朝に幼なじみを起こす仕事をしてるんだがめちゃくちゃこっちをドキドキさせてくるくせに本人はそれを覚えてないから俺だけモヤモヤさせられて困ってます(覚えてないとは言ってない)
お読みの小説は健全です。
「陽葵、朝だよ。学校行くぞ」
早朝、俺はベッドで眠る幼なじみに声をかけた。
「……ん~」
俺の幼なじみ、齋藤 陽葵はとても朝が弱い。
とてつもなく弱い。
だから、幼なじみである俺がわざわざ家に来て起こさなければならない。
もちろん親の許可と本人の許可は取っている。
というより向こうから頼まれた。
「おーい」
スヤスヤ眠る陽葵の肩を軽く揺する。
可愛い寝顔しやがって。
長いまつ毛、スっと通った鼻筋、プクっとした唇。
誰がどう見ても美少女です本当にありがとうございました。
「……んん~」
陽葵が唸りながら寝返りをうつが、その拍子に健康的なお腹が寝巻きの隙間から見えてしまい俺は思わず目をそらした。
この幼なじみは昔からこういう無防備なところがある。
その度に俺は無駄にドキドキさせられたものだ。
こっちの気持ちも少しは考えろ。
「ほら、起きろって」
「や」
「やじゃないよ。あーもう、こんなに寝癖つけて」
起こしながら陽葵の髪をとかす。
よく手入れされた綺麗な銀髪だ。
時間を忘れて何時間でもとかしていたい欲求に駆られるがここはグッとこらえる。
「ほら、朝飯だから下行くぞ」
「食べさせて」
「なんでだよ、自分で食えよ」
ツーンと陽葵が横を向く。
「じゃあ食べない」
「はぁ……わかったよ。じゃあ持ってくるから自分で食えよ? お兄さんとの約束な?」
…………。
「ほら、ご飯」
1階から持ってきたトーストの乗った皿を陽葵に差し出すと、陽葵は目をつぶったまま口を開けた。
「あーん」
「自分で食えって言ったろ」
「あーん」
「……」
「あーん」
「……はぁ」
俺は陽葵の開いた口にトーストを小さく千切って入れる。
これではまるで餌付けだ。
「や。ハチミツつけて」
「はいはい。ほら、これでいいか?」
「うまうま」
「よかよか」
そうして千切ったパンにハチミツを塗っては陽葵の口に入れるという作業を繰り返していると、いつの間にか指にハチミツがついてしまっていた。
これではベトベトしてしまって何も触れない。
「ティッシュ箱は……っておい!?」
ティッシュを探していると指に違和感。見れば陽葵が俺の指に吸い付いていた。
「へへ、おいし」
陽葵の柔らかい舌が俺の指を撫でるように優しく舐めまわす。
チロチロと這い回る舌に思わず見入ってしまい何も出来ない。
「あむ」
陽葵はしばらくそうした後、そのまま俺の指を根元まで口内に入れてしまった。
指全体が暖かい感触に包まれる。
「ば、ばかお前何してんだ!」
「んぅ、ぇろ……」
指を引き抜きたいが陽葵が腕に抱きついてしまっていてそれはかなわない。
柔らかくうねる舌と豊満な胸の感触に俺の顔が熱くなっていく。
"ちゅる、じゅるじゅる、じゅぽ"
そんな音を鳴らしながら俺の指を舐る陽葵を見て、俺は頭が真っ白になるような感覚におちいった。
___それから何秒たっただろう。
いや何分かもしれない。
ちゅぽっと音を鳴らして陽葵はようやく俺の指から口を離した。
指と唇の間には銀の糸がかかりテラテラと光っている。
「えへ、ごちそーさまぁ♡」
そう言って唇をペロッと舐めながら笑う陽葵。
その目が少しだけ開かれ、俺は思わず息を飲んでしまう。
あまりに蠱惑的だ。
俺の幼なじみはいつからこんなドスケベになった?
濡れて艶のある陽葵の舌と唇に視線が吸い寄せられる。
「……いかんいかん」
部屋に立ち込める謎の色気でどうにかなってしまいそうになる頭を俺はブンブンと振った。
ティッシュで指を拭いてから俺は陽葵に歯ブラシと歯磨き粉を差し出す。
「ほら、食ったら歯磨く」
「……」
「陽葵?」
「……」
「……磨けってか?」
陽葵はコクコクと頭を縦に振った。
……なんで俺がこんなことを。
「ほら、口開けて」
「あーん」
大きく開いた陽葵の口に俺は歯ブラシを優しく突っ込んで磨き残しがないよう前歯、奥歯、歯の裏側、歯の隙間までゆっくり丁寧に磨いていく。
俺は結構こういう作業が好きなので夢中になって陽葵の歯を磨くことのみに没頭する。
「~~~ッ!!!」ビクッビクッ
その途中、なにやら陽葵の体が軽く痙攣したのでぎょっとした俺は心配になって問いかけた。
「ごめん、痛かったか?」
「はぁ……はぁ……ちが……う」
「そうか。痛かったら言えよ?」
「……ん……」
俺の服の裾をギュッと握りながら陽葵が答える。
様子が変だが俺は歯磨きを続行することにした。
その間、ガクガクと何度も何度も痙攣を繰り返していたので俺の歯磨きがよほど下手だったんだろう。
……これからはちゃんと陽葵に自分で磨かせるようにするか……。
それから5分後。
「よし、終わり。水でゆすぐから洗面所行くぞ」
「……や」
「やじゃないの。ほら行くぞ、でっかい赤ちゃん」
「……やー」
イヤイヤと力なく手足をばたつかせる陽葵をお姫様抱っこで洗面所まで連れていく。
やけに呼吸が荒かったのは俺の気のせいだろう。
「ほら、口ゆすぐ」
「がらがら~ぺっ」
「はい、よく出来ました。良い子だね」
「ん」フキフキ
「バカタレ! 俺の服で拭くんじゃねぇよ!」
そして、それから俺は陽葵の顔を洗い、お姫様抱っこで部屋に戻り、服を着替えさせられた。
目をつぶりながら体に触れないよう慎重に服を脱がせたり着せたりするのはかなり大変だった。
今日だけで寿命が3年は縮んだ気がする。
「はー疲れた。ほら、行くぞ陽葵」
「うん」
「……お前、今度からはちゃんと自分でやれよな」
登校中、俺は言った。
これでは俺の心臓がもたない。
「え? なんのこと?」
陽葵が無表情でこちらを見る。
「は?」
「私、すごく朝弱いから全然覚えてないんだよね、何かあったの?」
「…………またこのパターンか」
俺は頭を抱えた。
◆◇◆◇◆◇
《陽葵side》
「陽葵、朝だよ。学校行くぞ」
ベッドの横でそう声をかけてくる彼に、私は返事をした。
「……ん~」
彼は私が今眠っていると思っているみたいだけどバッチリと目は覚めている。
最初、本当に朝が弱かった私なのだが、彼が起こしに来るという事でいつの間にか彼が来る前に起きれるようになってしまっていた。
……変な寝顔見られたらやだもん。
私の幼なじみ、西野 弘樹はとても優しい。
だから朝に私を起こすという役目を、なんだかんだ言いながら文句ひとつ言わずにやってくれる。
それで、かもしれない。
私は寝たフリをして、彼に私のお世話をさせるようになった。
彼の好意につけこんで甘えてしまっていた。
髪をとかされながら思わずニマニマしてしまう。
ダメ、笑ったら起きてるのがバレちゃう。
その後、朝食を持ってきた彼にご飯を食べさせてもらう。
ハチミツを塗ったトーストだ。
それを彼は食べやすいよう小さく千切ってくれる。
彼の、こういう小さな優しさが私は好きだ。
凄く愛されてる気がする。
(すき♡すき♡すき♡すき♡すき♡すき♡すき♡)
胸がキュンキュンしすぎて思わずハチミツを舐めるフリをして彼の指を夢中で舐めてしまった。
……美味しい。ハチミツよりずっと甘い気がする。
必死に舌を動かしながらそれを味わう。
そして舐め終わった後、熱に浮かされたような彼の顔を見てさらにドキドキしてしまうのだった。
「ほら、口開けて」
「あーん」
……まさか歯磨きまでしてくれるとは思わなかった。
口を開けた私の歯を、彼は優しく丁寧に磨いてくれる。
「……」
歯磨きしてるだけなのに凄く真剣な顔をしている。
男の子らしいキリッとした眉毛、高いのに綺麗な形の鼻、そしてこちらを見つめる吸い込まれそうなくらい綺麗な瞳。
いつもかっこいいけど、さらにかっこよく見える。
……私のためにこんな顔をしてるんだよね?
そう考えると胸がキュッとなった。
「……」
「……」
しばしの沈黙。
少しすると私は口の中の感覚がおかしくなってきたことに気がつく。
彼に真剣な顔で、それも近くで見つめられ続けたからかもしれない。
歯ブラシが口の中を動く度にゾクゾクするような感覚が全身を襲う。
(……待って、なんかこれ変……)
今すぐ止めて欲しいが、なんか変だから止めてと言う訳にもいかないので何も言えず、痙攣しそうになる体を動かないように努める。
……でも、それももう限界だ。
(ダメ、ダメ! もう無理! なんかくる……!♡ きちゃう!♡)
体から頭まで一直線に突き抜けるようにして変な感覚が走っていく。
「ッ~~~~!!!♡♡♡♡♡」
脳を麻痺させるような甘い痺れに思わず内股になってしまう。
ガクガクと痙攣しながら荒い息を吐くそんな私を、彼が心配そうに見ていた。
……ダメ、そんな優しい顔で見ないで。
嬉しくて口角が上がっちゃうから___。
その後、5分間念入りに歯を磨かれ続けた私はヘロヘロになりながら彼にお姫様抱っこで洗面所まで運ばれ、口をゆすいだ。
……お返しに服で口ふいてやるもんね。
部屋に戻ると、彼は目をつぶりながら私を着替えさせてくれた。
私はそれが面白くてつい心の中で笑ってしまう。
小さい頃からそうなのだ。
彼は私のお腹や太ももが少しでも見えるとこんな風に過剰な反応をする。
そんなわけだから、私はよくわざと見えるように服をまくったりして彼のそんな反応を楽しんだ。
……まぁ、彼にだったら全部見せてもいいんだけど…………やっぱり今のはなし。
「はー疲れた。ほら、行くぞ陽葵」
玄関でやつれた顔をしている彼に私は頷く。
「……お前、今度からはちゃんと自分でやれよな」
突然、歩きながら彼がそう言ってきた。
私はドキッとしながらも動じてないような表情を作ってそれに答える。もう何度も使っている手だ。
「え、なんのこと?」
「は?」
「私、すごく朝弱いから全然覚えてないんだよね、何かあったの?」
「…………またこのパターンか」
そう言って頭を抱える彼を見ながら私は笑った。
(……次はいつしてもらおうかな♡)
《おまけ》
弘樹「ほら、動くなって。上手く磨けないだろ」シャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカ
陽葵「(待って待って無理無理無理無理)ッ~~~!!!!♡♡♡♡」手足ピーン
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