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魔法少女は業をみる  作者: 華永夢倶楽部
「魔法少女は業をみる」一期
9/28

第9話『復讐のため、魔法少女に』

満里奈(まりな)、朝ごはん出来たわよ」

「うん…………」

 二階から下りて終始無言で朝ごはんを食べ進め、「ごちそうさま」だけは忘れずに食べ終わった。

「いってきます…………」

 アタシは今日も行きたくない学校へ一人で向かう。ハッキリ言ってあんな所へ行くくらいなら死にたい。ただ死ぬんじゃなく家族が死ぬよりも早く死にたい。

 でもそれだとお母さんが色々とゴチャゴチャ騒ぐから、嫌々だけど学校に行く事になった。おかげで親子仲は最悪中の最悪、一日で一番落ち着くのが夜中くらいになった程だ。

「……………………」

 学校に来て、まず上靴が小石や雨水で汚れた外靴置きに置かれている。それを常備している布巾で綺麗に拭いてから履き替え、それから自分の教室に入ると今度は机の上に抜け毛や先週の授業で使ったくしゃくしゃなプリント、そして落書きがいつも通りあった。

“……………………”

 何も言わずに片付け、落書きは油性ペンのインクがよく落ちる掃除アイテムで綺麗にする。

「…………ッ‼︎‼︎」

 いつも通り机の中には昆虫の抜け殻がいくつか潜んでいた。アタシの顔を見て分かりやすく笑う奴もいれば、表面だけの表情で男子に好感を求める屑もいる。

“……………………”

 アタシはいつか、ここにいるクラス全員を殺したいと固く誓っている。肝心の方法は全く思い付かないけど、とにかく思いっ切り皆殺しにしたい。

 そして、アタシにしてきた事をアタシがお返しにして嫌がる顔が見てみたい。

“こんなクラス、早く終わっちまえば良いのに…………”

 そう願うも、当然願っただけで現実になる訳もなく無情にも授業は始まったのだった。


 体育の時間の器械運動前の準備時間中、アタシが一人で跳び箱を設置している時には男子がすれ違い様に足を引っ掛け、設置途中の跳び箱を盛大にぶち撒けて下敷きになったのを確認してから、とても心配した表情でアタシを助ける演技をする。

『おいっ、大丈夫か⁉︎ 怪我してないか?』

「うん…… してない」

 鼻血を出してるのが明らかに目に見えてるはずだけど、当然そんな程度で懲りる様なゴミ共じゃない。アイツらにとっての怪我とは、死ぬ程の重症の事を言ってるんだ。だから鼻血を出したり捻挫した程度で反省する訳もなく、無傷として平然とクラスの良い奴を気取るという屑行為を続けているのだ。

 授業が始まったら、出来るだけ目立たない様に一人でひっそりと運動して後は適当にやっている。どうせ下らない内容だし、やる意味なんて無いから。

『じゃあね〜、また明日』

 帰り道の間だって地獄の時間。アタシはスマホを持ってないからネットで何されてるのか想像は付かないけど、一方でリアルでの人同士で何をしてるのかは想像が出来る。

《アイツ、また学校来たよね。気持ち悪いんだけど》

《なんで懲りずに来るんだろうね。マゾなのかな?》

《だったら期待に応えてやんないとね。俺達がさ》

 どうせそんな事を考えながら帰り道を歩いてるに違いない。アタシを一日のストレスを発散する道具にでもしてるんだろう。

 本当は学校に行きたくないのに親がうるさいから無理矢理行かされ、学校に行ったら行ったでクラスからイジめられる。こんな人生の何処を楽しめば良いのかが分からなくなってしまっている。

“あぁ〜あ、とっととこのクソったれな人生早く終わってくれないかなぁ〜…………”

 こんなアタシにでも救いの手が差し伸べられる事を期待しながら家に帰ったけど、救いなんて一切無かった。そんなアタシを家で待ってたのはお母さんとの気まずい空気だけだった。

「おかえり満里奈……………………」

「……………………」

 何も言わずに階段を上がって自分の部屋にこもる。もうここにしかアタシが平穏でいられない。もうここでしかアタシは本当の姿でいられない。

「うっ、うぅ…………」

 高校に入学してから早一ヶ月、もう我慢の限界だった。

「誰か、アタシに力をちょうだいよ………… 嫌な奴を殺せる強い力を…………」

『魔法少女なら、そんな不可能を可能に変えられる』

 突如背後から変な声が聞こえた。驚きながら振り向くと、そこに立っていたのは不気味で怪しい雰囲気の変な男だった。

『初めまして〜、俺はモートって言うんだ。よろしくね〜』

 アタシの部屋に勝手に入っておいて反省する訳もなく、自分勝手に話を進めていく変な奴。どうせアタシをからかいに来たんだという事にして適当に話す。

「あっそう。アタシは小野寺満里奈、別にアンタの事覚えるつもりないからさっさと帰ってちょうだい」

「ちょっとヒドくない? 俺はいたって真面目な話をしてたってのに〜」

「アタシの部屋へ勝手に上がり込んで、しかも魔法少女だなんてフザけた事を言ってるヤツの何処が真面目に見えるってのさ⁉︎」

「あぁそこか。だったらもう少し話を詳しくする必要があるね、うん」

 突然目の前のヤツはブツブツと独り言を呟いたかと思うと、いきなりアタシの名前を呼んだから驚いて大声で応えてしまった。

「あのね、俺達はこの街に潜んでる悪い奴らの魂を回収する仕事をしてるんだよ。そいつらは他人に害を為す存在で魔法少女達からは“魔女”って呼ばれてるんだ〜」

「そう」

 どうせアタシには関係ない事だから、あまり真に受けず聞き流す。

「でもね、警察に任せれば良いで済むレベルじゃないんだ。“魔女”はそれぞれ魔法を持ってて人間を怪我させたり呪ったりするんだ。そんな奴らを退治して魂を回収するのが魔法少女って訳」

「……だからって、何でアタシにその話をするワケ? 魔法少女って言うんだからもっと元気なヤツがなるべきなんじゃ」

「あぁ〜、もしかしてテレビの話してる? 誤解だよ満里奈ちゃん。俺が話してるのはアニメの話とかじゃなくて八王子の話だよ? 現実に溶け込んで生活している悪い奴ら、“魔女”の魂を回収してほしいんだ。満里奈ちゃんには魔法少女になるチャンスがあるんだ」

 魔法少女になるチャンス、と言われても怖いものは怖い。そもそもアタシはイジめられてる側。武器とかを持って殴ったり叩いてるヤツらとはあまりにも生き方が違う。

 生傷が絶えないアタシなんかに、魔法少女が出来るワケが無いんだよ。そもそも。

「何考えてるのかは流石の俺でも分かんないけどさ…… 魔法少女として一般人を殺してもね、警察に捕まらないんだよ」

「は…………?」

 アイツの口から聞き捨てならない言葉が出て、希望と驚きが同時に出てきてしまった。

「どういう、意味…………?」

 アタシの事を知ってるのか、それとも誘い文句で言ったのかは分からなかったけど、かなり意味深な言葉で興味を引こうとしてきた。そしてアタシはそれに乗ってしまった。

「それは満里奈ちゃんの想像通りだよ。もし満里奈ちゃんには憎い人間がいて、そいつを何かしらの方法で殺したいと思ったら魔法少女の力を使って殺せば良い。その時の代償もそれなりにあるけど、それで満足するなら俺は絶対に止めさせないけどね」

「…………へぇ」

 好きな時に嫌いな人を殺せる。それが出来るだけでアタシは嬉しかった。

 たとえ一般人を殺した代償が寿命だったとしても、アタシは片っ端から嫌いなヤツを殺すつもりだ。

「…………分かった。魔法少女やる」

 魔女の魂は暇潰し程度に回収するとして、アタシの気晴らしとして魔法少女になる決意をした。そんなアタシの表情を読み取ったのか、モートって変なヤツはニヤッと不気味に笑った。

「それじゃあ握手だね。握れば契約成立、魔法少女に変身する力が授けられるよ」

 当然アタシは途中で迷う事はせず、急ぐ様に変なヤツの手をギュッと握った。手を握ったほんの一瞬だけ何かしらの力が流れ込む感覚があったけど、そう感じたのは一瞬だけで、気付いた頃には部屋にいるのはアタシだけになっていた。

「何よ。やっぱり魔法少女なんてウソなんじゃん…………」

 でも、今のが本当に嘘なのかどうか確かめないと気が済まないから、とりあえず魔法少女に変身する事にしてみる。

「へ、へんしん…………」

 小さい頃に見た朝のアニメを思い出しながらポーズを決めてみる。すると所々穴の空いたジャージが脱げたと思ったら、身体が光ってすぐに魔法少女コスチュームに変わっていった。

「ウソ………… まさか、本物?」

 アタシの想像してた魔法少女衣装は重装備を身に纏ったドレス衣装というイメージに反し、秋葉原でよく見かける、それこそコスプレイヤーが好き好んで着てそうな、ものすごく痛々しくて中二臭いゴスロリ衣装だった。おまけに鏡で自分の姿を見たら、目が緑色と紫色のオッドアイになっていた。

「はぁ⁉︎ 何コレェ⁉︎」

 下にお母さんがいるのに、思わず叫んでしまった。けど親子仲が悪いおかげでわざわざ部屋まで来られて心配される事は無かった。

 なんか複雑な気分だけど、お母さんと仲が悪くて良かったと心のどこかで思った。

「えっと…… 武器ってなんだろ……」

 あれこれ試してみたけど、何か出るはずの武器は一切出てこなかった。次に腕力の上昇を試してみる。

「せ〜の……‼︎」

 せっかくだから普段出来ない事の一つ、部屋の壁を思いっ切り殴ってみた。すると壁は少しだけへこんだから、戦闘で役に立つ程の腕力は備わってないんだと結論付けた。

「何よ、何なのさ…………」

 魔法少女になったものの、あまりに使えないゴミ能力に呆れてそのままふて寝した。あと少ししたら夕食に呼ばれる時間だったけど、そんなのはもうどうでもよくなっていた。

 どうせ()()は、アタシの夢なんだから…………


 …………どれくらい寝たのか分からないけど、とりあえず目が覚めたから起き上がる。時計を見たらすっかり夜九時過ぎで、カーテンが閉まってない部屋の窓から他の家の灯りが目に入った。

「…………魔女って、みんな夜に動くのかな?」

 そうポツリと呟いてみたり。

『いや、全員がそうとは限らないよ』

 モートがいきなり後ろから話しかけてきた所為で、また変な声で叫んでしまった。

「なっ、何よアンタ‼︎ ずっと部屋にいたワケ⁉︎」

「いやいや、流石にずっとはいなかったって。ちょっと他の魔法少女に呼ばれたからそっちに行ってたんだって。俺は満里奈ちゃん専属のナビゲーターじゃないから忙しいんだよ〜」

「あっそう。それじゃあアタシは本当に魔法少女ってワケね」

「だからそうだって言ってるじゃんか〜。まさか夢だと思ってるの?」

「当たり前よ。魔法少女なんているワケ無いんだからさ……」

「いや、でも実際に満里奈ちゃんは魔法少女になったじゃんか。だからこれは夢なんかじゃなくて現実なんだよ」

「現実、ねぇ…………」

 魔法少女としてアタシは特別に生きる事が出来る。だから今後アタシをイジめた奴らは、一人残さず殺す事が出来るという事。

 ホントの事を言うと、魔女の魂とかはどうでも良い。アタシが嫌いなヤツさえこの世から無意味に死ねばそれで良いと思っている。

「ところで満里奈ちゃん、確か今頃の時間って親は部屋に来ないよね? だから早速記念すべき最初の活動を体験させておきたいんだけど……」

「分かったよ、やれば良いんでしょ?」

 何の魔法を使ったら良いのか。それすらも全く分かってない状況のまま、アタシは魔法少女としての活動を始めていく事になった。


 モートの後をただ付いて行くこと数分。その間に何処へ連れて行かれるのかと考えていたけど、連れて来られた場所は近所にある公園だった。

「まさか、アンタもイジめたいワケ?」

「いやいや、俺は満里奈ちゃんを虐める為に公園に来たんじゃないって‼︎ ここのすぐ近くに魔女がいるんだけど、満里奈ちゃんなら何とかしてくれるかなぁ〜って思って……」

 モートの言い方が、何処かおかしい。

「ねぇ待ってよ。アンタはさっき魔法少女は魔女の魂を回収するって言ってたよね? なのにどうして『何とかして』って言ったの?」

「それは…………」

 しばらく黙った後に、モートは恐る恐る口を開いた。

「いや、その…… 多分だけど満里奈ちゃんがこれから会う魔女は、キミにとってあんまり殺したくない人だろうから……」

「ふ〜ん…………」

 あれだけ魔女の魂を回収しろって言っておいて、突然「殺したくない」とか言い出す事に疑問を思ったけど、あまり気にし過ぎない程度に聞き流して公園を歩き回った。

 それからしばらく歩き続けていたら、遠くから誰かの声が微かだけど聞こえてきた気がする。

「向こうに、いるってワケ…………?」

「そうだね。一般人と一緒だから派手な行動は慎んでね」

「どうして……? アタシには魔法がちっとも使えなかったんだよ。使えたとしても腕力が少し上がっただけ。こんなゴミ能力でどう派手にやり合えって言うのよ‼︎」

「いや、満里奈ちゃんには確かに魔法が備わってる。だから派手にやり合うとマズいんだ、後処理が大変だからさ」

「あっ、そう」

 モートの言ってる事がどうも腑に落ちないけど言い争いは無駄だと察して一旦止め、気持ちを切り替えて魔女と人間に気付かれないよう、地面に落ちてる落ち葉を出来るだけ踏まない様に近付いて向こうを覗き込んだ。その先はあまりハッキリとは見えなかったけど、何だか一人の男が一人の魔女を軽快に蹴りつけてる様に見えた。

“……………………ッ‼︎‼︎”

 アタシはただソレを見てるだけでも、怒りがふつふつと込み上げてきてイライラしてきた。

“アイツ、自分よりも弱い女をイジめてストレス発散するとか、もはや圧倒的屑の極みだ…… ゴミクズだ…… 生きる価値の無い虫ケラだ……”

 自分も学校で毎日のように他人からイジめられてるから、今ここであの子の前に立ち塞がればあの子の気持ちに少しでも寄り添えるかもしれない。そう一瞬だけ思ってしまい、思わず普段じゃありえない自分を疑った。

“ちょっと、こんな時に何考えてんのアタシ……‼︎ そうだ相手は魔女、どうせアレは演技か何かなんだ…… 実はあの虫ケラとはグルでアタシみたいな新人魔法少女を(なぶ)るつもりなんだ……”

 そう結論付けて見て見ぬふりをしようとしたが、何故かアタシはイジめられている魔女の事を見続けてしまう。

“そうさ、そもそも魔女がいなくなれば八王子は平和になる………… 少しでもアタシは他人の事に関わる時間が減るんだ…………”

 どうせ魔法少女であるアタシが関わらなくても、きっとすぐにあの魔女は死ぬんだ。そうすればアタシは何もせずに魔法少女活動を終えて家に帰れる。そして明日の学校でクラスのイジメに耐える毎日を繰り返す。

“……けど、イジメを放っておくのって最低よね。見て見ぬふりってさ、イジメの加害者と同じなんだよね……?”

 こうして脳内の天使と悪魔で言い争いをしてる間に魔女はさらに悲痛な声をあげていて、段々と声がか細くなっていく感じに聞こえてきた気がする。

「…………あぁもうッ‼︎」

 もうこれ以上見ていられなかった。アタシは夢中でその場から飛び出していき、冷静になって気が付いた時には、両手を広げてイジめられている魔女を庇う様に魔女と男の間に割り込んでいた。

「ちょっと待てやテメェ‼︎ そこのか弱い女を殺すとは随分と良い感じのゴミ具合になってんじゃねェか‼︎」

「あぁッ⁉︎ なに急に俺達の間入ってんだよ‼︎ 俺はアイツと外で遊ぼうとしてただけだぞ‼︎‼︎」

「ほざけッ‼︎ そうやってウソついて人を傷付けるのがイジメだッてんだろうが‼︎ 先に言っとくけどコッチはなァ、テメェみたいな生きとし生ける汚染物質をブチ殺せるんだよッ‼︎‼︎ テメェがいくら泣いても土下座して謝っても、たとえそこのアイツが許したとしてもゼッテェに許さねェかんな‼︎‼︎」

 今までアタシがされたイジメに対する憎しみと憎悪など、色んな感情が複雑に混ざり合った結果は赤の他人に八つ当たりという、とても清々しい気持ちで見ず知らずの男に虚勢ながら全部ぶつけてみた。

「おいおいおいおい………… 随分と好き勝手言うじゃねェかよォ‼︎‼︎」

 すると男は足元に置いてあった金属バットを手に取り、それをアタシに向けて殺意剥き出しで振りかぶった。

「えっ⁉︎ 待ってソレ––––」

 アタシの頭上に男の持つ金属バットがフルスイングで直撃した瞬間、とても変な音が聞こえたと同時に目の前が一瞬で真っ暗になり、物凄い早さで意識がハッキリしなくなっていった。

縲弱♀縺?♀縺??√≠繧薙□縺代う繧ュ縺」縺ヲ縺翫>縺ヲ豁サ縺ャ繧薙°縺? 繧「繧、繝?r蠎?≧繧薙↑繧峨?√ユ繝。繧ァ繧呈ョエ縺」縺ヲ繧り憶縺?h縺ェ縺≫♂?惹ソコ縺ョ豌怜?縺ォ繧医▲縺ヲ縺ッ繧「繧、繝??莠九?隕矩??☆縺九b遏・繧薙?縺?◇縺? 縲

 仰向けに倒れ込むアタシに対してゴミクズから腹を力の限り強く踏みつけられる。背骨まで届きそうな足は色んな臓器を圧迫していき、しまいには胃の中のほとんどを逆流させて口から全部吐き出した。

縲弱≧繧上▲縲∵ア壹?縺医↑縺≫?ヲ窶ヲ 菫コ繧偵ご繝ュ縺ァ豎壹☆繧薙§繧??繧ァ繧遺?シ? 豌苓牡謔ェ縺?ぅ窶シ?弱?

 文句を言われながら腹を何度も何度も踏まれ、頭は金属バットで何度も、何度も叩きつけられていく。この痛みに対して意識がハッキリしていないアタシは痛がる事も叫ぶ事も当然出来ず、ただ死ぬ瞬間を待つ事しか出来ない。

“は、はやくにげて…………”

 アタシだけを殺してる隙に、せめて魔女にはここから逃げてほしいと思いながら手を伸ばしたけど、実際に手を伸ばしてたのかどうかも分からない位に痛みばかりが目の前の現実を教えてくれる。

縲弱♀縺?♀縺?♀縺?♀縺??ヲ窶ヲ 縺昴m縺昴m豁サ繧薙□縺? 豁サ繧薙〒繧薙↑繧峨?∬ィシ諡?髫?貊?↓繧「繧、繝?b縺、縺?〒縺ォ谿コ縺励※縺翫°縺ュ繧ァ縺ィ縺ェ縲る°濶ッ縺上∪縺?縺昴%縺ォ縺ク縺ー縺」縺ヲ繧九°繧画・ス縺?繧上=縲懌?ヲ窶ヲ縲

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 …………やっぱり。

 アイツは、そういうヤツなんだ。

 人をイジめて。

 (わら)って。

 蹴落として。

 イキるんだ。

 それが、屑の美学なんだ。

 醜いクセに、綺麗がる。

 弱いクセに、強がる。

 悪いクセに、良い子がる。

 生きる価値がないクセに、生きてる。

 無能なクセに、可愛がられる。有能アピールだってする。

 アタシは、アタシは…………

 アイツみたいにそういうゴミでカスで有害でクズで屑で無能で無駄で虫ケラでウジ虫で恥知らずで恩知らずで親不孝で不細工で嘘吐きで自己中で傲慢でサイコで悪魔で地雷でケダモノの人間が…………

 …………だいきらい、だ。

縲弱&縲懊※縺ィ縲√≠縺ョ子も死んだみたいだし、そろそろコッチも始末しておかないとな』

『…………ッ、ッ‼︎』

 ゴミクズはアタシに言ってた約束をあっさりと破り、魔女を殺そうとアタシの血が滴っているへこんだ金属バットをグッと突き付けている。

 アイツはもう、完全に手遅れだ。

「…………クソッタレが」

 腹の底から湧き上がる怒りを力に頭を抱えながらフラつく身体を無理矢理起こし、魔女を殺そうとしているウソつきゴミクズのあまりのゴミクズさに吐くのを我慢しながら、一歩ずつゆっくりと歩み寄る。

「アンタは死ぬ。今すぐに死ななきゃいけない…………」

 アタシはぶつぶつと恨み言を並べながらゴミクズのそばまで近寄り、薄汚い手で触ってる金属バットを奪い取り足蹴でゴミクズを蹴飛ばした。

「始末されるのは………… テメェだ‼︎‼︎」

「なっ、お前生きてた––––」

『ゴンッ‼︎‼︎』

 そんな感じの鈍くて単純な打撃音を鳴らしながら、ゴミクズの頭骸骨を思いっ切り叩き割った。

「…………ッ‼︎」

 すぐ隣で恐怖のあまり腰を抜かしてる魔女の事なんてお構いなし。今のアタシは、どうしても目の前のゴミクズをひたすら殺さないと気が済まなかった。

「死ねッ‼︎ 死ねッ‼︎‼︎ 死ネェェェッ‼︎‼︎‼︎‼︎」

 普段のアタシだったら野球ボールをぶつけるくらいにしか扱えない金属バットを、今は少し下手ながらも振り回していき、ゴミクズの腐り切った頭を少しずつ粉砕していっている。

 無駄に硬い頭蓋骨がみるみる砕けていき、やがてあまりにも醜い脳みそが顔を覗かせてくると、今度はその周りのとても綺麗な骨の部分をぐしゃぐしゃに粉砕し尽くしていき、たまたまそばを通りかかった人によく見える様に腐りきった脳みそを丁寧にしっかりと露出させてあげた。

「アンタの腐り切った脳みそ…… アタシが叩き込んでやるッ‼︎‼︎」

 喉が潰れるくらいの雄叫びをあげながら無防備に晒す腐り切った脳を、目一杯金属バットでスイカ割りの如く何度も叩き割った。

 身も心もゴミクズのくせに立派に育った脳は、今後一切役に立つ事がないんだ。そんな無能なヤツが適当に社会を生きてても仕方がないし、どうせいるだけで周りを不快にさせたり迷惑をかけるだけ。そんなひたすらに無能なゴミクズが社会に現れる前に魔法少女のアタシが、こうして早めに潰しているってワケ。そう、何もかもこれからの世の中の為にね。

 それにこういうゴミ人間の社会での言動が、純粋なアタシ達若者を殺してるんだ。屈託の無い罵詈雑言(ばりぞうごん)、無実な差別、支離滅裂な男女平等…………

 特にアタシ達女性はあまりにも弱過ぎる。過酷過ぎる程にだ。男からされる評価なんて皆無だし、男は些細な失敗で罵倒してくる、男はスカートの中身を見ようと孤軍奮闘する、男ばかり昇進して女性は昇進させない、給料も上げさせない。アタシ達女性にセクハラしたクセに「お前が俺を誘ったんだ。だからお前が悪い」と言い逃れする始末。

 言い出したらキリが無いくらい、アタシは男が嫌いだ。だいきらいだ。

「ッ‼︎ ゥッ‼︎ ゥァッ‼︎ ッゥ‼︎」

 こうして潰しても潰しても湧いて出てくるハエみたいにウザいゴミクズを殺す事で、何処かしらに住んでる若者の命が一人でも救う事が出来るんだ。そんな事情や被害者の心の傷を知ろうとしないで、ひたすらに「これ完全に犯罪じゃねーかwwww」だの「頭のネジ外れてて草」だの「そんな理由で殺人とかマジウケるわ(笑)」なんて人聞きの悪い事を言われる筋合いは無いね。

「アァッ‼︎ ッァ‼︎ ウゥッ‼︎ グァゥ‼︎」

 頭がそろそろ良い感じに潰れてきたから、一度手を止めて死んでるかを確認してみる。

「おーい、生きてんの? 生きてるんなら腕くらい曲げてみたらどうよ?」

 何度か足蹴で起こそうとしたけど、それでもゴミクズは頭だけ怪我してるクセに腕を曲げようともしない。確か脳死だけなら実質生きてる可能性がある事を思い出し、どうせ死んでるフリなんだとすぐに分かった。

「テメェが生きてるのは分かってんだよッ‼︎‼︎ さっさと返事しろやッ‼︎‼︎」

 ゴミクズ共はこういう時だけ都合良く大人しくなるからイライラする。こんなヤツにムカつくあまり、つい金属バットで頭をさらに粉々にしちゃった。アタシは全然悪くない、これは返事をしないゴミクズが悪いんだ。

「クソッ‼︎‼︎」

 怒りに身を任せて、頭でまだ残ってた部分を一気に踏み潰した。その時に出したひどく醜い音を聞くとゴミクズが死んだんだと実感して、かなりの快感を得た気がした。

 あれから長い時間かなり好き勝手出来たおかげで、何だか少しだけ心がスッキリした気がした。

「…………で、アンタは何で逃げないのさ?」

 魔女は声にならない悲鳴をあげながらアタシをジッと見つめている。武器を構えてる様子もないし、睨む様子もない。あとはその他に思い当たる感情が思い付かなかった。

「腰でも抜かした? だったらアタシがおんぶしてやるけど」

「…………あ、あたま」

「……アタシの頭がどうかした?」

 魔女はアタシの頭をピッと指差し、魔物を見る様な目で震えながら質問を投げてきた。

「……なんで、あたま叩かれて、へーきなの?」

「あっ––––」

 そう言われてすぐに自分の頭をくまなく触る。あの時、確かにゴミクズから頭を滅茶苦茶に金属バットで何度も殴られた。それなのに冷静に物を考える事も出来るし、頭から血が一滴も流れてない。そして何よりも頭の重みを感じる。

 流石に流れ出た血の跡は残ってたけど、今は完全に止血してて包帯を巻く必要もない程に完治していた。

「…………治ってる」

 この時、アタシはアタシ自身に備わった魔法を理解した。致命傷すら瞬く間に完治させる【再生能力】、それがアタシの魔法なんだと。

「アタシは魔法少女だから。こう言えば納得するでしょ?」

「……って事は、由紀(ゆき)を殺しに来たって、事?」

 アタシが魔法少女だと知り、途端に明確な殺意を向けてきた。こうなる事はおおよそ予想はしてたけど、やっぱりイジメとは違う意味で拒絶されるとここまで辛いものとは……

「いや…… アタシは別にアンタを殺しに来たワケじゃ––––」

()()()()()()()、目の前の魔法少女を刺し尽くして……‼︎」

 魔女が突如お菓子の名前を読んだかと思った直後、何処からともなく変な音が鳴り始め、やがてそれが恐ろしい者だとその姿を見て緊張と悪寒が走った。

「蜂の…… 大群……」

 弱々しいはずの魔女が呼んだのは、蜂。それも蜂の巣に住む蜂の数相当の群れが魔女に使役されていた。

「行って、カステラちゃん」

 か弱い声で命令された蜂の群れが一斉にアタシ目掛けて飛んで来た。いくら手で払い避けても当然一匹も倒せず、全身が次々と刺されていく。

「痛ッ、痛あぁッ‼︎」

 目の前には蜂、聞こえてくる音も羽音、そしてアタシの全てが蜂に支配されていく。何度も刺されていき、やがて蜂の毒が全身に流れていくと、すぐに身体中が腫れていきブツブツになる感覚が出てきた。

『良いよカステラちゃん………… そのまま魔法少女をアナフィラキシーショックで殺せ‼︎』

 魔女の声が微かに聞こえるが、言ってる事を理解した頃にはとっくに立ってられない位の目眩に襲われていき、そこで意識を失った…………


「……………………」

 ……どうやらまだ意識があるらしい。つまりまだ生きてるんだ、アタシは。

「あ〜ぁ…… すぐに死ねないのも困りモンだわ」

 フラつく身体をまた無理矢理起こすと、近くで勝ち誇っていた魔女はアタシが立ち上がる姿を見てショックを受けていた。

「そんな…… 蜂の毒を何度も受けてなお生きてるなんて…………」

 あれから落ち着きを取り戻したのか、少し言葉がスムーズになっていた。

「どうやらアンタの魔法、虫を従わせる程度みたいね」

「そっ、そうよ………… 虫がいなかったら由紀はお終い。そしてあなたに殺されて人生終わりよ」

「だからアタシは––––」

 まだ由紀って子はアタシに殺されると思い込んでいる。そんな由紀を見てアタシはどんな言葉を投げても無駄だと考え、とりあえず彼女をギュッと抱きしめてみた。

「ちょっと、いきなり抱きしめるとか……」

「アタシもアンタと一緒。周りにイジめられて育ってるから、アンタの気持ちが何となく分かる」

 しばらく無言で、でもアタシなりの笑顔で抱きしめる。しばらく由紀は色々と悪口を言ってたけど、しばらくして受け入れたのか黙り込んでアタシの身体を少しだけギュッとしてくれた。

「アタシは小野寺満里奈、アンタは?」

「由紀…… 蜜谷(みつたに)由紀。あと“蠱毒(こどく)の魔女”」

「“孤独の魔女”……?」

「発音が違う。あと漢字が違う」

「一体どう違うの……」

「虫が三つ集まって下に皿、毒って漢字で『蠱毒』。コで上がってドクで下げる発音だから」

「蠱毒ねぇ〜……」

 そういう漢字がある事を初めて知った。ゲームとかテレビには全然興味ないから、これはこれで勉強になった。

「それでさっき蜂を操ってたってワケね。でもその魔法でアタシを殺し損ねたけど、もし相手がアタシじゃなかったら脅威の魔法ね……」

「でしょー? 女子って大抵は虫嫌いだもんねー。そこさえクリアすれば、由紀は無敵なんだよー」

 アタシに少しだけ心を許したのか少し馴れ馴れしく接してきた由紀の態度から、どうやら根は優しい子なんだと察した。

 小さい頃のアタシと一緒だ。

「ねぇねぇ、満里奈ちゃんは虫苦手? 正直に言って」

「えっと…… 数匹程度なら、平気だけど」

「そっかー、割と平気なんだね」

 すると由紀は、さっきの蜂を一匹だけ呼んで可愛がり始めた。

「蜂達はね、由紀は“カステラちゃん”って呼んでるの。お尻の模様がカステラに見えるから“カステラちゃん”なの。可愛い名前でしょ?」

「うん、可愛いと思う」

 虫をペットもしくは家族の様に接する女の子に対して少し気味悪さを感じたけど、出来るだけ顔に出さない様に隣で由紀を見てる。こうして由紀をジッと見てると、身体の所々がアザだらけで出血してる所もあった。その辺に転がってるゴミクズにやられたんだと思うと怒りが込み上がってくる。

「ねぇ由紀、アンタ学校でもイジメとかあったりするの?」

「うん…… でも大丈夫だよ。由紀をイジめるのはその人だけだったから。満里奈ちゃんがやっつけてくれたおかげだよ」

「か、勘違いしないでよ。アタシはイジメをするゴミクズを殺したかっただけで、別に由紀が心配だったワケじゃ…………」

「そーお? まぁいっか」

 由紀は蜂のカステラちゃんに別れを告げ、スクッと立ち上がった。

「んじゃあそろそろ家に帰らなきゃ。またね満里奈ちゃん、明日学校で会おうね」

「う、うん…………」

 由紀は一人で歩いて行ってしまった。しばらくアタシはその場に座り込み、何秒か上の空になっていた。

「今、『学校で会おう』って………… アタシが通ってる学校に由紀がいるって事、だよね?」

 入学式の時を思い出してみたら、「由紀」という女の子の名前を校長が呼ぶ場面を何となくだけど思い出してきた気がする。

 でも由紀の名前を呼んでたのは確かに思い出せたけど、アタシ自身が入学式を適当に受けてた所為で記憶の細かい所までは正確に思い出せなかった。

「まぁ良いや。明日会えるんだし」

『お疲れ〜満里奈ちゃん‼︎ 後処理にきたよ〜』

 背後からいきなりモートが知らない女の子と一緒にやって来て、そこに転がってるゴミクズの無様な姿に近寄った。

「待ってよ、何で処分するのよ?」

「いや何でって…… 魔法少女の為に俺は余計な遺体を加工する必要があるんだよ。指紋とか色々ね」

「じゃあ、そこの女は誰よ…… 魔法少女なの?」

「あぁそうだよ。彼女は八宮由衣ちゃんって言ってね、新人の俺を色々教えてくれるんだ〜」

「ふ〜ん…………」

 モートと一緒に後処理をする由衣って呼ばれている魔法少女の背後に立つ。後ろ姿なのに姿勢がしっかりしてて綺麗な髪がアタシを羨望という感情を沸かせた。

 そして、年頃の女の子にしてはやけに色気を異常に放ってる気がした。特に男関係の匂いで。

「ねぇアンタ………… 男の匂いが気持ち悪いくらいに臭うんだけど、一体どういう生活してんのさ?」

「……………………」

 由衣という魔法少女は一切返事をしなかった。答えたくないのか、それとも誰かに口止めされてるのかのどっちかだった。

「も、もしイジめられてるなら、アタシがソイツを殺してあげようか? 少なくともアンタよりかは生存確率が高いし、それに––––」

「結構よ。私は少なくとも、あなたよりはまともな生活をしてるから」

「…………あっそ」

 あまりにも冷たい一言で、一気にあの子への関心が無くなった。でもおかげで向こうもアタシへの関心が無いと分かって安心した。

「よし、こんなモンかな。ありがとね由衣ちゃん、これから人と会う用事があったのに」

「良いのよ。向こうも少し遅れるみたいだし」

 そのまま由衣は公園から出て行った。それを確認してからモートはアタシの方を見て歩み寄ってきた。

「ところで、あの魔女とは仲良くなれたかな?」

「う〜んまぁ、仲良くはなれたかな……」

「まぁ結論を簡単に言うと“見返り”は貰えないね。魔女の魂を回収出来てないからさ」

「その“見返り”って、お金とかが貰えるの?」

「お金は貰えないけど、その人にとっての幸せが歩合制で贈られるよ。遅くても三時間以内に贈られるけど、満里奈ちゃんは“蠱毒の魔女”を見逃してるから“見返り”は無しってワケ。だから他の魔法少女があの子に出会ったらきっと殺しに行くはずだよ。特にあの由衣ちゃんは八王子に住む魔女のほとんどを殺してるから、きっといつかあの魔女を殺しに行くはずだよ」

「あの魔法少女が、由紀を…………」

 せっかく由紀を助けたのに、また誰かに狙われる毎日を送らなきゃいけない。そんな人生を想像しただけで守ってあげたい気持ちが湧いてきた。

「ねぇモート、魔法少女が魔女を庇っちゃいけないルールって存在するの⁉︎ 教えて‼︎」

「そんなルールは存在しないね。今後誰かの要望次第で追加されるかもしれないから、注意は必要だけど……」

 よし、決まりだ。

「モート、アタシは“蠱毒の魔女”を魔法少女から守る。アンタからの仕事はちゃんとやるし、もし人を殺したらすぐに呼ぶから、由紀をアタシに守らせて‼︎ お願い‼︎」

 生まれて初めて、アタシは人前で無茶を言った。魔法少女が魔女を助けるなんて前代未聞だけど、それでも由紀を助けたかった。

 アタシが由紀を守りたかった。

「……分かった。ただし満里奈ちゃんも魔法少女から命を狙われるという覚悟を持ってほしい。それだけは忘れないで」

「分かってるさ。それにアタシ、耐えるのは慣れてるから」

「そうだね。それじゃ俺はこれでさよならさせてもらうよ、また会おう‼︎」

 モートは荷物を持って去って行き、とうとう一人だけになった。アタシはその場に立ち尽くして生きる希望を見つけた喜びにしばらく打ちのめされていた。

“アタシの、高校で初めての友達…………”

 イジめられて過ごしていた高校生活に、初めて意味のある毎日を過ごせる気がした。中学を卒業してからずっと友達がいなくて寂しかった人生に、久しぶりに出来た友達に心が躍っている。

“アタシなんかに、友達のいる生活が出来るのかな……?”

 高校で受けたイジめの所為で、中学の時みたいな会話をする自信が全くない。もうすっかりコミュ症になっているアタシを由紀はずっと側にいてくれるのだろうか?

“……いや、こんな事考えるのはやめよう。とりあえず明日学校に行けば由紀に会えるんだよね”

 初めての友達。それだけでも十分に高校生活で意味のある毎日が送れる。

 そんな気がしてきた。

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