表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

67/322

間話 偶然が重なった結果

 ネクラとライが兄妹である。その衝撃の事実が2人に伝えられる数分前、ちょうど、ハイネス達3人が応接室に入ったタイミングでギルドへとやってきた少女が居た。

 その少女の名はマイ。最近話題の女王であり、大会で今のところ負け無しという戦績を誇っている少女だ。


 彼女はネクラがゲームにログインしたとの通知が来たので、久しぶりに2人で話そうと思いギルドに来たのだ。

 しかし、スキップしながらギルド内を回っても、目的の人の姿は見えない。

 唯一”使用中”の札がかかっている応接室は閉まっているけれど、この中にいるのだろうか。


 彼女が応接室のドアを叩こうとしたその瞬間、信じられない言葉が聞こえて来たことにより、彼女の手が空中で止まる。


「私は、ネクラさんのことが好きです!」


 この声は確か、ハイネスさんだ。

 自分が運営しているファンクラブに所属していて、数いるネクラさんガチ恋勢の1人。

 まさか、これって……?そう思うと、もうドアを叩く勇気はでなかった。

 ただ、ドアに耳を当てて、必死に中の会話を聞くことしか、出来ることは無かった。


「恋愛的な意味でですか?」

「はい! そうです!」


 やっぱり予想した通り、告白しているみたいだ。

 急いで誰かに見られないように隣の個室へと移動し、机の上に置いてあった小さなガラスのコップを壁に向け、そこに耳を当てる。

 前にドラマで見たことがある。こうしていると、隣の部屋の会話くらいなら聞くことが出来ると。


 そしてそれから話を続けていると、どうやら隣にライさんもいることが分かった。

 さらに言えば、ネクラさんはネット恋愛には否定的で、この告白にも難色を示しているみたいだ。


(良かった……。まだ、私の入りこめる隙がある……)


 ここでネクラさんとハイネスさんが付き合ってしまうような展開になれば、私は身を引くしかなくなる。

 私はハイネスさんほど高スペックな女じゃないので、彼女に勝てる要素が無い。


 唯一人見知りでは無いので、その点だけ勝っていると言えば勝っているけれど、頭の良さという点では叶わない。

 その他、女の子としての魅力という点でも、私は絶望的にそれが無い。


 そう悲観に暮れていると、ハイネスさんがさらに信じられないことを口にした。

 なんと、ライさんとネクラさんが兄妹だと言う。

 当然2人ともそれを否定し、場は騒然となる。


(ハイネスさんは、一体なにを……)


 ネクラさんと現実であったこともあると言っていたし、彼女を知らない人が今の彼女を見ると、完全にやばい人だ。

 だけど、私はハイネスさんと一緒にプレイしたこともある。

 あの人は、言うこと全てに必ず納得出来るような根拠がある。

 なら、この話もあながち……。


 それから話を盗み聞きしている限り、2人は限りなく同じ状況であると言うことが分かった。

 そして全てを結び付けると、私も2人が家族であるという話には納得出来た。

 唯一納得していないのは、当事者であるネクラさんとライさんの2人だ。


「……ハイネスさん。一瞬だけ離席してもらえますか?」


 ネクラさんの真剣な声が聞こえる。

 ここまでくれば、私も何をしようとしているのか想像が出来る。

 多分、お互いの本名を教えて確認するんだろう。

 一瞬私も耳を塞いだ方が良いかなと思ったけれど、ネクラさんの本名が知りたい。その興味に負け、そのまま聞いてしまった。


「春香です!」

「晴也です!」


 その名前を聞いた瞬間、私は雷に打たれたような衝撃を受けた。

 今まで話を聞いていた限り、2人は最近引っ越して、駅前の高層マンションに住んでいるということが分かっている。


 そしてライさんに関しては、ブランド物のバッグを持っているとも言っていた。

 極めつけは、春香という名前。

 私には、最近引っ越し、駅前の高層マンションに住むと嬉しそうに言っていた友達がいる。


 しょっちゅう嬉しそうに高そうなバッグを自慢しに来る可愛い笑顔が印象的な、あの子だ。

 付け加えるなら、その子には晴也というお兄さんもいる。


(確か、あのお兄さんは頭が良いって……)


 1回だけ、その友達がお兄さんについて話したことがある。

 意味が分からないくらい頭が良くて、世間的に見れば優良物件なのにひねくれているからムカつく……と。


 まさか、そんな事ってある……?

 昔からの友達がライさんで、そのお兄さんがネクラさん……?

 世間は狭いって、本当なんだ……。


(こうなったら、急いで確認――の前に、ハイネスさんの件は……)


 急いで本人に確認したいけれど、ハイネスさんのことをどうするのか聞いておきたい。

 こうなると、ハイネスさんがネクラさんと会っていたことに関しては間違いなさそうだ。

 だけど、私も片手で数える程度はお兄さんと会っている。その点では互角と言って良い。


 そして私は、ハイネスさんと同じくらい、もしくはそれ以上にライ――春香ちゃんとは仲良しだ。

 しかも、ただネットでの繋がりしかない彼女が、しょっちゅう家に出入り出来るとは限らない。

 なら、ここでネクラさんが断るなら、私の方がまだチャンスがある。


 私が好きなのがネクラさんなのか、それとも晴也さんなのか。

 そう聞かれるとすぐに答え出せないけれど、憧れの人を何も出来ずに取られるのは癪だ。何か手を打ちたい。


 私にとって幸運だったのは、ネクラさんがその場で答えを出さなかったことにより、春香ちゃんに状況を聞くことが出来るようになったことだ。

 自分の正体も教えたら、多分協力はしてくれるだろう。

 ハイネスさんと私、どっちを取るかはまだ分からないけれど、小さい頃から一緒なんだし、そのことについては問題視していない。


 グッズの方ももう少しで完成するし、その件でお家にお邪魔したいとでも言えば、晴也さんとも会えるはずだ。

 その時に、改めて今回のことについて聞いてみよう。

 出来るなら自分の正体も明かして、一気に距離を詰めるんだ。


 いや、出来るかできないかじゃない! 

 やらないと憧れの人を取られるんだ!

 頑張れ舞!

 そう自分の心に言い聞かせ、私はログアウトした。

投稿主は皆様からの評価や感想、ブクマなどを貰えると非常に喜びます。ので、お情けでも良いのでしてやってください<(_ _*)>

やる気が、出ます( *´ `*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ