第63話 答えの求め方
現実世界に戻った晴也がまずとった行動。それは、部屋の隅に置いてある冷蔵庫からプリンを取り出し、食べることだった。
ここ数十分の間に色々ありすぎて、脳がショートしている。
そろそろ在庫が尽きそうなので、今度買ってきて貰わなければ……。
完食するのに5分もかからず、つかの間の休息は終わりを告げた。
現実逃避はこのくらいにして、真面目に考えた方が良さそうだ。
ハイネスさんに告白された件。どう返答するか。
自分の中で答えは半分出ているのだが、これで良いのかどうか。確証が欲しい。
今の時代、こういう時には答えを求める方法というのがちゃんと用意されている。
それは……
〖人生で初めて告白されたのですが、相手に恋愛感情を持っているか不明な場合、どうすればいいのでしょう?〗
昔でいうところの知○袋的な所に書き込むことだった。
答えは半分出ている。
その上で、自分の考えは間違っていないのか、その確証が欲しい。
恋愛経験が無いので、こういう手段しか取ることが出来ないのだ。
1人でいくら考えても答えがでない。
そう悟った場合は変にこだわらず、人に聞くのが1番合理的だ。
道に迷ったら携帯に聞くように、人生で進む道に迷った場合、その道を通ったことのある人に聞くのが1番良い。僕はそう考えている。
そして、数分でその質問に数件の回答がついた。
そのほとんどが、今時マッチングアプリが腐るほどあるのだから、恋愛感情なんて無くとも付き合って問題無い。という物だった。
しかしその中に1つ。毛色の違う物があった。それは、こんなものだ。
〖相手の事を少しでも知っているのなら、その相手が自分にとって理のある人なのか。それを考えた上で判断します。
好意のあるなしに関わらず、理があるのなら付き合います。
質問者さんが相手の事を考えたい気持ちも分かりますが、告白してきている時点で相手方はこちらの性格をかなり分かっているはずです。ならば、こちらがどうすれば好きになるのか。それを考えて行動に移してくれると考えます。
告白されているのだから、それくらいドシっと構えても問題無いかと。もちろん、全てに『私なら』という一文が付きますが……〗
多分この回答者、国語の問題得意だろうな……。特に、筆者の気持ちを答えろとかいう訳のわからん問題を解くの……。なんて風に考えてしまった。
こちらが欲しい回答をしっかりと把握したうえで自分なりの考えを出してくれている。
僕が欲しかったのはこういう答えだ。
出会い系のアプリが腐るほどあるので、恋愛感情は関係無い。そんな一般的な回答なんて求めていないのだ。
考え方が古いと言われても仕方ないけれど、出会い系のアプリで出会うことにあまり賛成していない派な僕からしてみれば、そういう人の意見はあまり参考にならない。
そしてなにより、この人の文面には理解でき、そして共感出来る部分が多い。
こちらが相手のことをよく知らなかったとしても、相手はこちらのことをよく知っているから告白してきているのだ。
もちろん例外もあるだろうが、ほとんどの場合はそうだろう。
なら、この人のようにドシっと構えておくのも間違ってはいないのかもしれない。
もちろんこちらも付き合うからには好きになる努力はするべきだろう。
しかし、向こうは告白してきているのだから、好きになって貰う努力もしてくるはず。その過程で好きになれば問題は無いという部分に関しては、なるほどと言わざるを得ない。
そういう考え方もあるのかと、少しだけ参考になる。
(決めた……。やっぱり、僕の考え方は間違っていないと思う)
そう確信した僕は、その回答者さんにお礼を述べ、ハイネスさんへと告白の返事を出した。
その20分後、僕はリビングに呼び出され、再び尋問されることになった……。
――ハイネス視点
DMに表示されているネクラからの返事。それを読み終えた少女は、ソファに倒れ伏した。
数日前にネクラの好みを無事に聞き出し、相手に避けられていると勘違いさせる。
そして、ライへと相談させる。ここまでは完璧にうまく行っていた。
実際ネクラはその通りに行動し、2人が兄妹であることも知らせることが出来た。
少女は、そのタイミングで告白したならば、すぐに答えは出せなくなるということも理解していた。
城を攻略する上で、こちらが被害を受けないという保証はどこにもない。ならば、あらかじめ多少の被害を受けることを想定に入れておけば良い。
相手からの返事を少しでも遅らせること。
その間は不安な気持ちに駆られるだろうが、自分の作戦が全て上手く行っているのであれば、絶対に攻略出来る。
自分の策は完璧だ。予想外のことが起きたとしても、多少は修正可能だ。そう考えていた。
自分がログアウトした後ネクラさんが取る行動としては、現実世界かVR。どちらの世界でかは分からないが、ライに相談するだろう。
ネクラさん自身には恋愛経験が無いため、人に聞いて意見を求める。あの人はそういう人間だ。
ここも、あらかじめライの恋愛観を聞いているので問題は無く、むしろ城を攻略する上でかなり助けになる部分だ。
ただでさえライは、ありがたいことに私に協力的だし、相手がお兄さんだとしてもその意思は曲げない。恐らく、私の味方になってくれる。
そこまで考えていた。
そして実際、掲示板でも似たような相談が書き込まれていた。
やはりネクラさんは、困ったら1人で解決しようとせず、周りに頼る癖がある。なら、そこを利用すれば良い。
別に、嘘は書いていない。
実際、私が同じ状況に置かれ、他に好きな人がいない場合は書き込んだような行動を取るし、その心理が働く。
お礼も言われたし、何もかも完璧に運んだ。それなのに、ネクラさんから返ってきた答えは、私の望む物では無かった。
いうなれば、天守閣一歩手前で予想外の援軍が到着し、そのまま敗北したような、そんな気分だ。
策を弄し、想定していた以上の犠牲もなく攻め込んでいたにも関わらず、最後の最後で負けたのだ。
厳密には振られたと言うより、答えを先延ばしにされた感じではある。
しかし、その理由には納得いく物があった。
それは、私が書き込んだ内容と、酷似していたのだから……。
〖ハイネスさんのことを好きかどうか。これは自分の中でまだ答えが出ません。付き合ってから好意を持てばいい。そういうのは簡単ですが、その間は辛い思いをさせてしまうかもしれません。ハイネスさんが大丈夫と言っても、私はそれを素直に受け取ることが出来ないでしょう。なので、私がハイネスさんに好意を持ったら、改めてこちらから告白させてください〗
ネクラさんから来た答えはこんな物だった。
私は、とりあえず付き合ってから好意を持てばいい。そう考えるタイプだ。
しかしネクラさんは、それだと相手を傷つけてしまうかもしれないので、あくまで付き合うのは好意を持ってから。そんなスタンスを貫いたってことだ。
私やライの……それに、その他複数人の恋愛観を聞いたところで、自分の主張を曲げず、私を傷つけまいと改めて告白するとまで言ってくれた。
戦いには負けたけれど、生きて返してくれる。
それどころか、武器や防具を取ること無く、そのまま生きて帰して貰ったような、そんな感じだ。
私の今の感情を表す言葉は、多分この世界には無いだろう。
今すぐには付き合えないけれど、私の頑張り次第でどうとでもなると分かり、安心している。
策を弄してもなお、攻略できなかった城に対する悔しさ。
そして、あくまで流されずに自分の主張を貫いたネクラさんに対する気持ち。
『告白させてください』という一文があることで、とてもつもなく湧きあがってくる幸福。
私はその夜、心臓の高鳴りが収まらず一睡もできなかった……。
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