第159話 交流戦の相手
チームメンバーの相談をあらかた聞き終えた翌日、ハイネスさんは再び全員を招集して近々交流戦をしたいという話を持ち出した。
その対戦相手はまだ決まっていないし、何より僕にも話していないのでみんなで決めたかったとの事だ。
「各々ネクラさんに相談してプレイに関しては多少自信が戻った……もしくは、早く試してみたいと思っているはずです。なので、その確認と日本予選に向けての最終調整としてどこかのチームと数戦戦いたいと思っています。対戦相手の候補としては、第2回ネクラ杯で優勝した『Moon light』か、準優勝した『ネクラさん攻略同盟♡』もしくはどこかのプロチームに挑もうかと考えています」
ハイネスさんがそう言うと、何人かは分かりやすく頷いたり首を傾げたりしている。
僕もどちらかと言えば首を傾げたい。なぜなら、その2チームももちろん強いとは思うけれど、そこよりも強く、プロよりも手ごわい有名チームはいくつもあるからだ。
交流戦をするならてっきりそういう強豪相手にするものだとばかり思っていた。
「なんで『まくらのそうし』とか『神明』みたいな強豪を相手にしないんっすか? 僕らなら全然いけると思うっすよ?」
そう思っていたら、気になっていたことをミナモンさんが聞いてくれた。
でもミナモンさん。まくらのそうしなんて強豪チームは存在してないよ……。それは清少納言愛好会の間違いなんじゃないかな……。
いやそんなに変わらないかもだけどさ。
「それには理由があります。まず、そこら辺の強豪相手だと数戦やっただけでもかなりの情報を渡す可能性があります。ただでさえ油断してはいけない相手なので情報戦でも不利を取るのは避けたいです。その点、今回私が選出したチームは諸々の理由から予選でも勝つのが容易、もしくは勝てる可能性が他よりも高いと思われるところです」
「そんなチームと交流戦して意味あるっすか?」
「あります。まず第一に、勝つのが容易とは言いましたが、それはあくまで『神明』などの強豪相手に比べればです。本気でこられるとそこまで易々と勝てる相手ではありません。そして、今回は相手方に本気で戦ってもらうようある策を用意しています」
ハイネスさんがニコッと微笑むとなぜか僕の方を見てさらにその笑みを深める。
なんだか、その態度だけでその策を全て見抜けたような気がする。
だって、ネクラ杯初回の優勝チームと第2回の優勝チームはどちらも僕のファンの人達だったし……。
「はい、私からも質問宜しいでしょうか」
「なんでしょうミミミさん」
「この際、対戦相手の方に関しては置いておきましょう。ハイネスさんの事なのでそこら辺は十分考えられていると思いますので。それを踏まえてなのですが、今回の交流戦の目的……目標の部分を聞いておきたいのですが?」
「あ~……そうですね。情報収集と言うのもありますが、今回は子供側・鬼側双方で携帯の使用を禁止します。その状況下でどれだけ動けるのかを確認したいんです」
携帯の使用禁止。そう言われ戸惑わないプレイヤーはいないだろう。
なにせ、このゲームにおいて携帯の役割は大きいなんてものでは収まらない。必需品なんて言葉じゃ収まらない程重要な物だ。
なにせ、マップの全体図や現在位置は確認することができないので自分の記憶と照らし合わせなければならないし、仲間との連絡はおろか、確保情報すら届かないのだ。
「待ってください。試練はどうするんですか?」
「皆さん、試練の出るタイミングは大体わかると思うのでその時だけ携帯の使用を許可します。しかし、あくまで試練をクリアする為だけに使用し、クリア後は速やかにしまってください」
「ま、まじですか……」
「マジです」
そんなの、一切勉強しないで人生を賭けた受験に挑むような無謀・無茶・自殺行為だろう。
いや、なんでそんなことをしようとするのかは大体予想付くけど!
「日本予選や世界大会で携帯の使用が出来なくなるような状況が起こる可能性があるのでその予習をしたいって事ですよね?」
「流石ネクラさんです」
「まぁ可能性があるかないかで言えばあると答えるのが正しいんでしょうけど……」
「ですよね。もうすぐそこまで日本予選が迫っているので時間がありません。やれることはやっておいて損はありません」
まぁハイネスさんのいう事も一理ある。なにせ、日本予選や世界大会では全く未知の試練やマップが出てくると既に告知されている。
携帯が使えなくともマップを完全に暗記しているので今回は問題ないけど、予選なんかで未知のマップが出てきた時は少し面倒になるし……。
「皆さんはどうですか? 他に試したいことがあるならこの機会ですのでやっておきたいと思います。強豪相手の交流戦は予選が始まる数日前から始める予定です」
「じ、じゃあ……私、その、前から出てくるかもしれないって思ってる試練があって……。その対策を皆さんでやってみたいなって、思ってたんです……」
その後、プロチームを相手にするのは時間の無駄だというほぼ全員の総意でネクラ杯優勝経験チーム2チームに僕からコンタクトを取ることが決定した。
その結果、交流戦をするのは承諾してもらった。だけど、いくつか条件も付けられた。
第一に、交流戦はどちらかが3勝した時点で終了。引き分けの場合は相手の勝利となる。
第二に、僕らが負けた場合は僕の誕生日に生配信、もしくは現実でのイベントを開くこと。
第三に、試合の録画を許可してほしい。
との事だった。
どれも相手に本気で挑んできてもらうために承認したけど、第二の条件は何なのか……。
というか、なんでその条件でありえないくらい相手チームの士気が上がっているのか……。ちょっと怖くなってきた……。
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