第72話 第1試合 結果
最初の試練が終わって1時間程が経ち、隠れ場所を変えずにずっと潜んでいた晴也は、自分達の勝ちを確信していた。
相手のレベルが低いということももちろん影響しているだろう。
しかし、それ以上に索敵班が強すぎて、まだ誰1人として確保されていないのだ。
鬼は、どこから来るか分からない。その恐怖に立ち向かい、ゲームをクリアしろ。それが、このゲームの謳い文句だ。
それを真っ向から否定――打ち破っているのだ。ヌルゲー以外の何者でもないだろう。
囮役の人達も、そのプレイヤースキルは一級品であり、たとえどんなに不利な状況でも圧倒的にプレイヤースキルが下の人達には捕まらない。
サッカーのプロ選手が本気を出せば、始めたばかりの初心者がボールを奪うなど無理だろう。
今現在、それと同じ状況が起こっているのだ。なんだか、相手が可哀想になってくる。
(このゲームを嫌いになっても、僕達の悪評を流すのは止めてね……)
この大会が終わった後、チート行為でも疑われようものなら弁明をするのが面倒なほど粘着される事になる。
このチームに所属している人以外で庇ってくれる人など知らないので、そうなると豆腐メンタルの僕にはかなりダメージが……。
そんな呑気なことを考えているうちにゲームが終了し、結局誰1人捕まることなく試合は終了した。
僕の作戦がうまくハマるとこうなるっていうのは分かったけれど、相手がいたたまれない……。
どれだけ探そうが、見つかるのはおんなじような格好をした人だけ。しかも、その全員がめちゃくちゃ強いっていう……。
(なんだそれ、クソゲーじゃん)
自分がそんな立場に立たされた場合のことを考えると、二度とこのゲームをしなくなるほどの衝撃を受けるだろう。いや、間違いなくそんなことを考える。
ちなみに、鬼の方は開始30分で全滅させていたらしく、あっさりと1回戦を突破した。
マイさん、いくら相手が弱いと言っても、1人で13人捕まえるのはどうかと思いますよ……。
「だって、シラユキさんとハイネスさんの指示に従うだけで、行く先々に子供が居るんですもん! 楽しくなっちゃって!」
「あ~、それは自分も思ったっす! 言われた通りの場所に行ったら、なんか知らないけど子供が居て、ダラダラ追いかけてたらいつの間にか終わってました!」
待機部屋でそんな話を聞いた時の僕の気持ちを表す言葉は、きっとこの世には無いだろう。
終始ニコニコしているハイネスさんがめちゃくちゃ怖い。
トーナメント表はコンピュータで自動管理出来るようトウモコロシさんに設定を行って貰ったので、こうして駄弁っていられるのだが、逃げ出したくなってきた……。
それよりもあの野菜アバターの人、現実では大手IT企業の管理職だったのが予想外だった。
しかも、今回の件といい、解説動画の件といい、なんで個人的な依頼を無償で引き受けてくれるのか。ちょっと理解できない。
まぁ、理解できないのはハイネスさんも同じなんだけどさ......。
(なんでこんな天才で可愛い子が、僕なんかのことを好きなんだ……?)
生意気にも、そんなことを考えてしまう。
漫画でも創作物でもないこの現状、夢だとしか思えないんだけど……。
「なんですか? 私の顔になにか付いてます?」
「……あ、いえ! ただ、なにをされたのかなと……」
「簡単ですよ! シラユキさんから予測を聞いて、私が相手を特定の場所まで誘導し、そこを2人に叩いて貰っただけです!」
明らかに満面の笑みで語るような内容じゃないのだけど、そこは突っ込んではだめだろう。
それに、これを聞くと異常なのはシラユキさんな気もしてくるから不思議だ。
春香と仲良さそうに喋っている彼女、その戦い方を面白いと考えてチームに誘ったのは正解だったかもしれない。
「ネクラさん、ただ1つ、気になることがあるんです」
「……どうしました?」
「彼女、この大会で妙に自信を付けちゃわないですか?」
「……あ~それは、確かにありますね」
「ですよね! そこが、ちょっとだけ心配で……」
自信が付くのは別に悪いことではないし、むしろ良いことだ。
だが、それで天狗になると言われると話は変わってくる。
言い方は悪いが、彼女のランクマッチでの勝率はこのチームでハイネスさんに次ぐワースト2位。
ハイネスさんは経験豊富なので問題は無いだろうが、彼女は大会に出た経験などあまりないだろう。
その上で、統括してくれる存在がいて初めて発揮される彼女の能力。それを、自分が凄いと思い、増長するのであれば非常に危険だ。
日本の中で戦っている分にはハイネスさんがサポートしきれるだろうが、海外ではどうなるか分からない。
その面から考えてみても、彼女の精神面のケアは早急にどうにかしなければいけない問題なのだ。
「どうします? そろそろ次の対戦が始まりますけど……」
「次の対戦相手は、どこでしょう?」
「トーナメントはある程度暗記してますけど、流石にどちらが勝ったかまではまだ把握して無いです」
「……では、次に戦う可能性のある人達の段位は?」
「確か、どちらも平均9段ですね。片方には子供に最高峰が5人ほどいたはずです」
正確な情報では無いかもしれないが、一応そう伝える。
どちらのチームも、小さな大会であれば優勝を狙えるチームということを伝えられれば御の字だ。
つまり、先ほどのような初心者ではなく、ガッツリこのゲームをやりこんでいるプレイヤーなのだ。
子供と鬼、双方楽には勝てないだろう。
「……では、彼女のメンタルケアも兼ねて、テストしましょうか。ネクラさん、1試合目だけは、必ず勝ってください」
「……何をする気ですか?」
「それは秘密です。とにかく、問題無いとは思いますけど、必ず勝ってくださいね」
可愛らしくニコッと微笑むと、ハイネスさんはそのままマイさんとミナモンさんに何かを伝えに行った。
大体想像は出来るけれど、そんなにプレッシャーをかけられると、こっちは辛いんですけど!
「お兄――ネクラさん、ハイネスと何話してたの?」
「……次、絶対に勝ってくださいと」
「それ以外には?」
「......いや、特には?」
「……あっそ。さっさと気持ち決めないと張り倒すから」
「殴るの間違いじゃ――」
「なんか言った?」
「なんにも!?」
ギロッと鋭い目つきで睨まれると、背中に嫌な汗が広がる。
これ、僕が気持ちを固めるまで続くの……? キッツ!
こんなだから男が寄ってこないんだよ……。
「なんか、ムカつくこと考えて無い?」
「そ、そんな訳ないじゃん! ほら、もうそろそろ始めるってよ!」
「……」
そんな不穏な空気の中、第2試合が始まった。
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やる気が、出ます( *´ `*)




