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第258話 テレビ局の攻略法

 ソマリが自分の醜態をチームメイトに必死に弁解しているのとちょうど同時刻。

 ネクラのチームであるBlue Roseの鬼側指揮官、ハイネスはかつてないほど頭を働かせながら指揮を執っていた。


 このテレビ局はネクラも言っていた通り圧倒的に子供が有利……とまでは行かないまでも、普通にやっていればまず子供が勝つ。

 まぁ、このステージにおける“普通”の定義とは、ネクラのようにポンポンと難易度6~8相当のクイズのような謎解きを数秒で解ける前提の物なので当てにはならないかもしれないが……。


 真の意味での普通。この場合、ハイネス視点で物を考えると、単純に行けば彼女達は謎を全て解けずに時間切れになるか、全て解けたとしても解放できるのは数か所に留まるはずなので、階段ないしはエレベーターを最下層で張って居れば問題ないわけだ。


 通りすがるテレビ局の人を、こちらが鬼だとバレる前提の元次々攻撃していけば良いだけなのでそこまで苦労することなく勝利を収める事が出来るだろう。


(普通に考えれば……そう。でも、そんなマップを選んでくるかな……)


 ハイネスの頭の中には、相手がこのテレビ局というマップを選んだ瞬間からその答えが殺人鬼に取りつく亡霊のようにユラユラとまとわりついていた。


 もちろん単純に『準決勝でネクラが負けたから』という理由だけで選んできている可能性はある。

 前の試合で為す術もなく負けているのだから焦る気持ちはあるだろうし、むしろその可能性が一番高いのではないかとさえ思える。

 実際、長年の経験と最高の軍師としての勘が“それで正解だ”と囁いてきている。


 だが、世界最高の指揮官となる為には様々な事が欠けていると気付いたばかりなのだ。

 もしかすればネクラさんの意見とは違うかもしれない。その不安こそ、彼女がこの戦いで新たに心に宿した不安の種だった。


 そして、一度そう考えてしまっては簡単に答えを変える事なんてできず、ただ待って吉報を待つという作戦は取れなくなってしまう。

 幸いにもこのマップの攻略方法については準決勝の後にひっそりと考え、ネクラさんにも意見を貰っていたので自信がある。今回は、それを使うべき時だ。


「では、作戦通りにお願いしますミナモンさん」

「了解っす! 頑張ります!」


 ゲーム開始直後、早々に合流して連絡先を交換した私達4人は、事前に決めていた作戦通りシラユキさんとミナモンさんを8階へと送り出した。


 どうせ子供が湧いているのはネクラさんの話から考えるにほとんどが10階から9階に集中しているはずだ。なので、最初の作戦を遂行するにはその場所が一番良い。


 私とミナモンさんは10階へ、マイさんとシラユキさんが8階へと移動し、一時的にではあるけれど8階より下の階へ降りる事の妨害を一切することなく、ある意味では子供を自由に動かした。


 このマップではネクラさんのような異常に発達した頭脳が無い限りはそうポンポンと謎解きが出来ないので、こんな大胆な事をしてもある程度の時間までならば問題ないのだ。


 ゲーム開始20分を合図に、最初の作戦が遂行された。

 私とシラユキさんが各階の中央にスタンバイし、マイさんとミナモンさんが各階の西側で待機すれば準備完了だ。そして、私とシラユキさんが同時に叫ぶ。


『私達が、鬼でーす!!』


 フロアのほぼ中央でそう叫ぶと同時に、マイさんとミナモンさんが飛翔の能力を発動させてそのフロアを目にも止まらぬ速さで飛び回る。ちょうど、海底神殿でワンフロアを丸々使え無くした時と、原理は同じだ。


 しかし、私達が叫ぶことに何か意味があったのか。その成果は、直後に届いたおびただしい数の確保情報が物語ってくれる。


 数分後、能力の発動時間を過ぎてあらかじめ決めておいた3階の会議室へと集合すると、先程の作戦によって何人確保できたかを確認し、そこでついでにシラユキさんに今何階に何人程度の人が集まっているのかを予測してもらう。ここまでが、私達が考えた、対テレビ局の必勝法だ。


 基本的にこのゲームのマップに存在しているプログラムの人間は、私達の言葉に反応して会話をすることが可能だ。それはどのマップでもそうだし、脱出マップのこの場でももちろん例外ではない。


 そんな人達は、もちろん私達が叫んだ『鬼です』という言葉にも反応し、この場合にもっとも自然な反応――不審者を見る目――で私達を見る。こういう所でも、ネクラさんが気にしている“マップの不自然さ”を消す機能が働いているのだ。


 しかし、プログラムではないプレイヤーならばどうだろうか。

 もちろん怪訝そうな顔はするだろうが、瞬間的には「鬼!? やば、離れよ……」みたいな思考が働き、私達の方へ顔を向ける事が出来ないはずだ。

 マイさんやミナモンさんが狙ったのは、他の人達が不審者を見る目を私達に向けているのにも関わらず、いそいそとその場を去ろうとしたり、不自然すぎるほど興味を示していない人だ。


 飛翔の能力中はほとんど肉眼でその姿を確認することができないので、最初の1人さえ捕まえてしまえばそのフロアにいる他の子供のところへ即座に確保情報が届く。今度はその通知恩を頼りに子供の目星をつけて行けば良いという、ほぼ回避不可能な作戦だ。

 無論、これは建物の中で超低空飛行……それも人混みの中でそれをするという超高等技術が必要なので、一概に真似したくともそう簡単には行かない。


 私達は、ネクラさんがこの作戦を編み出した張本人だったのでそのコツを聞いたり、そもそもその作戦がどういう物なのかを尋問じみた質問攻めで聞く事が出来た。


 そのおかげで、遊園地や競馬場という人が多いマップで嫌というほど練習を積むことが出来た。これは、その成果だった。


「1回の作戦で半分以上確保って、マジヤバいっすね~! 練習した甲斐があったっす!」

「はい。でも、油断は禁物です。先程の作戦で生き残っている人は唯一私達がいなかった9階にいた人物と階段やエレベーター、控室やスタジオの中にいて運よく難を逃れた人だけでしょう。なので、今度は位置情報の公開を利用して再び飛翔が使えるようになるまで索敵をお願いします。もちろん、変装は変えてくださいね?」

「『はい!』」


 そう。この作戦の厄介なところは、作戦がちょうど使われたタイミングで飛翔の能力が及ばない場所――さっき述べた場所――にいなければならないという事だ。


 しかも、このマップの性質上、控室やスタジオの中に引きこもる事はしない人の方が多いはずだし、階段やエレベーター近くにいる人も私達が気付ける範囲にいれば普通に確保へ動くことが出来る。


 つまり、この作戦を躱すには『こっちがその作戦を取ってくると的確に読める洞察力』と『いつ頃使ってくるのか。使ってくるなら、それは何階なのか』を的確に読める神の如き読みが必要となる。


(そんなことできる人、多分この世界にただ1人だけだろうけど……)


 私は、いつまでも自分の能力について頑なに認めようとしない“現時点では”世界最高の指揮官の顔を思い浮かべた。


 多分、あの人はこの作戦を使われて、それを完璧に回避したとしても『いや、たまたまですよ』とか『これくらいは余裕です……』みたいに言うんだろう。

 こちらからするとどんな頭してるんだと思わずツッコミたくなるんだけど、その推論に至った経緯を聞いてみると不思議と「なるほどね……」と思わされるので、さらに不思議なのだ。


 そんなに頭が良いのに、何度も何度も子供騙しみたいな浅い作戦に引っ掛かって時々地獄を見てる気がするけど……そこも可愛いので良――


(いや、今は集中しなきゃ……。ネクラさん、勝ってくれるよね……?)


 ネクラさんもネクラさんで、テレビ局の攻略法なる物を見つけているらしい。

 その作戦の内容を知っている身としては、それはいささか穴がありすぎるのではないかと思わなくもないんだけど……まぁ、あの人なら多少の困難は乗り切ってくれるだろう。


 そんな思いを心のうちに宿しつつ、密かに『ネクラさんを信じるって、どんなことをあの人はしてくれるんだろう』なんて考えてしまう私は、再び顔を振ってその邪念を振り払った。


 そのちょうど1時間後、私達Blue Roseの日本予選優勝が決まった。

今回で長かった日本予選が終了になります!

次回からはしばらく試合等はなく、日常パートと言えばいいのか、そっち方面でのお話になりますm(_ _)m



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