第1着席 入学式/一目惚れ
〇~:柱
二文字開け:ト書き
「」:セリフ
N「」:ナレーション
M「」:モノローグ
*~:その他の指示
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〇学校・体育館(朝)
校門、桜が満開に咲いている
太陽N「四月七日―今日から俺は、中学生になる」
体育館の外観
体育館内、制服を着た新入生たちがパイプ椅子に座っている
ステージの演台で校長が話している
校長「本学の生徒としての自覚を持ち—」
諏訪梨太陽(12)、座りながらうとうとしている
太陽M「校長先生の話、長いなぁ……」
太陽、うとうとして頭を前後左右に振る
すると、隣に座る戸成諏訪子(12)と頭をぶつけてしまう
太陽「あいてっ。ご、ごめんなさ—」
太陽、咄嗟に諏訪子を見て、目を見開く
諏訪子「いてて~。ごめんね~、大丈夫?」
太陽と諏訪子の正面
太陽と諏訪子、顔を見合わせている
太陽、諏訪子に見惚れている
諏訪子、太陽に小声で話しかける
諏訪子「ほ、ほんとに大丈夫……?保健室行く?」
太陽「はっ!え、いや、その……、だ、大丈夫です……」
諏訪子「ほんと?良かった~」
諏訪子、太陽にニコッと笑いかけると前に向き直り、再びコクコクと船をこぐ
太陽も前に向き直るが、横目でチラチラと諏訪子を見ている
太陽の心臓が早く鼓動している
太陽M「何だ、これ……!」
太陽、自分の胸に手を当ててシャツを軽く握る
〇C組教室(同日)(朝)
入学式を終え、教室に向かう新入生たちで廊下はざわついている
太陽M「ここか」
太陽、自分のクラスを確認し教室に入っていく
教室内もざわついており、既にいくつかのグループが点在している
太陽M「うわ~、もう仲良しグループできてるじゃん。俺、馴染めるかなぁ……」
太陽、窓側最後列に自分の席を見つける
少し嬉しそうに、微かに眼を輝かせる
太陽M「すごい、主人公席だ……!」
太陽、席に座る
頬杖をついて、遠い目をしながら窓の外を眺める
太陽M「あの子、可愛かったな……」
*回想:入学式時、諏訪子の笑顔
太陽M「名前、何て言うんだろう……」
太陽、ふと我に返り頬を両手で叩く
太陽M「いかんいかん、気持ち悪いぞ俺!まずは友達を作ることが先決だ!えと、誰か話しかけやすそうな~、一人でいる人はいないかな~」
太陽、教室中を見回す
すると、隣から誰かが椅子に座った音が聞こえて―
太陽M「お、となりの席の人が来たようだ。丁度良い、早速一人友達作っちゃおう!そして、人見知り克服だ!」
太陽「あ、初めまして。俺の名―」
太陽、勢い余って隣に身を乗り出し気味になる
隣の席は諏訪子
諏訪子、少しの間ポカンと見つめていたが、太陽だと分かるとすぐ笑顔になる
反対に、太陽は驚いて固まっている
諏訪子「あ~、さっきの頭ぶつけた子!」
太陽「あ、あば……、き、き、みは……」
諏訪子「同じクラスだったんだね~。しかも、となり同士」
太陽「あ、うぁ……、そ、そう、だ、ね」
太陽、あまりの動揺に目は泳ぎ上手く言葉を喋れない
諏訪子「私、戸成諏訪子です、よろしくね~!」
太陽「あ、諏訪梨太陽、です……」
諏訪子「何か私たち、名前似てるね。えへへ~」
諏訪子、太陽に満面の笑みを向ける
太陽M「かわいいぃー!!!!」
担任が教室に入ってきて話始める
諏訪子は先生の話を聞いているが、太陽は机に突っ伏している
太陽M「とっ、とと、友達作るどころじゃなかったー!まさかとなりの席だったなんてー!」
太陽、突っ伏しながら横目で諏訪子を見る
太陽M「戸成さんって言うんだ。あれ、なんでこんなに嬉しいんだろ……?これは……」
太陽、何かを思いついたような表情をする
太陽M「あ……、これもあの椅子のおかげ、なのかな……」
始まりました、「好きな子のとなりに座るだけのはなし」です。本作は、元々一本のシナリオとして制作したものを、分割して投稿する形となります。
作品のイメージとしては、『からかい上手の高木さん』『僕の心のヤバイやつ』『好きな子がめがねを忘れた』のようなラブコメになります。
一目惚れした諏訪子と同じクラスであることが判明した太陽は、これからどうするのか。また、『あの椅子』とは、一体何なのか。