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第221話 違和感

土曜日に更新したのは、私が土曜だというのを完全に失念していたからで深い意味はありません。

困惑させてしまったのであれば、申し訳ないです(><)

 ゲーム開始40分が経過して、僕らはかなり順調にテレビ局の階段やエレベータの開放を進めていた。

 その頃になると流石に僕とサカキさんも9階の階段付近でジッと立ち止まる事は止めて、全体チャットに送られてくるクイズを解きながらどんどん下の階へと降りていた。


「あ、ネクラさん、またですよ」

「……たまには他の人が答えてもいい気がしますけどね……」

「一番早く答えられる人が何言ってるんですか」


 送って来たのはおまるさんで、場所は5階の階段だそうだ。


 その問題は彼の有名なナポレオンに関してで、『不可能という文字は』の後に続く文言を答えよという物らしい。

 これはクイズなのかと思わなくもないけど、おまるさんは分からないらしい。あの人、結構博識なはずなんだけどなぁ......。


「これって、我が辞書に不可能の文字は無い……って奴ですよね? それを、後に続くって言うのは変じゃないですか?」

「それ、正しくは違うんですよ。もちろん色んな説があるんですけど、ナポレオンが言ったのって『Impossible n'est pas français.』で、正しくは『不可能という文字は愚か者の辞書にのみ存在する』なんですよ。それが曲解されて後の世に伝わっている……というのが、正しかったはずです」


 僕もマリーアントワネットについて色々調べている時に初めて知ったのでその勘違いは分からなくもない。それに、本当に色んな説があるので一概にどれが正解!なんてことは偉そうに言えない。

 それでも、問題文の通りならこれで正解のはずだ。


「……フランス語もいけるんですね」

「最近ドイツ語も覚えましたけど、結構簡単ですよ? 日本語を先に覚えてると、英語に慣れるのがキツイっていうのは同意しますけど……」


 日本語で詳しく説明するところを、アメリカでは一言で表す事がよくある。

 それに、和製英語なんかに馴染んでしまうと意味を曲解して理解してしまいがちなので、そこを矯正するのに一番苦労するだろう。


 いちいち説明していると勉強会みたいになるのでしないけれど、日本人が一番覚えやすいのは、個人的には英語よりも韓国語な気がする。


 まぁ、英語は大抵どの国に行っても通じるけど、日本語や韓国語はある一定の地域でしか使われてないので実用性に乏しいって言うのは分からんでもないけど……。


「僕が言ってるのはそういう事じゃな……いや、良いです。それより……おかしくないですか?」

「まだ20人全員残ってるのが、ですか?」

「気付いてたんですか……」

「もちろんです」


 実を言うと、僕らはまだ誰1人として捕まっておらず、それどころか鬼の目撃情報すら一切出てきていなかった。

 それを不審に思いつつも、出来るだけ階段やエレベータを解放して行かないとお話にならないので無視してきたのだ。


 鬼は子供と違って階段もエレベータも自由に扱える。その為、こちらがそれらを必死に開放している間に上階に来る可能性すらうっすら考慮していたんだけど……。


 それが単に外れただけなのか、それとも相手はそれ以外の別の……何か違う作戦を考えているのか。


 今回僕らは、初見の脱出マップということで各々が一番向いていると思っている編成で挑んでいた。

 こういうマップでは瞬間移動の能力がほとんど機能してくれない(脱出マップなので行ける場所が制限されているらしい)ので、ほとんどが無敵か加速を持ち込んでいる。


 かくいう僕も無敵を所持しているけれど……今のところ、無敵を発動したという連絡すら来ないのだ。


「やっぱり、真剣に考えるべきですか?」

「……相手の指揮官がハイネスさん並みに賢いってさっき言ってたじゃないですか。なら、考えるべきです。あの人、諦めるとか絶対にしない人じゃないですか」

「ですよね……」


 ハイネスさんがどんな状況でも絶対に勝てないと判断しない限り諦めない事も、諦めたとしても最低限今後の為になる作戦をとる人というのは僕が一番よく知っている。

 サカキさんにも言われたので現実逃避はこのくらいにしておいて真剣に考える事にしよう。


 6階から5階へ降りる階段にちょこんと腰掛けて、一つ大きなため息をついてから改めて状況を整理する。


 今現在の状況としては、階段は10階から5階に降りる事の出来る場所が全部で15か所解放されている。エレベータは計4か所解放されており、そのおかげで僕らは今現在10階から5階の間を自由に行き来できるようになっている。


 10分ごとに全員の位置情報を送ってもらっているのでその情報を元に考えると、今現在子供がいるのは8階から5階に集中しており、既に9階と10階に残っている子供は0だ。


 移動には基本階段を使用するよう指示を出しているおかげか、エレベータは解放だけして周囲に1人か2人を残して様子を見ている状態だ。

 残っている子供の数は、さっき言ったように20人。全員が残っている。


「このマップの性質上、鬼が低層階に湧くのはまず当然として……全員が合流するのに遅くて20分。早くても10分はかかると予想するとする……。そうすると、相手が取る行動は低層階で僕らを待ち構える……? いや、そんな時間を無駄にするような事するかな」

「ハイネスさんなら、1人ないし2人は索敵に送り出しそうですよね? ただでさえ位置情報の開示なんてサービスがあるんだし、使わない手は無いです」

「そうなんですよ。19回も位置情報の開示があって何もしないなんて、それは無駄の極みです。4回自分達の合流の為に使ったとしても、流石にそれは……」


 このマップがいくら鬼有利だとしても、ハイネスさんならその事実に胡坐を掻いた作戦なんて考えないだろう。鬼が有利ならそれを最大限利用してくるような作戦を考えるはずだ。


 分かりやすい例で言えば、例の貴族の屋敷だ。

 あそこはどう見ても鬼有利のマップなので僕らの相手だった鬼は脱出口の付近に張り付いているだけで、終始僕らを自由に行動させていた。

 だけど、ハイネスさんはゲームの穴にすぐ気付いて、それが最もやってはいけない事だと推測した後にマイさんやミナモンさんを動かして子供の確保に動いた。


(ハイネスさんなら……あの人なら、この状況で何を選択するんだ……?)


 その時、手元の携帯が一度ブルっと震えた。

確保情報か何かが来たのか。そう思って画面を見ると、そこには無敵を使用したという旨の報告が書かれてあった。

 それを使用したのは、先程全体チャットに謎を送って、数秒もしないうちに僕が答えた事に呆れていたおまるさんだ。


「後ろから攻撃されて突然9階に戻ってきました。鬼の姿は見てないです」


 文面は、その短い物だけだった。


(見てない? 見てないとは……?)


 いくら不意打ちで捕まったのだとしても、相手を一切認識していないという事があり得るのだろうか……。いや、まぁ可能性だけで言えばあるのか。


 たとえば今僕らがいるような階段とか、まったく襲われると想定していない場所で急に捕まったとすれば、あまりの驚愕で周りを確認する余裕なんて無いはずだ。


「でも、確保情報と同義の物が来たっていう事は、諦めたって訳じゃなさそうですね」

「ん~。まぁ時間がかかりすぎっていう意見に変わりはないですけどね。ハイネスさんならそも――」


 最後までサカキさんに意見を言う前に、立て続けに手元の携帯に通知が届く。

 今度は無敵を使用したという連絡ではなく、そのまま確保情報だった。それも、先程無敵を使用したと連絡が入っていたおまるさんと、加速を持ち込んでいるはずのウルフさんだ。


 加速を使用する場合、その旨を送るよう指示を出しているのでなんの連絡もないままウルフさんが確保されたという事は、能力を使う間もなく捕まったという事に他ならない。つまり、不意打ちってことだ。


 というよりも、なんで9階に戻ったはずのおまるさんが2分も経たずに捕まるのか。それが一番よく分からない。


「上の階に鬼がいるって事ですか……? そりゃまたなんで?」

「僕に聞かれても……。それに、おまるさん程の人が2回も不意打ちを喰らうとか、そんなのありえます?」


 普段はおちゃらけているように見えるあの人も、一応はトッププレイヤーなので鬼に追われたとしてもある程度の時間を稼ぐ事なら容易だ。


 その間、僕に追われている旨の連絡をする事だって可能だったはず。それが無かったという事は、今回も不意打ちで捕まったとみる方が妥当だろう。


「一気にゲームが動きましたね」

「サカキさんが考えるべきって言ったからですよ……。どうすれば良いって――」


 その直後、僕ら2人は揃って無敵を発動させて7階の第7スタジオへと転移した。

 お互いの顔を見合わせた僕らは、ドラマの撮影をやっているらしきそこのスタッフさんに遠慮することなく、呟いた。


『どうなってるんですか?』

ナポレオンの件に関してはほんとに諸説あるので、細かいことは気にしないでいただけると嬉しいですm(_ _)m

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