第七話 ダンジョンアップグレード!
いつの間にか子供ゴブリンが17体できていた。ゴブリンの成長は早いためもう何体かは親ゴブリンと身長差がない。ゴブリンは短い周期でたくさん仲間を増やしてくれるからとても楽だ。
夜、夢幻は朝討伐したドラゴンの肉を調理していた。サバイバルのように木と木で火を起こすみたいなことはせず、創造魔法でマッチ棒一本と、側薬を創造した。一気にレベルがあがりマナ上限も4から20になった。
マッチ棒は一本、失敗すれば終わり。側薬も紙切れ一枚と同然なので破れたりしたら終わりだ。
一発勝負。集中してマッチ棒を擦った。火花が散って火が点く。無事、着火に成功した。
葉や枯れ木を集めた所に火を移し、火種を大きくする。
大きくなった炎で今朝のドラゴン肉を焼いた。肉汁が垂れ、ジュっと肉汁が蒸発する音がする。匂いが食欲をさらに増進させる。
早く食べたい。まだこの世界に来てからまともな食料を食べていない。腹減った…早く食べたい…
ドラゴン肉は何が腹に当たるかわからないので赤みがなくなるまでしっかり焼いた。
もう限界だ…腹が背中にくっつきそうだ…
ドラゴン肉全体が焼けた茶色をしていたので炎から外した。幾つも分けているとはいえ、あの巨体を解体したわけだから一部分でも十分大きい。
俺は最初に小さく肉をとりわけ、涎を垂らして肉を見つめるゴブリン達に肉を分けた。ゴブリン達は飛ぶように肉に集まり、奪い合いをしていた。
全く、そんな奪い合わなくても全然大丈夫なくらいに肉はあるのに。
マナを使い果たしたのでフォークとナイフは創れず、素手で食べた。
「熱ッ」
肉が思ったより熱く、脊髄反射で手を離した。あれ?苦痛耐性は?
肉を冷まし、口に運ぶ。噛んだ瞬間に肉汁が口に流れ出す。肉は柔らかい。肉は口の中ですぐに溶けた。とても脂がのっていて美味しすぎる。最高の仕上がりだった。
夢幻は一通り肉を食べ終えるとゴブリン達に少し大きめの肉を取り分けてあげた。これならもう大丈夫だろう。夢幻は二階が消失したので固い床で寝た。
翌朝
いつも通りwizに脳内挨拶をされ目が覚める。ドラゴンとの戦闘もあり、昨日は床でも全然寝れた。気分がすっきりしている。
「おはようwiz。ダンジョンを、もう一回作り直したいんだけどどうすればいい?」
「昨日、ドラゴンを倒した時に6000ラードを獲得しました。なのでその6000ラードでダンジョンをもう一度造成しましょう。」
うーん、次はどんなダンジョンを作ろうかな......もっと外壁を強くしたいし床も強化したいし、ふかふかのベッドも欲しいな、いや、調理場も必要か?いやいや、これではただの家になってしまう。罠を仕掛けなければ...!
『すべて設置することもできますよ』
思考する脳にwizが直接語り掛けてくる。
「あ、wiz。ラードってさ、俺がなんでもいいから殺せば手に入れることができるわけだよな?でもそんな入手方法だったら不安定じゃないか?なんかこう、もっと定期的に手に入れられるようなことは出来ないのか?」
口に出してでも訊きたい質問だった。
やはり敵を倒して上下激しいラードを手に入れるより、毎日一定のラードを手に入れた方がダンジョンに罠を仕掛けるとなった上でも作業がしやすい。
「ありますよ。ゴブリン達に働かせてラードを取得できます。」
なるほど!それはありがたい。
「それを作ろう!どうしたらいい?」
「スキル・管理を使用してください。」
wizに言われるまま管理を使用しようとしてみた。「管理!」と叫んでみる。
すると、俺の視界にダンジョン、ステータス、配下、パーティー、インベントリと表示されたHUDが現れる。
なるほどこれはわかりやすい。俺はなんとなく気になったので配下を開いてみた。視界に配下一覧が表示される。ゴブリン20体とそれぞれのステータス......え?20体?
俺の知らぬ間にゴブリンはどんどん生殖を続けていた。
『夢幻様、ダンジョンを開いてみてください』
言われるままダンジョンを開いた。様々な項目が出てくる。トラップや増設、創造などいろいろあった。
現在のダンジョンが三次元映像で表示されている。酷い有様だった。
『続いて、増設項目を開いてみてください。』
開くと増設可能施設が一覧となって表示される。
魔王専用部屋 3000ラード
通常部屋500ラード
床資材 500ラード
外壁資材 700ラード
牢獄 300ラード
通路 25ラード
隠し通路 100ラード
階段、扉 300ラード
......などなど結構多くの増設が可能だった。俺が気を惹かれたのはやはり床資材や外壁資材。弱っちい木の板じゃだめだ。床や外壁から強化してダンジョンをより強固にしないと。
『――?床や外壁を強化しますか?』
いやいや、ただただ気になっただけだよ、そのまま続けて。
『了解です。では、"採掘エリア"を選択してください。』
採掘エリア......3000ラード!?所持ラードは6000、半分消費か。大きいな。
「wiz、効率はどれくらいなんだ?」
『働き手はゴブリンなのでやる気や体調などである程度上下しますが大体1時間あたり10ラード入手できます。』
「それはゴブリン1体あたり?あとなんでそれでラードが入手できるんだ?」
「はい。1体あたり1時間で約10ラード獲得することができます。なので採掘エリアで働かせるゴブリンが多ければ多いほど1時間で獲得できるラードも増加します。
ただ、ゴブリンはスタミナが少ないので多くても1日5時間までしか働かせれません。最大で1日1体あたり約50ラード入手することができます。何故それでラードが獲得できるかと言うと、採掘によって入手した鉱石をすぐにラードに換算しているからです。」
はあ~面白いな~。ん~。20体いるから10体働かせても問題はなさそうだな。10体働かせるとすると最大1日500ラード......え?めっちゃいいじゃん。6日で元とれるじゃないか!!
「よし、増設しよう!あ、あとさ、働き手にさせるモンスターによって効率が変わったりするのか?」
これは気になった。ゴブリンも後々召喚することになるオークとかも効率が同じならあれだしな。
「当然ながら、効率は変わります。ゴブリンよりもオークの方が効率よくラードを手に入れることができます。因みに、召喚魔法を所持している場合はラードで創造することも可能です。」
何ッ!?ラードで召喚可能なのは大きいな。
「それでゴブリン召喚するのに何ラード必要なんだ?」
「管理を開いて、創造の項目を開いてください。」
視界に創造可能なモンスター一覧が表示される。
創造可能一覧
スライム 20ラード
インプ 30ラード
ゴブリン♂ 60ラード
ゴブリン♀ 80ラード
コボルト 70ラード
スケルトン 100ラード
オーク 200ラード
まだ、この種類しか名前が表示されてなかった。他は???となっていた。きっとレベルがあがったりランクがあがったりで進歩があれば解禁されるんだろうな。
「wiz、オークを三体働かせる。ラードを使う場合どうやって召喚すればいいんだ?」
訊くとwizが顔の前で手を振った。
「違いますよ。ラードで創造するには召喚魔法の変換が必要です。」
え?召喚魔法の変換?
「はい、ステータスを開き、スキル変換を選択してください。」
今俺が所持しているスキルが表示された。『召喚魔法を選択してください』
言われた通りに選択する。
売却/変換
と、表示された。変換を選択する。本当に変換しますか?というお決まりの確認文が出てきたので‘はい’を選択した。
すると、ポップアップ通知のようなものが視界の上側に来た。
『創造が使用可能になりました』
と、書かれていた。
「おめでとうございます!これでラードで創造が可能になりました!」
wizが拍手する。創造するまでが長いな......
俺はダンジョンから創造を開き、オークを選択した。三体で600ラードか。すると残りは2400......ダンジョン修復には問題はなさそうだ。
「方法を説明します。方法は呪文を唱えて創造します。呪文・創造 〇〇のようにして、創造いたします」
wizはとても楽しそうな目をしていた。なぜだろう。
「呪文・創造 オーク!!」
地面に手のひらを向け叫んだ。召喚魔法と同じように――しかしゴブリンの時よりはおおきな――紫の魔法陣が現れる。紫の光が発せられる。
やがて光の中に何者かの影が浮かび上がってくる。光っていただけの光が粒子となって影に吸い込まれ形を成していく。
下顎が出て2本の長く伸びた犬歯が露になっている2mくらいのオークが形成された。耳は長く尖っていて鼻は潰れていた。
ゴブリンの肌色と人間の肌色を混ぜたような茶っぽい肌色をしている。筋骨隆々としていてとても力が強そうに見えた。
よし、出来た!!
夢幻はこの調子で残り二体も呪文を唱えて創造を終えた。
「お疲れ様です、夢幻様」
wizが夢幻に近寄り、拍手を送る。
「オークってゴブリンより知性あるんだったよね。オーク達!俺の声が聞こえたらジャンプするんだ!」
迂闊だった。夢幻の指示に反応して2mの巨体が跳び上がる。地面に着地と同時に、床が崩壊し、地下一階へと落下した。
ゴブリン達は――またもや取り込み中だった。
*
夢幻はゴブリンとオークが互いに叫びあってうるさい環境の中でwizの指示通りに採掘エリアの増設を行った。立体映像でどこに採掘エリアを建設するか選択する。メインエリアの隣につくることに決めた。
するとどこからともなく建設材料が現れ、肉眼で追えない速度で通路と採掘エリアを建設していった。
採掘エリアは辛うじて耐え残ったwizの親機の床から幅5m、高さ7m程度の通路を4,5m通ったところに建設された。採掘エリアは天井も通路の高さの2倍は優に超えており、広さもメインエリアよりも広かった。
どれだけ採掘してもダンジョンから抜け出ないように採掘エリアだけは別空間になっていた。
「オーク達、俺についてこい!」
三体のオークは「ヴオオ」と低い声を上げると三体とも笑顔で楽しそうに夢幻に付いて行った。
今から採掘するのが楽しみなのかもしれない。夢幻はやる気あるオーク達だなと思いながら採掘エリアに入った。
明らかに空気が違うのが感じられた。風が冷たく、周りからここだけ遮断されたかのように静かだった。
三体のオークも続いて採掘エリアに入った。これから何をするかを察したオーク達はつるはしを自身で作成した。
「これからここで君たちに働いてもらう!えーと、そこのでかいの!飯は何がいい?」
夢幻が返事できないだろうと思って三体で一番背の高いオークに面白半分で訊いた。
『10ラード消費されました。』
脳内にポップアップ通知が届く。
――え?
訳も分からず消費されたラードに続いて追い打ちをかけるように予期せぬ事態が起こった。
「びーる......」
聞き取りにくかったが、確かにオークは喋った。
(ええええええ!!!!!)
驚きのあまりあんぐりと開いた口が塞がらなかった。今にも目玉が飛び出しそうなくらい目を見開いている。
『......起動。休止状態から再起動しました。――夢幻様、オークに名前を付けたのですか?名付けは10ラード消費する代わりに名付けられた対象は性能が上がったり、知性が上がったり良いことが起こります。』
一時休止状態に入っていたwizがゆっくりとした口調で言った。
もっと早くに言ってくれよ......
「わかった、がんばる。仕事がんばってね......」
俺はオーク達にそう告げると、重い足取りで採掘エリアを抜けた。採掘エリアからつるはしと石がぶつかり合う激しい音が響いていた。
よしっ、強化された外壁と床をしっかりつくってダンジョンをダンジョンらしくしよう!
増設から床資材と外壁資材を選択した。
残る1190ラードで通常部屋を二部屋、それに通ずる通路を増設した。通路を四つ増設した。残るラードは90。すべてのラードを消費して効率を見てみたいのでスライムを四体創造して80ラード消費することにした。
「呪文・創造 スライム」
水色の鮮やかな粘液の塊のようなものが現れた。粘液の塊はくりっとした赤い瞳を見せた。スライム創造に成功した。
残り三体も同じように創造して四体のスライムが誕生した。新しく増設された部屋にスライムを入れる。
先ほど購入した資材で壁と床の組み立て作業に入った。
立体映像が現れ、外壁や床の形や配置を設定できた。ダンジョンはやはり見た目からインパクトを与えないと。
最初の洞窟を忘れたくなかったのでアメジストのような透き通る紫を選択した。床は木よりは強固な物を選択した。一階の屋根となり、二階の床となる部分は特に厚くして強くしておいた。
これで初期よりは強いダンジョンになったと思う。俺専用の部屋はなくなったから二階には二つ部屋が、一階にはwizの親機のあるメインエリアと採掘エリアが、地下は特に触ることなくゴブリン部屋になっている。
ポップアップ通知が視界に飛び込んでくる。『ダンジョンレベルが2になりました』
ダンジョンレベル......きっと上がれば使用ラードが下がるんだろう。
漠然とそんなことを思いながら新しくなったダンジョンを見回った。
今回はとても長くなりましたね…
1話の量って少ない方がいいのか今のままでいいのかわからないですね……どっちのほうがいいんでしょうか?
オークやスライムのステータスは次回の魔王sideで公開する予定です
今日の16時にもう一話投稿します!
創作意欲向上につながるので評価と感想お願いします。