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ゴーレムを食べよう9

【主な登場人物】

アリシア・テメラリオ / テリエルギア統一王国の王女。〜ですわで話す。探訪記の書き手。金髪。前世は伝説的ハンター。前々世は現世人。


オルカ・ストリエラ / 王国付き魔法使い見習い兼付き人。「……」をつけて話す。黒髪黒ドレス服。戦闘狂。


ツキノ / 統一王国外のトコヨの国の姫。「ですねぇ」みたいな感じで話す。銀色の髪。


ロロロ / カーレ地方ナビア族。青い肌で海棲生物に似た頭。ギシキの先導者。背が高い。


「では、ココココのフルコースをおおくりしましょう」


 数分後。地面に座ったわたくしたちに、ロロロがアリの料理を運んできました。


「これは?」


「アリのタマゴ。たまねぎとアオトウガラシといっしょにバターとニンニクでいためた」


「アリの卵といえば、高級食材ですね」


「そう、ほんとはブゾクではあんまりたべられない」


 前前世の記憶が正しければ、確か南アメリカ大陸ではアリの卵はキャビアと並ぶ高級食材であったはずです。


「いただきますわ〜」


 わたくしは一気にほおばりました。


「高級食材というから、ややテンションが下がりましたが、これは……」


 みんな昆虫食にも慣れて来て、躊躇せずに食べていました。


 お腹が減っていたということもあるでしょうが……。


「……おおー。プチプチ言ってます」


「ゴールデンヘラクレスの幼虫もそうでしたが、濃厚なバターのようなお味ですわ!」


「ニンニクと青唐辛子が効いてますね。ご飯もいけちゃいます」


「……私はまだそこまで行ってないな……」


 ツキノとは異なり、オルカは流石にご飯をモリモリ食べるというところまでは行ってないようでした。


「……でもこの旅で虫を食べることの抵抗感は無くなりました」


 どこか遠い目をして、続けます。


「……良いのか悪いのかわからないけど……これで飢餓の中の戦場でも生きていけます」


「アリの卵が美味しい、というよりもこのクリームアリだからなのですの!」


「アリのたまごはぜんぶおいしい」


「まぁ、この世にまずい卵なんて存在しませんねぇ」


「……そうなのか?」


 気付くと、全員がアリの卵を完食しておりました。


「つづいて、こちら」


「……出たー!」


「衝撃的な見た目ですねぇ」


「わたくし先ほど生きたものを食べたので、こんなの美味しそうにしか見えませんわ」


 出てきたのはクリームアリと豆の炒めもので、大量のアリが大きな葉っぱの上に乗っていましたの。


「……豆にアリが群がってるように見える……

「あら、でも意外と甘いですね」


「本当ですわ! 生(生体)の時は少し酸っぱかったですけれど!」


「蟻酸が豆のアルカリで中和されたのでしょうか? 塩味もありますね」


 慣れたとはいえ、このビジュアル……。


 オルカは料理を前にして、ひとつ呼吸をします。


「……ごくり」


 つまんで口の中に放り込むと、そこに広がるのは意外な濃厚な甘みと塩味……。


「……おっ、食べられる……」


「どうですの……?」


「……食感は……よくはないけど……」


 オルカは口にアリの足をつけたまま微笑みました。


「……美味しい。甘塩っぱいです」


「オルカがみつけたものですので、たくさん食べてくださいな」


「……このフルコースはかなり美味しいですね。確かに宮廷料理では味わえません」


「慣れてくるとこの食感もいいですわ」


「この食感でこの味は、この料理でしか食べられませんねぇ」


「よかったよかった。じゃ、さいごのシレン、いくよ」


 食べ終えたころにはもう夕暮れでしたの。


 完徹で意識が飛んでいるとはいえ、何時間アリをとっていたのでしょう……恐ろしい話ですわ。



「さいごのシレンはムヴァンガつりです」


「ムヴァンガってあの……おっしゃっていた歯がある大きな魚ですの?」


「そう」


「……勇者が素手で捕まえたっていう?」


「そう」


「この竿でつるんですか?」


「そう」


 全員が「…………」となってしまい、空気を逆に読んだロロロが話を続けました。


「えー、ではルールをせつめいします」


「……いやいやいや!」


「絶対折れますのよ! この竿!」


 勇者は素手で捕まえたかもしれませんが、わたくしたちは勇者じゃありません。


 肉食の巨大魚に対して、手製の竿では到底無理です。


「これはでんとうてきなヴァラクシのエダ。マックスでしなってもだいじょうぶ」


「餌は?」


「このカエルをつかいます」


 出してきたのは巨大なカエル。


 こんなデカいカエルを食べる魚を……?


「わたしがカエルをがんばってさがす。あなたたちはつる」


「歯が生えてる大きな魚をー?」


「そう。ちゅういてんはしぬかのうせいがあること」


「……死ぬ可能性……」


「くわれたら、しぬ」


 絶句している面々にやはり木製の釣り道具を渡すロロロ。


「このりーるをつけてください」


 さらに、黒染の布のようなものも渡してきました。


 わたくしは焦りました。


「あとこのめかくしをつけてください」


「目隠し!?」


「そう」


「ブラインドフィッシングですねぇ」とツキノはのんびりと言います。


「なぜこんなことをしますの!?」


「でんとうだから……」


「……つよいなー。伝統」


 わたくしたちは渋々言われた通りにやります。


 もはやここまで来て違う道は残っておりませんから。


「こんなのつけなくても、もう夜だから見えませんのよ!」


 辺りはすっかり暗くなっております。


「それではどうぞ!」


「は? 釣り場までどうやって行くんですのー!?」


「きあい」


「見えないのですけれどー!」


「こころのめでみて」


「……これはやおら最終シレンっぽくなってきたなぁ」とオルカ。

「大丈夫です。落ちたら拙たちが餌になるだけですよ」とツキノ。


「それがヤバいのですわ!」とわたくし。


「……私はなんとかいけそうな気がします」


「わたくしもですわ」


「拙はここにいます」


「ちなみにつれたのにきづかないと、そのままひきこまれるよ」


「ひえっ……」


 あとで聞いた話ですが、勇者もまた修行のために目隠しをしてムヴァンガを素手で獲ったらしいのです。


 なんてことをしてくれたのですかナビアの勇者。


 そして1時間が経ちましたわ。


「全然釣れませんわね」


「でも気合い入れないと引き込まれますよ」


「嫌な修行ですわー」


 3時間後……。


「ツキノから物音がしなくなりましたわ」


「……死んでるんじゃないの?」


「すやぴ」


「すやぴって聞こえましたわ!」


 そこでピキーンと何かに気付いた様子のオルカ。


「……違う! これは老ストリエラ……お爺ちゃんから聞いた……寝釣り!」


「おーっと、さいしょにねづりのタイセイについたのはツキノだー」


「……自然と一体になり、意識を極限まで減らすことで、魚の警戒心を薄れさせる技、寝釣り」


 すると何故か突然、オルカが実況サイドにまわりはじめたのです。


「……深夜での体力消費を最小限に抑え、かつ、釣りの成功率を上げることが出来る……非常に攻撃的なスタイルです」


「ここでオルカもねづりのタイセイだー」


「やってられませんわ……」


「ぜんいんがねづりのタイセイにはいった! もうナビアのメをもってしても、うごいているものはみえないぞ」


 そこで声を上げたのはツキノです。


「来ました来ました来ました」



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