第53話 嬉しい誤算
家に帰った私はそのままリビングに置いてあるソファにダイブし、さっきまで一緒にいた男の人を思いだして深いため息をついていた。
ライはもの凄く良い人で、ゲームの中と同じように私のお姉ちゃんみたいな人だった。
そしてそれ以上に、ネクラさんがあんな人だった事に私は隠しきれない喜びを感じていた。
話は変わるけど、私の好きな男の人について話す。
歳は私より1つ、最高2つ下の人。
背は私より高くて170以下の人。
髪は染めておらず、出来れば黒髪。
どちらかと言えば私と同じで人見知りな人。
1番譲れないのは、私より頭が良くて理性的な人。これさえ当てはまっていれば、体系やその性格の大部分は目を瞑る。
話は戻ってネクラさん。
彼は、私の好みドストライクな人だった。
多分、ネクラさんと知らなくても好きになったと思う。
歳は私の1個下で、私より背が高く、見たところ160とちょっと。
髪は染めていなくて綺麗な黒髪。
そして初めて家にお邪魔した時の反応的に人見知り。
そして何より、かなり知的に見えた。まぁ、ネクラさんなので頭は良いんだけどさ……。
(なんであんな人がネクラさんなんだろう……。最高すぎる……)
元々その性格と態度の良さから結構な好青年という事は察しがついていた。
女の子に慣れていない様子も演技とは思えないし、自分の頭が良い事をある程度自覚していながら、傲慢な態度は一切取らない。
そんな好青年。好きにならない女の子の方が少ないだろう。
しかも、顔もある程度整っていて、その声すら優しさを感じる落ち着いた声だった。
私は自慢じゃないけれど、かなり面食いで声フェチでもある。
そんな私が、あの人には満点に近い点数を出しても良い。そう思えるほどの人だった。
(どんな人なのか色々想像してたけど……予想以上だったなぁ……)
最悪、ゲーム内の立ち回りは全て演技で、女の子を複数人抱えて笑っているような人だった場合は、即座に逃げていた。
私の憧れの人が、実際はそんな人だったなんて受け止められないから……。
私は、小説に出てくるような都合の良すぎる女にはなれない。
私より頭が良くて人見知りな人が好きなのは、そういう人は浮気なんて絶対にしない。
いや、人見知りだとそもそも出会いが無く、浮気をしたくてもできないからだ。
最低最悪な性格だろうが、顔が良くて人見知り。そして、頭が良ければ私は受け入れる。大袈裟かもしれないけれど、私はそう考えていた。
だけど実際は、人見知りの私に対してかなり気を遣ってくれたし、私が居て欲しいと言えば言う事を聞いてくれるほど良い人だった。
正直、理想的すぎて怖いほど素敵な人だった。
何であんな人に彼女が出来ないのか。それは恐らくだけど、そもそも出会いが無いのだ。
女の子に興味が無い訳ではないのはアニメや創作物が好きと言っていたので否定出来る。
ならば、学校に行っていないと考えた方が自然だ。
実際、ライは前に1度だけ愚痴った事がある。
知り合いに、不登校の癖にテストの度に学年1位を取るバカみたいな人がいると。
恐らく、それはあのお兄さんの事だろう。
間違っている可能性もあるけれど、ネクラさんもかなり頭が良い。なら、その可能性は十分にある。
(それにあのお兄さん、喋り方からしてかなり頭良さそうだったし……)
持論だけど、頭の良い人とそうでない人の違いは喋り方にあると思っている。
喋り方とは、見た目の次に他人と触れ合う機会が多い物だ。
ならば、そこまで気を遣える人はそれなりに頭が良い。私はそう考えている。
ただただ自分の言いたいことだけを並べ相手に喋らせない人は元より、相手にずっと喋らせ続ける人も自分で考える事を放棄しているように感じるのでそこまででは無い。
人の話を最後まで聞かない人や、こちらが話している時は注意散漫になる人。そういう人もあまり頭が良いとは言えない。
では、どんな人が私目線で頭が良いと言えるのか。
それは、感情に任せた討論をせず、かつこちらの意見に真剣に耳を傾け、それなりの意見。相槌なんかでは無く、その時思った事を素直に、そして正確に伝えられる人だと思う。
ネクラさんはそれがキチッと出来ており、とても人見知りだとは思えない程理論的でよく喋る人だった。
私は、好きな人とは何時間でも話せるタイプだ。
それこそ、どんな退屈な内容だろうと、相手が自分よりも賢くて、自分が好意を抱いている人物であれば1日中だって語りあえる。
これは勝手な推測だけど、ネクラさんも恐らくそんなタイプだ。
(好きな女性のタイプまで聞ければ……いや、そもそも女の子には免疫がないから、そこまで考えたことが無いかも?)
好きなタイプは無い。好きになった人がタイプの人だ。
こんな事を言うのは、誰でも良いから彼女にしたいような人だけだ。
大抵の人はその程度に違いはあれど、好きな女性のタイプはあるはずだ。
ネクラさんがもし、バカっぽい人が好きと言うなら、多分私は恋愛対象になれない。
そもそも、ライと私の関係上、そんなに何度も会える訳でも無い。
数少ないチャンスの中でネクラさんという強固な城を攻略した暁に、あの人が私の物になってくれる。
だから、私はネクラさんと会うチャンスを1回たりとも無駄にするわけにはいかないのだ。
そうと決まれば、私が取るべき行動は1つ。
城をそのまま攻め落とそうとするのは愚策だ。こちらはまだ何の情報も手に入れていない。
まずは、相手の事をよく知ることからだ。
ゲーム内のネクラさんを私以上に知っている人はそうそういない。
なら、今度は現実世界で良く知っている人に聞けば良い。
「もしもし? ライ?」
「ん~? どうしたの? さっきぶり!」
「あのさ、ネク――お兄さんってどんな人なの?」
「……ん? なんで?」
「いや、ライのお兄さんって……どんな人なのか、ちょっと気になってさ」
今日会ったばかりのお兄さんを好きになりました。そんな事は言えないので流石にボかす。
お兄さんの正体がネクラさんだと知っていれば、ネクラさんの大ファンである私が好きになってもおかしくないと納得してくれるかもしれない。
だけど、知っている可能性はかなり低いので、今回はそこを伏せて攻略するしかない。
妹さんに話していないのはネクラさん本人の意思かもしれないし。
というか、話していないとしたら間違いなく本人の意思だ。私がバラして良いものじゃない。
何で知ってるの?って引かれたくないし……。
少なくとも、時期とタイミングをよく考えてから出ないとバラしてはダメだ。
「お兄ちゃんがどんな人か……? 人畜無害で大人しい人……かな?」
「じ、人畜無害……?」
「うん。男としての魅力が全くない人だよ」
「……ライは、どんな人がタイプなの?」
少しムッとするけれど、ライはお兄さんがネクラさんだとは知らない。なら、まだ我慢できる。
好きなタイプがネクラさんとかけ離れているようなら、その人の好みの問題だ。私が怒る事では無い。
「私より強い人かな。どんな分野でも良いけど、私より強い人」
「性格とか……そういうのは?」
「ん~。笑わないでね? 私って、自分で言うのもなんだけど、どんな事でも人並みには出来るのね? だから、どんな分野でも私より強いなら性格なんてどうでも良いかなって感じ。ただ、勉強が出来るとかそういうのは無しね? あくまで”強い”だから」
「へ~そう、なんだ……」
やはり、ライはかなり特殊な考えを持っている人らしい。
自分の好みでは無くて、なおかつお兄さんなら別に魅力的に見えてなくとも全然不思議ではない。
むしろ、自分の兄を男として魅力的と見ている妹なんて、創作物の中でしか存在しない幻の人だ。短気を起こさなくて正解だ。
「じ、じゃあ……お兄さんも、そんな感じの人がタイプなの、かな?」
「お兄ちゃん? どうだろ~。そんな話したこと無い~」
「ご、ごめんけど……聞いて貰えない? 私、男の人とあんまり関わったことが無いから気になっちゃって……」
「ん~。まぁ、ハイネスの頼みだから良いよ。ちょっと待ってて」
ダメ元で頼んでみた結果、なんと直接聞いてくれるらしい。
これで、私が恋愛対象なりえるのか否か分かる!
心臓の高鳴りが抑えられず、電話の向こうで何か話している声が聞こえてくるけれど、その声が何を言っているのか、正確には分からないのがまたもどかしい。
「ごめん~。ちょっと時間かかっちゃった」
「ううん。それで? どうだったの?」
「えっとね、自分より頭が良くて、しっかりしてる人だって」
「そ、そう……。ごめんね? 変な事聞いちゃって……」
それから少しだけ世間話をした後通話を切った私は、再びソファに顔をうずめた。
私は……ネクラさんの恋愛対象にはなれない。その絶望感に押し潰されていたのだ。
ネクラさんより頭が良くなる自信なんて無いし、人見知りなのにしっかり出来る訳も無い。
頑張れば性格は変えられる。それは綺麗事だ。
頑張った程度で変わる性格は、その人の本当の性格では無い。私はそう考えている。
私は、ずっと憧れていたネクラさんに勝手に振られたと思い、少しの間絶望の淵にいた。
新たな策を、思いつくまでは……。
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やる気が、出ます( *´ `*)




