過去と未来
一人の騎士の末路を視た三人は、現実へ戻ってくるとそれぞれの顔に難しい表情を浮かべた。
その霊視は今までのものと比較できないほどに鮮明で、視る者の心を揺さぶる光景であった。
それは恐らくイルジオが倒した黒騎士の過去。先ほどまでの戦いを振り返れば覚えのある、魔物と化した後すら通した執念の決意と覚悟が生々しく伝わってきた。
「あれって、つまりそういうことよね」
「魔物の侵攻を防ぐために魔物に堕ちた」
「魔宝刃の代償、か……」
それぞれが衝撃を受けたように言葉を漏らす。
「ん。黒騎士の経緯は確かに衝撃的だったけど、それ以外にも重要な情報があった」
ニクが言うようにあの霊視が映した過去の状況には、黒騎士のこと以上に留意せねばいけないことが示されていた。
「も、もしかしてイルジオもああなっちゃうとか!?」
「……それはないと思うけどな。俺の感覚的にもそうだが、何より前にシュトナが視てくれただろ? その時の言葉から考えるに……」
シュトナは人が魔物になった事実が余程強く印象に残ったのか、イルジオまでああなるのかという心配をする。
もちろんそんな心配はない、とイルジオは冷静に返し、その根拠をシュトナの以前の霊視の言葉から見出す。
「前に視た時…………あ! 魔剣を視た時は"鬼"が封じられている、だったけどレムナントの内に眠っているのは"精霊"だった。つまり同じ魔宝刃でも大丈夫なのとそうじゃないのがあるんだ……あれ? ニク、じゃあ重要な情報って?」
イルジオが魔物になる心配がないのならあの霊視が示した重要な情報は何なのか、というと––––
「魔物が"侵攻"して来たってこと。魔物は元からこの地にいたわけじゃなくて大昔に攻めてきた敵の子孫。それはつまりまた攻めて来る可能性もあるということ。それに––––」
「––––その中には少なくとも黒き森のやつより強いのがいる、てことも予想できる」
ニクの言葉を引き継いだイルジオが出したのは恐ろしい予測であった。
特にここの魔物の強さを文字通り肌で感じていた三人はそんな敵が際限なく溢れてくることなど考えたくはない。
だがその予測の可能性が十二分にあることをあの霊視から読み取ることができてしまう。
「……確かに、あの黒と白の二人は黒騎士になっちゃった人より強いんだろうし、その人達じゃなきゃ倒せない相手がいるということよね」
「ん。更に言えばあの二人は『この魔宝刃なら』と言っていた。その敵を倒すのに必要な魔宝刃が決まっているかもしれない」
「私が感じていた焦燥感はそれが原因……?」
「ああ、そうかもしれない。ともあれ、これで魔宝刃はできるだけ集める必要がでてきたな。それこそ全て回収したほうが良いぐらいには」
三人のこれからについての認識の共有が終わったところでイルジオは二本目の魔宝刃、魔剣ディルシングを回収––––しようとして手を止める。
「……魔剣、握ったらまずいよな?」
「「あ」」




