第二話 新たな配下
翌朝。w.i.zに起こされる前に目が覚めた。何かし忘れているような気がしていた。あまりいい目覚めではなかった。個室の扉を開ける。
「どこか行くのですか?」
迦楼羅が目を閉じたまま尋ねた。
「何かし忘れているような気がしてるんだよね。これから朝飯の調理しに行く。ここで出る飯は朝も昼も夜もドラゴン肉だけど大丈夫か?朝からドラゴン肉はなかなか胃にくるぞ」
1階に降りる。200マナ消費でどのような原理をしているのかわからないが電気なしで使える冷蔵庫を作成した。地下室にあるドラゴン肉を冷蔵庫へ運び、冷凍室に入れた。ゴブリン達は腹をだして寝ていた。そろそろ配下専用部屋を創らないとなーと感じる。
......「あっ!!」
唐突に頭に電気が走ったように気掛かりだった何かが浮かんだ。"罠"だ。ダンジョンに罠を仕掛けるのを忘れていた。これでは簡単に突破されて親機を破壊されてダンジョンを潰される。これはまずい。ドラゴン肉の一部を切って調理しながら――と言っても、火で焼いているだけだが――ダンジョンのトラップの項目を見る。作成可能トラップ一覧が表示される。それともう一つ、増設可能一覧を表示した。肉を焼きながら考える。
現在の所持ラードは1200。通常部屋をどこまで広げようか。隠し部屋も作ろうかトラップは如何にして設置するか。いろいろ考えていたら肉を焼きすぎた。やっちまった。
*
隠し部屋と隠し通路を増設した。そしてダンジョン項目内の"配置変更"で親機の位置を隠し部屋に配置した。同時に、採掘エリアも二階に配置した。冷蔵庫の隣に偽物の冷蔵庫を作った。ダミー冷蔵庫の扉を開けると灰色の板があり、それを押すと前に倒れて隠し通路が現れる。横2m距離8m高さ4mの隠し通路を通り、300ラード消費で作った階段を5段あがると隠し部屋につながる。隠し部屋は位置にすると二階層と三階層の中間位置にある。縦10m、横20m、高さ12mの200m²くらいの大きさ部屋だ。中央に親機を置いてある。親機の周囲を囲うように壁を建設した。隠し部屋に25体のゴブリンのうち、♂ゴブリンを15体を配置した。
ラードを使い切った。途中でオーク達から午前の4時間分の600ラードを獲得する。50ラードで入り口に感知を取り付ける。これで入って来れられたときに認知できる。10ラード追加して警報も設けた。感知の反応と共にダンジョンにいる魔王側陣営の脳内に警報とw.i.zのアナウンスを流し敵侵入を伝える。そしてダンジョン項目の監視から侵入者の様子を監視する。これで大抵はなんとかなるだろう。そして所々に重圧感知板を床と色を同化させて敷き、踏めば上の屋根が開いて緑スライムが降ってくるようにした。まだ、緑スライムはいないのだが。
w.i.zが言うには青スライムより緑スライムの方が粘着性が高いようだ。そして赤スライムは顔を積極的に狙い窒息死させにかかる恐ろしいスライム。青スライムは移動速度が速いと言われた。
『夢幻様、ゴーレムの創造が可能になりました。』
w.i.zが脳に直接伝えてきた。
ゴーレム?オークより作業量は多いのか?
「はい。休憩時間が要らず、1日中フル活動できます。1時間あたり100ラードで1日2400ラード入手することが可能です。」
w.i.zが背後に現れ、俺に触れた。
「え!?なんで触れるの?!」
俺は思わず口に出してしまった。すぐに振り返る。w.i.zが笑顔で立っていた。
「w.i.zさんを壊してしまったので、私が償いとしてw.i.zさんに私の持つ1000マナ全てを渡しました。するとw.i.zさんは自分でそのマナを消費して実体化したのです。」
人間体の迦楼羅がいつの間にか隠し部屋に来ていた。
「え、なんでここがわかったんだ!?」
これじゃ意味がない。
「恥ずかしながら空腹で朝食で私が残したドラゴン肉を食べようと思い、台所へ行ったのです。すると冷蔵庫が二つあったので適当に開けたら道に繋がっていたのでそこを通ってきました。」
まずい、隠し通路の板を戻すのを忘れていた。
「あ、隠し通路に入るときは、冷蔵庫ちゃんと閉めて、外した板を嵌めといてね。じゃないとこうしてばれるからさ.......」
どうしよう。これじゃ隠し通路の意味がない。まあ今はこれでいいか。
所持ラードでは足りなかったのでマナを消費してゴーレムを創造することにした。召喚魔法を変換しているからマナでも創造は出来るらしい。ラードだと800必要だったが、マナだと400で創造が可能だった。
......ん?俺のマナ上限は400。必要マナは400。足りないじゃないか。
俺はマナがたまる正午まで待った。
*
採掘エリア
「夢幻様、創造しましょう!」
w.i.zが楽しそうな顔をして言ってきた。w.i.zは美人だからその笑顔を見るとどうもドキドキしてしまう。
「さあ、魔王様、創造してください。新たな配下を。」
迦楼羅も今から起こることを期待し、とても楽しみにしているようだった。
「ああ、今から始めよう。創造・石人形」
紫の魔法陣が浮かび上がる。作業中のオーク達も手をとめ、その様子を見る。
紫の光が魔法陣から放たれる。光の粒子が5~6mの形を作る。ゴーレムが形成された。石を組み立てたようなゴーレムは、創造主である俺を視認すると、瞬きをした。小さな眼が俺を見つめる。
「流石です、夢幻様!」
w.i.zが笑顔を浮かべる。可愛すぎる。
「おお......魔王様、あなたは素晴らしき力をお持ちの方だ。命を誕生させるなんて......」
迦楼羅は感心していた。俺に付くようになってからキャラが変わった。おかしいくらいの改心ぶりだ。
「よっ!これからこいつらと一緒に働いてもらう!オーク達と仲良く作業してくれよ!」
俺がそういうと、ゴーレムは瞬きで返事をし、採掘に向かった。両腕を上下に振って採掘を進める。
物凄い速さで採掘が進む。オーク達が掘り進める距離の二倍進んでいる。さすが1時間取得可能のラードがオークの2倍だけある。
ゴーレムが採掘を続けていると、ラードに変換されない鉱石があった。真っ赤な光を放っている。磨けば宝石のように綺麗になりそうだった。w.i.zがオークと見つめ合っていた。多分、脳内通信しているのだろう。
俺はその石を拾いに行った。
「だめです夢幻様!その石を拾っては!!」
唐突にw.i.zが叫ぶ。時すでに遅し――俺は石を拾ってしまった。赤く光る石は、触れた瞬間、黒く光った。装甲となっていた石は剥がれ、漆黒の玉となった。手から離れない。とてつもない恐怖が全身を襲った。
「はっそれは!!」
迦楼羅が玉の存在を視認し、叫ぶ。その直後、一瞬で、意識が落ちた。
夢幻が鉱物を拾う。
「だめです夢幻様!その石を拾っては!!」
w.i.zが叫ぶ。鉱物の石が剥がれ、漆黒の玉が顔を出す。
「はっ、それは!!」
迦楼羅もその玉を視認し、叫んだ。
『ごっぷっ』夢幻の口から大量の血が吐かれた。虚ろな目をしている。途端、脳が破裂し、血液と脳漿が周囲に散った。夢幻の眼から目玉が転がり落ちた。べたっと地面に倒れる。
「ぐおお!ぐおお!!」「ごおお!!ごお!!」「ば、お、ぶ!」
オーク達が叫ぶ。迦楼羅が眼を見開く。w.i.zが口を押える。
――夢幻は、死んだ。
【天下大魔王】になる日までのカウントダウンが今、始まった。
ヒィイイイ
創作意欲向上につながるので評価と感想とブクマお願いします!