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5/11

第5着席 お遣い/人生一遅い晩御飯

〇~:柱

◆~:柱(回想)

二文字開け:ト書き

「」:セリフ

N「」:ナレーション

M「」:モノローグ

*~:その他の指示


*****


〇駅(数週間後・午後)


太陽M「今日は休日。学校がない日は、漫画にゲーム、娯楽三昧の一日を過ごせる!なのに、お母さんのお遣いで隣町まで行くことになりました。全く、ほんと人遣いが荒いよなぁ」


  太陽、歩いていると、左手に猫と戯れる諏訪子を見つける

  しかし、太陽はそれが諏訪子だと気づかずに通り過ぎる


太陽M「わぁ、あの人猫と猫語で会話を試みてる。シュールだなぁ……」


〇電車内(同日・午後)


  太陽、真ん中あたりの座席に座る


太陽M「そう言えば、作太郎さくたろう元気かな。会いに行きたいけど、おじいちゃん家意外と歩くんだよな~。いっそ、家で新しい猫飼えばいいんじゃないか?椅子にお願いして―」


  諏訪子、電車に乗ってきて、太陽の隣の席に座る

  しかし、太陽は考え事をしていて気づいていない


太陽M「いや、そんなことしたら我が家が財政難に陥ってしまう……。せめて、新しいゲームをお願いするくらいに留めておこう」


  太陽、何気なくチラと横を見ると、諏訪子が隣に座っていることに気づく

  驚いて硬直し、思わず声をかけずに黙り込んでしまう


太陽M「ととっととっとっと、戸成さん!?お、俺のとなりに戸成さんが座ってるっ!あ、となりに戸成さんってダジャレっぽいなぁ。じゃなくて!」


  太陽、動揺し大量の汗をかいている


太陽M「どどっどどっどっど、どうしよう!?何か声をかけた方が良いのかな!?それとも気づかないふりを続ける!?いや~、それも不自然かぁ!?でも声をかけたらかけたで、学校外だし何か変な反応されたりでもしたら、俺もう生きていけな―」

諏訪子「あれ、太陽くんだ~!」

太陽M「気づかれたー!」

太陽「あぼぉ、お、おぉ、戸成さん、き、奇遇だねぇ……」

諏訪子「そうだね~」

太陽M「ふおぉ、一先ず変な感じにはならなそうだ。っていうか―」


  座席に座る諏訪子の足元から顔まで


太陽M「私服姿の戸成さんかわえぇー!いつも制服だからすごい新鮮だけど、すごいイメージ通りで何か安心する!」

諏訪子「太陽くんは、今日はなんのご用事?」

太陽「あぁ、えっと、隣町のスーパーまでお遣いで。何か、そこにしか売ってないものを買ってきてほしいらしくて」

諏訪子「え、私もそのスーパーにお遣いに行くんだよ~!」

太陽「え、そうなの!?」

太陽M「なんという偶然!ありがとう、お母さんっ!」

諏訪子「本当はね、これより一本前の電車に乗る予定だったんだけど、遅れちゃって」

太陽「何かしてたの?」

諏訪子「うん。駅に着いたら、急に野良猫が足元にすり寄って来てね。どうしたんだろ~って思って猫語で意思疎通を試みたんだけど、全然伝わらなくって……」

太陽M「あれ戸成さんだったのか~!そう思うと、急に可愛いが溢れてくる~!」

太陽「そうだったんだ、大変だったね?」

諏訪子「うん。でも、太陽くんと一緒に行けるなら、乗り遅れて良かったかも」


  太陽、諏訪子の笑顔に見惚れている


太陽M「……俺の心臓、隣町に着くまでもつかな」



〇隣町(同日・午後)


  太陽と諏訪子、電車から降りる

  諏訪子、意気込んで―


諏訪子「ここは私の庭だから、道案内は任せて~!」

太陽「う、うん。よろしくお願いします」


  太陽と諏訪子、歩き出す


【場面転換】


  数分後、パチンコ屋に着いて―


諏訪子「着いた~!」

太陽「いや、ここパチンコ屋だよ!」

諏訪子「あれ、おかしいな~」

太陽M「どうしてスーパーとパチンコ屋を間違える……」

諏訪子「ママとよく来るから、ここしか分からないんだよね~」

太陽M「庭とは?」

太陽「マップ見て行こう」

諏訪子「そうだね」


  太陽、スマホを取り出してマップを見る

  諏訪子、太陽のスマホを覗き見る


太陽「こっちだ。あ、結構近いね」

諏訪子「よし、行こう~!」


  諏訪子、太陽に少しもたれかかる

  太陽、照れて体を仰け反ってしまう


太陽M「だから近いって~!」


【場面転換】


  数分後、太陽と諏訪子、スーパーに着き入店する

  目的の商品を探して店内を歩きながら―


諏訪子「ママとお買い物してる時とかに学校の人に会うと恥ずかしいよね~。思わず隠れちゃうよ~」

太陽「た、確かに。でも、隣町なら知ってる人に会うこともないと思う」

諏訪子「それなら安心だね」

太陽M「う、うわ~、まさか戸成さんとスーパーで買い物するなんて~!傍から見たら、夫婦に見えたりするのかな……?」


  太陽、諏訪子を横目でチラチラと見る

  諏訪子、目的の商品を見つけて走っていく


諏訪子「あ、あった~、ママが言ってたやつ~」


  諏訪子、商品を手に取る

  太陽、諏訪子の隣にやってきて同じ商品を手に取る


太陽「あ、戸成さんもそれ買うんだ」

諏訪子「えへへ、私たち同じ場所に同じもの買いに来てたんだね」

太陽M「ありがとう、お母さんっ!」

太陽「でも、お母さんこれ使って料理するんだけどいつも失敗するんだよね。買いに行かせるなら、ちゃんとできるようになってからにしてほしい……」

諏訪子「そうなんだ~。私調理方法分かるけど、よかったら今から家来る?」


  太陽、諏訪子の言葉を脳内で反芻して固まる


太陽「えっ!?い、いいの!?」

諏訪子「もちろん!太陽くんが覚えて、ママに教えてあげて~」

太陽「あばっばばばばばっばばっばばば」

太陽M「まさか、こんなことになるなんて……!」


〇太陽たちの住む町(同日・夕方)


  太陽と諏訪子、買い物袋を持って歩いている


諏訪子「お菓子選んでたら、ちょっと遅くなっちゃったね~」

太陽「戸成さん、熟考してたもんね」


  お菓子売り場でしゃがみ込んで何を買うか悩んでいる諏訪子の回想


諏訪子「決まらなさすぎて結局いっぱい買っちゃった。ママ怒るかな~」

太陽「戸成さんは、よく料理したりするの?」

諏訪子「うん。うち、ママが夜遅くまで仕事してるから、夜ご飯は私が作るんだ。ママがいる日も、お仕事疲れで寝ちゃってるから、ご飯は私が作ってるよ。因みに、お弁当も私の手作りです!」

太陽「と、戸成さん凄い……」

諏訪子「えへへ。そうだ、今度太陽くんのお弁当も作ってきてあげるよ~」

太陽「え、えぇ!?だ、大丈夫だよ、迷惑かけられないし……!」

太陽M「戸成さんの手作り弁当、食べたい……!」

諏訪子「自分の作るついでだから、全然大変じゃないよ~」

太陽「じゃ……、じゃあ、お願いし、ようかな……」

諏訪子「うん!楽しみにしててね~」

太陽M「うお~!今日椅子の力凄くないか~?偶然会えただけでなく、手作り弁当まで作ってもらえる上に、これから戸成さんの家で二人っきり……」


  太陽、恍惚とした表情から我に返って―


太陽M「いやいや、二人きりなんて一言も言われてないぞ!気持ち悪いぞ、俺~!」

太陽「そ、そう言えば、戸成さんのお父さんは?料理したりしないの?」

諏訪子「う~ん。料理っていうか、まずどの人がお父さんかも分からないし~」

太陽「え?」

諏訪子「あ、お家着いたよ!」

太陽「あ、あぁ。ここが」

諏訪子「ちょっと待っててね~」


  諏訪子、走って行って画面から外れる

  太陽、再び恍惚とした表情で—


太陽M「戸成さんの部屋、どんな感じだろう。そもそも、同年代の女子の部屋に入るの初めてだな。良い匂いとか、したりするのかな~」


  諏訪子、外から窓越しに聞き耳を立てる

  家の中から、母(諏訪子)と男性の会話が聞こえる


母(諏訪子)「もう、お店で会ってる時より元気じゃない?」

男性「そりゃ、直々に招かれたらね。そう言えば、娘さんは?」

母(諏訪子)「諏訪子、もうすぐお遣いから帰ってくると思う。もう少し二人でいたいんだけど~」

男性「お店行けばまた会えるだろ?諏訪子ちゃんにも挨拶しなきゃ」


  諏訪子、窓から耳を離して太陽の元へ駆け寄る

  太陽、恍惚とした表情で—


太陽「うへっ、うへへ~」

諏訪子「ねぇ、太陽くん」

太陽「はっ!はいっ!」

諏訪子「今日、また男の人いるみたいなの。だから、太陽くんお家入れないや、ごめんね」


  太陽、ショックで急激に青ざめる

  元気がなさそうに縮こまりながら―


太陽「えあ、あ……、そ、そう、なんだ……」

諏訪子「だからね、LINE交換しよ?それで作り方教えるね」

太陽「……え!?」

諏訪子「スマホ出して?」

太陽「え!?え、あぁ、は、はい……!」


  太陽と諏訪子、スマホを出して連絡先を交換する

  太陽、困惑した様子でスマホを見つめている


諏訪子「じゃあ、またあとで連絡するね~!」


  諏訪子、笑顔で太陽に手を振る


〇諏訪梨宅・キッチン(同日・夕方)


  太陽、慌ててキッチンに走ってきて―


太陽「お母さん、今日の夜ご飯俺が作るからっ!」

母(太陽)「ど、どうしたの急に」


【場面転換】


  夜、太陽、キッチンでそわそわしながら歩き回っている

  時折、スマホの方をチラチラと見ている

  スマホが鳴り、諏訪子から連絡が来る

  太陽、急いでスマホを手に取って―


太陽「き、来た……!」


  太陽、アプリを開き諏訪子のトーク画面を開くと、一本の動画が送られてきている


太陽M「ど、動画だーっ!」


  太陽、慌てて再びそわそわと歩き回る


太陽M「な、何か、レシピとか画像とかが送られてくるって勝手に思ってたけど、動画だーっ!」


  太陽、動画をタップしようとする手が震えている


太陽M「い、いいんだよな、見ても……!何か、いけないことをしようとしてる気がする……。いやいや、ただの料理動画だし!やましい事なんて何もないし!」


  太陽、動画をタップする

  諏訪子、動画の中でカメラを設置して話し始める

  カメラに向かって手を振りながら―


諏訪子『太陽く~ん、見てる~?』

太陽「は、はい!見てますっ!」

諏訪子『これからお料理作っていくよ~』

太陽「お、お願いしますっ!」


  諏訪子、動画内で料理を進めていく

  太陽、急いで準備をして動画を見ながら料理をする


太陽「えと、これがこうで、これを入れて……」

太陽M「さすが戸成さん、料理し慣れてる人の手付きだ。っていうか、この状況……」


  太陽の隣に、諏訪子のイメージが現れる

  太陽と諏訪子、二人で料理をしている


太陽M「戸成さんと、一緒に料理してるようなもの……?」


  太陽、呆けていると動画が終わる


太陽「……もう一回見よ」


  太陽、動画を再生し料理を始める


太陽N「今日の夜ご飯は、今までで一番食べ始めるのが遅かった」

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