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第47話 第1回 ミーティング

 ミーティングと言っても、コミュ障の晴也が話せる事は少ない。

 せいぜい、これからの練習会についてくらいだ。


「えっと……早速ですが、この中にアバターのみで対戦した事のあるという方はどのくらいいらっしゃいますか?」


 数秒考えて出てきた言葉がこんなものとは、全く情けない限りであるが、今は1人だけ手を上げているその人に場の流れを丸投げすることに全力を尽くそう。

 あんなに格好つけてミーティングをするとか言っておきながら、5分も経たずに雑談タイムへと変わるのは悲しすぎる。


「あ、私とライだけなんですね……」

「では、シラヌイさんにアバターのみの戦い方について話して貰っても良いでしょうか。私も対戦でアバターを使った経験はありませんので……」

「あまりうまく伝えられるかどうか自信はありませんが、頑張りますよ」


 苦笑を返された僕は、なんとなくこの人は自分の性格について知っているのでは……。そう思った。

 ハイネスさん達と同じチームだったらしいので、話した時の事を色々聞いているのかもしれない。


 ネクラは、皆が思っているようなスーパーなんでも出来るマンではないということを知っているなら心強い。これからは時々頼る事にしよう。


「まず、これは聞いているかもしれませんが、アバター同士の戦いでは基本前情報が当てになりません。能力を自由に選択出来るのもそうですが、その情報をわざと相手に流してミスリードを誘う事もできます。なのでハイネス曰く、指揮官同士の頭脳戦になることがほとんど。だそうです」

「……やんわりプレッシャーかけないでくださいよ。初心者と経験者を比べて貰っちゃ困りますって……」

「その点はネクラさんなのでまぁ、どうとでもなると思っておきます。話を戻しますが、アバター同士での戦いで特に気をつけねばならない事は、集合する事です。普通の戦いでは2人や3人で行動するのが普通ですが、アバター同士での戦いでは、それは絶対にやってはいけないプレイとなります」

「そ、それはなんでですか……?」

「......ではクイズです。なぜアバター同士での戦いに限り、集まる事があまり推奨されないのか。ネクラさんなら分かりますよね?」


 ミルクさんの質問に満面の笑みでそう答えたシラヌイさんは、そのまま身を乗り出して僕に聞いてくる。

 この顔、絶対ハイネスさんにちやほやされてたネクラがどの程度賢いのか値踏みしたいだけじゃん……。

 僕、こういう人得意じゃないんですけど……。


 だが、そんな泣きごとを言っても仕方ないので、腕を組んで考え込む。

 普通は2人や3人のペアになって動くことが推奨される大会モードだが、アバターのみとなればそれは変わる。それはなぜか……。


(待て。さっきシラヌイさんはなんて言った? 『あまり推奨されない』って言わなかったか?)


 では、その推奨されないとは誰が言った言葉なのか。

 公式情報なんかよりよっぽど優秀なハイネスさんがいるチームに居たんだ。なら必然的に、その言葉はハイネスさんによるものだろう。

 ハイネスさんが鬼視点をやってみて気付いた事を、そのまま伝えていると考えた方が自然だ。


「……アバター同士では、子供と鬼の運動性能にあまり差が無いと聞いています。なら、鬼側が加速を持っていた場合、ペアが一気に捕まる可能性がある。子供視点、運動性能にあまり差が無いのなら、永遠と逃げ続ける事も可能です。鬼側が不利なルールのはずが、その一手だけで鬼有利となってしまう。子供側が加速を付けることなどまずありませんし、無敵の場合もそれを消費させることが出来ると考えれば十分すぎるでしょう」


 鬼と子供の走るスピードが違うのは、まったく同じだと子供側が永遠と逃げることが可能になってしまうからだ。

 一部の足が遅い鬼のキャラは、その分捕まえられる射程距離が長い。

 つまり、理論上永遠と逃げ続ける事も可能なアバター戦では、密集する事で鬼有利の状況を作ってしまう可能性がある。そういう事なのだろう。


「半分正解です。しかし、ハイネスが言っていたのはそれともう1つ。密集していると、鬼が集まってきた場合に臨機応変な対応が出来なくなる。との事です。相手の能力、性能が分かっている通常対戦ではなんとかなりますが、その全てが未知数な場合はその限りでは無いと」

「……なるほど。言われてみれば確かにその通りですね。勉強になります」

「そして、これは噂程度なので話し半分で聞いてください。近々、対戦でアバターを使う場合の各種調整が出来るようになるアップデートが来るらしいです。走る速さや攻撃速度、その他諸々を変えることが出来るようになると」


 それはどこ情報なんだ。そういう前に、会議室に「おお~」という声が広がった。

 まぁ実際、世界大会が行われるのでそこら辺の調整が入る可能性は十分にある。だが、言われてみれば信憑性がある、程度の情報だ。

 しかし、そのアップデートが入れば、より戦略性が増すのは確実だろう。


「そのアップデート情報に関してはまだ確定ではないようなので、ここで話すのは止しましょう。他に注意しなければならない事はあったりしますか?」

「そうですね……。この場の全員は恐らく、狙撃手に歩いて追われたところで逃げ切れますよね?」


 シラヌイさんが恐る恐るそう聞くと、この場の全員は当然だろうという顔をする。

 狙撃手はその射程距離が恐ろしいだけであって、歩いて追われてもなんら怖くない存在だ。

 それこそ、通常の子供キャラと歩く速度がほぼ変わらないのだから。


「このアバター戦は、狙撃手が歩いて追ってくるのとあまり変わりがありません。なので、狙撃手から逃げ切れるのならその立ち回りをしていれば基本大丈夫です。先ほどネクラさんも言っていましたが、アバター戦は基本子供有利で進みます。その過程で、指揮官の頭脳戦が起こり、状況が変わっていく。といった感じです」

「つまり、通常の鬼有利と言われている戦いとは逆。ということでしょうか?」

「はい。まるっきり逆と捉えてもらって良いです。これはハイネスも同意見らしいので、ほぼ間違いありません」


 ハイネスさんが言っているのなら間違いは無いだろう。アバター戦でも当然試練は発令される。

 その上でも鬼が不利と言っているのだから、よっぽど鬼は辛いんだろうな……。


「ハイネス曰く、鬼は指揮官が優秀じゃないとまず勝てないそうです。反対に子供は、指揮官がよっぽど無能でない限りはほぼ勝てる……と」

「……だからやんわりプレッシャーかけないでくださいよ! この場合、お互いの指揮官はトントンで見てくださいよ! それか、相手の方が少し上という事で……」


 晴也がそんな弱気な事を言ったせいか、周りで微かに笑いが起こる。

 この場のプレイヤー全員が、早くもネクラに対しての評価を”万能の神”から”ただの頭の良い少年”に変えていた。


「私が言えるのはこの程度ですかね。質問などがあれば、出来る限り答えますが……どうでしょうか?」


 シラヌイの問いに手を上げる者はおらず、その後は鬼側のミーティングが終わるまで雑談タイムとなった。

 こうして、子供側の10分にも満たないミーティングは終わりを迎えた。



――ハイネス視点



 応接室でミーティングを初めて10分。

 とりあえず各々の戦い方について聞き終わり、やっと作戦の立案が最低限出来る状態となった。


 私が最初に始めたのは、各々の戦い方を聞き、その人の癖や考え方について聞く事だった。

 指揮官として、仲間となる他の3人の癖や特徴、考え方などを熟知するのは当然の事だ。


「1番の問題はシラユキさんですね……」

「やはり、そう思いますか……」


 ミナモンさん以外の3人が同時に腕を組む。この人の戦い方は、少しだけ一般論からズレている。

 この人は、索敵能力や追尾能力に少々問題があるけれど、相手が隠れている場所をピタリと当てることがある。


 分かりやすく言えば、遊園地のマップで、どこのエリアに何人隠れているのか。そして、それは誰なのか。これをハッキリと、しかもかなり正確な数言い当てることが出来るのだ。


 しかし、あくまで対象のエリアに何人いるのかを当てられるだけで、そこのエリアから移動されたりした場合、その人が次にどこに行くかの判断が出来ないのだ。

 加えて、どこに隠れているかまでは正確に把握できないそうだ。


「ネクラさんが可能性を感じると言っていた点、これは私も同意します。そして、ネクラさんがべた褒めしていた索敵能力の持ち主もいますし、相手の行動予測は私が出来ます。なので、あなたの弱点は補填可能です」

「ほ、本当ですか?」

「はい。しかし、そうなればマイさんの能力は瞬間移動でほぼ固定になります。それを加味すると、私達の動きは、バレてしまえば対処が容易です。それに、シラユキさんの考え方の元になっている部分。これを逆に利用される事もあり得ます」

「そ、そんなことは!」

「ありえます。相手が普通の日本人だったら問題にはならないでしょう。しかし、ネクラさんや海外の化け物相手なら、その可能性があります。その点を考えて、自分の特技に慢心はしないでください」


 そうだ。日本人相手ならそんな事を出来る人間は1人しかいない。

 だけど海外の人は、平気でこちらの考えを1から10まで見抜いてくる。慢心は自分の首を絞めかねない。


「あ、あの……そんな真面目な話してるとこ恐縮っすけど、自分はどうすれば良いですかね?」

「……ミナモンさんには指示を出しませんので、とりあえず自分の感覚で動いてください。その結果を見て、これからも指示を出さなくて大丈夫か。それを判断します」

「は~い」

「マイさんは、私がシラユキさんから話を聞き次第連絡を出しますので、その都度指示した通りに動いて貰えれば。アバター戦では、基本子供有利なので、探しに行くのはマイさんとミナモンさんのみ。私とシラユキさんは待ち伏せしながら指示を出す。とりあえずこの形で行きます」

『了解!』


 とりあえずこれでミーティングは終了だ。

 私とマイさんしかアバター戦をやったことが無いそうなので、とりあえず動きを見てから今後の方針を決めるしかない。

 多分、ネクラさんも同じことを思っているだろう。

 2日後には、いよいよライと初対面を控えているので、その時に褒めてもらえるよう、私も頑張らねば……

投稿主は皆様からの評価や感想、ブクマなどを貰えると非常に喜びます。ので、お情けでも良いのでしてやってください<(_ _*)>

やる気が、出ます( *´ `*)

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