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剣の王と七つの魔宝刃  作者: 水無月 平
魔剣エラディオン
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オークの巣

 


 オークの巣を見つけたイルジオ達は森に影を潜ませたままオークらの様子を伺う。



「でかいな。巣というより集落ぐらいの規模はあるんじゃないか?」



 イルジオが言うように簡易な住居のようなものまであり、そこを何匹かのオークが闊歩するさまは集落と呼べるかもしれない。



「……ん。まずは連れて行かれた村の人達を見つけないと」



 イルジオはニクの言葉に頷き、二人は集落の周りに沿って木々の中を音を立てないように歩き始めた。



 



 しばらく歩いていると、イルジオは何かに気づいたのかニクに向かって言った。



「しっ、静かに。何か聞こえる」



 その声に足を止めたニクがイルジオにならうように耳を澄ますと、確かに何かが聞こえた。



「もう少し近づいて調べたいな。無理やり突破してもいいが捕まってる人がな……」



 イルジオのつぶやきにニクが静かに返す。



「任せて。隠密の魔法を使う」



 そう言うとニクは静かに魔法を唱えた。



痕跡奪う(バーハゴート・)隠遁の闇(イムズィ・シング)



 その瞬間姿も音も匂いも、二人が存在する痕跡は周りから認識できなくなった。



「闇属性の魔法か」



 自分とニクは互いに認識できることを確認して、イルジオは感心したように言った。



 イルジオが言ったようにその魔法は闇魔法で、その中では中級に位置するものでありそれを詠唱を破棄して使えるニクはかなり優秀なのであろう。年齢を考えれば天才、とも言えるかもしれない。



「……ん。なんでわかったの?」



 聞いていた生い立ちと、魔宝刃を含めたイルジオの知識力とのギャップに違和感があったのか、ニクは思わずといったふうに尋ねた。



「ああ、俺を育ててくれた人が知識豊富でな。一般常識から戦い、魔法について、雑学までと色々教わったんだ」


「そう……」



 イルジオの説明に納得したようにつぶやき、それからニクは知ってるかもしれないけど、

 と魔法について簡単に説明した。



 曰く。

 魔法には属性が存在する。すなわち

"炎"、"汎"、"天"、"地"、"闇"、"光"の六大属性である。

 更に、魔法はその難易度と効力によって階級分けされ、基本的に階級は下から低級、下級、中級、上級の四つが定められている。しかし、失伝したとされる魔法のなかには上級をも超えた"特級"と呼ばれるものもあったという。それらにも分類されない、低級にも届かない火種を生み出す魔法などは、総じて生活魔法や無魔法などと呼ばれる。

 また、魔法を安定して使うには詠唱が必要になり、それを省略したり破棄するのにはかなり精密な魔法制御力が要るとされる、とのことだった。



 そうして短い魔法講義を終えた二人は、ついにオークらの元へと乗り込むことにした。



 *



 ニクの魔法のおかげで、二人はオークに見つかることなく音が聞こえる場所の方へと近づくことができた。



 オークの住みかはどれも大きく、木の枝などでできた家のような形をしており、先程から歩いていたオークらはその中でもひときわ大きな家へと集まっていっていた。

 それを見て、イルジオとニクの二人はそっとその家の中の様子をうかがった。



 どうやらオークは食事中のようで、家の中をよく見てみると隅の方にさらわれた村人らしき女性達が縛られていた。

 オークは全部で四十匹ほどおり、どうやらこの集落のオーク全員で集まって宴でもやっているところなのだろう、と二人は考えた。



「ニクは村の人達を優先してくれ。俺がなるべくオーク達を引きつける。村の人達とオークを離すことができて巻き込む心配がなくなったら一気に殱滅だ」



 イルジオが簡潔に作戦を伝えるとニクは村の人達の方へまわる準備をした。



 充分に準備が整ったのを見て、イルジオが合図をすると、ニクはイルジオにかかった魔法だけを解除した。



 ゴロン。



 と何かが落ちる音を聞いてオークらは侵入者の姿に気づいた。

 しかし、あまりにも突然のことにすぐには反応できずに、その間にも一つ二つとオークの首が飛んでいく。


 それを見てようやく状況を理解したオークらは一斉にイルジオへと飛びかかっていく。



「疾っ」



 それでもイルジオは止まらない。いくぶんかペースは落ちつつも、正確にオークの首を刎ね飛ばしていく。



 そうして半分程のオークが死んだ頃、イルジオの視界にあるものが映った。



 他のオークと比べてふたまわり程も大きなオークが数匹のオークを引き連れて村の人達––––ニク達の方へと向かって行っているのであった。


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