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第80話 交渉

 無人島の森の中へ晴也の絶叫が響いた直後、彼の元へさらに仲間の確保情報が届く。

 その知らせによると、捕まったのは囮班1人と隠密班2人の計3名。

 囮班の1人は、晴也が北側の浜辺へ向かうように指示した人だった。


 これで、彼の推測が概ね正しかったことが証明され、ついでに彼の考え得る限り最悪の事態が起こっていることが確定する。


(やっぱり、2人組みで動いてたのは囮班を警戒してか……)


 昨日の対ネクラの記事を見ている時、囮班のことも当然記されていた。

 そこには、異様に足が速く、身長の高いアバターがいたと書かれていたのだ。

 鬼が囮班を捕まえる場合、最速か、それに近いような設定じゃないと追いつけないと書かれてもいた。


 囮であると明言されてはいなかったが、賢いプレイヤーであれば隠れている者達をアシストする為の部隊だとすぐに気付くだろう。

 それに、ネクラが選抜したメンバーということも知っているはずなので、個々のプレイヤースキルが尋常では無く高いことも分かっているはずだ。


 鬼側は、足の速さを最速に設定するか、加速の能力を設定していないと捕まえることはほぼ不可能だ。

 まぁ、策を弄して相手を嵌める。なんて特殊な捕まえ方もあるけれど、この際それは考えないことにする。


 囮班を捕まえる為に相手が取り得る対策は、足の速さを最大にした鬼を1人ないし2人は揃える。

 もしくは、加速の能力を設定した鬼をチーム内に入れるだけでこと足りる。


 反対に隠密班の対策は、索敵の能力を設定するだけで足りるので、アバターの設定などに関してはあまり気にする必要は無い。

 何度も言うように、隠密部隊は隠れることを主目的としているので、見つかってしまえばそれまでなのだ。


 今回、相手が2人組みで動いているのも、恐らくはそれと関係しているのだろう。


 具体的に言うと、2人の内1人が索敵の能力を持っており、その人が隠密部隊を探す役。

 もう1人が、目の前にのこのこ現れた囮を捕まえる役。

 さらに言えば、隠密部隊が集合していた場合、取り逃がす可能性を少しでも減らす為の人材でもあるだろう。


 残り2人が別行動を取っているのは、2人のペアが2組いると、索敵班に鬼の居場所が筒抜けになってしまうからだろう。

 そうなると、いくら索敵の能力を持っていようとも、鬼の居る場所から子供が遠ざかっていくので、無駄となる可能性が高い。


 対ネクラチームの対策記事には、索敵班のことももちろん明記されていた。

 こちらの作戦が常時筒抜けになるのでうざったい存在。

 恨みがましくそう書かれていたが、どの部隊よりも先に潰すべき存在だとも書かれていた。

 これは、初めてハイネスさんにお披露目した時にも言われたことなので予想済みだったことだ。


 だが、この部隊は索敵や加速なんかで対処出来るような物じゃ無い。

 なにせ、狙撃手並みに遠くを見渡せる視力と、電話から聞こえて来るわずかな声でさえ拾う聴力を持っているのだ。

 僕やハイネスさんでも、どう対策すれば良いのかすぐには出て来なかったので、とりあえずすぐに対策されることは無いだろう。


 強いて言えば、索敵班が張っている場所を突き止めらると非常に……


「あ、ヤバくね? これ……」


 そう思ったのと、索敵班であるミラルさんの確保情報が届いたのはほぼ同時だった。


 開始してわずか12分、こちらのチームは半分近くが確保され、軽く壊滅状態だ。

 頼みの索敵班も1人になってしまったし、これで残り1時間強を耐えねばならないのだ。

 普通なら何とかなるかもしれないけれど、索敵と加速を持っている相手がいる時点でかなりキツイ。


(やられたなぁ……。残り1人の鬼が索敵に引っ掛かってないのを不自然に思うべきだった……)


 北側の浜辺しか見られないミルクさんはともかく、ミラルさんはかなり森を見渡せる位置にいた。

 つまり、浜辺に生まれたと思われる鬼が森の中に入れば、ほぼ確実にミラルさんの索敵に引っ掛かるはずなのだ。

 事実、2人組みの鬼と行方不明だった1人を除く、もう1人の鬼はミラルさんの索敵に引っ掛かっている。


 つまり、相手チームの鬼は、対ネクラの記事を見て索敵班の存在を知った。

 無闇やたらに動くと自分の場所を特定されかねないので、まずは他の鬼に森の中に入ってもらい、囮役や隠密役の数から索敵班に位置バレしているのかを確認する。


 ネクラならば、鬼が居る方向へ囮役を向かわせ、隠密班は遠ざけるはずだ。

 なので、3人が森に入ってからの情報を残った1人が収集したのだろう。




(それで、2組みじゃない方の鬼の前には隠密班がいなかった。なら、その鬼の近くで索敵出来るポイントを探せばいい。狙撃手と同じで、索敵班は索敵しやすい場所に陣取るはずだから、縄文杉に当たりを付けた……。やるなぁ……)


 唯一相手の相定外だったことと言えば、隠密班はそもそも移動なんてしない部隊だったというところだろうか。


 隠密班は、近くに鬼が居ると分かっても容易には見つからないので場所を移動しないのだ。

 その思い違いが、ミルクさんを守ったと言っても良い。


 2組みの鬼が向かった先には、何人かの隠密班がいたので、索敵班の索敵には引っ掛かっていないと思っているのだろう。


 恐らく、ミラルさんを捕まえたのは瞬間移動の能力を持っていた鬼だろう。

 浜辺から移動することなく、索敵班の居場所に当たりをつけて瞬間移動する。

 ミラルさんは、姿の見えない鬼にやられた、ということか。


 もちろん全て推測の域を出ないけれど、大きく間違ってはいないだろう。

 鬼の全員が浜辺で生まれていることから、子供全員が森の中にいること。

 そして、自分が始めから索敵班の目に留まっていないと確信できる自信と、数分で索敵班の場所に当たりをつけることが出来る頭脳。

 相手の指揮官(ミラルさんを捕まえた鬼)は、かなりのやり手だ。


「……げっ!? 春香……」


 どんよりしていると、追い打ちをかけるようにライから着信が入る。

 情報から考えるに、ライが鬼に追われているとは考えにくい。


 1人の鬼は縄文杉付近に居るはずだし、もう1人は囮役の別の人を追っている。

 2組みの鬼はまた別の囮役の人を追っていると情報が入っている。


 これは、考えたくも無い脅しか何かの電話だ。

 まぁ、出ないと試合が終わった後に殴られそうなので出るしかないのだが……。


「……はい、もしもし?」

「お兄……ネクラさん、これは、何が起こっているの?」

「……多分、負けた。勝ち目ナシ」

「……そういうこと聞きたいんじゃないの。何が起きてるの?」

「僕の作戦が、早くも対策された結果だと思う。唯一可能性があるとすれば、囮の人達が逃げ切る、とかかな?」


 僕の想像が正しければ、相手の鬼は2人が索敵の能力を持っていて、もう1人は瞬間移動、残り1人が加速だ。


 ならば、捕まえる為の能力が少ないので、足が速い囮役の人達が逃げられる可能性がある。

 隠密班は大体捕まってしまうかもしれないけれど、結局2人が逃げ切れればいいので、囮班が逃げ切るという選択肢を取っても良いのだ。

 まぁ、加速の能力を持った相手がいるので、簡単にはいかないだろうが……。


「じゃあ、なんでそう指示を出さないの? 諦めるより先にやることがあるんじゃない?」

「確かにその通りだけど、今囮役の人を逃がそうとすると、強制試練が出た時に詰む可能性がある。森の中に居る隠密班の人がほとんど捕まってしまうからね。試練や強制試練がクリアできない可能性が上がるとなると、安易に指示が出せないんだよ」

「それでも、このまま戦ってたらジリ貧になるだけなんじゃないの?」

「……怒らないで聞いてほしいんだけど、これ以上こっちの手の内を見せるよりは、わざと負けるのも手だと思う。対応が間に合わなかったと思わせれば、こちらが大したことないと思ってくれる可能性もあるしね」


 自分の考えた作戦が失敗した時、人は以下のパターンに行動する。


 自棄になって無茶苦茶にする。

 大人しく諦める。

 焦って余計に事態を深刻にする。

 次の機会に向けて布石を打つ。


 僕は、このパターンでいうところの2つ目と4つ目の思考の持ち主だ。

 大人しく諦めるけど、次の機会に向けて必ず役に立つであろう布石を打っておくのだ。


 相手がネクラのファンではなく、ネクラを脅威と見ているチームであれば、ここで対策案を講じなければこう考えてくれるだろう。


『世間では色々言われてるけど、ネクラも大したことないな』


 ネクラのファンに聞かれたら戦争になりそうな言葉だが、すぐに対策案を用意できない人間は恐れることなんて無い。そう思ってくれるかもしれない。

 なので、打開出来るかもしれない策はあるけれど、限りなく分の悪い賭けになる。

 すぐに対策を立てて、博打を打ってきた策師と捉えられるか、対策も立てられずにアワアワしているだけの無能と捉えられるかの違いだ。


 世界の頂点を目指している僕達だけど、このネクラ杯で負けたところで日本予選に出られなくなるわけじゃない。

 なら、後の日本予選に向けて布石を打っておくべきだ。


 一度大したことないと思った相手に警戒するというのは、余程のプレイヤーでなければ難しいはずだ。

 そして、余程のプレイヤーであれば、わざと負けたかもしれないという考えが少なからず浮かぶだろう。


 つまり、強豪と言われているプレイヤーを大したことないと思えるのは、その人以上に力を持っているプレイヤーか、単なる愚か者なのだ。


「こう言っちゃ悪いけど、相手のチームは僕らが対戦した相手からの情報を確認して、そこから対策を立てたにすぎない。指揮官の頭は良いだろうけど、それでも僕らに勝てたというのは自信に繋がるはずなんだ。だから――」

「もう良い! 話が長いし、難しいからよく分かんない! ただ1つ聞くよ? ハイネスが勝ったらどうするの?」

「……多分、このままのペースでいけば1時間とちょっとで僕らが負ける。僕がハイネスさん以外にそんな簡単に負けるはずが無いから、事態を察して負けてくれると思う。まぁ、無理だったら次は次で考えるさ」

「……そう。なら、欲しい物リスト送っとくから、よろしくね」


 そう言って、春香は電話を切った。

 まぁ、殴られるのと欲しい物リストから何かを買うの。

 どっちが良いかと言われたら後者なので、交渉の結果はまずまずと言ったところだろう。

 帰って殴られない保証はどこにもないけどさ……。


 その1時間8分後、晴也以外の子供が捕まったことで子供側は敗北した。

 相手が索敵の能力を持っていても捕まらなかった晴也にチームメイトは呆れていたが、ライだけはネクラを何とも言えない表情で見つめていた。

データが消えちゃったので少し遅くなりました。

前回月曜日だとすっかり忘れていた件についても改めて謝罪させてください。

申し訳ありませんでした!<(_ _*)>



投稿主は皆様からの評価や感想、ブクマなどを貰えると非常に喜びます。ので、お情けでも良いのでしてやってください<(_ _*)>

やる気が、出ます( *´ `*)

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