第8着席 冬、太陽の決意/モコモコの気配
〇~:柱
◆~:柱(回想)
二文字開け:ト書き
「」:セリフ
N「」:ナレーション
M「」:モノローグ
*~:その他の指示
*****
〇諏訪梨宅・自室(数ヶ月後・午後)
太陽、ベッドに仰向けに寝そべり天井を見つめている
太陽M「あっという間に年が明けちゃったなぁ。三が日も、明日で終わりかぁ」
太陽、窓越しに外の景色を眺める
太陽「戸成さん、今何してるのかなぁ」
諏訪子「うん!え~っとね、みさきちゃんとかほちゃんとプール行ったでしょ~?夏祭りはおばあちゃんと行ったし~。あとは~―」のシーン回想
太陽「よし」
太陽、ベッドから起き上がる
〇神社(同日・午後)
太陽、賽銭箱に賽銭を入れ、手を合わせる
太陽M「戸成さんにとって、素晴らしい一年になりますように。あと、今年も戸成さんのとなりに沢山座れますようにっ!」
太陽「たまには、椅子以外にお願いするのもいいよね」
太陽、拝殿を見つめている
太陽M「俺はまだ、友達とワイワイ遠出して遊んだりは出来ないけど、こういう近場から頑張って行こうかな。このままじゃ駄目だって、思ったから」
太陽、神社の入り口の方から声がすることに気づく
太陽「ん?この声は……」
太陽、声のする方に振り向く
諏訪子、みさき、かほちゃん(12)、談笑しながら拝殿の方へ向かう
諏訪子「う~、やっぱり寒い~」
みさき「ね~。でも諏訪子、モコモコで可愛い~」
諏訪子「えへへ~、ありがと~」
かほ「早くお参りして、ご飯でも食べに行こ~」
諏訪子、みさき、かほ、賽銭箱に賽銭を入れ、手を合わせる
太陽、賽銭箱の裏に隠れている
太陽M「お、思わず隠れちゃった~!ってか、隠れる場所!何てバチ当たりなっ!と、とりあえず、隙を見て反対側に逃げよう……!」
みさき「諏訪子、なんてお願いした?」
諏訪子「今年も全人類が平和に過ごせますように~って」
みさき「聖人だねぇ。かほは?」
かほ、恥ずかしがって口籠っている
かほ「えと……。か、彼と上手くやっていけるように、かな……」
諏訪子・みさき「……え!?」
みさき「かか、かほ、いつの間に彼氏が!?」
かほ「あ、うん。去年のクリスマス辺りに告白されて……。イルミネーションも見に行きました」
諏訪子「ふえぇ~」
みさき「くあー!まさかあたしの知らないところで、かほが大人の階段を上っていたなんてー!」
かほ「ちょ、ちょっと、何か変な風に聞こえるよ……!」
諏訪子「でもかほちゃん、前より大人びた感じする~」
かほ「え、え~?そうかな~」
諏訪子「みんな凄いな~。私、そういうのよく分からないから」
みさき「いや、諏訪子も最近、諏訪梨と仲良くない?」
諏訪子「え、そうかな?」
かほ「うんうん。何か、一緒にいること多いよね」
諏訪子「う~ん。席がとなりだから、比較的話すことが多いのかも?」
みさき「そう、それだよ!」
諏訪子「ほえ?」
太陽、諏訪子たちの目を盗んで賽銭箱から離れる
みさき「去年の席替えの後、いつの間にか、また諏訪梨の隣になってたよね?」
かほ「あ、それ思った!先生気づいてなかったけど」
諏訪子「それは、前田くんが黒板見え辛そうにしてたから、変わってあげようかな~って」
かほ「あ、そうだったんだ」
みさき「でもさ、それ別の人でも良かったんじゃない?もっと~、ど真ん中の見やすい席の人とかさ。諏訪子、一番廊下側だったでしょ?」
諏訪子「う、うん」
みさき「どうして諏訪子が、一番に名乗り出たんだろうって、ずっと思ってたんだよね」
諏訪子「どうして、私が……」
諏訪子、しばらく考え込む
急に強い風が吹いて、みさきとかほが寒がる
かほ「う~!は、早くご飯食べ行こうよ~!」
みさき「そ、そうだね。ま、諏訪子は素直で良い子だから、変わってあげたいって思ったのかな?」
諏訪子「うん、そうかも」
みさき「よ~し!結論も出たことだし、何食べに行く~?」
かほ「ん~、私はね~―」
諏訪子、みさき、かほ、鳥居の方へ歩き出す
諏訪子、背後に気配を感じ、拝殿の方を振り返る
みさき「諏訪子~、先行っちゃうよ~?」
諏訪子「あわ、今行く~!」
諏訪子、小走りでみさきとかほの元へ行く
【場面転換】
太陽、帰路についている
太陽「ふぅ、無事に逃げられたし、今日は頑張ったぞ、俺!」
太陽、諏訪子の姿を思い出す
太陽「戸成さん、モコモコで可愛かったな……」