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第155話 ガチ恋勢

「ガチ恋勢への対処法、ですか?」

「はい。最近、僕じゃなくて妹の方にそういう方達が増えてきて困っているらしくて」

「ほ、ほら……あのネクラさんがわざわざ相談したいっていうから重大なものって言ったじゃん……」


 さっきまで散々からかわれていた佐々並さんは、まだ若干赤い顔を伏せながらアスカさんを責めるように見つめる。

 その当人はその可愛らしい佐々並さんを見ながらニコッと笑うと、その頭を飼い猫の頭を撫でるかのように優しくなで始める。


「なるほど。だから私達が呼ばれたわけですね? まぁ確かに、日本でネクラさんの次にガチ恋の方が多いのは私かさっちゃんですしチョイスは間違ってないと思いますよ~」

「いや、なんで僕の方が多い前提なんですか……。普通の高校生にそんなガチ恋されても困るんですけど……」

「まぁまぁ。そうですね、一番はやっぱり気にしない事ですよね。応援してくれていることに変わりは無いので、普通のファンの人達と同じく、ありがとう~くらいに思っていれば良いんじゃないですか? 少なくとも、私はそうしてます。さっちゃんは?」

「わ、私はその、え、えっと……」


 もじもじしながら僕の方をチラチラと見てくる佐々並さんは、テレビの中でイケメン過ぎる女優と言われている面影がまるでなくなっていた。

 今のこの光景を第三者が見たら、人見知りの女の人くらいにしか思われないのではないだろうか。


「あ~、さっちゃんは好きな人がいるもんねぇ~? その人以外は見えないもんね~?」

「う、うん……って、なに言ってんの!? もう!」

「......ネクラさん、ほんとにこの子どうですか? 可愛くないですか?」

「いや、そんなにノリノリで聞かれても……。テレビとかで拝見する時とはずいぶんギャップがあって可愛らしいなとは思いますけども……」

「ネクラさんも反応しないでくださいよ! 恥ずかしいのでやめてください!」


 ゆでだこのように顔を真っ赤にした佐々並さんはとうとう耐えられなくなったのかボタンを押して店員さんを呼んだ。

 もちろん僕らのテーブルに来るのはコロさんで……


「はいはい~、どうされました~?」

「あ、あの、この期間限定の特大チョコパフェください……」

「は~い。ちょっとお時間かかりますけど大丈夫ですか~?」

「え……いや、それはその……じゃあ、こっちのミニバナナチョコパフェで……」

「っち、間違えたな……」


 顔見知りのはずなのにコロさん相手にもビクビクしながら注文を口にする佐々並さんは、さながら肉食動物を前にした小動物そのものだった。

 ていうか、最後に不穏そうな言葉が聞こえた気がしたんですけど気のせいですかね……。


「あっちゃんとネクラさんはどうしますか~?」

「あ~、私はダイエット中だから軽めの何か適当にお願い~」

「はいはい~。ネクラさんはどうします?」


 2人が何か頼んでいるのに僕だけ頼まないというのもあれだし、メニューを見てじっくり決める時間を取るのも申し訳が無い。

 大体、そんなに長居するつもりではなかったのでドリンクしか頼んでなかったんだけども……。


「オススメとかありますか?」

「今ちょうどフェアやってて、この『期間限定 超特大チョコバナナパフェ』っていうのがオススメですね~」

「今時間かかるって言ってませんでした……?」

「さぁ? 空耳じゃないですか?」


 なんでそんな澄ました顔で嘘をつくのか。仮にも僕らはお客さんなはずなんですけども……。

 ていうか、聞き間違いとか気のせいじゃなくて空耳って言ってごまかそうとする人初めて見た。


「ほ、他のでお願いします……」

「じゃあ~、カップル限定のイチゴパフェがあるんですけど~」

「カップル限定とは……?」

「カップル限定です。そのままの意味です」


 いや、そう言う事を聞いてるんじゃないんですよ。この席のどこにカップルがいるんでしょうか。


 なに、僕の知らないところで勝手に僕が誰かと付き合ってることにされてるのか、それともアスカさんと佐々並さんがそういう関係……いや、僕の事が云々って話をさっきしたばかりだからそれは無いか。


「さっちゃんの注文キャンセルしてそれ頼んじゃいます? 2人用ですし!」

「何言ってんですか……。なら、普通のチョコパフェでお願いします」

「さっちゃんの方はまんざらでもなさそうですよ~?」

「注文終わったんだから早く行ってくれませんかね!?」


 そう言うと渋々といった感じではあったけれど、コロさんは厨房の方に戻っていった。

 なんか、僕の周りは僕やその周りの人をからかって遊ぶ人が多いような気がするんだけど気のせいだろうか……。


「はぁ……本題に戻りましょう。妹が言うには、アプローチされるのは最悪良いけど、下心丸出しで来られるのは嫌だそうで……。そういった場合の対処法を教えていただきたいなと」

「下心丸出しで来るならブロックして良いですよ? そういうのに乗っかって色々ヤッちゃおうって人も一定数居るので何とも言えませんけど、嫌ならブロックしていって良いと思います」

「多分、本人はそれをするとライの評判が落ちるんじゃって気にしてるのではと」

「それくらいじゃ落ちませんよ? むしろ、それに乗っかって色んな子とふしだらな事して、それが露見した時の方が評判落ちるので。ほら、現にネクラさんもそういう子は相手にしてないけど評判落ちたりはしてないじゃないですか。それと同じです」


 アスカさんが言うには、僕や春香は考えすぎとの事だった。


 有名な配信者や芸能人になればそういう人はそれほど腐る程出てくるので、それに乗じてそういう人達と交わるか、それとも無視するかは人それぞれだという。

 それこそ、当人の自由だからどうしようと勝手との事。


「私はアイドルやってるのでこういう事言うのはほんとはまずいんですけど、ファンの子と交わること自体は別に良いと思うんですよ。相手が未成年とか、どっちかが了承していないならまだしもですね? ただ、それが露見した時に燃えるのは普通に応援してた人が幻滅したり、それこそガチ恋してた人達が悲しむんです。だから、人によっては結構燃えるんです。なので、そういう気が無いならブロックしちゃって全然問題ありません」

「そういうものなんですか? ていうか、ああいう人達って本気の人がいるんですか……。全員冗談で言ってるのとばかり思ってたんですけど」

「ネタで言ってる人もそりゃいるでしょうけど、ネクラさんとかライちゃんの場合は本気の人結構いるんじゃないかなぁ。まぁ、ネクラさんはそういう人に流されないから私達みたいな子が多いんですけどね」

「流された方が良いみたいに言わないでくださいよ……。僕、一応まだ17なんですけど」

「でもほら、後1か月もすれば誕生日じゃないですか。良かったですね、女の子囲い放題になりますよ?」

「だからそういうつもりないんですって……」


 というよりも、僕の誕生日が11月の後半で、日本予選がちょうど12月の頭からなので年末はかなり忙しくなりそうだった。

 かつてないほどの規模で行われるので日本予選だけでも何か月かかるか分からないんだけども……。


「ま、それはそれとして……。さっちゃんはどう思う?」

「私はその……無視で良いと思います。もちろん応援してくれてるのは嬉しいですし、その人達の中から自分に合った人を見つけて結婚するとかも良いと思います。ただ、嫌ならあーちゃんの言う通りブロックするとか無視するとかで良いかと。でも、一つだけ言うなら……」


 そこで言葉を区切った佐々並さんは、ちょっとだけ声を抑えて言った。


「ファンの人達の中で一番お金を貢いでくれるのはガチ恋の方達ですけど、怒らせると一番怖いのも、そのガチ恋の方達なので注意してください」

「ご、ご忠告ありがとうございます……」


 本題が思ったよりも早く片付いたので、その後はお互いの近況(主に僕の)を話し、美味しいパフェをみんなで食べて2時間ほどで解散した。

 ちなみに、その日の深夜にコロさんがカフェで美味しそうにパフェを頬張る僕のファンアートを投稿して少し話題になっていた。

投稿主は皆様からの評価や感想、ブクマなどを貰えると非常に喜びます。ので、お情けでも良いのでしてやってください<(_ _*)>

やる気が、出ます( *´ `*)

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