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第128話 謎解きの時間

今回のお話には3問ほど謎解きがありますが、どれもすぐ晴也が解いちゃうので、一緒に解きたいという方がいれば問題文のところで読むのを中断することをオススメします。


あとがきの方に解説も載せておきますm(_ _)m

 交流戦第2試合が始まって30分が経過した。

 今回、僕達の設定は全員が逃げることに特化したものだ。

 僕が将来的に試してみたいと思っていたものだけど、1戦目は鬼側の活躍で引き分けに終わったので、余裕が出来たと一度試したかったのだ。


 それに、前回僕らは強制試練中の子供が捕まってしまったせいで負けた。

 しかし、相手に索敵を持っているアバターが居なかったので、隠れる部隊のほとんどが生き残る結果を残していた。


 相手は恐らくそのことを重く見て、今回は索敵の能力を持っている鬼を何人か投入してくるはずだ。

 それに、例の正体不明だった1人の鬼は、僕の予想通りそもそも相手に発見されないように努めて不意打ちの一撃を叩き込む鬼だったようで、種が割れてしまえばそこまで怖くないことが判明した。


 しかし、今回のマップは天空城。全体的にかなり入り組んでいて、10万回に1回出るかくらいのマップなので、上位勢でもマップを全て覚えていない人もいるマップだ。つまり、そういう鬼がかなり有効に働ける。

 まぁ、このチームにそんな人はいないんですけども……。


天空城。

 公式サイトにすら載っていない超激レアマップであり、そのモデルになった場所はジャックと豆の木という有名なおとぎ話で巨人が住んでいるとされている場所だ。


 豪華な装飾が施されたその場所は、大広間や酒場、宝物庫にいたるまで全てが巨大だ。

 城という事でかなり広いのだが、全体的に曲がり角や道が入り組んでいることもあって子供が逃げ回りやすいマップと言われている。


 しかし、滅多にでないマップなので上位勢(プロ含め)でもマップの構造を全て暗記している人は非常に少なく、別のゲームでわざわざこのマップを作って覚えようとしている者もいるくらいだ。


 今現在、子供の残り人数は17名。

 ゲーム開始から30分経っているというのに、相手の鬼が2名索敵の能力を持っているおかげでほとんど捕まらずに済んでいる。

 偶然晴也と合流した春香でさえ、この状況には苦笑しか出ない。


 今回、全員が逃げるのに特化した編成という事もあって特に合流は制限していなかった。

 春香――ライがネクラと合流したのは全くの偶然だったが、たった今送られてきた試練の内容を見て良かったと安心する。


「ねぇお兄ちゃん。私の試練謎解きだから手伝ってくれない?」

「……分かった」


 このゲームは、ネット上で試練で出た謎解きの共有は制限しているが、ゲーム内で相談して謎を解く行為それ自体には特に制限していなかった。むしろ、ゲームを通じて人と関わるのは望ましいという事で推奨していたりもする。

 まぁ、大抵の人は顔も知らない初対面の人にそんなことは頼まないので、運営の思惑は失敗に終わっているのだが……。


 春香の試練は難易度9の謎解きだった。が、彼女は数ある試練の中で特定の物を一定の場所まで運べというものの次に謎解きが苦手だった。

 反対に、晴也は謎解きが一番得意な試練だったので、ここで利害が一致する。


 春香に出題された謎解きはこのような物だ。


『ある村に、村人達からとてもバカだと笑われている少年がいた。

 その少年は、村の人達にピカピカの50セントコインとクシャクシャの5ドル札を差し出されると、いつも喜んで50セントコインを貰っていた。

 もちろん、5ドル札は本来の価値通り50セントの10倍の価値がある。この少年は、その価値について知っている。

 なぜ少年は、毎回50セントコインを受け取っているのか答えよ』


 晴也はこの問題文を見た瞬間、何を当たり前のことを言っているのかと首を傾げた。

 問題の意味が分からないのではない。なんでこんな当たり前のことを聞いてきているのか、それを不思議に思ったのだ。


「……なんでって、コインはお札の10倍の価値があるんでしょ? 普通お札の方取るじゃん」

「え、僕なら迷わずコインの方取るけど……」

「はぁ? いや、なんで?」

「......だって、僕は村の人達からバカだって笑われてるんでしょ? なら、コインの方取り続けたら、面白がってまた同じ条件提示してくるじゃん。それ10回以上続ければいいだけでしょ? お札の方選んだら、もうそれ以上くれないかもしれないし」


 この問題の何が難しいのか本気で分からないと言いたげな晴也に対し、意味が分からないと言いながらもその言葉通りの事を解答欄に打ち込むと、数秒後に試練クリアの文字が表示される。


「……お兄ちゃんってさ、時々怖い考え方するよね」

「僕にとっては当たり前の事なんですけど……」

「あ~、前にハイネスが言ってたね。お兄ちゃんにとっての常識は、私達にとっての非常識。私達にとっての常識は、お兄ちゃんにとっての非常識って。それ、社会不適合者って意味だからね」

「そりゃどうも……」


 そんなこと言われても、合理的に考えたらそういう結論が出るんだからしょうがない。

 というより、僕のも謎解きなのはなんでなのだろうか。しかも、こっちの方は難易度8なのに春香のより全然難しいし。


「へぇ。どんなの?」

「こんなの……」


 晴也に送られてきた難易度8の謎解きはこんな内容だった。


『姉を殺害し、両親や私にも怪我を負わせた弟が刑務所から手紙をよこしてきた。

「朝、月、年、夜」

「傘、銭、没、常」

「皮、線、走、帽」

「監、牢、煉、地」

 手紙の消印は一昨日だ。

「カギ閉めないと!」

 気付いてすぐ玄関に向かったが、ドアを開けた母が悲鳴を上げた。

 さて、何が起こった?』


「ねぇ、この……一番最後の行の地の横の漢字なんて読むの?」

「これは煉獄のれんかな。ていうか、ほんとに試練の難易度と謎解きの難易度合ってないじゃん」

「お兄ちゃんの考え方がおかしかっただけでしょさっきの」

「……」


 そこまで言われるとなんだか凹むのでやめてほしい。

 そろそろ真面目に解こう。


「ていうかさ、暗号って何かを伝えるために送る物だと思うんだよ。この場合、獄中にいる弟が何かを伝えるために手紙を出したって事でしょ? で、その手紙を読んで問題文の中の人はすぐに家の鍵を閉めようと玄関に向かったと」

「……そうね?」

「単純に考えるなら、弟が改心して危険を伝えたとか、もしくはその反対で弟が殺しに来たかだけど……どっちにしろ、暗号解かなきゃダメだよねぇ」


 この手の謎解きは、答えだけを入れても不正解として扱われる。なぜその答えに行きついたのか、ちゃんと道筋を答えないとダメなのだ。

 よく、なぞなぞなんかで理由も込みで答えろみたいな問題があると思うけど、本当にあんな感じだ。


「全部の漢字合わせたらなにか出てくるとかじゃないの? 朝、傘、皮、銭……関係は、なさそう?」

「この手の問題で共通してる文字や部分的な繋がりはないと思うよ。もっと単純に考えた方が良いんじゃないかな……。例えば、前後に何かしらの漢字を入れると……ああ、なるほど」


 そこまで言ってようやく答えを導き出すことに成功した晴也は、答えである

「弟が殺せなかった家族を殺しに来た。暗号は、上から順に読むと『今日脱獄』となっているので、問題文の私はカギをかけに行こうとした」

という文を入力し、無事試練クリアとなった。


「……難しいとか言っときながら5分もせずに解くってのはどうなの?」

「だって、大抵のやつは問題文見た瞬間に答え分かるし……」

「はぁ!? ……なら、問題出すから数秒で答えて」

「……分かった」


 イラつきながらも、過去に試練で出てきて「は?」となった謎解きを思い出す。

 答えが分かった時は結構怖かったけど、これを数秒で解けるなんて考えられないという自信と共に、問題を出す。


「ある老人が『好きな食べ物は?』と聞かれたので、大好物だったゆでたまごと言った。次に『ゆでたまご以外の好きな食べ物は?』と聞かれたので、ゆでたまごだと答えた。なんで?」

「……最初のは単なるゆで卵だけど、後半のはゆで卵じゃなく茹でた孫という意味で言ったから?」


 この間、わずか5秒だった。


「……もういい。怖いからどっか行って」

「……なんか、ごめん」


 なんとなく謝った晴也は、言われるままにその場を去った。

 残された春香は、兄の姿が見えなくなるなりはぁと深いため息をついた。

1問目の村人達の問題は晴也が言った通り、コインの方を選び続ければ面白がってまた同じ質問をしてくると思ったからでした。


3問目も同様に、ゆで卵と茹でた孫という2つの『ゆでたまご』という意味ですね。


2問目ですが、漢字の最初や最後の文字にそれぞれ『今』『日』『脱』『獄』の文字を入れることが出来るので、全て繋ぐと『今日脱獄』になります。

それに気付いた問題文の私は、急いで鍵を締めに行った…という訳ですね。


好評のようだったら時々こういう謎解き要素を入れるつもりなので、宜しければご意見ください。

必要ないということであれば、今後こういうのは無くしますのでm(_ _)m

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