決着
「はあっ!」
イルジオは陽炎のように揺らめく霊剣を振るい一瞬にして、溢れる魔物と黒き騎士を同時に攻撃した。
伸びた剣身は遠くの敵をも斬り裂き、さらにその軌道は一つだけではなく周囲を剣閃で塗りつぶした。
夢幻の魔宝刃、霊剣レムナント。
その刃に限りは無く、またその刃に間合いは無い。
気がつけば魔物達は全滅し、イルジオと黒騎士の一騎打ちになっていた。
対峙した両者による戦いは時間の経過と共に徐々に終局へと向かっていく。
魔剣により付与された呪いは時間が経てば経つほど広がっていくのだ。
イルジオが動けなくなるのが先かそれとも黒き騎士にとどめを刺すのが先か。
どちらにせよ決着はまもなく着くであろう。
そしてその戦いの天秤は少しずつ傾いていく。
魔剣の呪いによる鈍りを霊剣の覚醒した力による有利が上回っていたのだ。
黒騎士の鎧に傷が増え、そして所々が砕けていく。
「オ、ォォオオオオ。コ、コハワタシ、ガ。ワタシ、ガトメ、ルゥゥゥ」
それは魔物と化した騎士の最後の魂の叫び。
その一瞬、イルジオは彼と目が合った気がして––––
「ァ、グウゥ。ァア」
イルジオの剣が騎士の胸を貫き、長かったその戦いにようやく終止符が打たれた。
騎士の胸から剣を引き抜き、そこでイルジオは力が尽きたように崩れ落ちる。
すぐにニクとシュトナがイルジオに駆け寄り、二人で介抱していった。
黒き森の中心は戦いから一転して静けさに包まれ、魔物が近づく気配もしない。
ニクがイルジオの呪いが消えているのを確認してそれを皆に伝え、そこで三人は戦いを切り抜けることができたことを感じて安堵した。
魔剣の呪いは所有者を倒すことで解呪できるのだろう。
「よかった! イルジオが死んじゃうんじゃないかと思って心配だったわ。ね、ニク?」
「…………私はイルジオなら大丈夫だって信じてた。シュトナは違った?」
「ふぇ? わ、私も信じてたわよ! それでも心配は心配だったのっ!」
そんな二人のやり取りを見上げながら、イルジオは段々と意識を落としていった。
黒騎士の最後を思い出しながら。
––––ああ。ようやく、終われる
イルジオには最後、騎士の目がそう言っているように見えていた。




