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第119話 紅葉狩り二日目 昼の部

 10時少し前に運営の人がそろそろ準備をお願いするとの旨を知らせに来る。

 僕的にはこのホテル内だけで旅行が完結してもなにも文句はないのだけど、どうやらそんなふざけた事は認められないらしい。


 朝食後は女性陣が数人さっさとどこかに行ってしまったので、僕は束の間の休息を得られた訳だけども……。


「でも、ネクラ様も大変ですね。ロビーはまた大変なことになってますよ?」

「……なんか、ほんとすいません」

「ああ、いえいえ。そんなつもりで言った訳ではないので大丈夫ですよ。こちら側でも、ネクラ様が優勝なさってから色々と対策案が出たのですが……そのどれも現実味がないという事で却下されまして」


 上原というスタッフの人とそんな会話をしながら、初日に説明を受けたホールへと向かう。

 その、色々と出た対策案というのをぜひ聞いてみたいけれど、多分教えてくれないんだろう。


 運営側の人達は攻略サイトに重要な情報を載せないばかりか、グランドスラムの初戦の事があったのであまりその頭の良さには期待していない。

 だけど、現実味がないから却下されたというその対策案だけは、今後の為に聞いておきたくもある。


「このホテルを貸し切りにするとか、そんな馬鹿げたものばかりでしたよ? まぁ、その案が出た頃にはすでに満室になっていましたし、観光地や今から行く場所は、予約なんて出来る場所じゃありませんので……」

「あぁ……なるほど」


 そんな事、高校生の僕じゃ絶対に無理なので今後の参考にはならない。

 お金はあるけれど、流石にそこまで無駄遣いする程の余裕はない。


「ていうか、こんな事を昨日会ったばかりの人に聞くのはなんなんですけど……」

「はい?」

「女の人にあれこれ褒められた時って、どう反応するのが正解なんですか? 嫌ではないんですけど、慣れてないのでなんか……」

「あはは。噂通りの方なんですね。ん〜、そうですね。こちらも褒め返すとか、謙遜しつつ相手に笑いかけるとかしてれば良いと思いますよ。大人がそれをやると胡散臭いですけど、ネクラ様の年頃なら、むしろそれくらいで良いかと」


 にこやかにそう言われ、今度実践してみようと心に決める。


 そんな会話が少しだけ続き、例のホールにつくと僕は真っ先に男性陣が固まっている場所へ逃げ込む。

 女性陣の僕を見る目がなぜか怖かったので、サカキさんはいなかったけれど5人が固まっていた場所に飛び込んだ。


 固まって何事か話していたのは黒猫さん、ショウさん、キリスさん、ウルフさん、フラマさんだ。

 全員挨拶した時に少し話した程度だけど、全員良い人そうだったのを覚えている。


「あれ、ネクラさんじゃないっすか。どうしたんです?」

「いえ……。あの、ちょっと避難してきたと言いますか……」

「アハハ。モテんのも大変っすねぇ。てか、うちの上司があんなにイキイキしてんのマジヤバいんで、気を付けてくださいね」

「ミミミさんですか? ……はい、気を付けます」


 普段から絞られている人にそう言われると余計に怖いんですけど……。

 いや、そんな事よりも、この男性陣にも聞いてみたいことがあったんだ。


「昨日春……妹から聞いたんですけど、この中に漫画家の方がいるって本当ですか?」

「あ〜、それ自分っすね。なんか、おまるさんがすげぇ作家さんって聞いたんで、自分は良いかなって思って名乗り出なかったんすよ」

「ショウさんでしたか。ちなみに、何の漫画を描いてらっしゃるんですか?」

「ダークファンタジーっていうんっすかね? ちょっと暗めの話を月刊連載でやってますよ。週刊の方にも話が出たんっすけど、ゲームできないから月刊の方にしてもらったんすよね。編集の姉ちゃんからは滅茶苦茶怒鳴られましたけど……」


 頭を掻きながら笑うショウさんは、確かに爽やかなイメージはあるけど、どこかやつれているような気もする。


 僕がこの人達の中に漫画家がいると思ったのは、頻繁に絡んでくる女性陣に漫画家がいれば、自分からカミングアウトしてくると思ったからだ。


 僕が漫画や小説を好きって情報は昨日の夜に散々話しているので、女性陣のネットワークで既にそのことは広まっていると思う。

 なので、漫画家ならおまるさんのように僕がファンの可能性があるし、喜んでカミングアウトしてくるような気がしたのだ。

 朝食の時に少し身構えていたけれど、それがなかったので男性陣だろうと当たりをつけた。


 さらに言えば、サカキさんは元プロの人なので漫画家ではないし、ジョーカーさんはランキング上位常連なので、漫画家ならいつ漫画を描いているんだと突っ込まないといけなくなるので可能性を除外したという訳だ。


「おまるさんは編集さんと結構ラフな感じで電話してましたけど、やっぱり、皆が皆そういう訳じゃないんですか?」

「え、マジっすか!? 自分、編集の姉ちゃんから常に怒られてるから苦手意識ついてるんですよね……。ほら、ちょうどキリスさんとミミミさんみたいな関係なんっすよ」

「いや、自分を引き合いに出さないでくださいよ。多分、僕の方が酷いっすよ? あの人、嬉々として怒ってくるんで……」

「いやいや、うちも似たようなもんですよ……。はやく原稿あげてこいって、ニコニコしながら言われる時のなんと怖いことか……。時々夢に出てきますよあの笑顔」


 この会話を聞いて分かると思うけど、うちの男性陣は何かと闇を抱えている人が多い。


 ジョーカーさんは女の人が滅茶苦茶嫌いらしいし、黒猫さんは学生時代に何かあったのか、時々理由もなく震えだすし、フラマさんは目の下にくまが染みついている。


 唯一男性陣で闇が感じられないのは僕が頼りにしているサカキさんとウルフさんくらいだ。

 まぁ、ウルフさんは例のペットショップの店員さんらしいから、僕から話しかけるのは少し気まずい。


 ミナモンさんは……別に闇は感じないけど、頼りになるかと言われると首を捻る。というか、むしろ事態をややこしくしそうなので除外だ。


「では皆さん、お揃いのようなので各々お席にお座りください」


 上原さんからそう言われ、適当に近くの椅子へ座る。

 なぜか左右の椅子を我先にと取りに来た春香とハイネスさんは、周りで悔しがっている女性陣に誇らしげな笑みを向けていた。

 ......別に何も言わないけどさ、君達は何をしてるの?


「この後、皆様にはバスに乗っていただいて、山の頂上まで移動していただきます。その後、4時間ほど景色などを楽しんでいただいた後に下山となります。途中、分からないことや質問等がございましたら、遠慮なく我々にお聞きください」


 その後、簡単な注意事項(主に着いてくるであろうファンの人達の対処について)を聞かされ、早速ロビーへと降りることになった。


 僕は、面倒なことになる事が予想されるので一番最後に降りてきてほしいと釘を刺された。

 ……なんでこうなったんだろうね、ほんと。

投稿主は皆様からの評価や感想、ブクマなどを貰えると非常に喜びます。ので、お情けでも良いのでしてやってください<(_ _*)>

やる気が、出ます( *´ `*)

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