表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/322

第13話 打開策

 作戦を考える前に、鬼側の勝敗が決したという事は、そっちで対戦していた人達は、こっち側の試合を幽霊になって見ていると考えた方が良いだろう。

 そうなると、あまり無様なことをしてしまえば、ネクラの株を落としかねない。

 少なくとも、チームメイトに幻滅される展開だけは避けなければならない。


 さっき壁になってくれたメンバーも、今は近くで見ていると仮定して、作戦を立案しなければならない。

 今、自分の周りには、犠牲になったメンバーの霊がいる。そう考えて動こう。


(そうなると、だ)


 あえて見つかりに行く手段は出来れば取りたくない。

 向こうもこっちの能力は見れば分かるはずだ。ということは、あの2人組が素直に攻撃してくれる訳が無い。何としてでも狙撃手の方に連れて行くだろう。

 そうなると、ただの無駄死にとなる。


(危険だが、この手を使うしかない……か)


 幽霊として観戦しているであろうチームメイトを幻滅させず、なおかつこの状況を打破出来る策は、思いつく限り一つしかない。

 そう思い立った晴也は、一斉チャットにてこんな文章を送った。


「瞬間移動をまだ使っておらず、ステージエリアの近くにいる人は連絡を。現状打破のため、協力願います」


 残る子供は10人。既に2つ目の試練も発令されているが、強制試練をクリアしている晴也には関係がない。

 次々捕まっている子供も、消去法的に四君子によってだろう。

 なら、少しくらい余裕のある子供が1人はいるのではないか。そう考えての提案だった。


 その予想は正しかったのか、ちょうどステージエリアと隣接している乗り物エリアに1人、条件に合う人がいるようだ。

 乗り物エリアとは、無駄に広いゴーカートのアトラクションがあったり、なぜかソリを滑るだけのアトラクションがあったりと、スペースが余ったので適当に置きました感満載のエリアだ。


 まぁそんなことはどうでも良く、その人には危険を承知でステージエリアまで来てもらい、わざと鬼2人に見つかってもらう。

 その後の展開はあらかじめ指示を出しておき、失敗すればほぼ確実に幻滅されるだろうが、成功すれば状況が一気に好転するのだ。やるしかない。


 そう決まれば、ステージ裏に隠れている晴也の行動は早かった。

 今こっちに向かってきている仲間が見えたら、すぐにでも助けに行ける地点へと移動し、その時を緊張した面持ちで待っている。

 そして、2分もしないうちにその時はやって来た。


 ステージで行われているライダーショーが終盤に入り、ヒーロー役の人が雑魚敵を倒したのと同時に、協力を依頼した仲間がステージ広場へと現れた。

 ライオンのぬいぐるみを抱えたパジャマ姿の幼女だ。

 一見するとふざけているようにしか見えないが、あのキャラもちゃんとした子供陣営のキャラなのだ。


 そして予想通り、のこのこ現れた獲物を2人の鬼が見逃すはずもない。

 その幼女は、ここに呼びつけた張本人をキョロキョロと探し回っているせいか、左右から詰め寄っている鬼の存在に気が付いていない。

 晴也はちょうど、客席の下へと既に移動を完了しており、鬼が彼女めがけて攻撃を振るタイミングを見計らっている。


「あれ~? ネクラさんが言っていた場所、ここで合ってるよね~? 鬼がいないんだけど~」


 困惑した表情でそんな事をぼやいている少女に、ネクラはこの子の索敵能力を疑った。

 よくそんな様子で8段まで上がれたと関心さえ出来るレベルだ。

 まぁ、これも演技なのかもしれないけれど……。


 晴也が小さくため息を吐いた次の瞬間、先に左側から走って来たのは探偵の方だった。

 女王の方へ誘導し、挟みうちにする気らしい。

 もの凄い形相で走ってくるその姿に、さっきまで呑気だった少女は状況を察し、まっすぐ打ち合わせ通りのポイントへと逃げ込む。

 それはちょうど、晴也が隠れている座席の前だ。


「ノア! 頼むぞ!」

「はいよ~!」


 ノアと呼ばれた女王がすっかり探偵の方に意識を向けていた少女の背後から攻撃を仕掛ける。

 それと同時に、探偵は少女が避ける方向を予想し、そこへと先回りを始めている。


 探偵と女王が相性抜群なのはこの点だ。


 足の早い女王が獲物を追い込み、探偵が逸れのバックアップをする。

 だが、この連携の弱い点はそこでもあるのだ。


「2人でいることで、たとえ意識していなくとも多少の油断が生まれる。本来の目的よりも、目先の利益の為に動いてしまう。やはり、私の考えは正しかった」


 そう言いながら座席の下から這い上がった晴也は、そのまま探偵とは逆の方向へ少女を突き飛ばし、自分はその少女がいた位置へと陣取る。


 攻撃を出してしまえば、はずれるか当たるまで、その攻撃は中断できないシステムなのだ。

 つまり、この時点で晴也の作戦は成功したと言って良い。


「なっ! ヤバ!」

「カナさん! また今度!」

「はい!」


 晴也は女王の攻撃を受け、ゲームオーバー……にはならず、特殊能力の無敵が発動する。

 攻撃を受けると、それを無かった事にしてランダムな場所へと転送される。

 晴也が狙ったのは、自分が女王か探偵の攻撃を受けて別の場所へと無理やり移動することだった。


 しかし、問題があった。相手の狙撃手が持っている能力も無敵なのだ。

 鬼の無敵は、子供の無敵の能力ですら無効化することが出来る。

 晴也が恐れていたのはそれだ。狙撃手に無敵を使われると、自分は問答無用でゲームオーバーになってしまう。

 なので、必ずこの2人のどちらかから攻撃を貰う必要があったのだ。


「では私も! 失礼します!」


 晴也が攻撃をもらいその場に倒れるのと同時に、突き飛ばされた少女の方は携帯を素早く操作し、瞬時にその場から消える。

 晴也が指示した通り、瞬間移動にてこの場から速やかに離れたのだ。


 晴也の作戦はこうだ。

 瞬間移動をまだ使っていない味方をあえてステージエリアへと呼び、女王と探偵のペアに狙わせる。

 攻撃を受けるタイミングで飛び出し、自分が身代わりになることで相手の狙撃手に無敵を使わせず、一方的に場所の移動が出来る。

 そして呼びたした人には、瞬間移動でその場を速攻離れて貰えば良い。


(なんとか成功か……。危なかった……)


 目の前に広がっている海の景色を見ながら、晴也はホッと胸をなでおろした。

 もし失敗していれば、無駄に仲間を1人死なせるハメになっていたのだ。

 試合後、あの子に何を言われても謝ることしか出来なくなっていただろう。


「ネクラ、無敵を使い海賊エリアへと生まれ変わりました。協力ありがとうございます」


 しかも、広場や絶叫エリアなど近場ではなく、海賊エリアという、ステージエリアからかなり遠い場所で生まれ変われたのも幸運だ。

 鬼が中央付近に固まっていたさっきの状況的に、真南に位置しているこの海賊エリアにすぐ来るのは不可能だ。しばらくは安心できる。


「カナ、こちらも無事に移動完了しました!」

「良かったです。お互い、頑張りましょう!」


 どうやら、作戦は全て成功したと思ってよさそうだ。

 四君子は真北の絶叫エリア、ステージエリアは西にあるし、その中間の広場には狙撃手。

 これならなんとかなりそうだ。


 とりあえず絶体絶命の状況を切り抜けた晴也は、称賛が溢れかえっているチャット欄を見ながら、少しだけ頬を赤くした。

投稿主は皆様からの評価や感想、ブクマなどを貰えると非常に喜びます。ので、お情けでも良いのでしてやってください<(_ _*)>

やる気が、出ます( *´ `*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ