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第84話 事情聴取

 家に戻って来た春香は、その足で兄の部屋の扉をノックする。

 大会の運営があるはずなので、下手にランクマッチには潜っていないだろうという思いもあるが、家を出る前にパソコンをいじるみたいな事を言っていたので、それを続けているだろうと妙な確信があった。


 ただでさえ今シーズンのネクラはランキング下位に位置しており、ランクマッチにはあまり精力的ではない事が分かっている。


 数シーズン前からランキング1位を取り続けている人だとは思えないけれど、最近は忙しそうにしているので無理もないかもしれない。

 ランクマッチよりも大会の方に力を入れたいと思っているのだろう。


「お兄ちゃん、ちょっと良い?」


 勉強を教えて貰うついでに、ハイネスとの事も聞いておこう。

 そう思いつつ部屋の住人の返事を待つけれど、返事が返ってこない。


(寝てる……?)


 いや、兄が数日寝なくても問題無いような異常な人間であると言うことを1番知っているのは私だ。

 そんな人が、重要だと言っていた作業を中断してまで寝るだろうか。いや……となれば――


「ねぇ、なにやってんの?」


 隣の部屋の扉を一気に開け、手毬とイチャついているお兄ちゃんを見つける。

 結構長い時間いたらしく、服には手毬の毛がかなりついていて、手毬が助けを求めて来ているようにも感じる。


 イチャつくのは別に良いけど、ハイネスが少しやきもちを焼いていたので控えるように言うべきだろうか……。


「春香……。おかえり」


 なぜか怯えながら手毬を手放したお兄ちゃんは、怒られるのを分かっているかのように震えだす。

 別に怒るつもりはないんだけど、何を勘違いしているのか。


「勉強教えてほしいんだけどさ、良いかな」

「……良いけど、テスト明日だよ? 大丈夫なの?」

「そんなの、平日に大会またぐようにした人に言われたくないんだけど?」

「……はい、すみません」


 まぁ、ネクラ杯はそんなに本気の大会では無いので、敗退しても問題無いと考えていたのかもしれない。

 一応、大会の注意書きみたいな所に、試合開始を遅らせる旨を主催者に送っておけば問題無い。みたいなことが書いてあった気がするけど……。

 それにしても、テスト期間中に大会を開くなんてバカだとしか言いようがない。


 逆に言えば、今回のネクラ杯はそういった理由から学生層の参加は少なかった。

 それでもグランドスラムより参加チームが集まったのは、やはりネクラの影響力なのだろう。


 やっぱり、お兄ちゃんは自分の影響力を分かっていないというハイネスの仮説は正しいのかもしれない。

 優勝したチームにはある程度の願いを叶えるみたいな発言をしてから、一気に参加チームが増えた事には気付いているのだろうか。


 絶対に本人には言えないけれど、ファンクラブ内では、優勝したらネクラさんとデートするみたいな事を言っている人が何人かいたりもする。そうなった場合、お兄ちゃんはどうするつもりなのか。

 まぁ、そこまで考えて無いだろうけどさ。


(自分が人気になってる理由が分からないって、ある意味凄いけどね)


 いくらゲームの腕が天才的でも、女にだらしない人は人気などでない。

 その点、ネクラという人物は、たまに現実世界での愚痴を吐く程度で、誰にでも優しく、そして誠実な態度をとっている。

 女関係については全くと言って良いほど聞かないので、そっち系の人なのではという噂は、探せばいくらでも出て来るだろう。


「あのさ、お兄ちゃんはなんで恋愛に興味無いの?」

「……なに急に。ていうか、それ前も言った気がするんだけど?」


 いつもご飯を食べるテーブルで勉強を教えて貰っている最中、ずっと聞きたかった事を聞いてみた。

 人と関わるのが苦手みたいな事を前に言ってた気がするけど、それでもまったく興味が無いと言うのは違和感がある。


 いくら人と関わるのが苦手でも、片思いくらいした事があるはずだ。ハイネスと話している時そう思ってしまったのだ。


 ハイネスの恋を応援したい私からすると、お兄ちゃんの好みや初恋相手の事を聞きだす事しか出来る事が無い。

 まぁ、そこまで頭が良い自信は無いので、いざとなったら武力で誤魔化すけども。


「一時期さ、ぬいぐるみ集めにハマってたでしょ? あれ、そういうことじゃないの?」

「……そういうことっていうのは、好きな相手がぬいぐるみが好きだから、僕も好きになったとか、そういう意味?」

「そう。違うの?」

「……違うよ。普通に、クレンゲームにハマってただけ。僕は誰かさんみたいに浪費する癖なんて無かったから、お年玉貯金とか結構溜まってたし」

「……」


 なんだかちょっとムカついたので、お腹に軽めの一発をぶちこむ。

 確かに? 私は昔から浪費癖があっていつもお金がないってボヤいてたけど、お兄ちゃんに言われるとなんか腹が立つ。


(ていうか、ハイネスもクレンゲームが趣味みたいな事言ってた気がするな……。もう少し探った方が良いか……)


「で? 何で急に止めたの?」

「……止めたってどういう意味?」

「最近ろくに外出てないでしょ? クレンゲームは止めたのかってこと」

「あ~、いや、やりたい気持ちはあるけど……調子に乗って乱獲してたら、近くのゲームセンターで軒並み出禁になっただけ。遠くまで行けば問題無いだろうけど、そこまでして行きたいとは思わないかな」

「……あっそ」


 やっぱり、お兄ちゃんはバカなんじゃないだろうか。

 ネクラさんは引くほど頭が良いのに、こっちのお兄ちゃんは、頭は良いけど変な所で抜けている。

 しかも、部屋を掃除してるから分かるけど、そんな大量のぬいぐるみなんてどこにも置かれてない。一体どこに処分したというのか。


「あ、取ったやつはいらないから適当に転売してたよ。ゲーム始めるまでは、それでお金稼いでた」

「……はぁ。もういいわ」

「……?」


 ハイネスになんて報告したら良いわけ?

 うちのお兄ちゃんは、ゲーセンで調子に乗った結果、近くの店は軒並み出禁になってるって?


(いや、引かれるわ!)


 というよりも、クレンゲームってそんなにばかすか取れるはず無いんだけど……。

 頭が良いとか、あのゲームじゃ関係無いでしょうが……。


 いや、落ち着いて次にいこう。

 初恋の相手が居るんだったら、ハイネスに報告が出来る。

 あの子なら、ネット上に転がっているネクラさんの好みアンケートから、色々考えられるだろう。


 舞ちゃんはグッズ製作で忙しそうにしてるし、私は協力を惜しむつもりは無いから、出来るならグッズが販売されるまでに2人をくっつけたい。


「で? 初恋の人は?」

「……なんで初恋の人がいる前提で話が進んでるのか分からないんだけど?」

「なに、いないの?」

「いないよ……。ていうか、小学生の時はクレンゲームにあけくれて、中学生の時はアニメにどっぷりつかって、高校生の今はゲームにどっぷりの僕が、春香以外の女の子と会う機会なんてある訳ないじゃん」

「……じゃあ、この際アニメのキャラでも良いから。好きになった子とかいないの?」

「2次元と3次元を混合するほどハマりこんでないよ……。それに、僕はストーリーが好きだっただけで、キャラにはあまり興味無かったし」


 いや、前の家にいた時、がっつり2次元の女の子が印刷された服着てたじゃん。あれはなんだよ……。

 まぁ、アニメの女の子と結婚したいとか言われたらハイネスに諦める事を勧めたので、最悪な事態にはなっていないか。


(そういえば、お兄ちゃんってひねくれてるからなぁ。キャラの背景ストーリーに感情移入できなくて好きになれないとかなのかな?)


「ねぇ、お兄ちゃんってサイコパスなの?」

「……急に突拍子も無いこと言わないでほしいんだけど。どういう意味?」

「ほら、サイコパスって、200人に1人いるとか言われるじゃん? 反社会的サイコパスとか、そうじゃないサイコパスとか色々あるじゃん。それかなって」

「うん、説明になって無いと思うんだけど、どうして急にその話になるの?」

「だってお兄ちゃん、人の心読むの苦手でしょ?」

「……仮にも指揮官やってる人に言うようなセリフじゃないと思うよ?」


 いや、めっちゃ冷静に突っ込んでくるじゃん。

 別にサイコパスと一口に言っても、その中身は色々だ。


 ドラマで見たけれど、サイコパスは人より緊張しにくいから、爆弾処理とかを冷静に出来る……みたいなことを言ってた気がする。

 共感能力が低いとか……うん、私も詳しくは知らないや。


「……確かに、文章問題とかはちょっと苦手だよ。作者の気持ちとか、そんなの本人にしか分からないじゃん。あんなの、正確に言えば『問題を出した人が考えてる作者の気持ちを当てろ』って問題じゃん。そんなの、分かる訳ないよね? たとえ答えが間違ってたとしても、問題を出した人の解釈が間違ってて、僕の回答が合ってる可能性もあるんだしさ?」

「……はいはい。そうですね~」

「……まぁいいや。で、なんで急にそんな事聞いてきたの?」

「ん? 誰かさんが放置してるハイネスが可哀想だから、せめて情報収集してあげようかなぁ~って! 好きになる努力とか言っておいて、特に何もして無い誰かさんの代わりに、あの子になにかしてあげようかなぁって!」

「……何したら良いか分かんないんだから仕方ないじゃん……」


 じゃあ、好きになる努力するとか言うなよ。そう心の中でツッコミを入れる。

 ハイネスは何も言わないけど、お兄ちゃんから何もアクションが無い事に、内心不安になっているはずだ。

 一応告白の返事はもらっているけれど、その答えも曖昧な物だったし、余計不安になっているかもしれない。


 最悪、私があの子を貰うって選択をしても……


(いや、ダメでしょ! この家で3人暮らしとか無理! 気まずいわ!)


 もし仮に、お兄ちゃんがハイネスを振ったとしたら、私があの子をこの家に呼ぶのだってちょっとキツイ。

 私はお兄ちゃんのように色々割り切る事は出来ないので、気まずい雰囲気の2人を見るのは少し――いや、かなり嫌だ。


「とりあえず、遊びにでも誘ってみたら? テスト期間終わったら一緒にどこか行こうとかさ?」

「……それだけで良いの? ていうか、どこに行くのさ」

「それは2人で決めれば――いや、誘ってる側が決めるべき問題か。まぁ、一応行きたいところが無いか聞いてみて、それから決めれば良いんじゃないの? 相談には乗ってあげる」

「……それ、絶対しないとダメ?」

「私になにされても良いって言うなら何もしなくて良いんじゃない? どうせ、病院でハイネスと会えるんだし?」

「なにか考えておきます......」

「素直でよろしい」


 その後、ひとしきり勉強を教えて貰った私は、部屋に戻るとすぐにハイネスへと連絡を入れた。

投稿主は皆様からの評価や感想、ブクマなどを貰えると非常に喜びます。ので、お情けでも良いのでしてやってください<(_ _*)>

やる気が、出ます( *´ `*)

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