と、「ありがたし」。二つの言葉はよく似ていますね!
実際、「ありがとう」は漢字では「有難う」と書きます。ですがよく考えてみれば、「有」はともかく、「難」は、”困難”や”苦難”といった、少しバッド…所謂”苦い意味”で使われることが多い漢字です。「ありがとう」は”感謝”を意味する、心地よい言葉のはず。そんな言葉にこういった漢字が入っているのは、少し不思議ですよね。
さて。そんな「ありがとう」の元となった「有り難し」ですが…その言葉は、元々は「珍しい」「めったにない」という意味だったそうです。
「有り難し」は、「有る」ことが「難しい」という意味で、”珍しい”こと、”貴重”なこと、”滅多にないこと”を表す言葉でした。
身近にあるもので例えてみましょう。例えば、私たちが常日頃主食としている「お米」。これは自宅のキッチンに行けば、簡単に見つかりますね。「身近に有る」ものです。
ですが、そのお米の粒が入っている「稲」はどうでしょう。お米は身近にあっても、稲となるとなかなかそこには「無い」ものです。近所のスーパーにも、稲がそのまま売ってるなんてことは『珍しい』のではないでしょうか。少し変な言い方になりますが、「身近に有ることが難しい」ですよね。
「有る」ことが「難しい」。確かにこの言葉は決して悪い意味ではないことが解ります。
ですが、このままでは『ありがとう』=「珍しい」「めったにない」という意味になってしまいます。「感謝」とは、ちょっとかけ離れているような気がしますね。
さて。少し寄り道をしましょう。
『ありがとう』は「有り難し」という古語に由来しますが、実はその「意味」というものは、「仏教」に由来します。「言葉」の由来は「古語」から。”深い意味”については「仏教」からと、”二つの由来”が存在したわけですね。
仏教の教えに、「盲亀浮木のたとえ」というものがあります。
「|盲亀浮木のたとえ」とは、仏教の”たとえ話”に出てくる言葉です。目の見えない亀が100年に一度海面に浮かび上がり、海に漂う木の穴に頭を入れるという、非常に稀な出来事を例えたもの。”盲目”の”亀”が、”浮かび”、”木の穴に頭を入れる”と書いて、”盲亀浮木”。
100年に一度海面に浮かび上がる…これだけでも、ものすごく珍しいことです。
この言葉の意味としては、「出会うことが難しいこと」、そして、「めったにないこと」を指します。
…おや?
「有り難し」と、同じ意味を持っているようです。
さてさて…『ありがとう』は、「自分以外の何者かへ伝える言葉」ですね。
仏教では、他者からの好意や援助は、当たり前のことではなく「稀で貴重なものとして受け止める」べきだと教えられます。つまるところ…
「感謝」ですね。
私たちが知る『ありがとう』の意味に、繋がりが見えてきました。
”稀で貴重なものとして受け止める”。この考え方が、「有り難し」を感謝の言葉として定着させる上で重要な役割を果たしました。
「有り難し」とは、「そこにあることが難しい」ことで、”珍しい”こと、”貴重”なこと、”滅多にないこと”。そしてそれは、”稀で貴重なものとして受け止める”べきであるということ。
「滅多にないことには感謝をする」。
これが、「”有り難し”」という「”珍しいこと”を意味する言葉」を『”ありがとう”』という「”感謝”を意味する言葉」になった全てです。
『ありがとう』という言葉には、私たちが思っている以上の強い意味が込められています。もちろんその大きさに差異はあることでしょう。
ですがどんなに小さなことでも、『ありがとう』を口にするとき、それが「貴重でめずらしいこと」であることなのではないかと、ふと考えてみるのもよいのではないでしょうか。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
白雨です。ここまでご読了いただきありがとうございました。
私たちが日頃あたりまえのように使う、『ありがとう』というこの言葉。言葉一つには様々な意味が込められていますが、その本質は時が経つにつれて忘れ去られていくもの。調べてみて、とても面白いと感じました。
小説というにはあまりにも作文のようなものですが、ちょっとでも楽しんでいただけたのなら幸いです。
このような小さな小説を見つけ、手に取り読んでいただけるというのは、とても貴重なこと。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
白雨