第143話 日本予選に向けて
僕がマイさんに呼ばれた打ち上げに行った日から数日後、公式から日本予選に関しての情報が更新された。
ちなみに、僕は以後打ち上げに参加することと、酒が少しでも含まれた食べ物を食べるのを春香に禁止された。正直、なんでそんなことになっているのか分からないけれど、打ち上げから帰ってきた記憶が無いので多分そういう事なんだろう。
春香やハイネスさんが滅茶苦茶怒ってたけど、僕が女性関係でやらかしたわけではなさそうだったのでとりあえず良しとしておく。
というよりも、なんで僕の携帯にアスカさんと佐々並さんの連絡先が追加されているのか。それもSNSとかそういうのじゃなく、完全な個人用の連絡先だし……。
「お兄ちゃんが後日お礼言いたいんじゃないかって言われたらしょうがないでしょ。あの人達正体隠してるらしいから、ゲーム用のSNSとか持ってないらしいし」
とは、春香の言だ。
確かに迷惑をかけたのならちゃんとお詫びとお礼を言わないといけないとは思うけど、それなら春香の方を教えるとかもっと色々方法はあったのではないかと思わないでもない。
ただ、迷惑をかけたのは僕なのに妹の連絡先からお詫びを入れるというのも意味が分からないので、結局は生まれて初めて家族以外の人の連絡先をゲットしたのが国民的アイドルと国民的女優だったというだけだ。
(いや、だけってそんな軽く流したらダメでしょ……)
なんて軽くノリ突っ込みを決めたところで、早速公式の情報に目を通していく。と言っても基本は今まで通りの大会と同じだ。
変わっているのは1回戦から2回先に勝った方が勝ちというシステムを採用しているのと、1回戦から試合が配信される可能性があるとの注意書きがされている点だけだ。
前者の方は前もってアナウンスされていたのでさして問題は無いけれど、後者の方は少しだけ面倒だと言える。
もちろん全チームの試合がいきなり配信されるわけが無いので、配信されるのは多くても2試合くらいだろう。それは良い。それは良いのだが……
「これ、配信されるってなったら今後戦う相手に結構な量の情報与えることになるよなぁ……」
配信されるという事は、こちらの設定やら指揮官が誰なのか、果てはチームの大まかな戦い方まで露見してしまう事になりかねない。かといって中途半端な設定で挑んで負けてもつまらない。
これは、かなりギャンブル要素が高いというか、意外と障壁になりそうな問題だった。
対戦型のゲームにおいて、情報というのは現実のお金と同等か、もしくはそれ以上の価値がある。
相手の情報をどれだけ掴めるかで勝敗が決まる事はザラにあるし、逆に相手に誤った情報を与える事でミスを誘発することも出来る。
上手く使えば強力な武器になるが、下手をすれば自分の首を絞める事にもなりかねない、まさに諸刃の剣というにふさわしい物だ。
(ハイネスさんとこの件について話さないとだな……。後は例の切り札に関しても色々意見を貰いたい……)
という訳で、打ち上げ以降特に機嫌の悪いハイネスさんにオドオドしながらもなんとか約束を取り付ける。
今日は学校が終わった後春香と遊ぶ約束をしているので、そのまま家にお邪魔するとの事だった。いや、そんなこと言われるとまた絶対――
「……ほら、やっぱり来たよ」
スマホがブルブルと震えだし、画面には春香の文字が。
これから言われること予想しようか?
「風呂入れ、恥ずかしくない格好に着替えろ、変な事してたり、一個でもやってなかったら後で覚えとけ」
大体こんな感じだから、絶対に。
「も、もしもし……」
「もしもし!? ちょっと、今ハイネスから今日の放課後家に行くって言われたんだけどどういう事!?」
「え、いや、日本予選の事で話したいことがあるって言ったら、今日は春香と遊ぶ約束があるからそのまま家に来るって……」
「はぁ~!? なに私とハイネスのデート邪魔してくれてんの? お兄ちゃん、私に殴られたいの?」
「……ごめんって」
別に邪魔したわけではない。いや、結果的に邪魔する形になってはいるけど、ハイネスさんと春香が今日遊ぶ約束をしていたと知っていれば、わざわざ今日話したいなんて言わなかった。かといって今から「やっぱり明日で良いです」とか言うのも変だし……。
なので、邪魔をしたというのは語弊があるのではないか。
そんな事を頭の中で思いつつ、電話越しでも分かるくらいイラついている春香が何を言ってくるつもりなのか怯えながら待つ。
「はぁ……。もういいわ。なら、ちゃんとお風呂入って恥ずかしくない格好して! 学校出たら連絡するから!」
「……」
「聞いてんの!?」
「聞いてます聞いてます! はい、了解しました!」
予想通り過ぎてビックリしてたなんて言えないので、思わず敬語になってしまう。
ただ、なぜ学校を出たらなんて言葉が出てくるのか。普通、ハイネスさんと合流したら連絡を入れる。と言う方が正しいのではなかろうか……。
「……そういうどうでも良いことは気付かなくていいの! とにかく、私が連絡入れる前に全部終わらせといて! ついでに私の部屋以外を最低限片付けて!」
「……はい」
「良い!? 1個でも怠けてたら知らないからね!」
そのまま一方的に電話を切った春香は、最後の言葉まで僕が予想した通りだった。
なんだかドッと疲れた僕は、猫部屋に癒しを求めた後に言われた通りの事を淡々とやった。
ミスがあっては命が消える可能性があるので、かつてないほどに気合を入れて掃除もした。
ただ、僕はこの話し合いが終わってハイネスさんが帰った数時間後、カンカンに怒った春香の前で正座させられることになった。
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やる気が、出ます( *´ `*)




