第130話 終幕
19時に更新できそうになかったので早めに更新させていただきます。
アメリカのチームとの交流戦、結果はどうだったか。もう、結論から言おう。3勝2敗3分けで僕達の勝利に終わった。
いや、なんであんなに余裕ぶっこいてたのに2回負けたんだよって思うでしょ? 違うんですよ、相手が上手すぎたんですよ。
僕は余裕だとは思ったし、大会だと思ってキチっと指示を出したんだけど、相手は数戦でこっちのアバター設定に対応してきたばかりか、いわゆる読み合いと呼ばれる駆け引きに関しても異常な強さを発揮してゴリ押ししてきたのだ。
僕は人の気持ちを読むのが苦手ので、極力読み合いは避けている。
例えば、相手がどんな行動を取ってきたとしてもある程度抗える策を考えるし、もし相手がこっちの思うとおりに動いてくれなかったらこっちから仕掛けて思う通りに動かすよう指示を出す。
こんな感じで、極力読み合いにはならないように気を付けているんだけど、相手は僕のそういう性格を見抜いたかのように次々と策を潜り抜けてきた。
しかも、策はイマイチだとしてもプレイヤースキルが異常に高いので所々でゴリ押しされるっていう......。
それはハイネスさんの方も同じだったらしく、僕の事前情報がなければ何もできずに負けていただろうという結論まで出していた。
流石にそれは僕を過大評価しすぎている気がするけれど、とりあえず結果は上々だったと言える。
なにせ、海外の有力チーム相手に圧勝なんてすると嫌でも天狗になるし、恐れてたほどでもないという緩んだ空気が流れてしまう可能性があった。
だけど、ここまで僅差で勝利したとなれば程よい緊張感を保って日本予選に迎えるというものだ。
「今回の交流戦を通して分かったのは、ネクラさんの異常ともいえる情報収集能力と謎解き能力、後は牽制能力の高さですね。もちろんアバターの設定についてはもっと煮詰めないといけませんが、大まかな修正は必要ないかと思います。唯一、ネクラさんが煮詰めていたという例の設定に関してはもう少し煮詰めて切り札的な感じにするべきだと思いますが」
「……前半部分の報告いりましたか?」
現在、僕らのチームはいつもの会議室で反省会......改め交流会で見えてきた課題の話し合いを行っていた。
ていうか、前半部分は完全に呆れながら言いましたよね?
「そんなことはありませんよ。ただ、難易度10の謎解きを10秒以内で解くのはちょっと意味が分からないと言いますか......。私、前にクイズ王の人が問題解いてる動画見たことありますけど、早くても2分はかかってましたよ?」
「知りませんよそんなの……。大体、ハイネスさんだって同じことは出来るのでは……」
「私にはできません。むしろ、謎解きは苦手な部類でした」
絶対嘘だと思えるのはなんでだろうか。
ていうか、むしろこの人の方が僕より謎解きは得意なのではなかろうか。
というより、なんでこんな話題になっているのかというと、ほとんどの試合で誰かしらと合流していた僕は、なぜかその時に限って謎解きの試練に見舞われることが多く、その度に瞬時に答えていたので報告されたのだ。
「お兄ちゃんの件については後で良いよハイネス。それよりも、もっと大事な話して」
「......う、うん。まず、ネクラさんが心配していた指揮官不在の設定のデメリットや勝率低下問題についてですね。これは、今回の件でかなり浮き彫りになりました。結論から言うと、海外のプレイヤー相手だと、指揮官が居ない方が戦えるようです」
正直、今回の交流戦を通して一番の収穫はこれだろう。
海外のプレイヤーは個々のプレイヤースキルが高すぎるせいで、生半可な小細工くらいはゴリ押ししてくる。
そんな小細工を考えるために一々チームメンバーから情報を収集するくらいなら、ランクマッチのように各々逃げていた方が勝率が高かったのだ。
もちろん鬼の目撃情報くらいは共有するけど、指示なんかは出さないみたいな。
「ネクラさん以上に的確な指示を出せる人。並びに、短時間で完璧ともいえる作戦を思いつける指揮官プレイヤーは知りませんので、正直これは予想外でした。次に索敵班を無理やりにでも入れるべきかどうかですが……ネクラさんはどう思いました?」
「正直、まだ分からないというのが本音ですね。さっき切り札にしようと言っていただいた例の設定には索敵班を採用していないので、当初思っていた通りの活躍は期待しない方が良いかもしれません。特に、海外の人と戦う時は」
相手の使う言語がこちらと違うせいで、鬼の目撃情報が拾えるだけの存在になってしまう。そんな部隊の為に逃げる能力の高い2人を犠牲にするのはナンセンスだ。
それに前にもあったけれど、索敵班は鬼の目撃情報をすぐに仲間へ知らせる関係で隠れている位置が割り出されやすい。
そうなると、索敵に全てを任せているせいで逃げるに逃げられない。この点は、流石に弱いと言わざるを得ない。
「私も同意見です。仮に相手の言語が分かったとしても、相手もこちらと同じようにダミーの情報を流すなどして対策してくるはずなので、入れない方が賢明かと思います」
「多分、この件はやっていけば露見するはずなので、次の鬼のトレンドは瞬間移動で索敵班をすぐに捕まえられる役の人が入ってきますね。ついでに、私達が紅葉狩りで優勝した影響で逃げる設定の子供が増えているので、索敵の能力を持っている鬼が減って加速を持っている鬼が増えてくると思います」
「なので、次にするべきは隠れる設定か、もしくは全く別の設定で何か結果を残す事……ですね!」
「その通りです」
今の、鬼に加速が多い環境だと奥の手となっている作戦が有効打になりにくいし、なにより僕らの考えたアバターの設定が半分ほど使えなくなってしまう。
なので、ここからは別の事に焦点を当てて全く別の設定を考えないといけないだろう。
「あ、あの……その件でちょっと思いついたことがあるんです、けど……」
「ミルクさん? 珍しいですね。どうしました?」
「え、えっと……まだ自分で試しているだけなので強いかどうかは自信がないんですけど――」
ミルクさんから詳しい話を聞き、次の予定が決まった。
つまり、第2回ネクラ杯の開催だ。
明日も更新します。
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