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ゴーレムを食べよう4

【主な登場人物】

アリシア・テメラリオ / テリエルギア統一王国の王女。〜ですわで話す。探訪記の書き手。金髪。前世は伝説的ハンター。前々世は現世人。


オルカ・ストリエラ / 王国付き魔法使い見習い兼付き人。「……」をつけて話す。黒髪黒ドレス服。戦闘狂。


ツキノ / 統一王国外のトコヨの国の姫。「ですねぇ」みたいな感じで話す。銀色の髪。


ロロロ / カーレ地方ナビア族。青い肌で海棲生物に似た頭。ギシキの先導者。背が高い。


 わたくしたちはジャングルを歩いて、橋のようになったアーチ状の場所の上に来ましたわ。


 太い岩にヒモが巻かれています。


 かなり長く、しっかりしたヒモでした。


「どうみてもバンジージャンプですねぇ」


 ツキノの言葉通り、バンジージャンプに見えました。


「バンジージャンプの起源はカーレのナンナ族のギシキであるナガールですわ。きっとこのナビア族のギシキも原型のひとつですのね」


「はい。じゃ、みんなみえるかな。あのまんなか」


 ロロロの言葉にしたがって見ると、川の岩場の真ん中に生き物らしきものが見えます。


「ふわぁなんでしょう! あの、4つ足の、羽が生えた……鳥?」


「……鳥なのかな?」


 疑問をもつオルカ。


 最もですわ。


 だって鳥には脚が4本ありませんもの。


「あれはさむしんぐ」


「……かわいい」


「おいしそ〜ですわ〜」


「…………」


 わたくしの言葉にオルカは呆れた視線を返します。


「あれ? 食べるのですよねぇ」とツキノ。


「たべる。おいしい」


「……すごい震えてるけど」


「さむしんぐはえんけいのものにかこまれると、うごけなくなる」


「円形の……確かに岩の土台は丸いですわね」


 さむしんぐ? は岩の上で震えてうごけなくなっています。


 どうやらあそこには餌が撒かれており、それでおびき寄せられたようですわ。


「あのばんじーでとんで、さむしんぐをつかんだらポイント」


 なるほど! あのバンジーでとんで、さむしんぐをつかんだらポイントなのですわ!


「じゃ、ぜんえいしほうけんコンディアルス・ウタヌスでしょうぶして」


「禪影四宝拳コンディアルス・ウタヌス? なんですの? それは?」


「……デスゲームのはじまり?」


「じゃんけんして」


「じゃんけんでしたか。必殺技の名前かと思いました」


「いきますわよ……ジャンケン! ポン!」


「……あ、勝った」


「ではオルカ! お先にどうぞ!」


「……お嬢様、良いのですか?」


「もちろんですわ! どうぞ」


「……これ、切れませんよね」


「だいじょうぶ」


「……これ、切れませんよね??」


 足と体にヒモをくくりつけられながら、オルカは聞いた。


「きれるかもしれないけど、まぁ、なんとかなるでしょ」


「……なんとかはまぁ……なるけど……」


「じゅんびはいいかな。はーい、3、2、1でいくよ。3、2、1」


 背中を押されたオルカが落下していきました。


「……ちょっ! 風が!」


 しかし、突風が吹いて身体は大きく逸れて……。


「…………」


 無言で落下していくオルカ。


 しかし行き先はさむしんぐではなく、川でしたわ。


「……あ……」


「「あ……」」


 オルカを含め全員が声を出す瞬間が同時になりましたの。


 そして勢いよく、オルカは川に前面を叩きつけられました。


 生きては……いるようでした。


 巻き上げられているオルカはかわいそうでしたが、ちょっと面白かったですの。


「オルカ……ビショビショで……干されてる洗濯物みたいですわ……」


 なんとか笑いを抑えて、オルカを迎えます。


「……寒いですが、暑いです」


「矛盾ですね」


「だっ大丈夫! 乾きますわよ! プププ」


 思わず、笑いがこみ上げてしまいましたが、オルカはもう全てを諦めた達観した目をしておりましたわ。


「次は拙になりました」


「……お嬢様ジャンケン弱いなー」


 違うのですわ。


 この敗北は布石なのです。


「いくよ。3、2、1」


 風も弱まり、良い状態です。


 ツキノはまっすぐにさむしんぐへと向かうと、ピタッと制動し、


「はい。つかみました」


 と言いました。


 しかし、巻きあげられた途中で、ロロロは言いましたわ。


「あっ。やばい。いいわすれたけど、つかんでもちあげてもってきて」


「なんと……」


 すでにツキノはほとんど戻ってきていました。


 ロロロ言うの遅いですわ……。


「わーははは! こんなこともあろうですわ! こういうのは1番最後が最高なのですわ」


 よくわかりませんけど、前2人の失敗から学び……わたくしは風を読み、しっかりつかみ上げることを頭に刻みましたわ。


「じゃー、3、2、1でいくよ」


「やりますわ」


 覚悟を決めて、ストレッチをいたします。


「3」


 その時、わたくしの背中は押され、覚悟半分の状態で落下!


「のわっ!」


 見守っていたオルカは何か因果応報を感じたそうです。


「そういうのはやっちゃだめですわー!」


 わたくしが落下していく様をみて、ツキノは言いました。


「よいこは真似しちゃだめですねぇ」


「……よいこはバンジージャンプなんてやらせないよ」


 しかし、わたくしは見事、やってのけたです!


「やりましたわー!」


「アリシア、20ポインツ!」


「じゃ、ちょうりしよう」


「……食べれるんだコレも」


 さむしんぐはぐったりして冷たくなっています。


 おそらく恐怖のあまり、絶命してしまったのでしょう。


「たしか、ツキノはりょうりにんだったよね」


「拙はトコヨで料理を学んでいますね」


「すごいですわ! 是非ご披露頂きたいですわ」


「いえ、そんな大した物ではぁ……。拙の国では皆身につけているものです」


 そう言うと恥ずかしそうにお辞儀をするツキノ。


 整った仕草はやはり、姫たる素養の高さを感じましたわ。


「きょうりょくしてつくろう。まずは毛を剃っていく」


「はい」


 ツキノは言うやいなやカタナを抜き、回転します。


 すると桜のような魔力が舞い、さむしんぐを隠してしまいました。


 シャキン、ズバッ、バシューという音が響きます。


「すごい! 魔法少女の変身シーン的な感じでシャキンシャキンってなりましたわ〜!」


「……すごい。グロいところが桜の花吹雪で隠れた」


「たべものにたいしてグロいとかいわない。しんせいなたべものだよ」


「……ごめんなさい」


「どうでしょうか。一生懸命やりました」


 見ると、一瞬のうちに、さむしんぐは良くある……鳥の首を落とした状態になっておりました。


 足はもちろん4つありますけれど。


「かんぺき。そして、あじつけ。さむしんぐにくのなかにスパイスとこうそうをいれる」


「……さむしんぐにく……」


「香草ですの? 珍しいですわね」


「ハーブ。これはこのあたりのシカ……マブーカのツノ。はっぱがはえてるよ」


「……マブーカ……村に来る前にみた生き物ですね」


 青い身体に気を取られてしまいましたが、どうやらツノに葉が生えているようです。


 しかもそれが、ハーブであると。


 不思議な生き物ですわ。


「スパイスはなんなのでしょう」


「スパイスはジャイアントフェンネルっていうきからとれる」


 ジャイアントフェンネルという木は聞いたことがありませんが、おそらくジャングルを歩いてきた中にあった巨大な木でしょう。


「そのあとでおにぎりをいれる」


「!?」


 臓器をとった鳥の身におにぎりを入れていくロロロ。


 これは……すごい伝統料理ですわ!


「やきます」


 そして数分後、良い感じの匂いが漂ってきました。


 完成のようですわ。


「おにぎりのさむしんぐづつみ!」


「……メインがおにぎりなんだ」


「鳥の丸焼きの中におにぎりが入ってるというのは珍しいですが、意外といけますのね!」


「なんの意味があるのかと思いましたけど、さむしんぐのエキスみたいなものがオニギリに染み出してますねぇ」


 ツキノの言う通り、肉に包まれたおにぎりが良い味を出しています。


「……すこしカモに似てます。さむしんぐってなんだよって思いましたが、結局鳥のお肉って焼いたら美味しくなります」


 オルカからも好評でした。


「ツルなんかはトコヨで薬として珍重されていますよぉ」


「……こういうモンスターじゃないギリギリの生き物は気になります。マブーカもどんな味がするんだろう」


「これはゲテモノとは言えませんけど、部族の料理ですから珍しいですわねー!」


「ぜんぜん。まだまだこれから」


 ロロロはチッチッと1本指を立てて左右に振ります。


そして前方を指さしました。


「つぎはゴールデンヘラクレス!」


「……カ、カブトムシ……」


「の、ようちゅうをさがして」



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