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だから皮を剥ぐ-7

「緊急電。SWAT出動要請です」


 ゴールドレイヤー行きは中止になった。現場への応援だ。狭い防弾硝子越しに、チームが家屋へ押し入るのが見える。周囲を包囲する警察官、色とりどりに光る回転灯。一般人と思われる誰かが警官に縋るように泣き崩れ、周囲の烏合がカメラで撮影していた。


 あぁ、なるほど。


 現場だ。


 小さく切り取られた、窓枠の世界だ。だが、見えるものは多い。ビーター家だ。そして、家のフィリピン人使用人の両手が血で染まっている。形は難しいが、恐らくは、ドアノブか何かを握り込んでできたようだ。誰かが死んだ。生きてはいない。


 エンリコ・ビーター。


 バッドリーパーの創設者で、八人目の犠牲者の家でとなれば、何があったかは想像できる。時期に死体が出てくる。エンリコと、他の七人もだ。死体の一部、だろう。皮を剥がれたとはいえ、肉は見つかっている。


 見つかるのは、皮だ。


 新しい体に被せられ、帰ってきている。


 バッドリーパーの集会は、ビーター家でやっていたのだろう。スキナーはそれを再現して、影を焼き付けた。


 警察に混じって、バイカー集団が暴れているが見えた。腕の刺青にはバッドリーパーを示すバイクと死神だ。仇打ちだのなんだの喚いているような口だ。バッドリーパーは解散しているかと思えばまだ、やる気に満ちていた。ある意味では盲目、近眼、一側面からは勇気あるいは蛮勇。


 町の荒らしいライダーと警官が殴り合い、バッドリーパーは手錠をかけられた。拘置所で反省を促される程度だろう。肉体が無事かまではわからないが。


 ゴールドレイヤーシティの住民は、基本的に暴力的だ。グレた連中だけではない、警察官もまた治安という大義を忠実に遂行する組織であり、力を振るうことを躊躇わない。


 特に、今は。


 ゴールドレイヤーシティには怪物が潜んでいる。何十年と生き抜いた殺し屋だ。誰もが、心に不安を抱えながら、行く場所がないから此処にいる。警察の敷く、鉄の規律もある。州兵の駐屯所もだ。だが、その根っこには深い闇が伝染している。気がつこうとしない人間も多い。


 殺人鬼と共存している精神は、共存できる精神へと適応した。


 排他的で閉塞的な人格の形成とは違う。寧ろ、その真逆で、極めて利他的に外部から誘致する。組織に新人を招く。出生率の向上も著しい。特殊な治安を除けば、治安そのものも良く、住みやすい町ということにもなる。


 怖いのだ。


 もし、百が十になった時、自分が狙われない保証がどこにある?千の人間の中に隠れたほうが生き残れる。鰯や虫の群れのように、巨大なスウォームこそが生存戦略になっている。


 おぞましい殺人鬼が潜んでいても、ゴールドレイヤーシティは発展を続けている。明日を恐れすぎるが故に、明日を見ているからだ。

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