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第160話 Moon light 交流戦第一試合

 交流戦最初の相手は第2回ネクラ杯優勝チームの『Moon light』だった。

 この人達は初見殺し的な要因で相手の動揺を誘って勝利したみたいだけど、僕らにはその手は通用しない……と言いたいところだったけれど、今回は携帯の使用を禁止されているので僕1人が相手の策を見破ったとしても意味がない。それを全員に伝える、もしくは半数以上にどうにかして伝達しなければならない。


 そこでネクラが考えた策とは、普段は絶対にしないけれど自分が動き回って作戦を伝達するということだった。

 普段なら出会ったチームの人に伝言を頼むのだが、今回はチームメンバーとも合流できなかったという設定を自分に課している。


 その理由だけど、携帯を使えない環境だと仲間の情報が一切ないので自分で動くしかないのだ。


 極端な例だけど、仲間がすでに残り3人とかになっていたとしても確保情報が届かないのでその確認のしようがなく、今何人いるのか分からないからだ。


 仲間と合流しようとしても中々叶わないなんて状況があるかもしれない。そうなると自分で動くしかないので、最初から自分で動くと決めたのだ。


(で、動き回ってる訳だけど……)


 不自然な程仲間と遭遇しない……というか、20分近くマップをぶらぶらしているのに鬼にも遭遇しないのはなんでだろうか。

 マップは遊園地だからかなり広いとは言えど、ここまで露骨に無防備な状態を晒していて鬼にすらおろか、仲間にすら会えないというのはちょっと……どころかかなり異常だ。


「一回冷静になるか……」


 一度立ち止まり、噴水広場に置かれているベンチに腰を下ろして考えてみる。


 今のこの状況、どう考えてもおかしい。鬼と会わないというのはこの際どうでも良い。理由はいくらでも考えられるからだ。

 ただ不可解なのは、まだ始まって30分ちょっとしか経っていないのに仲間が誰1人として合流してこないことだ。


「皆どこかに隠れてる……? いや、絶叫と恐竜まで回ってるのに誰も話しかけてこないってある……?」


 そう言えばそろそろ試練が発令されている頃だと思い出し、携帯を取り出してみるとそこには想像通り謎解きの試練が送られてきていた。

 それをいつもの通りに数秒で解いたネクラはそのまま携帯を懐に戻して腕を組み考え直す。


「鬼が僕を追いかけてこないのは囮だとか、時間の無駄だとかそういう考えの元だとするなら理解出来る……。こうなると子供側は……」


 考えられる要因は3つだ。

 1つ、偶然皆が回った場所にいなかった場合。

 2つ、既に半数以上が捕まっていてそもそも子供の母数が少ないために合流できない。

 3つ、ハイネスさんから何かしら僕に内緒で指令を出されている。


(……3だな。始まったばかりなのに回った場所に全員が居なかったっていうのは考えにくい。それに、こんなに早く半数以上が捕まるなんて想像できない。なので、消去法的に3だ)


 ハイネスさんが何かしら指令を出しているのだとすれば、その内容は恐らくこうだ。


『ネクラさんと合流するとあの人が大抵の事はどうにかしてくれるので携帯の使用を禁止している意味がなくなります。なので、今回は全員ネクラさんと合流するのを禁止します。姿を見つけたら逃げる位の気持ちでいてください』


 みたいな感じじゃないかな。


 評価が高いのはありがたいし、この交流戦は試験的なところが大きいので勝利は二の次だ。だから別に良いんだけど……僕は1人で凄く寂しいです……。


 その後は特にすることもないので一人で遊園地を満喫(一部のアトラクションには乗る事が出来る)した僕は、敗北のアナウンスが流れてくるまでジェットコースターに永遠と乗っていた。


 ちなみに敗北した理由は強制試練中の黒猫さんが捕まったからで、僕らの残り人数は12人と試合開始から1時間40分経っていたにしてはかなりの好成績だった。



――ハイネス視点



(あの人にはもうバレてるだろうなぁ……)


 試合開始から20分してようやく合流できたシラユキさんと連携して2人の子供を捕まえた直後、私は雲一つない青空を見ながらぼんやりとそんなことを思う。

 私が交流戦前にネクラさんに伏せてチームの皆にお願いしたことは3つだった。


 そのうちの1つはネクラさんと接触しないでほしいという物だ。

 理由は単純。あの人は強すぎるのだ。

 あの人が近くにいるだけで安心感は普段のそれとは比べ物にならないくらい上がるし、女の子なら一度はされたいお姫様扱い(本人に自覚は無いけど)をされるので、余計に好きになってしまう可能性がある。それは、私が経験したのでよく知っている。


 正直、ネクラさんなら始まって40分……いや、もしかしたら30分も経たずに気付くかもしれない。

 だって、私があの人の立場なら携帯の使用を禁止された状態で何をするかって、普段のランクマッチと同じように仲間と合流するまで歩き回るから。

 最悪その人を守っていれば、後は強制試練を仲間がクリアしてくれるだけで勝てるんだし。


「まぁでも、流石に残り2つは気付かれてないよね……」


 私がお願いしたのはネクラさんと接触しないでほしいという事ともう2つ。

 そのうちの1つは――


「ハイネスさん、この先のエリアに3人ほど隠れていると思います」

「……あ、はい、なんです?」

「この先の恐竜エリアに3人ほどいると思います。いや、もしかしたら4人……」

「そんなにですか?」


 ネクラさん以外の全員を秘密裏に集めた時の事を思い出していると、隣で歩いていたシラユキさんが突然そのようなことを言ってきたので思考を中断して試合に集中する。


「はい。さっき捕まえた人達はこのエリアから遠ざかろうと努力していましたし、相手の残り人数はマイさんのいつものペースを考えるなら残り半数以下です。なので、2人を犠牲にしてまでこのエリアから遠ざけたかったのなら、ここに複数います」

「数の根拠は?」

「今までの経験と勘です」


 マジ顔でそういうシラユキさんは傍から見ると滑稽だけど、この人のこれは毎回こうだし、その予測は大方当たる……というか、間違っていたことがほとんどないのだ。

 前半部分の話は私も少し考えれば分かる事だし、ネクラさん程じゃなくても頭が良ければすぐに気づける。


 しかし、シラユキさんの凄いところはそのエリアに隠れている人数までも不自然な程ピタリと当てる事だ。

 その予測能力には何回も助けられたけれど、あなたの頭はどうなっているのか、過去にどんな経験をしたらそんなことが分かるようになるのか教えてほしいくらいだ。


「あれ? マイさんじゃないですか」


 シラユキさんとしばらくの間談笑しながら恐竜エリアへと向かうと、そこにはたった今3人を同時に捕まえるなんて意味の分からないことをやってのけていたマイさんがいた。

 いや、正確には10秒経たないくらいの短い時間の間で3人を捕まえていたんだけど。


「あ、ハイネスさんにシラユキさん~! 合流できて良かったです~!」


 可愛く飛び跳ねながらこちらにやってくる彼女のアバターにはどことなく恐怖を覚えるし、ついでのように「あ、向こうにもう1人いる」なんて言われた時は相変わらず規格外の索敵能力だと呆れたものだ。

 しかも、今回もシラユキさんの推測はピッタリ当たってたし……。


「それよりマイさん、なんでここに?」

「う~ん、ネクラさんに言われた事実践してみようかなって思ってやってるだけです!」

「ネクラさんの……?」

「はい、最近私対策が進んできているのでその相談をしたんです。なので、その成果を1度試しておこうかと思って!」


 嬉しそうにそういうマイさんは、続く「何人捕まえたんですか?」というシラユキさんの質問に13人です!と満面の笑みで答えた。

 ネクラさん、あなた何言ったんですか……??

投稿主は皆様からの評価や感想、ブクマなどを貰えると非常に喜びます。ので、お情けでも良いのでしてやってください<(_ _*)>

やる気が、出ます( *´ `*)

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