ブラウニーのブラウニー4
【主な登場人物】
アリシア・テメラリオ / テリエルギア統一王国の王女。〜ですわで話す。探訪記の書き手。金髪。前世は伝説的ハンター。前々世は現世人。
オルカ・ストリエラ / 王国付き魔法使い見習い兼付き人。「……」をつけて話す。黒髪黒ドレス服。戦闘狂。
ツキノ / 統一王国外のトコヨの国の姫。「ですねぇ」みたいな感じで話す。銀色の髪。
ブラウニー / 家事妖精。基本的には幼い少女の姿で現れると言う。家主が家事できるようになると、他の家を求める。料理・洗濯・掃除……家事仕事を生きがいとする。
温もりと美味しさを堪能したわたくしたち。
「……おいとまさせていただきます」
「素晴らしい体験でした。またすぐ来てしまいそうです」
ツキノとオルカも前回の……カーレとは異なる幸福な感情に包まれているようでした。
「ノア、ありがとう。あなたのおかげでおばあちゃんは嬉しそうですわ」
「わたしこそ、お礼をしなくちゃ。やっとわたしにも帰る場所が出来た」
「……うっ……」
オルカが後ろを向きます。
確かに今のセリフは来ましたわ。
もう少しノアの人生を知っていたら、違う話になるレベルで感動していました。
危ないところでした。
「そうだ。待ってなさい」
そういって、バチャおばあちゃんは部屋の奥の物置に向かいました。
「なんですの? おばあちゃん」
「よいしょ」
「……すんごいトゲトゲの大剣が出てきた!」
奥から戻ってきたおばあちゃんは……腰も曲がってきていますのに……巨大な大剣を背負って現れました。
「……おばあちゃんとのギャップがすごい!」
わたくしはその大剣に見覚えがありました。
「これは……覇王剣バルディエル・ソルガですわ」
「よく知ってるねぇ。これはおばあちゃんが昔使ってたんだよ」
「……覇王剣バルディエル・ソルガ……」
「これをお礼にあげようねぇ」
「嬉しいですわ! わたくしも、これで狩りができますの!」
覇龍と呼ばれる太古の龍を倒し、その素材を使って作られた純粋なるドラゴン・ウェポン。
それが覇王剣バルディエル・ソルガですわ。
龍の爪、龍の甲殻、龍の角……覇龍の素材を惜しみなく使っており、それそのものが覇龍と変わらないとされる……伝説の武器なのです。
確かに、昔のバチャさんはこれを使って幾多のモンスターを倒したと聞きました。
そして「トゲトゲが肩に刺さる」という理由で使うのをやめたと言っていましたわ。
「素晴らしい。手に馴染みますわ〜!」
覇王の剣は使うものを選ぶ……。
と聞きましたが、わたくしの手にはとても馴染みが良かったですわ。
「外で振ってもよろしくて?」
「もちろんだよ」
わたくしは集中し、下から上に覇王剣を振り上げました。
「牙風剣!」
初歩中の初歩、基本の剣技を放ちます。
すると、地面に3筋の爪痕のような斬撃が走り、3方向にあった3つの大木を薙ぎ倒しました。
きっと後でたきぎとして使ってもらえるでしょう。
「……!!!」
オルカはわたくしの剣技を目にして目を見開きましたわ。
「蒼き衣を纏いて、金色の龍と相対すべし」
「どうしたの? おばあちゃん?」
「言い伝えは真かもしれないねぇ……」
おばあちゃんの呟きが聞こえましたが、聞こえなかったことにします。
わたくしは覇王剣バルディエル・ソルガを巨大な鞘にしまい、肩がけバッグ状態で背中に背負いました。
そして歩き出し、手を振ります。
「ありがとうございますわ! おばあちゃん! ノア! ブラウニーたちー!」
「良い笑顔だね」
手を振ったノアとバチャおばあちゃん、ブラウニーたちを見て、ブラウニーのブラウニーの復興を願います。
忘れられないあの味……。
また来たいものですわ。
──日誌後記──
あとで聞いたことですが、この後開かれたブラウニーのブラウニー屋さんは、城下までその名声が響くほどだったのですわ。
そのおかげで村は人が増え、ブラウニーのブラウニー屋さんは家事の暇もないほど忙しいようすでしたの。
せっかくなので、また訪れさせていただきました。
その際、わたくしは会えませんでしたが、ノアはキッチンで一心不乱にブラウニーを作っていたそう。
家事もほったらかしで、ブラウニーたちも忙しすぎるぐらい……とおばあちゃんは言っていましたわ。
ブラウニーのブラウニー……ゲテモノ料理、ではないですけれど、これもわたくしたちが旅をするようになって出会えることができたものなのです。
やはり、わたくしはもっと広い世界を知りたいと、このとき改めて思いましたの。




