第205話 敵情視察
今日が金曜日なの忘れてましたm(_ _)m
現実へと帰還した僕は、春香が作ってくれていた夕飯を平らげると早速別の仕事に取り掛かる。
今日は海外の配信サイトで予選の試合が中継されていれば、それを見ると決めていたのだ。
脱出マップの参考にしたいというのもあるけれど、普通に敵情視察という意味合いが強い。
それで、選ぶのは僕が実況の人の言語やゲーム内で何が書かれているか、その翻訳が可能な地域だ。
解説が必要なのは、脱出マップが出てきた時にその人がどういうコメントをするか、そしてコメント欄の人がどういう反応をするか見たいからだ。
海外の人が脱出マップについてどういう見解を持っていて、どんな方法で攻略するのか興味がある。それに、脱出マップ以外でもどんなプレイスタイルで、どんな設定で挑むのか興味があるのだ。
敵情視察しようと言ってるのに、その国の言語が全く分からないせいでプレイしか分かりませんとなればその意味は半減する。だからこそ、言語が分かってなおかつある程度プレイのレベルが高い国をチョイスする。
(フランス語分かるの、ほんと助かるな……)
前回大会の優勝チームかどこかが確かフランスだったので、ちょうどいい。
プレイスキルも申し分なく、僕もフランス語は話せるし、読めるのでちょうどいい。
いつもは大会動画なんて倍速で見るんだけど、敵情視察も兼ねているので1.5倍速にして複数のモニターで同時視聴をする。そこで、解説が盛り上がったりコメント欄の流れが速くなるタイミングがあれば巻き戻して最初から等倍で見る。
その他にも、お目当ての脱出マップが配信に映るタイミングがあれば、それは無条件で等倍視聴だ。
「にしても……海外のプレイヤーってほんとにプレイヤースキル高いよなぁ……」
かなり早送りだけど、それだけでも節々でプレイヤースキルの高さが感じられる場面が多々ある。
たとえば、僕の解説動画を見た訳では無いだろうに僕と同じような動きをしたり、僕がこうするのが正解かな?って思った行動をそのままトレースしている。
まるで、僕の配信を見ているかのようで少しだけ気持ちが良い。
もちろんハイネスさんが言っていたように頭というか策の方面はあまり強くないのか相手指揮官の見え見えの罠にあっさり引っかかるという場面が散見される。
それは世界一を経験しているあのチームも同じで、日本のチームじゃ誰も引っかからないような見え見えの罠にもまんまと引っ掛かる姿は少しだけ滑稽にも見える。
(なのに、なんで勝てるんだろ……)
もちろん罠を仕掛ける側も底が浅い物しか仕掛けられていないっていうのもあるんだけど、プレイヤースキルでゴリ押してその罠を掻い潜っているのだ。
海外のプレイスタイルは、良く言えば相手や自分のチームの作戦に引っ張られない自由なプレイ。悪く言えばまとまりを欠いた究極の個人技……って感じだ。
それはこのゲームの本質と言うか、僕もランクマッチで勝てているのはそういう側面が大きいからだけど、確かに個人技では僕のように強い人がかなり多いイメージだ。
そこまで有名じゃないチームでも、僕と同じ選択、同じプレイをする人を何人も見かけるし、それこそ鬼側でもマイさん並みの索敵能力を持っている人が何人も見つかる。
これは化け物と言われるわという気持ちが湧き上がってくる反面、解説もコメント欄も下手だとかなんでそう動くんだ!みたいな罵倒のコメントで埋め尽くされているのが気になる。
この人達は日本の誹謗中傷が大好きな人達みたく適当言ってるだけなのか、それとも本当にこの人達よりプレイが上手いのか。
普段から配信を見ている訳ではない僕には判断が付かない。まぁ、多分前者だろうけどさ……。
(それにしても、配信卓に脱出マップの類が一切出てないのはなんでだろ……。でも、普通にSNSとか見てる限りだと海外でも新しいマップへの反応はあるんだよね)
フランスの配信もそうだけど、同時にチラチラと調べているアメリカやドイツ、韓国や中国もまったくと言っていいほど脱出マップの配信が無いのだ。
まぁ元々そこまで頻繁に出てくるマップでもないので仕方ないのかもしれないけどさ……?
これじゃ、情報収集の意味が半減してしまう。
いや……配信に映らないなら、実際に当たった人に聞けば良いだけか。そのこと自体を運営は禁止している訳じゃないのだから、別に大丈夫だろう。
後で何かあったとしても、規約に書いてない方が悪いと言い逃れが出来る。規約に書いてないからと言って何でもして良い訳じゃないけれど、これは書いていない運営にも問題があるだろう……。
という事で、僕らは既に予選を敗退しているという情報と、その予選で脱出マップに当たった海外のプレイヤーを探し始めた。
既に予選を敗退している人を選ぶのは、まだ勝ち進んでいる人の場合、世界大会で当たる可能性のある人にわざわざ情報を渡したがらないだろうという思いがあるからだ。
それに、そんな人がもし情報を教えてくれたとしてもそこに嘘が混じっている可能性がある。なら、その可能性は出来る限り少なくしておくべきだ。
「フランスとドイツと……韓国のプレイヤーにしようかな。教えてくれると良いけど……」
こういう時、聞く相手を1人に絞らないのは1人に断られてもすぐに次に行けるからだ。
それに、複数人に聞くことで様々なパターンの回答が得られるし、情報に差異があればどこかしらが嘘をついている、またはどこかしらが違うパターンが出題されるという事になる。
その真偽は結局その時にならないと分からないけれど、初見の時にこうですよっていきなり見せられるよりは随分マシになるだろう。
試験とかで過去問を解くのと同じように、過去に出題された試練の内容やマップの構造なんかを頭に入れておくことで、それらと類似したものが出てきたときの対応能力を上げるのだ。
それに、最近ドイツ語を覚えたから単純に現地の人との会話で役に立つのかも知りたいし……。
それから数分後、早速だけどコンタクトを取ったフランス人の元プロ選手から返信が来た。
その内容だけど、こちらからも情報を渡すのであれば構わないとの旨を乗せた協力的な物だった。なんでこちらから情報を渡さないといけないのか、その意味を少しだけ考えたけど、すぐに答えは出た。
(フランスの予選で優勝したところに情報事売りつけるつもりか……。やるなぁ)
いや、情報それ自体にそこまで意味はないかもしれないけど、日本のプレイヤーはこう動いてくるから警戒しろ。そういうだけで、自国チームの勝率がちょっとだけでも上がるだろう。
それに、ワールドカップとかオリンピック並みに盛り上がってるなら、それはどんなことをしてでも自国のチームを勝たせたいという事だろう。多分……いや、怒られそうだけどさ。
まぁ良い。こちらの情報には真実の中に嘘を紛れ込ませる……いや、完全に創作してみても面白い。
たとえば、事実を元にこんな試練が出ましたとでっちあげる。少し面白そうなのでやってみても良いかもしれない。ちょっと楽しそうだし。
「分かりました。じゃあ、そちらの情報から先にお願いします」
僕はだいぶ前にマスターしたフランス語でそう返信し、相手の返答を待った。
その数分後、了承の返事を受け取ったことで交渉が成立した。なんか……海外のはまた特殊だなって思ったよ、うん……。
日本の物とまったく違うんだけど、これは相手が嘘を言っているのか、それとも日本とは全く形態が違うのか……。他の人たちからの情報が楽しみだ。
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やる気が、出ます( *´ `*)




