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第254話 危機察知

 自分達の作戦が通じていないと分かった時、その作戦を考えた人間はどのように思考するか。恐らくだけど、まず相手がどんな手段でこちらの作戦をいなしているのかを考えるだろう。

 その後に、その作戦に有効な作戦を考え、実行に移す。


 どんな指揮官だろうとこれは同じだし、僕やハイネスさんみたいに、相手の思考を常に先読みしようとするタイプの指揮官でもそう考える。


 そして、僕やハイネスさんなら、次に相手の指揮官……この場合ソマリさんが、次にどうやって動いてくるのかは手に取るように分かる。


(取り得るパターンは2つ。この作戦を指示しているであろう僕を見つけて、準決勝のようにして機能停止に追い込んだ後にいつも通りの索敵パターンに移行する……。もしくは、1人を索敵班の警戒に当たらせて、残りの3人で作戦を立て、索敵班がいるならそっちの駆除。いないのであれば普通の作戦に戻す……ってところかな)


 ここで1パターンに絞らないのは、1つに絞ってしまうとそれが外れた場合致命的な事になりかねないからだ。


 ただでさえ僕は、準決勝で油断の末捕まりかけているので、二度とそんなマヌケな真似は晒さない。あくまでどちらの手段を取ってくるか、可能性が高いのはどちらかは分かるけど、完全には限定せず、相手の動向を確認してそれに即した指示を出す。


『1人を索敵班の警戒に当たらせようという話が出ました。多分、私の方が先に見つかると思います』


 ほら、来た。

 現時点で警戒しないといけないのは、異常な速度で指示を出す居場所不明の異常者(僕)よりも、もっと身近に潜んでいる可能性の高い索敵班だろう。


 そして、索敵班は大抵見晴らしの良い場所にいるし、このマップは全体的に見晴らしが良いのですぐに見つけられるはずだ。要は、このマップに狙撃手を配置する場合、どの地点に配備させるかを考えれば良いだけなのだから。


 すぐにミラルさんにその場を離れてもらい、ミルクさんにも念のためその場を離れてもらう。

 この後の行動は大方予想できるので、もう相手を探る必要はない。


 そして、次に僕が出す指示も簡単だ。なにせ、1戦目と同じことをしてもらえば良いだけだ。

 幸いなことに、このマップは飛び降りる覚悟さえあれば屋根から屋根へぴょんぴょん移動する事が出来る。なので、移動に掛かる時間がかなり短縮できる。


 それに、相手方は今作戦会議の真っ最中なので、移動中を狙われる心配もない。


 次に僕が考えるべきは、相手がこの異常事態に気付くのは、今度は何分後なのかという事だ。


(作戦を変えたのに依然として子供が見つからない……。その異常に気付くのは、多分前回より早いはず。そうすると、ソマリさんでも何分かは事態の把握に……)


 いや、本当にそうだろうか。


 考えても見てほしい。僕やハイネスさんが相手の策にまんまとハマり、その回答に何分もかかるだろうか……。かかっても1分かそこらだろうし、まったく見抜けない事態になる事はかなり稀と言って良い。


 いや、僕は割と高い頻度で「何が起こってるんだ?」みたいになる事はあるし、気のせいだと流してしまう事もある。ちょうどさっきそれで負けたし。


 でも、ハイネスさんならそんな事にはならないはずだ。


(考える速度だけはハイネスさんと同列だと考えると……次に相手が行動を起こすのは5分後だな……。そして、その時には十中八九――)


 僕を捕まえに来るだろう。そして、このマップの性質を考えれば、多分全力で僕を捕まえに来る。それこそ、負けるの覚悟で4人全員を投入してきたって不思議ではない。


 元々鬼側では勝とうとしていないのが彼女達だ。ハイネスさんの方で絶対に勝つという前提の元作戦を考えてきているはずなので、僕に4人を投入して仮にゲーム中逃げ続けられるような醜態を晒したとしても、向こうが勝てれば……見たいなことを考えても不思議ではない。


 その際ポイント差でかなり不利になるだろうけど、そこは運任せ……。もしくは、いくら僕でも4人が相手なら1時間も稼げないだろうという前提で来るかもしれない。

 まぁ、普通の人が4人の鬼に追われて稼げる時間は高々4分とか、少なくとも10分程度が限界だろうからね。


 かくいう僕も、30分程度が限界だと踏んでいる。

 なので、ここからさらに予防線を張っておく。


(え~っと、まずさっきまでミラルさんがいた場所に移動して鬼に姿を視認してもらう……っと)


 多少マヌケに見えるかもしれないけれど、あえて索敵班の姿を探している鬼に向かって僕がここにいる事をアピールする。そうする事で、あの鬼は僕がどこにいるのかを鮮明に記憶するはずだ。

 そして、いざ僕を探すとなった時に真っ先に頭に浮かぶのは、まさに今僕がいる場所のはずだ。


(で、ここで瞬間移動する……見たいな仕草をすると……)


 鬼にジャンプしながら手を振って完全にこちらを視認されたタイミングで瞬間移動を発動させ、あえて近くの民家の中へ移動する。

 ちょうど、1戦前に春香がやろうとしていた事だ。

 瞬間移動すれば、普通はマップの対角へ移動したと思うはずだ。まぁ相手が僕ならその中間地点に移動している可能性もあるけど……


「余裕がない時は、わざわざ近くに移動した可能性なんて探れないはず……」


 ただでさえ、ゲーム開始から20分近く立っているのに子供の姿がほとんど見えないとなればそれは確実だろう。

 少なくとも、僕が瞬間移動した近くの民家の中を捜索したりはしないはずだ。


「確かにここにいて、瞬間移動したんですね?」

「そうそう~。遠目だったけど、あんなに可愛いアバター使ってるの、このチームじゃネクラさんくらいだよ~」

「……なら、ここからマップの対角の位置に当たる位置の、ちょうど中間地点辺りを探しましょう。多分、あの人が瞬間移動するならそこです」


 僕の推測がピッタリ当たった事を証明してくれる女の人の声が聞こえてきたのは、ちょうどゲームが開始してから20分後だった。

 決勝戦では、こんな感じの事を僕が続けられるかどうかで勝敗が決まるだろう。


(絶対疲れる……)

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