成長が見えるということ
次の日から俺は常に纏を発動していく生活を始めることにした。
何事にもメリットとデメリットあるものだが、纏の発動に関してもメリットとデメリットがある。
メリットについては単純に身体能力が上昇する点にある。
これは単純に7歳の体力及び筋力では日常的に重いものを持ったりするとどうしても纏を発動したくなるのだ。
母親のエリスの手伝いについてはそれほど必要とはしないのだが父親のゴードンの手伝いをする際は重いものをもつと体が引っ張られてしまう。
そういったときは単純に危なく、変に怪我などをしてはたまったものではない。
また発動し続けることで魔素をためる器官を鍛えることができないかといった淡い期待もある。
内臓を鍛えるというのが正直見当もつかないがやらないよりはマシだろう。
あとは思いつくことと言ったら練度の向上だろうか。
あまり慣れていないと変な風に力んだりあるいは肝心な時、例えば戦闘時に切れる可能性もある。
別に戦闘時ではなくても使うたびに地面に穴をあけるのはあり得ないだろう。
デメリットといえば、発動にも体力を使うので常に体力を消耗することぐらいか。
これはまあ成長期だし、体力を使うので纏いを使わないという選択肢は最初からなかった。
他には纏いに使う魔力とは別に基礎体力や筋肉もつける必要がある。
普通の主人公がムキムキの輩を一網打尽にする事は少年漫画じゃありふれた光景だが、このムキムキの輩がもし纏を使ってきたら、勝利を左右するのはつまり体力であったり筋肉だ。
器官持ちは少ないはいえ、一定数存在するのだ。ムキムキのマッチョになる必要はあまり感じられないが、ガリガリだと話にならない。そういうところで妥協すると絶対に後悔する。
幸いにも試行錯誤する時間はたっぷりある。
朝昼晩と体を鍛えることを意識した生活と纏を常に発動させることを心掛けた。
途中から纏を淡く発動させることによって中学生くらいの筋力を維持しつつ常に筋肉に負荷がかかるような生活を行ってきた。
日中ではよく見ないとわからないレベルで纏いを発動させることによって魔素を魔力に変換する効率を上げる。
あとはあれだな。親から息子が四六時中光っていたらどう思われるかを考えたら、自然と控えめにせざるを得なかったというのもある。
そんなこんなで朧気に光りながら生活をしていたら目ざとくルーが指摘してきた。
「ラルフ、なんでいつも纏を発動してるの?必要な時以外は発動しちゃだめじゃない!」
「いや、必要な時ってチーズ運びくらいだろ?チーズは重いから確かに発動するけど俺たちはそれ以外にも木材とか樽とかいろんな重いものをもつだろ?その時も必要な時って言えないか?」
「まあそれはそうだけどぉ。」
チッ、7歳とはいえこれで丸め込めないよな。
「まあそのほかにも魔物が襲ってきたら困るだろ?だから俺はその時を想定して訓練してるの。」
「訓練?」
あまり日常で使わない単語が出てきて少し気になったみたいだ。
「纏を使える人は少ない。だからさ、俺たちが村のみんなとか家族とか守るんだよ。」
「私たちが守る・・・。」
「ほら、ルーにも妹が生まれたじゃないか。だからさ、守ってやらないと。」
そう、ルーには最近妹ができたのだ。
妹ができると自分が姉になったという自覚ができるのか精神的にしっかりとしてくるものだ。
そこを攻めれば多分納得してくれるだろう。
「分かった。じゃあ私もやる!」
どこか決意したような顔でルーは宣言するといきなり纏を発動させる。
「あー・・・ルー、ちょっと纏を抑えないと禁止されるからもうちょっと抑えて。」
抑えている俺と比べると明らかに光っているルーに指示を出す。
「こ、こう?」
どこか力を抜くような格好をしながら深呼吸をする。
すると俺と同じではないがほぼ同じレベルで抑えることに成功したのだ。
ちなみに俺はこの纏の制御にかなり時間を費やしたのだがルーは一発で制御に成功した。
俺は内心驚愕していたがそこは余裕をもって指示を出す。
「そ・・・、そうそう、・・・やればできるじゃないか・・・。」
隠しきれない感情が出まくっていたがルーは特に気にしていないようだった。
「これをずっと続けるんだ。そしたら纏の制御も精確になってくるから。」
「うん!分かった!」
正直言って纏に関する資料など無かったが、村の狩人などに聞いているだけである。
ただ実感として一週間前より確実に制御は楽に、また纏いの継続時間も長くなっている。
まだ体も未熟の段階でこれなのだ。
日数が経つ毎に強くなっていくことを目に見えて実感できるのだ。
正直に言おう。今、かなり異世界をエンジョイしている!