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第50話 反省会

 ゲーム開始から1時間37分が経過し、強制試練中の子供が捕まった事で練習会は終了となった。

 結局、子供の残り人数は10人とかなり多く、強制試練がもう少し早く出ていれば勝てていた。そんな内容の試合だったと子供の面々は思っていた。


 そして今、会議室にて練習会で見えてきた大きな課題についての話し合いが行われていた。

 その進行はハイネスであり、ネクラは自分の失態だと下を向いていた。


「ではまず、私達鬼の課題ですが、作戦内容の単純さと練度不足を感じました。このどちらとも、解決法はやりこむしかありませんので、鬼側の皆さんはこれからもちょいちょい協力してくださいね」

『はい!』

「次に……あの、ネクラさん。私から……話しても良いのですか?」


 恐縮といった感じで尋ねるハイネスに、気まずそうに頷く晴也。

 これは、自分で言うよりも他人から言ってもらった方がそれをより認識出来るとの判断でもあり、自分の未熟さを戒めるためでもある。


「ネクラさんは作戦立案時、どうしてもアバターという前提を忘れています。そして皆さんも、疑問に思ったことはその都度聞いてもらって構いません。大会ではもちろんそんな事をする余裕は無いでしょうが、まだまだ時間はあります。ネクラさんがアバター前提で作戦を立案出来るようになるまでは、全員で内容を共有する必要があります。今回のように盲目的に従っていては、間違いに気付けない事もありますので」

「で、でも今回は、最初こそ上手くいきませんでしたけど、終盤は割と――」

「今回のネクラさんは、自分で考える事はしていません。こちらの動きを予想した上でそれを回避する方法を立案し、皆さんに授けていたにすぎません。いつもなら、こちらの動きを予想した上でそれを利用する作戦を立案出来ていました。その点から考えても、今回は上手くいった。とは言えないでしょう」


 ハイネスさんが生き生きと喋っている中、晴也はその頭の良さに感服していた。

 ほんと、自分の心の内をどれだけ見透かしているのか……。これで自分よりも凄くないとか言われたら、逆に自信を失う。

 僕は、ここまで正確に他人の心を読むことなどできない。


「かくいう私も、開始30分程度で綺麗に見破られるような単純な作戦しか思いつけなかったのは落ち度です。今回の練習会で各々の課題は見えたと思います。なので、当初の予定を大きく変更する必要があるかと思いますが……ネクラさんはどう思います?」

「……私も同意見です。当初、ランクマッチや大会等の出場は止めて欲しいとお願いしていましたが、ここまで練度不足となると、そうもいかないのが現状です」

「つ、つまりどういう事っすか?」


 ミナモンの呑気な顔を見ていると、なんだか少しだけ沈んだ気持ちが明るくなるけれど、思った以上に酷いプレイをしてしまったという現実は変えられない。

 これが大会だったならば、1回戦で敗退していたとしてもおかしくは無かった。そんな内容だったのだから。


「これからは、アバターでのみランクマッチや大会への参加を認める、という事です。ですよね? ネクラさん」

「……ランクマッチでアバターを使用するのは、叩かれる危険もあるので推奨はしません。ただ、このメンバーで時々大会には出ようと思います。周りは当然普通のキャラで来るでしょうが、僕らはアバターで参加する。そういった事を繰り返して練度を上げていかないとダメだと感じました。掲示板などで相手を募集するのは、こちらの練度が充分上がったと判断してからです」


 もちろん皆で挑む大会、優勝しようとは考えていない。単なる練習気分で挑めばいい。

 幸い日本予選までは後半年もある。

 ここに集まっているのは上位プレイヤーばかりなので、半年もあれば練度もかなり上げられるし、連携も高められるだろう。

 海外のプレイヤーも、アバターで戦ったことなど無い人がほとんどのはず。条件は同じなんだ。


「一応試合は録画してあります。後ほど全員に送っておきますので、振り返る等は任せます。毎度のことながら、質問があれば受け付けますよ」

「ではネクラさん。私から良いでしょうか?」

「ライさん? はい。なんでしょうか」

「……私は、今回のような戦い方で間違っていないのでしょうか?」


 真剣な表情で聞いてきたライの顔は、心の底からそう思っているようだった。

 彼女は今回、出来るだけ偵察と囮に回って貰い、出来る限り仲間との接触をさせないようにしてきた。

 囮としてプレイする事で、そういった人達が必要という事を知らせたかったのだ。


「もちろんです。仲間を助ける事自体を否定はしませんが、ライさんは恐らく、1人でいた方が実力を発揮できます。それに、ここにいる人達が捕まる時は、大抵それ相応の理由があります。それこそ、前にライさんが言っていた『助ける事で逆に足を引っ張る』に当てはまってしまうと思います。しばらくは慣れないでしょうが、頑張ってください」

「……分かりました。ありがとうございます」


 納得したように力強く頷いたライは、それこそ試合が始まる前とは面構えが別人のようだった。

 これで、しばらくは問題無いだろう。また悩んでいたら相談して貰えば良いし。


「他に、質問や相談のある方がいましたらどうぞ。私でもハイネスさんにでも、どちらでも構いませんよ」

「……じゃあ、ハイネスさんに質問っす!」


 元気よく手を上げたのは、口調からも分かるようにミナモンだ。

 彼が言いたいことなど、大体は想像がつく。


「あなたに関しては指示を出させてもらいます。アバターでの戦いに慣れたとしてもあなたは変な行動をとりそうなので、しっかりと監視させてもらいます」

「……あんまり難しいこと言われると、自分意味が分からなくなって混乱すると思うんですけど……」

「その点は問題ありません。大体どのあたりを探してほしい等の簡単な指示しか出しませんので」


 満面の笑みで、しかも『簡単』の部分をやけに強調したハイネスさんは、オドオドしているミナモンを座らせ、他の人に質問が無いか問いかけていた。


 この人、こんな場面もあるのか……。怒らせたら怖そうだな……。

 なんだか、口げんかになったら勝てる気がしないのは気のせいかな。

 論理的に色々言われた挙句、大人しく土下座している光景がありありと思い浮かぶ。


「ん? どうかされましたか、ネクラさん?」

「い、いえ……。なんでもありませんよ……」

「そうですか。では、質問のある方もいないようなので、今回はこれで解散という事でよろしいですか?」

「は、はい……。では皆さん。お疲れさまでした……」

『お疲れさまでした~』


 そのまま全員がログアウトするのを見届けた晴也は、1番最後にログアウトし、現実世界へと帰還した。

 それにしても……最後のハイネスさん。やけに圧が強かったな……。もの凄く怖かったんですけど……。


(これは僕の心の中にしまっておいた方が良いような気がする……)


 そうと決まれば、さっさとSNSで今回の事について報告をしよう。

 燃えないかどうか心配だけど、ハイネスさんと一緒に考えた文章なら問題は無いだろう。


〖今回の世界大会、私は本気で挑みたかったので、勝手ながらこちらで人を選ばせてもらいました。先ほど、無事に顔合わせも終わりました。

今回私と一緒に出たいと考えていた方、そして、選ばせてもらった方のチームメイトだった方には申し訳ありませんでした。

重ねて、ご報告が遅くなった事を謝罪します〗


 最悪炎上とはいかないまでも、複数の誹謗中傷を浴びると覚悟していた晴也は、数分後に激励のメッセージで埋まった自身の通知欄を見て人生で1番深いため息をついた。

 最初の方はやっぱり誹謗中傷を書き込んでいた人も、ネクラのファンに説得され激励する側に回ったらしい。


 やはり、1ゲームプレイヤーにしか過ぎないネクラをフォローしている人は、程度に違いはあれど、全員ネクラのファンなのだ。

 その感情はガチ恋だったり憧れだったり様々だが、自分達のそんな存在が世界を取るところを見たく無いのか。そう言われれば、見たいと答える人ばかりなのだ。


 やっぱり一緒に戦いたかったという気持ちはあるだろうが、自分では力不足だと理解している人。誰と一緒であろうと、世界を取ってくれるのなら構わないという人。

 誹謗中傷を書き込んでいたのは前者の人達だったが、そんな人達は後者の人の必死の説得で、晴也がそのコメントを見る前に削除していたのだ。


〖それからもう1つ。ずっとお待ちいただいていた解説動画と大会の動画。明日には公開出来ると思いますのでお楽しみにしていただけると幸いです〗


 そう。実は、昨日の深夜に編集が終わったとトウモコロシさんから連絡が入っていたのだ。

 なので、後は諸々の設定を終わらせれば公開出来る。


 世界大会の件などその報告で全て水に流され、フォロワーの興味は一気にそっちの方面へとシフトした。

 数時間後には数々のニュースサイトにて”やっと公開”と報じられ、まるで話題の映画が明日公開する時のようなお祭り状態になっていた。

投稿主は皆様からの評価や感想、ブクマなどを貰えると非常に喜びます。ので、お情けでも良いのでしてやってください<(_ _*)>

やる気が、出ます( *´ `*)

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