第264話 今後
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手毬になんとか釈明しつつプイっとそっぽを向かれてしまった事で少しばかり項垂れてしまう。
膝の上では未だにすうすうと寝息を立てている人がいるせいであの子を追いかけに行けないんだけど、今日くらいは許してもらおう。
一週間後には数日家を留守にしてしまうので、その時までには仲直りをしたいんだけど……
「難しいかもな……」
春香が自室に引っ込んで寝てしまったので、手毬はすぐに行くところを失ったのか一度だけ僕を見た後、にゃーと不満げに鳴きながら猫部屋へと引っ込んでしまった。
情けないけど、明日辺りにウルフさんに仲直りのコツを聞いてみよう。……いや、ウルフさんも忙しくしているかもしれないし、ここはそういう知識を持ってる人に聞いた方が早いかもしれない。
都合よく近くにテレビのリモコンがあったのでそれを操作し、ハイネスさんを起こすといけないので音量を出さずに画面だけを見る。
手元にある携帯を操作してSNSを立ち上げると、目の前のテレビの画像をパシャっと映し、改めて日本予選の応援をしてもらった事に対して感謝を告げた。
一応テレビ画面の反射なんかには気を付けたけど、僕だってそこら辺の知識は人一倍持っているので、絶対に大丈夫という確信をもってアップする。
すると、瞬く間に祝福の声で満たされ、世界の舞台でも楽しみにしているという温かい声援で埋め尽くされる。
本当はここでお礼の一つでも述べるべきなんだろうけど、僕には今そこまで考える余裕がない。
目下のところ、一番の懸念事項は手毬さんの機嫌だ。あの子が居なければ、僕のこの家での精神的な安定や安寧は得られない。
この際どんな手段をとっても……いや、ハイネスさんに危害が及ばない範囲ならどんな手段を使っても良いので、あの子と仲直りがしたい。
『日本予選が終わって早速で申し訳ないんですが、どなたか子猫と仲直りする効果的な方法とかご存じないでしょうか……。ちょっと揉めちゃって……』
なんでそんなことになったのか、理由は明白だけど出来るだけ嘘は吐きたくないので理由は話さず揉めてしまったという報告だけする。
これで有効な手段が見つかれば良いんだけど、見つからなければその時に初めてウルフさんに知恵を求めよう。
それに、一応日本予選で勝った事と対戦相手のチームの方には感謝を述べているので生意気だのなんだの騒がれることは……多分無いだろう。
優勝したのに忙しないなこの人……みたく呆れられる可能性はあるけれど、それはそれ、これはこれだ。
それに、僕にはまだ他にもやらないといけない事が山ほどある。
「えっと……ちょっと纏めた方が良さそうだな……」
ちょっとここ最近頭を使いすぎていた事もあって、いつもなら頭の中で纏められる考えも今は無理らしい。
続々と届いているらしいSNSへのメッセージも、気が散るので一旦通知を切ってからメモ帳を立ち上げ、そこにやらなければならない事を次々箇条書きにして纏めていく。
手毬との仲直りは今のSNSの反響やらなにやらに全てを託し、これが叶わない場合は販売イベント後にまた考える。
次に祝勝会についての段取りも行わなければならない。
でも、そっちの方面は僕が仕切るというよりはしっかりした人に調整を頼んだ方が良い気がするので、ミミミさん辺りに頼んだ方が良いだろう。僕が仕切るとなれば、あの人やハイネスさんが「寝ろ」って言ってきそうだし……。
(いや、僕はハイネスさんが起きるまで眠れないんですけども……)
僕はベッドかソファに寝転がらないと基本的に眠れない。
前に一度春香を連れて行った飲み会のような場所で爆睡したらしいけど記憶が無いし、多分お酒のせいなのでそれはスルーする。
つまるところ、ハイネスさんが僕の膝の上で寝ている限り僕は眠れないし、まだしばらくは寝なくても問題ないのでこのまま作業を続ける。
多分この場にミミミさんがいたら怖い顔をして「寝てください」と圧をかけてくるだろうね。
えっと……次にやらないといけない事は販売イベントの当日スタッフさんに対するお礼だ。
いや、これは必ずしもやらなければならない事って訳じゃなく、あくまで個人的にしなきゃいけないだろうなって思ってる奴だけど……。
だって、急遽決まったイベントだし、当日のスタッフさんはかなり大変な思いをすることがほぼ確定している。
SNSの反応が全てドッキリとかで当日数人しか来ませんでした~とかだったら笑えるけど、今テレビでもやっているように、来週には僕の公式グッズ第二弾の販売イベントがある。
それに僕自身が参加するかどうか明言したかはもう記憶が無いんだけど、盛り上がりを見ている感じだと多分言っているんだろう。
そんな、大変な思いをすることが分かっていながら急遽スタッフをしてくれた人達や会場を抑えてくれた方には、それ相応のお礼をしなければならないだろう。
もちろん言葉で感謝は伝えるけれど、僕個人としてはそれだけじゃ納得できないので、なにかしらお礼の品のような物を用意した方が良いと考えているのだ。
一応、決めた後にハイネスさんか春香に意見を貰うつもりだけど、多分反対はされないだろう。
「後は……イベントの時に話しかけられた時のデモンストレーションと、イメージトレーニングか……」
正直、これが一番苦労しそうだ。
僕はかなりの人見知りだし、こと女の人に限っては滅茶苦茶なほど免疫が無いので、上手く話せるかどうか自信が無い。
ハイネスさんやミミミさんみたいな、チームメイトとなれば話は別だけど、初対面の人とうまく話せるかと言われると、そんなの分からないと答えるしかない。
紅葉狩りの時にファンの人達と交流した事はあるけれど、あの時だってうまく話せたか自信は無いのだ。
トークというそれだけの面に関して言えば、相手から話題を振ってもらわないと長く続けられないし、自分で話題を決めないといけない配信なんかは今でも若干苦手だ。
つまるところ、その点をほぼ完璧にしなければイベントの成功が怪しくなってしまうのではないかと心配しているのだ。
マイさんとの入念な打ち合わせの末、僕は午前中は好きに会場を見回って、午後にお会計のお手伝いをする……事に決まっていた。
なんでお会計の手伝いなんかするのかって? そんなの、滅茶苦茶熱弁してきたマイさんに聞いてほしいね。
予想より遥かに話題になってしまったためイベントが1日で終わってしまう事に不満があるような人の話もチラホラと聞くけれど、そんな事を僕に言われてもと言わざるを得ない。
なにせ、2日間やりたくとも会場が2月14日しか抑えられなかったのだ。そんなの僕の責任……いや、計画性が全くなかった僕の責任と言えばそうなのか?
都会の方でも販売イベントをすると約束しているので、近いうち……少なくとも世界大会が始まるまでに開催したいとは思ってるけど、まだ日本予選が終わっただけで他の国の予選は終わっていないらしい。
なので、世界大会がいつ行われるか確認してからイベントの日程を決めないと、最悪の場合試合の日と被ってしまう可能性がある。それだけは避けたい。
「はぁ……。まだしばらくは忙しくなりそうだなぁ……」
それから少しの時間あーだこーだと今後の事について考えを纏めていた僕は、膝の上で呻きながらうーんとゆっくり声を上げだした少女をチラッと見やる。
そろそろ起きそうだし、僕は寝てるふりでもした方がお互いの精神衛生上良いだろう。そう判断し、ゆっくりと目を閉じる。
「ふわぁ。よくねたぁ……。あれ、ライ? ごめんねぇ、寝ちゃって……。今起きるよぉ……」
どうやら僕の事を春香だと勘違いしているらしい。
すみませんね。多分、起きたらビックリすると思いますけど、僕は寝てます。そう、僕は今夢の中に出張中なんですよ。だからそこまでビックリしない方が良いと思いますよ。
「ありがとぉ……。重くなか……」
膝の上から心地よい感触が遠のき、ハイネスさんの声がパッタリと聞こえなくなる。
そう、ここで叫んだら僕が起きますよ。何もなかったかのように立ち去るか、それとも普通に家の中をブラブラしてた方が良いと思います……。
「……テレビ、音出さずに見るんですか?」
あ、やべ……。そう思った瞬間、僕は頬を抓られて顔を真っ赤にしたハイネスさんと目を合わせた。
このバカで愚かな僕を、誰か叱ってください。お願いします……。
このお話から新章に入ります。
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