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ゴーレムを食べよう2

【主な登場人物】

アリシア・テメラリオ / テリエルギア統一王国の王女。〜ですわで話す。探訪記の書き手。金髪。


オルカ・ストリエラ / 王国付き魔法使い見習い兼付き人。「……」をつけて話す。黒髪黒ドレス服。


ツキノ / 統一王国外のトコヨの国の姫。「ですねぇ」みたいな感じで話す。銀色の髪。


 ドンゴラから歩いてジャングル……といってもまだ森のレベルの場所を歩きます。


 ナビア部族の周辺の森はより、見たことのない生き物たちが多いですわ。


 半透明の皮膚を持つ青いシカのような生き物……マブーカでしたか。


 マブーカはこの辺りでは一般的なようで、よく見ることが出来ました。


「……この辺りの生き物は不思議ですね」


「ええ。この辺りは昔海だったそうですわ」


「……通りで。水棲生物がそのまま陸に上がったみたいです」


「美味しそうですわね〜」


「……やっぱり……」


 話をしていると村の入り口のような場所に来ました。


 丈の長い草のアーチがあります。


「あ、ここでしょうか。ん?」


 その時、首筋に冷たい感覚がありました。


「なにものだ」


 人の声が聞こえます。


 わたくしは動きを止めましたが、横目で見るとオルカはすでに戦闘態勢に入り、魔力を全身にめぐらせています。


「……殺るか」


「だめですわよ! あのですね。わたくしたち、ナビア族の集落を探してきたのですわ」


「なんのため」


「……ナビア族のギシキを受けるためですわ! わたくしたちゴーレムを食べに来たんですわ!」


「なるほど」


 それから少しして、冷たい感覚はなくなりました。


「わたしたちはたびびとをかんげいするよ」


 見ると……やはりカーレの民らしい、青い肌の女性が立っておりました。


 簡素な服装を着て、肌の露出があります。


 頭にはドレッドのような触手があり、美しい顔に映えていました。


「ありがとうございますわ」


「……戦闘じゃないのか」


 オルカはがっかりした様子で手を下ろしました。


「やはり友好的な部族なのですわね」


 わたくしの言葉に、女性はにっこり微笑みました。


「ギシキはだれにでも、うけるけんりがある。でも、くりあできるかどうかはそのひとしだい」


 ギシキはかなり難しい様子です。


 彼女は少しだけ考えてから、口を開きましたわ。


「しぬかも。それでもいい?」


 わたくしは即答しました。


「はい! やりますわ」


「……話聞いてたかな??」


 呆れた様子で嘆息を吐くオルカ。


「……守れるかなぁ」


 だだだ大丈夫ですわ!


「大丈夫ですわ。なんとなく大丈夫ですわ!」


「じゃ、ついてきてね」


 ナビア族の女性についていきます。


 彼女はとても背が高く、高い草むらでも見失わないので助かりましたわ。


 とはいえ、アーチを越えて少し歩けば、そこはナビアの村だったのです。

 


 ナビアの村は泉に作られた美しい場所で、人の活動があるところは草が生えず砂地が見えていましたわ。


 ここでちょっとまってて、というナビア族の女性の言葉に従い、わたくしたちは他の方々……7割はナビア族の若者……と待っておりました。


 すると、やはり参加者の女性でしょうか。


 銀色の髪の方が話しかけてくださいました。


「あらぁ。あなたたちも、部族の方以外での参加者さんですか」


 わたくしは笑顔で自己紹介をします。


「ええ。ごきげんよう。わたくしはアリシアと申します」


「……私はオルカ、魔法使いです」


「拙はツキノと申します。あなたたちもゲテモノ……裏料理を求めてきたんですかぁ?」


「なんと……奇遇ですわね! そうです」


「……変人が他にもいた」


「ふふふ、褒められてしまいました」


「……褒めてない」


 ツキノは銀色の髪に白と紫のキモノに似た服装ですが、どこか気品がただよいます。


 どこかのんびりとしたツキノに、わたくしは聞きました。


「まさか、ツキノさんも情報屋を通して?」


「ええ。あ、拙はツキノで良いですよぉ」


 そう言われ、わたくしは言い直しました。


「ツキノはアンダーグラウンドマスターさんからの紹介ですの?」


「そうです。まぁ拙の場合は自分の国の情報屋からカルミールさんに通されたのですけど」


「あら! ツキノはどちらからいらっしゃったの?」


「拙は東国のトコヨという国から参りました」


「なんと! それはすごいですわね。私も行ってみたいですわ〜」


「……トコヨは遠いですので、転移魔法一回ではいけないですね。ん……?」


 そこでオルカはあることに気づきましたわ。


「……トコヨの姫……はツキノという名前だったはずですが……」


「あらぁ、まさかこの国にご存知の方がいらっしゃるとは」


 ツキノは極東の島国トコヨの姫だということでしたの。


 わたくしは親近感を感じてしまいました。


「なんと! ツキノ、実はね……」


 少し声をひそめて彼女に伝えます。


「私も統一王国国王の娘なのですわ」


「あらぁ! 奇遇ですね。素晴らしい!」


「……付き人も連れずに他国に……?」


「大丈夫です。トコヨは小さな国ですが」


 よく見ると彼女は片手の剣を2本も腰にさしておりました。


 それを触りながらにっこり微笑みます。


「武術は世界一だと思っておりますので」


「……確かに、今まで会った中で1番のオーラかも」


 オルカのこの言葉は珍しいですの。


 それほどまでとは……つまり老ストリエラよりも……。


 しかし、ツキノは悪い方ではないでしょう。


「大丈夫。ゲテモノ好きに悪い人はいませんわ」


 わたくしの言葉にツキノは自然な笑みを見せます。


 笑顔が美しい方ですわ。


「またせたね」


 ナビア族の女性が戻ってきて言いましたわ。


「これギシキのレイソウ」


 渡されたのはどうみても動きやすそうで、農作業や学校での運動などでももってこい……そんな素晴らしい服装でしたわ。


「……ジャージ?」


「わぁ、なんというか……イカすファッションですねぇ」


 ツキノもまた目を輝かせました。


「良いですわね! 着替えましょう!」


 わたくしたちは案内された更衣室でそれぞれ伝統の服装に着替えましたわ。


 やはり、とても肌触りがよく、動きやすそうな服装でした。


「着替えましたわ〜!」


 わたくしたちはジャージに似たギシキの正装に着替え、集まりましたの。


 3人ともえんじ色のジャージでお揃いですわ。


「よろしい」


 ナビア族の女性はわたくしたちのダ……いえ、素敵な姿に満足して頷きました。


 他の方々も同じ姿で集まってきます。


 ナビア族の若者たちは晴れやかな、誇らしさのある顔で立っています。


 わたくしたちも考えをあらためなくてはなりませんわね。


「わたしがこんかいのギシキのボル、つまりあなたたちのちーむのみちびきて。こんかいは、われわれ4にんでのぞみます」


「ありがとうございますわ。何日ぐらいになるのでしょうか」


「3かかんよてい」 


「……結構ちゃんとスケジューリングされてるんだ」


「わたしはロロロ。ナビアのルー」


 ナビア族の女性……ロロロはそう自己紹介し、わたくしたちを見て胸に手を当てましたわ。


 おそらくこれが彼らの親愛のポーズなのです。


「わたくしはアリシア、こちらがオルカですわ」


「ツキノと申します」


「アリシアさん……オルカさん……ツキノさん……」


 ロロロはどこかからかメモ帳を取り出し、突然やたらカタコトになって呟いて現地の言葉を喋り始めました。


「デレスケレーテ、ラルネノーア」


「あのぅ……すみませんロロロさん……さっきまで普通に話してましたわ」


「ごめん。じょうだん。コホン」


 これはギシキのおきまりのジョーク、といってましたけど、わたくしたちは焦りましたわ。


「ギシキがはじまる。カイカイシキがおわったらせつめいするね」


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