第210話 突然の発表
マイさんがイベント開催に向けて各所に相談を持ち掛けている間、僕は特段やる事が無いのでこの間に引き続き海外のプレイヤーの偵察に精を出していた。
今まで大会動画を倍速や1.5倍速なんかで視聴していた僕でも、海外の大会は見どころが多いので通常速度で見る事が増える。解説の人も何を言っているのか分かるし、プレイヤーがどんなことを考えているのかも大抵は分かるので、こんなに見てて楽しい大会動画は無い。
日本の大会はキャスターの人はいるけど、実況だけで所々にこれはどういう事で~みたいな解説を入れる事は無い。
プレイヤーのレベルが高いのか、それともそれをリアルタイムで解説出来るような人材がいないだけなのか。多分後者だと思うけど、そんな理由もあって、日本の大会動画は見ていてもあまり面白くはない。
時々あっと驚くようなプレイをする人はいるけれど、本当に極稀にしかいないし、僕ならそうするのになんでそう動くんだろうみたいな人が多いせいで、見ていて疲れる事の方が多い。
その点、海外の人の大会は僕の思い通りに動いてくれることが多いので見ているだけでおおーと自然と声が漏れる。まぁ、逆に言うならそれは本当に戦う事になればかなり手強い相手って事に他ならないんだけどさ……。
(索敵班とか、言語が分からないといる意味がないって気付けたのは大きかったなぁ……)
海外の人と交流戦をした時、相手の国の言語が分からないなら索敵班のいる意味が半減してしまうと知れたのはかなり大きかったと今でも思う。
後々聞いたけど、あの時索敵班を担当していたミラルさんとミルクさんは、英語が全くダメと言う訳では無いそうだった。
ただ、やはり学校で教えてもらうレベルであって、英検に換算すると3級程度という話だった。
それの何が悪いのかと疑問に思うかもしれないけど、逆に言うとあなたは英検3級しか持ってないのに何不自由なく外国で暮らしていけますか?と聞かれているのと同じだ。
外国の人は教材の資料のように文字で説明してくれるわけでもなく、先生のようにゆっくり喋ってくれるはずもない。
現地の人は意識してないかもしれないけど、こっちからすると現地の英語はネイティブすぎて、慣れていないと単語すら聞き取れない事がままある。
英検1級とか、そこら辺を取れるレベルの人ならともかく、学校教育でしか英語を習った事が無い人なら現地の人の会話を聞いて何を話しているのか正確に翻訳できる人はまずいない。
リスニング力を鍛えると言っても、それは日本人向けに作られたテストでしかない。本物の英語はそんな生易しい物じゃない。
僕は全く興味ないけど、海外の配信者の配信や、格闘ゲームの大会動画なんかを見ればそれが一発で分かるはずだ。学校で習う範囲で英語を学んだ気になっている人は、何言ってんだこいつってなるはずだから。
(てか、ドイツ語ももう少し煮詰めないといけないんですけどね……)
こんなに偉そうなことを言っている僕でも、現地の人に「意味は通じるけど違和感がある」と言われたドイツ語に関しては、もうちょっと勉強しなければならない。意味があるのかと言われると、いや多分無いと答えるだろうけど……。
そんなこんなで海外の大会動画を3時間ほどダラダラ見ていた時、部屋をノックする音が聞こえてくる。
「なに……?」
「ハイネスと舞ちゃんが来るって。日本予選の準決勝と決勝の詳細が出たでしょ。多分、グッズ関係とそれの話聞きに来たんじゃない?」
「……え、なにそれ」
ハイネスさん達が来ることも、運営から日本予選の準決勝と決勝の詳細が発表されたことも初耳なんですけど……。
そう思ってキーボードを叩くと、確かに公式サイトに日本予選決勝・準決勝の取り決めについてと言う文言が記載されていた。
「……予想より早く終わりそうなのでルールを追加します。あのねぇ……」
なんだその理由はと、思わず叫びたくなった。
そりゃルールを変更して引き分けによって試合の遅延がほぼ0になるようなシステムを生み出したことに関しては称賛物だと思う。だけど、それとこれとは別だろう。
いくら夏頃……ないしは春頃に終了予定だったのが2月末にはどんなに遅くても終わる事が確定したのでルールを追加しますなんて、横暴では無いだろうか。
(えっと……3本先取なのは以前の発表のままで、マップを試合開始前に決める権利が与えられると……。いや、まぁルール追加ってなったらそうだろうね……)
公式サイトには、初戦は抽選で決まったチームが脱出ゲーム要素の無いマップを自由に選択し、その後の試合は敗北した側が脱出ゲーム要素のあるマップを選択。その後、再び負けた方が脱出ゲーム要素の無いマップを……という風に、マップを決める権利が与えられるそうだ。
ただし、初戦はともかく2戦目以降はマップを選ぶ際に勝者側に1マップだけ「ここは選ぶな」と選択する権利が与えられるそうだ。
いわゆる、このマップ以外ならどこでも良いって感じになるのだろう。
そのマップを選択した後、アバターの設定を変更したりする時間が設けられ、それが終わって初めて試合が始まるそうだ。
まぁなんか……ルールを追加するってなればそうなるだろうなってのは予想していたのである意味それは良い。だけど……
「ハイネスさんもマイさんも、聞きたいのは最後の一文のとこだろうなぁ……」
その追加ルールの最後の一文には、脱出ゲーム要素のあるマップで引き分けた場合は、ポイント数ではなく試合の時間で決まるようになります。と書いてあった。
まぁ一方の子供が勝って、もう一方でも子供が勝った場合はポイント差が出ないんだからそりゃそうだろうねと言うしかないんだけど……問題はそこじゃない。
マップ選択によって、鬼と子供双方のマップが同じになるという事だ。以前までの大会なら従来通りなので何も問題は無いのだが、今回は少々事情が違う。マップごとに強い設定と弱い設定などがあるので、そこら辺を加味して色々調整しないといけないのだ。
たとえば、ギリシャの島をモデルにしたようなあの新マップでは索敵班は強く生きるだろうけど、天空城や幽霊病院なんかの、広いマップや横に長くて階層で分けられているようなマップには向いていない。
それは鬼側も同じだろうから、そこら辺を色々調整する必要が出てくるだろう。
多分、2人ともその事を聞きたくて来るんじゃないだろうか。
「って言っても、子供の事ならまだしも、僕に鬼側の事を聞かれても困るんですけど……」
僕がボソッと愚痴をこぼすのと、玄関がガチャリと開いたのはほぼ同時だった。
ここ最近ずっと言ってる気がする。でも、改めて言う。気が重い……。
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やる気が、出ます( *´ `*)




