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第95話 新たな可能性

引っ越しやら専門学校の入学でバタバタしてて更新が止まってました。申し訳ないです。

ようやく落ち着いてきたので、少しづつペース戻していきます。

 僕が春香から逃げるのを決めて数日後、ハイネスさんから新しいアバターの設定を思いついたということでチームメンバーに招集がかかった。

 本人はあくまで思いついただけで、改善点はまだあるだろうし、強いかどうかも分からないと言っていた。だけど、十中八九変な設定を思いついたのだろう。


 いつもの会議室にチームメンバーが全員集まったのを確認すると、ハイネスさんは早速立ち上がってその思いついた設定というのを語り始めた。


「まず、ネクラさんが考案したアバターの設定は色々な所で拡散されて既に対策が進んでいます。そして、私達がネクラ杯で敗北した時のように、あの設定は対策しようと思えば簡単に対策が出来る物でした。そこまでは皆さんよろしいですか?」


 なんだかものすごくディスられているきがするけど、多分気のせいなので気にしない。

 数日で考えついた設定が世界大会までなんの対策もされないなんて思って無かったので、意外とメッキがはがれるのが早かったな程度なんだけど……。


 ハイネスさん、僕が振った事、根にもったりしてないよね?


(それは流石に自意識過剰か……)


 自分のバカな考えを振り払い、真剣な表情で説明を続けるハイネスさんへ意識を戻す。


「ですが、ほとんどの人達が偵察部隊の存在は自分達のチームにも取り入れています。一応海外チームの記事を読んでみましたが、彼らもネクラ杯の記事から自分達のチームに取り入れるようにしたそうです」


 海外のチームのブログといっても、当然日本語で書かれている訳ではないので自力で翻訳する必要がある。

 ただ、ハイネスさんも僕と同じで数ヶ国語くらいなら問題なく読める人らしい。


 僕は英語とフランス語、あと韓国語がちょっと読める程度だけど、ハイネスさんはどうなんだろう。後で聞いてみたい。


「そこで、私達鬼側は偵察部隊の対策をしなければ絶対に勝てないという状況になりました。なので、作戦や指示を文面で伝えるとともに、口頭で伝える際は暗号などを用いた方が効果的だと思うんです。どうですか?」

「……あ、私に聞いてます?」

「他に誰が居るんですか? 子供の指揮官はネクラさんじゃないですか」

「……怒ってます?」

「何の事ですか?」


 ニコッと微笑むハイネスさんがもの凄く怖く感じてその横に座っている春香――ライを見ると、当然と言わんばかりに頷いていた。

 ハイネスさんを振ったのは、好意がもてないからじゃ無くて、僕が人と関わるのが無理な人種だからって説明をしたんだけどな……。


 まぁ、これ以上考えてもなんだか良くない気がするので大人しくハイネスさんに聞かれた事に答える方が賢いだろう。


「そうですね……。暗号を用いるのも悪くは無いと思いますが、それよりは相手に間違った情報を渡す事にした方が良いと思います。索敵班が何人いるかはそのチームによるでしょうけど、基本索敵の範囲に引っ掛かってると考えるなら、下手に暗号を使うよりも間違った情報を流した方が混乱させやすいと思います」

「つまり、私達にだけ分かるような指示じゃ無く、相手にも分かるような指示を出して、その後に本命の指示を出すと?」

「ん~。というより、Aというエリアに向かってほしいとします。その時、電話でBというエリアに向かってほしいと伝えると、それを聞いた索敵班の人はBという場所に鬼が向かう事を指揮官に伝えるはずです。間違った情報を与えるというのは、こういうことです」


 ハイネスさんなら、その誤解を利用して色々面倒な策を考える事が出来るだろうし、時々本当にその指示通り動いていれば、相手の考える事はさらに多くなる。


 正確に言えば、情報がフェイクなのか、それとも本当なのかを考えなければならなくなり、そこで読み合いが発生する事になる。

 ハイネスさんなら、並みのプレイヤーに読み合いで負ける事は無いだろうから、ある程度は索敵班の対処が出来るはずだ。


「そうですね……。ミナモンさん」

「……あ、なんっすか?」

「あなたはどのくらいまでなら複雑な指示を守れますか? それによって指示の出し方や今のネクラさんの案を採用するか決めなければならないんですけど」

「ん~、自分は多分、言われた通りのエリアに行くしかできないっすね。あらかじめ言われてたとしても、多分頭から抜けてるんで!」

「分かりました。その件については要検討という事で一旦置いておきましょう」


 やはり、問題児の扱いはハイネスさんに任せて正解だ。

 グランドスラムに出た時、指揮官だったソマリさんもかなり困ってたみたいだけど、ハイネスさんなら管理出来ると思った僕の読みは正しかった。


「で、本題なんですが。今後、鬼の対策が進んで隠れる部隊はかなり厳しくなると思うのですが、その点はどうするつもりなんですか?」

「ん~。一応案はあるんですけど、私の案は今の環境だと少し厳しいと思うんですよね。具体的に言えば、全員囮班みたいに逃げる事に全振りした設定を試してみたいんですよ」

「確かに、今の環境ですと加速を持った相手が一人はいますからね。それに、大会だと引き分けの場合は能力の変更が出来るので、加速を設定されたら厳しくなりますもんね」

「その通りです。なので、もう少し検討しなければならないかなぁと」


 日本予選や世界大会では試合毎にアバターの設定を各種変えられるとかなら、隠れる設定と全員逃げる設定を交互にするとかやりようはある。

 だけど、今はそれが可能かどうかも分からないので変えられない前提で動くべきだ。


 その場合、能力の変更は出来るので加速を持った鬼が4人とかになると、逃げ回る設定では勝てなくなる。それは流石によろしくない。


「そこで私から提案です。恐らく、しばらく鬼の環境は索敵と加速を併せ持つ型が多くなるでしょう。なので、鬼から逃げ回るのが得意な人を全員逃げる設定にして、どちらかと言えば逃げ回るのが苦手な人が小さくなって隠れる役になっては?」

「それ、意味ありますか? 囮役と隠れる部隊の人数が逆になっただけですよね?」

「ミラルさん、それは違います。この案では、ネクラさんも一緒に逃げる役になってもらいます。つまり、指揮官不在で各々が自由に逃げるという事です」


 その言葉を聞いて、会議室に動揺が走った。

 指揮官がいた方が勝率が上がるというのは、大会モードでは常識だ。

 今時上位プレイヤーがいるチームは軒並み指揮官制度を採用しているし、指揮官役を出来るプレイヤーが2人以上居るなんてケースも珍しくない。


 鬼側は最悪個々で勝手に動いても問題無いかもしれないけれど、子供はその人数の多さから連係プレーが大事になってくる。それを根本から覆すような事を言われたのだ。動揺するのも無理は無い。


 まぁ、僕が前に提案した設定もこのゲームの謳い文句を根本から否定するような物だったけどさ……。


「指揮官不在で勝てるんですか? ネクラさんの指揮は正直文句のつけようがありませんし、ご自身も捕まっているところを見たことがありません。このままでも問題無いような気がしますが?」

「その懸念はもっともです。ですが、逆にこうも言えます。指示を出さない事で逃げる事に集中することができ、結果的にネクラさんだけなら確実に逃げる事が出来る。ネクラさんのランクマッチでの勝率は皆さんご存じだと思います。つまり、残り19人の内1人でも逃げればいいんです」

「……」


 この人は何を言ってるんだ? 僕が絶対に捕まらない前提で話してるみたいだけど、いくら僕でも捕まる時は捕まる。

 実際、前にマイさんに捕まってるし、いくら僕でも3人以上の鬼から追いかけられたら逃げ切れる自信が無い。

 もちろん2人の鬼から追いかけられる程度ならいくらでも逃れられるだろうけど、それ以上は流石の僕でも厳しい物がある。


 大体、このゲームは鬼に見つかったらほとんど逃げ切れない設定になっている。

 曲がり角やら相手とのプレイヤースキルの差で逃げ切れる事はある。ただ、それはかなり稀で、アバター戦ではキャラの性能差も多種多様で絶対に逃げ切れるという保証は無い。

 ハイネスさんもそれくらいは分かっているはずだ。なのに、なんでこんな無謀な事を言い出すのか。


「ち、ちょっと待ってください……。私、ネクラさんの指示が無いと、上手く逃げ切れる自信が無いです……」

「ミルクさん。あなたはランクマッチでもしっかり結果を残されています。というか、このチームに居るメンバーは、皆さんランクマッチでの勝率が8割を超えているはずです。ある程度はご自分で何とか出来るでしょう」


 なんか、やっぱりハイネスさんが怒っている気がする。原因は明らかだけど、振った張本人が謝るのもなんか違う気がするので何とも言えない。

 ていうか「振ってごめん」とか、お前何様だよって言われそうだ。

 少なくとも、そんな事をしている人を見たら僕はそう思う。なんでそんなに偉そうなの?ってね。


「待ってください。話が進まないのでとりあえずその案は了解しました。ただ、今までの話の流れでなぜそういう結論になるのか分からないんですけど?」

「香夜さん、では質問させてください。今の環境、鬼はほとんど加速と索敵を持っています。そんな人達がネクラさんやその他逃げるのが得意な人達を捕まえられると思いますか? 少なくとも私は、無敵や瞬間移動を設定し直すか、もしくは2人以上で捕まえにかからないと無理だと思います。ただその場合、隠れている方々を見つけることが出来なくなるのでどの道厳しい事になります」

「もし、半々で分けて来たら? 瞬間移動とか無敵を設定してる人が2人と、索敵と加速で1人ずつ」

「その答えも先ほどの質問と同じ答えが適応されます。そんな生半可な構成で、ネクラさんが集めたここにいる人達全員。ないしはその半分を捕まえられると思いますか?」

「それは……分かりません」


 まぁ、大抵の人は自分の陣営でしかプレイした事が無いから分からないと答えるしかないだろう。

 というよりも、そんなに高圧的な態度を取らなくても良いのではないだろうか。少しだけ怒っている時の春香を重ねてしまう。


「私は、ネクラさんを捕まえるのはまず論外だとして、そんな中途半端な構成だと半分も捕まえられないと思います。索敵班と指揮官がいないので、相手の策を利用して一網打尽にするプランは使えません。それに、ネクラさんが居る関係上、対戦チームはネクラさんが指揮官だという前提で動いてきます。そこでもまたこちらに有利になるかと」


 まぁ、あくまでハイネスさんの頭の中ではかなり強い構成ということなのだろう。

 このまま放置しておくとハイネスさんが高圧的すぎて喧嘩になりかねないので、止めるなら今だ。


「じゃあ、次の大会にはそれで参加してみましょう。それに、日本予選や世界大会では完全所見のマップや試練が出て来るという話です。その時、仲間と連絡が取れなくなるみたいなものがあるかもしれません。その練習と思えば良いじゃないですか」

「……ネクラさんがそう言われるなら」

「ちょうどもうすぐ10月なので、そろそろ公式から紅葉狩りの情報が出るはずです。その大会にエントリーしましょう」


 紅葉狩りとは、もちろんプレイヤー間で呼ばれている大会の略称だ。

 正式名は確か、秋の紅葉観賞祭りとかだったかな。

 なんでそんな大会名なのかよく分からないけど、プレイヤーの間では優勝賞品が紅葉狩りツアーだからそんな名前が付いてるとか言われている。

 優勝賞金がでないというかなり珍しい大会なので、参加するチームはかなり少ない。


 紅葉狩りツアーなんてどうでも良いと考える人が多いのは理解出来るので分からんでも無いけど、プロチームなんかは企業側の方針なのか、公式が主催する大会には出来るだけエントリーするようにしているはずだ。


 なので、プロチームと気軽に戦える貴重な場でもある……らしい。

 僕は出たことが無いし、ランクマッチで何回かプロの人と当たったけど、そこまで強いと感じなかったので興味も湧かなかった。


「紅葉狩りですか……。確かにあの大会なら、プロのチームもいくつか出ると思われるので試験的に試すのはありですね」

「はい。なので、ハイネスさん、その方向で話を進めますが良いですか?」

「もちろんですよ」


 その後、紅葉狩りに出ることが正式に決まった。

 チーム名をどうするかという話になった時、香夜さんが言った『割と本気でギルド名変えたい』に僕を含め2名以外が全員賛成した時は、どんな反応をすればいいのか分からなかった。


 いい加減、チーム名で圧かけて来るの止めて欲しい。

投稿主は皆様からの評価や感想、ブクマなどを貰えると非常に喜びます。ので、お情けでも良いのでしてやってください<(_ _*)>

やる気が、出ます( *´ `*)

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