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俺は幼馴染を守りたかっただけなのに  作者: ハイブリッドベタ
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纏いの可能性

第1目標を自分の戦闘能力を向上させることに据え置いたが、これにはかなり自信があった。


体内の魔力を体中に張り巡らさせることが魔力を操る第一歩と聞いていたが、これは自分の中に張り巡らされている毛細血管に意識を持っていくことで成功することができた。


人間に流れる血液、この血液は血小板やあるいは酸素といった多種多様な細胞であったり物質を流しているがそれに魔力を運ばせていると意識したのだ。


人間の体の基本的な構造を知識を持っているというのは大きなアドバンテージであると思う。


酸素やあるいはたんぱく質といった普通の人間にも流れている物質よりも魔素のほうが意識がしやすかったのは僥倖といえる。

魔素を流すことに意識を置いた場合、腹から何か熱を持ったものが張り巡らされるのだ。


その熱を今のところ魔力と考えているが、この魔力を手足といった四肢から指先や眼球に至るまで広げていく意識をする。


すると体全体が熱を持ち同時に光りだしたのである。

ルーの体が光っていた時はそこまで意識していなかったが、正直言って自分の体が光るのは気持ち悪い。


そして魔力を眼球や指先の毛細血管に行き渡るイメージをさせると、


「いっつ・・・痛ってええええ!!」


「目が!目が痛い!手足も・・・うぐううう・・・」


体全体に魔素を広げていくという方法において眼球や毛細血管にまで送るのはさすがにやりすぎた・・・。


というか視界に関してはだんだんと眩しくなって太陽を直視したみたいに残光がチラチラ見えるのだ。


「や、やり方を考えなければ・・・目が死ぬって。」


危うく失明するかも知れなかった事に対して今更冷や汗が出てくる。


目に関しては徐々に魔力を通しておくことを第一に置いてそれ以外のところで鍛錬を行っていく。




次の日またチーズ運びの日がやってきた。

俺の毎日のルーティーンとして父親のゴードンの農作業及び魔物討伐のための準備手伝い、母親のエリスの家事手伝いがある。


まだ7歳ということで俺のが受け持つ主な仕事は手伝いで、小学校や寺子屋といった教育機関は村にはなく、日々生きていくことに関した仕事がある。


チーズ運びもその一つでルーが朝から俺の家まで来ていた。

「もぉー、遅いってばラルフ」


「おはよう、ルー。ルーもヨークおじさんの所へ行くのかい?」


「そーだよ。ママがラルフと一緒に行きなさいって。」


「よし、一緒に行こう」


そうやって二人で手をつないでいく。

村内とはいえ離れたところだ。子供は迷わないように手をつないで行く。


毎日の出来事や昨日食べた夕飯の事など取り留めのない会話をしながら丘に向かっていく。


「それでどうだったの?この前はなんか調子悪かったみたいだったけど。」


「え?何が?」


「だから、(まとい)が出来なかったけど、どうなのかなーって」


つないだ手が何となくもぞもぞしている。

ルーは最初の第1印象こそ元気な子供だったが、ちゃんと心配できるいい子じゃないか。


「大丈夫、あの時はおなかが痛かったからうまくいかなかっただけ」

つーか、魔力を体にまとうことって(まとい)って呼ぶのか・・・。まんまだな。


「ふ、ふーん・・・。ならいいわ。」


微妙な顔をしたルーはもぞもぞしていた手を離すと


「じゃあこれからまた競争よ!負けたほうが2個持つことね!」

げっ、また10キロは正直しんどい!


「へっへー、今度は負けないからな?」


突然の駆けっこ競争ということで精神年齢もそれに合わせるようになった。


よーいどんで始まった駆けっこである、ここで纏を使ってもよかったが、先を走るルーを見ると体のどこも光ってはいない。

つまり純然たる体力勝負ということだ。


ここで纏いを使ってもいいがそれはなんとなく情けない。

俺は走った。走った。が、ダメだった。


「ハァ・・・ハァ・・・うっ・・ハァ・・・」


「この前よりは惜しかったけどまだまだね。」


肩で息をしているルーがまた勝ち誇ったような顔で言う。


「いや・・・女の子のほうが成長が早いって聞いたことあるからそれだし・・・」


「つ・・・次は負けねえ」


走った後の会話は息継ぎがしんどく上手く喋れないのだ。


「ヨークおじさんこんにちはー!」


って聞いてないし。


少しおじさんと会話して結局俺が2個持つことになった。が、俺は特にそこまで苦じゃないと思っているし、

むしろこれは纏のチャンスだと思った。


ルーは1個、俺は2個チーズを背負うと一緒のタイミングで纏いを発動させる。


ルーは俺の纏いを確認するとどこか安心したような顔になる。


「今日はちゃんとできてるみたいね!」


魔素をためることができる器官を持つ者はいないとは言えないが多くもなかったこの村において幼馴染の俺が発動できたことに対してかなり安心したのだろう。


前よりも元気に駆け出したルーは依然見た時よりも早い。


俺も発動していた纏を使って思いっきり走る。


一歩目を踏み出そうとすると力を入れすぎたのか足が陥没してしまった。


「・・・やばい」


ルーは地面を陥没などさせず軽やかに走っていった。


これはルーの纏の技術が高いのか、あるいは俺の纏が高密度で発動したための結果なのか。


「要検証だな。」


地面を陥没させないようになるべくかかとを付けないように半ばジャンプしながら走ることになった。


「すごい!すごいぞ!これは!あっははっは」


驚きつつ笑いながら光って走るという奇行をしつつそれでもなお周りの人の目など気にできないような衝撃がそこにはあった。


「7歳の体で!10キロの重さを感じさせずに走ってる!すごい、本当にすごい!」


たとえ7歳でなくても26歳の体で10キロの重さを全く気にせず軽やかに走れるだろうか?


俺はこの魔力を使った纏やそれ以外の方法について、魔法や身体強化などいろんなことに対して可能性という名の期待がうなぎのぼりで上昇していることを感じた。


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