3
「気になったこと・・・」
「難しく考えなくていいよ。緊張感が緩んだときに何か印象に残ったことはない?花の形とか色とか匂いとか」
「あっ!匂いです!すっごくいい匂いがしました!!」
考え込んだヤクに、アーガが助け舟を出せばすぐに答えが返ってきた。
「匂い。つまり香りで獲物を誘き寄せる魔物ですね。あとは本体が花か根か、ですね」
どうやって確認するかを考え始めたアーガの隣で、ヤクは落ち込んでいた。アーガの弟子として、アーガを補佐するつもりでいつもついて歩いているのに、いざというときに魔物の匂いに惑わされてアーガを煩わせた。
まだまだ未熟な己を顧みて、どんよりとした空気を纏わせたヤクだが、アーガは頓着していなかった。
「ヤク、獲物を探しましょう」
「獲物ですか?」
「ええ、一旦ここを離れて、ネズミでも兎でも探しましょう。できれば生け捕りで」
おそらく魔物の縄張りというか、獲物の捕獲範囲は草地の中。魔物自体の確認をしたいが、うかつには近寄れない。ならば魔物へ獲物を差し出せばいい。そのためには小動物を捕まえるのが確実。
という説明を聞き、ヤクは草地を離れて元気に動物を探し始めた。
「いませんね・・・」
「やはりというか、いませんねぇ」
森に入ってから動物の気配がなかったのだ、そう簡単に見つかるはずもなく、数時間が経過していた。魔物の場所は分かったのだから、報告をして終わりにしてもいいのでは等と考えていたヤクの視界の隅で影が動いた。
目線をそちらへ移したヤクが歓喜の声を上げた。
「師匠!ヘビがいます!!」
喜々としてヘビを捕まえにかかるヤクの後をアーガがついてくる。
「ああ、本当だ。大きさもいいですね。ヤク、お手柄です」
「はいっ!」
アーガに褒められ、益々やる気を出したヤクは、逃げるヘビの首を素早く掴む。ヤクの腕よりひと周り細いヘビは身をくねらせてもがくが、やる気を出したヤクはがっちり掴んで離さなかった。