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剣の王と七つの魔宝刃  作者: 水無月 平
魔剣エラディオン
23/27

眠れる力

 



 黒き森の中心地点。魔物が最も強くなる森の最奥とも呼べるその場所は、この森の中においてもより異質と言える空気が漂っていた。



 そこは光も通さない森の最奥周辺部と一転して、ところどころ木が倒れているため、いく条もの光が差し込んでいた。



 だがその場所を最も異質たらしめているのは漂う血の匂いだ。

 仲間争いのない魔物達が住むこの森で、それは異常なことと言えた。




 そんな黒き森の最奥、木々が途切れて光が差すその開けた場所についたイルジオ達が見た光景。



 そこにあったのは全身が黒く染まった鎧に包まれ、これまた黒く染まった剣を握った騎士が魔物の死骸の山の前に佇む姿だった。



 禍々しい力がにじみ出た剣をぶらりとさげて軽くうつむいていた騎士は、イルジオ達が己の領域に入ってきたのを感じてその頭をゆっくりと上げた。



 黒い全身の中、目の部分に浮かぶ二筋の赤く鈍った輝きがイルジオ達へと向けられる。



 その視線がイルジオ達に固定された一瞬の間のあと、森中に衝撃が響きわたった。




 ァゥゥオアアアアアアアアア!!!!!!




 衝撃波と感じてしまうほどのそれは黒き騎士の叫びであった。



 そしてその叫びが唐突な戦いの開始を告げる合図となった。




 叫んだ騎士は一瞬でイルジオ達との間にあった距離を縮めると、先頭に立っていたイルジオへ斬りかかる。



「っ!」



 それにイルジオはなんとか反応し霊剣で受け止めるも剣と剣がぶつかった衝撃が辺りに走り、ニクとシュトナはそれに耐えれず地面に這いつくばった。



 つばぜり合いからイルジオが騎士を弾き飛ばして距離をつくる。

 その隙に体勢を素早く立て直したニクとシュトナはイルジオの援護に回るべくそれぞれ行動をおこした。



 ニクは魔法によって騎士を牽制、あるいは隙を作り出していく。

 そしてシュトナは彼女の魔眼で騎士が持つ剣を凝視した。



「イルジオ、ニク! 霊視をするから少し時間を頂戴! この距離だと視るのに時間がかかるわ」



 シュトナがしようとしていることを察してイルジオとニクはシュトナが狙われないように立ち回る。




 しかし黒き騎士と戦い始めてからしばらくしてイルジオ達にとって最悪の事態が襲いかかった。



 戦いによって騒がしくなったその場所へと魔物が次々に集まってきたのだ。



「ニク! シュトナの護衛を頼む! 騎士と魔物の引きつけは俺がやる!」



 イルジオの言葉に一瞬迷ったニクだったが無防備なシュトナを守らなければならないのは確かなため、イルジオを信じてシュトナのもとまで下がった。




 そこからイルジオは騎士と魔物を同時に捌いていったが、徐々にその身に軽くだが傷を増やしていった。

 こころなしかイルジオの振るう剣の輝きも鈍ってきたように感じる。



 ただイルジオにとって幸いだったのは黒き騎士と魔物達に仲間意識がないどころか、近くの魔物を騎士が屠っていたことだった。




 それもあってなんとかイルジオが持ちこたえているとようやくシュトナに反応があった。



「……視えた––––––魔剣ディルシング……浸蝕の魔法刃…………斬りつけたものに付与する呪い……消えずに広がり続ける呪い………………その内には持ち主すら蝕む鬼が封じられる………」



 消えずに広がり続ける呪い。

 その言葉通りのようにかすり傷程度しか負っていないはずイルジオはその動きを鈍らせていった。



 ニクが回復の光魔法を飛ばすもイルジオの傷が癒える様子はない。

 ただの傷ではない呪いのそれは光魔法で癒やすことができないのだろう。




 そしてついにイルジオに大きな隙ができてしまう。イルジオは剣を弾き飛ばされて丸腰となってしまったのだ。

 イルジオは霊剣を宙に浮かせて自らの手に引き寄せようとした。しかし––––




 霊剣は地面に刺さったままぴくりとも反応を示さなかった。



 その大きな隙に黒き騎士はイルジオ魔剣を振り下ろす。



 それにかろうじて反応したイルジオはなんとか致命傷を避けることはできたが、肩から脇にかけて大きな傷を負ってしまった。

 その傷に与えられた呪いは今までかすり傷から浸蝕した呪いの比ではないだろう。



「斬りつけたものに付与する呪い、てのは魔宝刃の力にも有効なのかよ」



 霊剣が反応を示さなかった理由を推察し、血を滴らせながらそうぼやいたイルジオは、その軽い口調とは裏腹に余裕のない表情をしていた。



 その表情を見たシュトナは自分に何かできることがないか必死に探していた。




 イルジオが騎士と戦ってる間にもこっちに寄ってくる魔物のほとんどはニクが対処していた。

 ニクと比べたら自分の魔法は火力に乏しくあまり役に立っておらず、先程の霊視もあまりイルジオの役に立てなかったとシュトナは感じてしまっていた。



 そんなシュトナの目に地面に突き刺さる霊剣の姿が映った。



 始めはそれをイルジオに届けようと駆け寄ったのだが不思議と、その剣に眼が吸い込まれていった。



 その眼が捉え、シュトナの脳裏に浮かんだのは以前視たものよりもさらに奥に眠る霊剣の力だった。



 それが視えたシュトナはすぐにそれをイルジオに伝えなければいけないと感じたが、それと同時にそれが言葉で伝えられるものではないとわかってしまっていた。



(私の眼に今映っているものをそのままイルジオに届けたい! 私と同じものを彼に視て欲しい……!)



 そう、シュトナが強く願った瞬間不思議な現象が起こった。



 シュトナが視たのと同じものがイルジオの脳裏にも浮かんできたのだ。



 それは霊視の魔眼に備わった一段上の力。

 自分が視たものをそのままに周囲の人に伝える感応の力であった。



 シュトナと同じものを視たイルジオは黒き騎士と魔物達を無手で捌きながら、深く霊視をして力尽き倒れたシュトナがいる霊剣の下へと向かった。



 自分が視た、シュトナが視せてくれたものを口ずさみながら。




「その剣閃は無限––––」




 それは魔法の詠唱ではなく魔宝刃の内に眠る力を引き出す言霊であった。




「その剣身は夢幻––––」




 イルジオが言霊をつぶやくたびに霊剣がもとの輝きを取り戻していく。




「我が意のままに力を振るえ––––」




 深手を負ったイルジオが黒き騎士を倒すのに必要な起死回生の一手。




「真威顕現––––」




 霊剣の下に辿りついたイルジオがその剣の柄を握る。





「––––万物(ゼントズィ・)惑わす(ペインツォルナ)夢幻の(・フェイムズィ・)霊剣(レムナント)




 言霊に誘われて魔宝刃から光の奔流が溢れ出す。





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