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第89話 精神力

『精神は肉体を凌駕する』少女達はその言葉を頼りにここまで勝ち上がって来ていた。

 元々誰が言った言葉なのか。それは知らないが、自分達には最もふさわしい言葉と誰もが信じて疑っていなかった。

 自分達が敬愛する人も、数か月前に精神論で大抵の事は何とかなると言っていたので、余計にその確信があった。


 チーム名『ネクラさん攻略同盟♡』の構成メンバーは全部で153名。

 元々は普通のファンクラブだったのだが、徐々にネクラにガチ恋する人が増えたので、運営者がこの名前に変更したのだ。

 ネクラに関しての情報はなんでも共有し、ネクラのSNSの巡回も当然数人単位で行っている。


 存在しているファンクラブでは珍しくグッズ販売はしていないが、それはネクラ自身がグッズにあまり興味が無いようなので自分達で作る物ではないと考えているからだ。


 ファンクラブというのはいくつも重ねて入る事も出来る為、例えばマイが運営している『ネクラさんを愛でる会』に入っている女性も何人かこのファンクラブに所属している。


 もちろんマイの運営しているファンクラブでは、ファンクラブ内で手に入れた情報を外で公開しない事が義務付けられているので情報漏洩しているといった心配はしなくても問題ない。


 なぜそんな集団がネクラ杯に参加しているのか。それは、様々な要因が重なった結果だった。


 まず第一に、ネクラが解説動画を投稿したせいだ。

 その動画を見なかったESCAPEプレイヤーなど極少数なので当然彼女達もその動画を見ていた。そして、その動画のおかげで飛躍的に腕前が上がったプレイヤーが数多くいたのだ。

 自分達の力が上がれば試してみたいと思うのは当然で、近いうちに大きな大会にエントリーしたいという話がファンクラブ内で上がっていたのだ。


 二つ目に、ネクラ杯の優勝者にはネクラ自身がチームの望みを出来るだけ叶えるという一文があったからだ。

 その一文が無ければ、いずれネクラと戦う事になるので参加しなかったかもしれないが、その一文が発信された事でファンクラブ内のやる気が最高潮に達したのだ。


 三つ目に、最近ネクラが待望の公式グッズを出すと発表し、それがネクラ杯の参加賞を伴っていたからだ。

 ファンクラブ内の全員がネクラにガチ恋している関係上、その参加賞を欲しいと思わない人間などいなかった。そのため、その瞬間にネクラ杯出場が確定したのだ。


 当然プロチームやネクラのチームも出る事が予想されるが、プロチームは大した実力を持っていない人達がほとんどなので問題にはしていなかったのだ。


 プロとは言ってもその実力は全体の上の下といった所だ。

 トッププレイヤーも数多く在籍している『ネクラさん攻略同盟♡』には懸念事項にすらならないのだ。

 仮にネクラのチームと当たったとしても、願いを叶える為に死ぬ気で勝ちに行くつもりだった。


 彼女達にとって幸運だったのは、ランダムで決められたはずのトーナメントがかなり自分達に都合が良かったことだろう。

 順調に勝ち進んだとしてもプロチームに当たるのは多くて3回。

 さらには、トッププレイヤーが多く在籍している有名なチームは軒並み自分達とは離れた場所に名前があったのだ。


 そして、最大の懸念事項だったネクラのチームは決勝戦でしか当たらないということが早くに判明していた。

 その時のファンクラブ内のボルテージは、恐らく過去最高の物だっただろう。


 しかし、大会2日目にしてネクラのチームが負けるという信じられない事態が起こった時は、流石にお通夜のような空気になっていた。

 ネクラ自身が集めたチームなのでスパイなどの存在を疑う人はいなかったのだが、なぜ負けたのか分からない人達が大勢いたのだ。


 ネクラは、最近大会での勝率は良くない物の、前まではチームメンバーの欠席以外では負ける事が無かった。

 そのために、様々な憶測が飛び交っては『そんなことであのネクラさんが負けるかな?』という魔法の言葉によって静まり返るということを繰り返していたのだ。


 不幸にもこのファンクラブ内からネクラのチーム――世界大会に向けての――に選ばれたプレイヤーはいなかったので正確な理由を聞くのも叶わない。

 かといって、ネクラ本人は『自分達の実力不足』と謙遜しているので余計にヤキモキしていた。


 ただ、最終的にはネクラなのだから何か考えがあって敗北したんだろうという、諦めの結論に達し、それ以上その話題が出る事は無かった。

 それよりも、自分達がネクラ杯で優勝する事に全力を注ぎ、チーム内で練習しようということになったのだ。


 ネクラ杯本選に出場しているのはファンクラブ内でもかなりの実力を持った精鋭23人と指揮官としてかなり優秀な1人。

 この指揮官役のプレイヤーは一度ネクラと共に大会に出場し見事優勝した経験を生かして、最近メキメキ頭角を現しているプレイヤーだ。名を『ソマリ』という。



――ソマリ視点



 マップは住宅街、残り時間は後25分という所で相手の子供の残り人数は3人となっていた。

 マップの中央にある児童公園でもっとも大きな木に登り、ソマリは仲間に指示を出していた。


 ネクラと共に大会に出場し、直々にアドバイスを貰った事。そして、ネクラの解説動画を何十回と反復して視聴した事により、彼女のプレイヤースキルはかなり上がっていた。

 今ではランキングにもちょくちょく載るようになり、現実の方でも貯金の溜まるスピードがかなり速くなっていた。


 ネクラの公式グッズがどの程度の値段、もしくはどの程度の種類出るのかは分からないが、その全てを買って部屋に飾り、毎日愛でる為に前から密かに溜めていた貯金だ。


 1人あたりの購入制限は設けられるはずだが、一度公式のグッズを出したらまたいつか出してくれるはずなので焦る事は無いと思っている。


(落ちつけ私……。あの願いを叶えるためにも、落ちつけ……)


 実はこの試合は2戦目で、1戦目は子供側が強制試練中に捕まった事で敗北していた。

 だが、今回はあちらが敗北したという情報は出て来ていないので、こちらがしっかりしていれば何とかなるはずなのだ。


 ここで負けたりすれば、一生後悔する事になるかもしれない。そんな重荷は背負いたくないのだ。

 なにより、あの願いを叶えられれば、私はもう一歩あの人に近付く事が出来るのだから。


 サッサと勝利を収めたいと思う心を静めつつ、仲間に指示を出す為電話をかける。


 ネクラさんは基本的に文面(たまに電話)で指示を出しているけれど、私はこっちの方がやりやすいので自分なりにアレンジしたのだ。

 誰かの真似をするよりも自分がやりやすい事をした方が実力が上がるという簡単な事に気付けなかったのは、本当に恥ずかしい。


「もしもし、キールさんですか?」

「はぁ~い、なんですかソマリさ~ん」


 電話越しからふざけているとしか思えない可愛らしい萌え声が聞こえて来る。

 この人は別にキャラを作っている訳ではなく、声優をしているので元々こんな声らしい。

 まぁ、そこはどうでも良いのでサッサと指示を伝える。


「今くりーむさんとパインさんが公園内を探しているんですが、そこに相手の姿はありません。なので、キールさんには団地方向へ向かっていただきます」

「了解ですぅ~。見つけたらどうしたらいいですかねぇ~?」

「団地に着いたらワンコール入れてください。その後、5分して相手が見つからなければ再びワンコールを」

「はぁ~い」


 そのまま電話を切った私は、ふーっと短く息を吐く。

 コミュ障なのでネクラさんやハイネスさんみたいに具体的な指示を出すのは無理だ。

 なので、かなりザックリとした指示しか出せない私は、指揮官役として本当に向いているのか。それが不安で仕方ない。

 まぁ、あの人は大丈夫と言ってくれたし、グランドスラムでも優勝できたので少し自信はついたけどさ……。


 その数分後、残りの子供が1人捕まったと通知が届く。

 先ほど電話を繋いだキールさんから団地に到着したという着信が入ってから音沙汰が無いので、団地方面に1人いたという事だろう。


 私はそこまで頭は良くないけれど、ネクラさんの解説動画を丸暗記したのでこの後するべき行動が分かる。

 それに感謝しつつ、児童公園内を巡回しているくりーむさんへと電話をかける。


「はい~? どったの?」

「瞬間移動を使ってすぐさま高級住宅の奥へと向かってください。そこに子供がいるはずなので、公園に追いつめるようにして追ってください」

「はいよ~。りょ~かい」


 団地で味方が捕まった場合、子供側の解説動画ではすぐに別の場所へ避難する事を推奨していた。

 だが、鬼側の解説動画では子供がそう動いてくるので、それを逆手にとって逃げる場所を予測する術も紹介していたのだ。


 人は逃げる時、当然だが安全な場所に逃げる。なので、あえて鬼が巡回していないエリアを作り、そこに逃げ込ませるように仕向けるのだ。


 逃げられる子供は瞬間移動の能力を持っている人に限られるので、団地に残っている場合はキールさんが捕まえられるはずだ。

 そして、ネクラさんの教え通りに高級住宅の方を手薄にしていたので、瞬間移動の能力を持っているならそこへ逃げ込むだろう。

 これで、こっちの勝ちはほぼ確定だ。後は子供側が勝ってくれれば……。


 半分祈りながら確保情報を待っていた私は、数分後に望んだ知らせが飛んできた事でとりあえず胸を撫で下ろした。

 そして、そのさらに数分後、私達のネクラ杯優勝が確定したのだ。

投稿主は皆様からの評価や感想、ブクマなどを貰えると非常に喜びます。ので、お情けでも良いのでしてやってください<(_ _*)>

やる気が、出ます( *´ `*)

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